いがみの権太の野球日記・笛猫茶番11月5日

平成二十二年十一月五日
 きょうの中日スポーツ1面見出しは、きのう敗退し2勝3敗で、王手をかけられた日本シリーズ対ロッテ戦に触れ『落合監督 想定内 名古屋で連勝だ」というものだった。この「想定内」という言葉、歌のフレーズでもないが、ホントカシラと思ってしまう。

 記事は「落合が想定内というフレーズを使うことが、記者には想定内だった」としたうえで「しかし、記者の星勘定でも『想定外』だったことがある。それは3敗の相手である。成瀬の2試合、渡辺俊の千葉マリンでの1試合。ここは厳しい戦いになるというのが戦前の予測だった。第1、3戦の黒星は、まさしく想定内。しかし、初顔とはいえシーズン1勝のベンに、完全に封じ込められたのが想定外。この一敗により、名古屋での渡辺俊はもちろん、成瀬も打たねば逆転日本一はなくなった」(龍の背に乗って 渋谷真)と核心部分を突いており、まさにその通りだ。
 この記事を読みながら、「想定内」の言葉は、千葉マリンスタジオでの第5戦敗退に限っていえば、負け惜しみに聞こえなくもない。

 とにもかくにも「想定内」と言っておられるのも、ここまで。明日の第6戦は勝つ、ほかあるまい。「ブランコが調子を取り戻し、和田で切れていた打線が1つにつながれば、成瀬だって渡辺俊だって、決して怖くない。付け入るすきあり、です。何より、舞台はドラゴンズがめっぽう強い本拠地・ナゴヤドーム。逆転の日本一に期待したい」。
けさの同じく中日スポーツ1面「木俣達彦氏VS本紙デスク 頂上決戦を斬る!! 」で往年の名捕手・木俣さんが言ってる通りだ。ここまできたら腹を据え“内弁慶野球”に徹するほかないのではないか。

 熱きドラゴンズファンに支えられ、あと二勝を石にかじりついても勝ち取り、五十六年ぶりの完全日本一を天下に見せてほしい。

『ねぇ~』   こすも・ここ
 

       『なぁに』  シロ

 【笛猫茶番日常の劇】随分寒くなりました。つい、この間まで猛暑、猛暑と言っていたアレは、一体何だったのでしょう。アタイもシロも室内の暖かいところを、まるでジプシーの如く探しながら歩いて生きています。
 家族の身辺は特に変わりはありません。アタイたちも、オトンもMもなんとかドラゴンズに優勝してほしいな、と思っています。運も力のうちだ、とは、よく言われることですが、あすの試合では運の女神にも微笑んでほしく思います。

 だって、オトンがドラゴンズの完全日本一達成を願って世にも珍しい本欄「いがみの権太の笛猫野球日記」を書き続けてきたのだもの。毎日毎日、アタイはオトンが途中でペンを折らないよう、隣近所に気遣いながらも深夜未明にニャンニャン、ニャニャン…と起こし続けてここまできたんですから。オトンは午前三~四時起きで、よくぞここまで続けてこられたな、と感心しています。
 この笛猫野球日記もあと二日で終わります。だから。できたら、完全日本一で、と。アタイとシロは「有終の美」で終わることを、願っています。

☆「尖閣ビデオ ネット流出」「44分海保が撮影 政府・内部から?調査 ユーチューブ」(五日付毎日新聞夕刊)「尖閣衝突映像 海保が流出調査 国会開示内容以外も」「最高検も調査 検察からの可能性低い」「点火容易 使い捨てライター 来秋から販売禁止 閣議決定」(五日付中日新聞夕刊)

平成二十三年十一月四日
 「中日は土壇場に弱いのだから」
 帰宅すると、Mがポツリと、こう言った。
 この言葉、ドラゴンズに期待すればこそ、の表れだ。(まだ試合は、二つある、と自身に言い聞かせつつ)「そうだな」とボク。今夜、千葉ロッテマリンスタジアムでの日本シリーズ第五戦(結果はロッテ10―ドラゴンズ4)。ドラゴンズの負けかたときたら、情けないったら、ありゃしない。

 ケータイ中スポ・ドラゴンズ情報の「評」によれば、中田賢投手が誤算で、ロッテの日本一への王手をかけられた。1点をもらった1回、失策をきっかけに1死満塁から今江に左翼線に2点二塁打で逆転されるなど5連打で4失点。4回にサブローに2ラン、5回には犠飛を挟んだ4連打で3点を奪われた……。ロッテは先発全員の15安打で10得点―といった具合だ。
 こんなことでは、テレビ中継を見ていなくて良かった、と思う半面、ボクが見ていたら勝ったかもしれないのにと自分勝手な思い込みが頭をもたげた。というわけで、わが家でのプロ野球に関するボクとMとの会話は、これ以上は何も交わされなかった。

 今夜は、ある「当てにならない男」を自慢とするA氏を主賓に迎えての楽しい飲み会があり、ドラゴンズ選手がポカスカと打たれボロボロになっていたころ、ボクは名古屋の片隅のとあるチョッといい感じの、そのホテルで、妖怪女たちも交えて杯を交わしていた。
 みなのんべえばかりで、気のいい仲間たちばかりから成る、いわゆる“妖怪変化の会”である。ただ、ひとつ残念だったのは、名古屋女流文壇の旗手でもある、“八千草薫さん”が身の回りに急な不幸が降って沸いたため、出席できなかったことである。妖怪女のなかには、岐阜からわざわざお越しくださった絶世の大魔神、推理小説作家の有望株まで加わってくださった。

 そこで、美貌でかつ見目麗しい、もう一人の妖怪女がこう言った。
 「徳島育ちのあたしは、父が国鉄マンだった関係でヤクルト、夫は東京なので元々巨人派だったの。でも、ね。落合さんが監督になられてからは、ナントナク中日派なのよ。だって好きなんだから」と。
 デ、それがどおしたのと聞くと、話はこうだった。
―もう、ずっと前、落合監督が現役のころでした。瑞穂区内のマージャン店の前で小学生ばかり五、六人が何か知らないが、サイン色紙を手に立っていた。よく聞くと、店内でゲームに興じている選手たちが出てくるのを待っていたためだ、と分かった。しかし中から、選手たちが出てくる気配は一向にない。それでも、あきらめない少年たち。
 やがて少年たちを気遣うように一人の選手が出てきて子どもたち一人ひとりに、やさしく声をかけサインをしてくれた。その人物こそが、落合選手だった、というのだ。たまたま、その場に出くわした夫は、それからというもの、「ファンの子どもたちを、あれほどまでに大切にしてくれる選手は、ほかにいない、と信じて落合さんの行く先々の球団を応援しているのだ」という。
 なんといい話ではないか。

 ともあれ、泣いても笑っても、日本シリーズはあと二試合だ。落合監督、そして中日ナインが地元ナゴヤドームで勝利してくれることを祈りたい。これは、もしかしたら天からの授かりものになるかもしれない。「内弁慶」でセ・リーグ優勝を遂げたドラゴンズらしく、ここは内弁慶の本領を発揮してほしい。かつて、マージャン屋さんの前で立っていた少年たちも、落合中日の完全日本一誕生を心の底から願っているはずだ。「待つ」ことは長い。でも、きっと、勝つ。勝ってくれるよ。

 【笛猫茶番日常の劇】今夜のお父さん、ドラゴンズが負けちゃったのに、どこか嬉しそうで満足そうだったよ。またいい女でも、出来たのかしら。オトンの女好きときたら、天下にその名が轟いているのだから。面食いったら、ありゃしない。そのオトンが夜遅く帰るや、アタイとシロに向かってこう、言った。
 「オイッ、ここ。おまえたちも捨てたもんじゃないぞ。今夜、猫4匹を大切にしている男に出遭(敢えて、この「遭」の字を使用)った。その妖怪男だが。なんだかこの世では何もかもから見離されているみたいだが、猫の気持ちだけは十分、分かりそうなヤツだった。ニンゲンたちは、なあーんも、たいしたこと一つないのに俺は俺は、と傲慢の限りでいるが、この男は違う。自分で『当てにならない自分』が自慢だ、と言うんだからな。ひょっとすると、上品な逃げ芝居かもしれない。でも、な。要するに、おまえたちのことを真剣に思ってくれているヤツがいたんだよ」ということ。

 オトンったら。なんだか、よく分からないよ。その私が私を捨てた男ってサ。「ジュリーに似てるのだってよ」。今夜のオトンは、酔っているのだか、馬鹿さ加減を晒しているのか、よく分からない。でも、こうした日があってもいいじゃん。ほらほら、もう。寝なさいよ。Mが心配してるよ。夜がだんだん更けてゆくー

☆東海地方は、四日朝、この秋一番の冷え込みとなり、岐阜、長野両県境に連なる北アルプスの峰々が真っ白に雪化粧した。
 オバマ米大統領が三日、ホワイトハウスで記者会見し、与党民主党の大敗につき「大統領として私に責任がある」と延べ、敗因は「国民の最大の懸念は経済の成長だったのに、多くの国民が生活が向上していないといら立ちを感じていた」と話した。(中日新聞4日付夕刊から)

平成二十三年十一月三日
 「えらく下手な試合をしてしまい。ここまでもつれてしまったのも、みなベンチの責任でして……」
 こう落合監督が恥じ入った日本シリーズの対ロッテ第4戦。見ているボクたちにとっては、まさに人間劇場そのままに、いいところがあれば悪いところ(失敗)もありで、すごく見応えある試合に映った。監督が日本シリーズを前に「野球って、こんなにすばらしいものかーと言われるような試合をしたい」と話していたが、ボクたちしろうとにとっては、ワンサイドゲームよりも、こうした試合こそ、心に残る試合で「野球って、すばらしい」に当てはまるのである。

 今夜の試合、最年長の山本昌投手が先発で投げ3点を取られはしたものの、和田の適時二塁打などで同点に追いつき、最後は緊迫感のなか、大島が浅尾、高橋、岩瀬の黄金の投手リレーの踏ん張りに応えるように十一回表に2死二塁から3塁打を放ち、4―3で勝ってくれた。なかでも、十回表、浅尾に代わって登板、1死満塁のピンチを救った高橋投手は、この夜の神さま仏さまと言ってよいほどで延々4時間半以上に及ぶ死闘を制する立て役者になった。まさに「竜戦士よ、ありがとう」と言いたい。

 終わってからのインタビューに対する受け答えもさわやかで二十四歳のルーキー・大島が「ここで決めてやろうと思って打ちました」と、高橋投手も「いつも浅尾には助けられてばかりなので、きょうこそは私が助けてやろうと思いました」と語った。また落合監督も「こういう下手な試合をやって勝った、ということは、うまく流れに乗っている、ということじゃないかな」と話し、「これが日本シリーズ。あしたはあしたのゲームプランでいきたい。これから宿舎に帰って考えたい」といかにも彼らしい返答となった。
 一人のファンとして、何よりも嬉しかったのは落合監督が「(これで名古屋に帰れる)早くナゴヤに帰ってゲームをやりたい」と言ってくれたことである。憎まれ者、世にはばかると言われるが、どうしてどうして彼も人の子、このところの顔は、いい面でも悪い面でも、いかにも『名古屋びと』めいてきたのである。もはや、名古屋を代表する「顔」なのだ。

 今宵は、ロッテの西村監督、そして選手も含め、日本シリーズにかかわったすべての人に、私・いがみの権太さんから「ありがとう」と礼を述べておきたい。ドラゴンズ対ロッテの名場面は、まだまだ、これから続く。

 【笛猫茶番日常の劇】いやはや、今夜のドラゴンズ対ロッテ戦は、すごかった。Mまでテレビを食い入るように見て応援してくれてたよ。ロッテが先行していると「今夜は、もうダメ。ロッテだね。ロッテよ」という心の裏側で、出来ればドラゴンズに勝ってほしい、との心理が見え隠れするのだもの。日ごろめったに喋らないお母さんが、ポツリポツリとではあるが、あれほど自分から話すなんて。関心大あり、の証拠だよね。
 オトンはきょうの午前中、五十二年前の十一月七日に亡くなったMのお父さんの墓参りに一緒に行き、それから少しだけ、和田の大おかあさん(九十歳)のところに顔を出したあとは、私用で岐阜に出かけ、プロ野球の日本シリーズが行われているさ中に帰宅、珍しくテレビの前に座ったまま動かなくなりました。

 それでも、ドラゴンズが勝ってくれ、本当によかった。ドラゴンズが完全日本一になるのを願っているのは、別にニンゲンたちばかりでなく、アタイたち猫ちゃんたちをはじめ、ワンちゃんやトリさんたちだって、この地方に住む生きものたちは、み~んな、家族の一員と思って喜んでいるのだから。ニンゲンたちには、このことを忘れないでネ! と訴えたい。
 何も経済への波及効果ばかりでなく、ペット業界への波及効果も確実にあるのだから。調べてみたら!

 オトンは執筆活動もさることながら、相変わらずの読書好きです。仕事の合間をみながらここ数日間で、文学界十一月号掲載の二〇一〇年下半期の同人雑誌優秀作「雨のオクターブ・サンデー」(難波田節子)、特集「新人選考の現場・新人賞『下読み委員』匿名座談会」、「アンネ・フランクと私たち」特別対談・小川洋子×赤染晶子を、それぞれ読み終えたそうです。

☆日本政府は二日、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問を受け、河野雅治駐ロシア大使を一時帰国させることを決めた。河野大使は三日に帰国した。タス通信などによると、ロシアのラブロフ外相は二日、訪問先のオスロで記者会見し、メドベージェフ大統領が一日の国後島に続き、他の北方四島への訪問も計画していることを明らかにし、大統領の北方領土訪問が常態化する恐れが出てきた。「レアアース 中国、来年も輸出削減 報道官・縮小幅は明言せず」(3日付中日新聞朝刊から)
 梅村学園総長・理事長の梅村清弘氏の母、梅村すみ子さんが二日、老衰のため名古屋市内の病院で亡くなった。九十三歳だった。すみ子さんは、ロサンゼルス五輪女子四百メートルリレーで五位に入賞したのをはじめ、プラハで開かれた国際女子競技大会四百メートルリレーでも四位入賞を果たし、草創期の日本女子陸上界をけん引した。

平成二十二年十一月二日
 きょうの日本シリーズー。

 ゲームに先だち、国家「君が代」の斉唱があり、同時に笛の音(ね)の調べが球場一帯に流され、ボクは、なんだか郷愁と哀愁のようなものを感じた。よく聞くと、横笛の調べが流れている。

 ナゴヤドームから千葉マリンスタジアムに場所を移しての第三戦となったが、ドラゴンズはロッテに7―1の完敗だった。これで1勝2敗だ。テレビを見ながら、ボクは何よりもロッテ・渡辺俊介投手のアンダースローからの、投げっぷりが気に入った。ちなみにドラゴンズは山井投手が先発したが三、四回になると相手打線に打ち崩された。

 返す返すも残念だったのは、注目の指名打者に抜擢された新人のブーちゃん、中田亮選手が3打数無安打1三振と渡辺俊に手玉に取られてしまったことである。けれど、ブーちゃん。今度はやってくれそうな気がする。もう一度、チャンスを与えられたら、きっと打ってくれるはずだ。ブーちゃんは、そんなキャラの持ち主である。

 千葉マリンスタジアムといえば気になるのが強風だ。そしてドラゴンズの場合、千葉は交流戦で4勝10敗という鬼門である。さらに過去のドラゴンズ打線対渡辺俊介だが、通算7試合で1勝5敗。第3戦の舞台となる千葉に限れば4連敗だという。

 試合終了後のロッテ監督、選手の言葉が、また憎かった。西村徳文監督がファンに向かって「まだまだファンの皆さまの力が大切です。よろしくお願いします」と述べれば、ヒーローインタビューに立った選手の口からも「寒い中ありがとう。あす、あさっても寒いと思うので、あたたかい恰好をしてきてください」と、ファンに対する監督、選手たちの気配りが、それも、ごく自然に流れ出る水の如くビンビンと伝わってきたのである。このチームは、ファンを大切にしている。

 華やかな日本シリーズの陰で中日ドラゴンズは一日、佐藤充投手、沢井道久内野手、西川明内野手に来季の契約を結ばない戦力外通告をした。まさに選手の方も、悲喜こもごもだ。米大リーグの方はといえば、ジャイアンツ(ナ・リーグ)が3―1でレンジャース(ア・リーグ)に勝って4勝1敗とし、五十六年ぶり六度目のシリーズ制覇を遂げた。
 米大リーグ機構は一日、大リーグ移籍を目指す楽天の岩隈久志投手をポスティングシステム(入札制度)による獲得可能選手として全30球団に公示した。

 【笛猫茶番日常の劇】きょうの中日新聞夕刊「書物の森」今週の本棚コーナーで「ヌレエフ」(文園社・1470円)が載り、お父さん、うれしそうだったよ。さっそく、東京の文化部長にお礼の電話をしていたみたい。この本は、B・メヤースタブレの著作を、新倉真由美さんが翻訳して世に出しました。

 「ルドルフ・ヌレエフ、20世紀最高のダンサー。切れ長の緑の瞳の端正な要望を思い出す人も多いだろう。旧ソ連に生まれ西側で大きく花開いたダンサーとしての波乱の生涯と、自らいみじくも『複雑な動物』と表現したその内面とは。……」
 といった調子で、文章もいい。オトンったら。わがことのように喜んでましたよ。このうえは一冊でも多く、人々に読まれると、いいよね。
 
 新倉さんはオトンとは作家仲間の一人で、日本ペンクラブ会員。「ミセス・バレリーナ 幸せ色のあした」などの著作でも知られておいでなんだってサ。

☆昨年八月、東京都港区で耳かき店従業員(当時二十一歳)と祖母(七十八歳)を殺害したとして殺人罪などに問われ、裁判員裁判で初めて死刑を求刑された元会社員(四十二歳)の被告に対する判決公判が一日行われ、東京地裁は無期懲役を言い渡した。
 愛知県豊田市足助町の景勝地、香嵐渓で一日、「もみじまつり」が始まった。「夜の香嵐渓 黄金食」の見出しも。
 日本のイルカ漁を批判した米映画「ザ・コーヴ」の舞台となった和歌山県太地町で二日、町側と反捕鯨団体のイルカ漁に関する意見交換会が町公民館で開かれた。

平成二十二年十一月一日
 きょうは日本シリーズの試合もなく、チョッとばかり寂しい。
 そこで、きのうの日本シリーズ第二戦。中日が12―1でロッテを破った試合だが、少しだけ補足をさせていただくとー
 この試合、ドラゴンズの一方的な勝利だったが、12得点はチームの日本シリーズ最多得点だった。一方のロッテだが、1974年の第4戦から2005年の4勝を挟んで続いた日本シリーズの連勝が8で止まった。
 また、新聞は「竜タイ勝 シリーズ球団新12点 和田で乗った」「オーダー激変!落合さい配ズバッ!!」(中スポ)「目覚めた竜打」「大島、野本 起用ピタリ」「好機に和田 重圧なし」「ロッテ自滅 マーフィー乱調 小野も崩壊」(中日新聞本紙)といった具合。要点をついた見出しがズラリと並んだ。

 ここで、なかなか味わい深いナと思ったのが、落合監督の次のひと言だ。当たり前のことを話しただけなのに。本当にひとつ勝てれて「良かったな」と思ってしまう。
―1勝がなければ2勝はない。二つ負けなかったのは大きい。

 それから。ボクにとっては中日スポーツ2面の片隅に載っていた「岩田が初勝利 ベネズエラWリーグ」のちいさな記事が何より、嬉しかった。ベネズエラ・ウインターリーグで武者修行中の岩田慎司投手が着実に力をつけてきている。

 【笛猫茶番日常の劇】アタイ、きのうお父さんが教えてくれた、アトウダさん(阿刀田高さん)チのネズミ捕り名人の猫・クルちゃんのことばかりが気になっていました。確かにオトンが言うとおり、アタイの場合、まだネズミとは遭遇したことさえ、ないのです。
 へえ~え、不思議だね、と言われるかも知れません。でも、本当なのです。だから、もしネズミが目の前に現れた場合、アタイはどうするでしょう。本能のままに風よりも早く、アッと言う間につかまえ、オトンに見せびらかしたあと 、ぺろりと食べてしまうかもしれません。

 ここでクルちゃんに反撃します。
 確かにアタイはもし今目の前にネズミが現れたとして、見逃してしまうでしょう。いやいや、後ずさりしてしまうかも知れません。
 でも、アタイはオトンがこの連載日記を書き損じることのないよう、毎日オトンの枕元を訪れ、Mに「うるさいわね」と叱られながらも、起こしているのです。それだけでも評価が得られたなら、引き分けだ、と思うのです。
 こうしたアタイの気持ちを知ってか知らでか。オトンは、きょうも「がんばれよ」と頭を撫でてくれました。大先輩のクルちゃんが、エサにありついている間中、アタイのオトン起こしが続きます。実はアタイ、ニンゲンたちの心を一瞬のうちに奪ってしまう心の奪取名人でもあります。

☆ロシアのメドベージェフ大統領が一日朝、旧ソ連時代を含め、ロシア最高首脳として初めて北方四島の国後(くなしり)島を訪問し、実効支配を誇示した。日本政府は「日ロ関係に重大な支障」を懸念して中止を求めてきたが、受け入れられなかった。
 高校野球で中京商高校の主将を務め、66年には甲子園の春夏連覇を達成した、あの伊熊博一さん(中日新聞社客員)が肺がんのため亡くなった。六十二歳だった。

平成二十二年十月三十一日
 昨夜、ナゴヤドームで開かれた日本シリーズ第1戦。ドラゴンズはロッテに負けた。ボクは、徳島県三好市の秘境・大歩危(おおぼけ)にいた。この日、サンリバー大歩危で行われた富士正晴全国同人雑誌フェスティバルに出ていたためである。日本シリーズの方の結果は5―2。なんたることだ……
 ドラゴンズの先発は、右腕の吉見投手だった。同室の詩誌「宇宙詩人」代表で、野球に滅法詳しいばかりか、いまも草野球の監督を務める鈴木孝さんに言わせれば「ロッテ打線は、変化球にやたらと強いんだから。チェンの方がよかったのでは」と嘆く。

 しばらくすると、今度はボクのポッケのなかの携帯電話が二度、三度と振動音を響かせた。
 何事かとチェックすると、つい先ほどまでの同人誌交流会の席で札幌から訪れた詩人仲間にとっても共通の“尊師”、リュウセイさん(長谷川龍生さん、現大阪文学学校校長、元日本現代詩人会会長)に、ふたりで電話してみようということになった。デ、電話しても出ないので「もう夜も遅いから」とマナー扱いにしておいたところ、今度はリュウセイさんからボクの携帯に留守電が攻め立てるようになった、といった次第。

 鈴木孝さんとも相談してボクの方から再び電話すると、リュウセイさん曰く。
 「イガミさん。今夜のドラゴンズは、どうもよくないね」の弁。ボクは、その元気そうなリュウセイさんの声に(リュウセイさんは最近、日常の生活拠点を地上から脱出して地下に潜って住んでいるはずなのに。どうして)と自問自答しながらも、「リュウセイさん、いつ、そんなに熱心なドラゴンズファンになったの」と聞いてみると、彼はまたまた曰く。「だって、ゴンさん! ボクはリュウセイだから。リュウが生まれるのだからだよ」

 この日のフェスティバルは、三好市の俵徹太郎市長の歓迎の挨拶に続き、第4回富士正晴全国同人雑誌賞大賞に選ばれた札幌文学などに対する授与式があり、日本ペンクラブ会長で小説家・阿刀田高さんの記念文化講演「小説家の頭―アイデアを探せー」があった。さらに記念文化講演のあとには、対話シンポジウムの形を取っての「全国同人雑誌会議」があり、熱心な討議が、同人雑誌の土俵をあらためて見直し、かつ広めることにもなりそうで、「あすの同人雑誌世界のありよう」までうかがわせた。

 今夜のドラゴンズは、12―1でロッテに勝った。ボクは、きのうの惨劇でロッテには鼻をへし折られた気持ちで、きょうこそ勝ってくれて当たり前だと思っていたので、この点のコメントについては控えさせていただく。
 でも、やっぱり嬉しい。
♪勝ってうれしい花いちもんめ、とは、このことか。

 【笛猫茶番日常の劇】お父さん、てばさ。今夜は厳しい顔して帰ってきた。一体何事があったのだろう。そしてアタイの顔を見るがはやいか、手で頭をなで、「負けたら、アカンぞ」だって。
 というわけで、そのわけについて話させていただきます。
 ―実は、きのう阿刀田さんの話を聞き、オトンったら、猫は猫でも、大変なカルチャーショックを受けてしまったみたい。それというのも、阿刀田さんの家には昔、ネズミ捕りの名人猫が居たのだって。話はこう、です。
 この猫ちゃん。名前はクルで、阿刀田さんが今あるのは、クルのおかげも大いにあるんだってよ。そのクルちゃん。阿刀田さんは、まだ少年のころでしたが、いつもは、ボケッとした顔で日向ぼっこをしていても、いったん「ネズミ」と見るや、それはお見事、あっという間に捕らまえたかと思うと、目の前で無残にも十分に見せながらもて遊んだかと思うと、今度は、あれよあれよという間に頭の先から尻尾までをペロリと平らげてしまう、とか。
 何が言いたいかといえば。阿刀田さん曰く
 「いざ、発想がひらめいたら、一気に短編を作ってしまう。どんなことでも、不思議だと思ったら、なぜ、なぜ。なぜなのだーと自らに言い聞かせ、そこから物語を発展させる」

 それからね。徳島での同人誌フェスティバルの展示会場でオトンは思いもかけぬ同人誌に四十年ぶりに再会しました。オトンが松本支局に初めて出され、駆け出し記者として走り始めたのが、昭和四十四年、いまから四十年以上前です。
 そして、オトンがあのころ自分で探して入った同人誌が「屋上(屋上)」で同人とはいえ、事件に追われて作品を残すところまでは、とてもいきませんでした。でも、オトンったら。その当時から、書くことが大好きだったみたい。

 信大医学部の学費値上げ闘争の華やかなころだったといいます。確か、松本深志高校の国語教師、藤岡先生が中心で主宰は北沢喜代治さん、若手では安藤太美子さんら結構な書き手が集まっていました。
 裏町の飲み屋「阿以」が、同人のたまり場で、その女将・愛ちゃん(瀬川愛子さん)も同人で、よく通い、お酒を飲んだ記憶ばかりが残っているそうです。
 安藤太美ちゃん、いまは、どこでどうしているのかな、結婚して幸せに暮らしてくれているに違いない、だってサ。ちなみに太美ちゃんの名前は同人名簿から消え(むろんオトンの名前も)、藤岡先生の名前は健在だったそうです。

☆第4回富士正晴全国同人雑誌賞の大賞に「九州文学」(福岡県)が、特別賞には「札幌文学」(北海道)「文学街」(東京)「飛行船」(徳島)が、富士正晴全国高等学校文芸誌賞の方も、最優秀賞『紫苑』43号(仙台白百合学園高校高等部)、優秀賞に「風花舞」11号(札幌・琴似工業高校文芸部)、「桐光学園文芸部誌」13号(桐光学園文芸部)、「黎」9号(岩手県立盛岡第三高等学校文芸部)が、それぞれ選ばれた。

 愛知県内最後のストリップ劇場だった「ライブシアター銀映」(名古屋市東区)が三十一日夜、閉館した。

平成二十二年十月三十日
 きょうの日本シリーズのドラゴンズ対ロッテの第1戦、どんな戦いになるのか。みものである。
 米大リーグの方は、ワールドシリーズ(7回戦制)第2戦が28日、当地のAT&Tパークで行われ、ジャイアンツ(ナ・リーグ)がレンジャーズ(ア・リーグ)に9―0で快勝し、対戦成績を2戦2勝とした。

 【笛猫茶番日常の劇】オトンは、台風接近と、今夜ナゴヤドームで開かれる日本シリーズ第1戦を気にしながら朝早く、家を出てゆきました。なんでも、徳島県の三好市で「日本の新文芸交流の渦を!」と開かれる富士正晴全国同人雑誌フェスティバルに出席するためなんだそうです。ホントニからだを休める暇もないみたい。

 オトンはかつて新聞社の編集局デスク長のころ名古屋で開かれた第1回全国同人雑誌大会を前に「同人誌その土俵」の記事を二十回連載したばかりか、三年前にはそれまでの文庫本同人誌「熱砂」を、縦書きにこだわったウエブ文学同人誌「熱砂」に衣替えし、有志で再スタートさせた張本人でもあります。
 それだけに同人誌活動に対する思いは熱く、どんなに忙しくても、このフェスティバルだけには出席しなければ、とそんな気持ちで出かけて行ったようです。帰ったら、その模様をレポートしてくれるんだってサ。楽しみにしています。
 もっちろん、オトンの目と耳で感じた日本シリーズ第一戦と二戦の感想も紹介しますから。読者の皆さん! ぜひ、待っててくださいネ。

☆名古屋市西区の江戸末期から続く老舗「凧茂(たこも)本店」では来年のえと「卯(う)」をデザインした和凧作りがピークを迎えている。

平成二十二年十月二十九日
 きょうは各球団とも、ドラフトで1位指名した相手方への挨拶に追われる姿が印象的だった。中でも中日が単独1位指名した左腕で先発完投型の大野雄大投手(仏教大)宅には球団関係者が訪れ「目先のことではなく、十年後を見据えて精進してほしい」といった落合監督からの伝言が大野投手に届けられたという。
 一方で、プロ野球の日本シリーズ、中日対ロッテ戦は、いよいよ明日ナゴヤドームで始まる。ただ台風十四号が近づいており、せっかくの試合の有無が気になるところでもある。でも、台風の動きを見ていると、進路がはずれてきており、なんとかいけそうな気がする。また、テレビのスポーツ番組を見ていると、落合監督曰く
 「選手の動きを見ていてもシーズン中よりは今の方が、動けてる気がする」。また、相手チームの西村監督については「現役時代は同じロッテの西村だったが、今は西村監督です。やっぱり野球って、すばらしいものなのだ、というところをお互いに見せられたなら」の弁。

 これに対してロッテの西村監督も「大先輩の胸を借りるつもりで頑張ります」。面白い争いとなりそうだ。
 
【笛猫茶番日常の劇】お父さんって。アタイが見つからないと「こすも・ここがいない。いない。一体全体あいつは、どこに行ってしまったんだ」と喚き散らす。まるでアタイの存在だけを生きがいとしているみたい。

でも、ネ。M曰く
「能登半島の七尾で家族一緒に暮らした白と黒のぶち猫、“てまり”ちゃんの天井上蒸発事件に比べたら、まだまだだよ、だってサ」

☆アスベスト(石綿)を吸い込み健康被害を受けたとして大手建材メーカー「ニチアス」(東京)の元従業員や、遺族計八人が二十八日、同社に六百六十万円から二千六百
万円、総額一億一千六百万円の損害賠償を求め、岐阜、奈良、札幌地裁に一斉提訴した。

平成二十二年十月二十八日
 こんや遅く帰宅するや、きょうのドラフト会議の結果につきボクが「なんだか中日は地味だね」と話すと、無口なMには珍しく待ってました、とばかりに「いいじゃないの。あれで。あれでいいのよ」と久しぶりに小気味よいMならでは、の“意思つぶて”が飛んできた。
 実を言うと、ボクもMと全く同じことを考えていた。いかにも地味だというか、冴えないというか、地道といおうか。中日らしい選択であった。が、この方がチャラチャラしてなくてよい。これでいいのだ。

 そう、きょう東京都内であったプロ野球ドラフト会議で、各球団とも、それ大石達也(早大、投手)だ、やれ斉藤祐樹(同、投手)だ、沢村拓一(中大、投手)だ……と、時の選手たちに白羽の矢を立て、はしゃぎ騒ぎで指名する中、中日ドラゴンズだけは大野雄大投手(仏教大)を指名、一発で射止めた。いかにも中日らしい派手さが全くない、控えめな指名の仕方には、あまりにもスポットライトといった表現が夢幻に映って、ガックリと肩をうなだれたドラゴンズファンも多かったに違いない。

 ここで気になったのが、本日付中日スポーツ1面の「あくまで 竜1位 中大・沢村」の見出しである。この見出しを読む限り、中日のフロント首脳陣は当然、沢村を指名してもよいはずなのに、結果的にはそのウラをかいた形で沢村投手を指名することはなかったのである。
 ただ見出しには「4、5球団なら…緊急回避!? 」「きょうドラフト!! 入札直前まで情報合戦」ともあり、沢村指名の緊急回避もありうる、としているだけに、1面記事があながち間違いだったとも言い切れない。

 今だから話せるが、かつて地方記者として能登に居たころ、土地の女傑店主から「アノネ! イガミさん。シキョクチョオ~、中日新聞を本気で守るには、時には味方さえも騙さなければいけないのよ」と、よく言われたものだ。  実際、私自身も他社とのすさまじい競争関係のなかで、味方までも騙したことは何度かある。社のトップが女傑店主を訪れた際、あまりに他社が嗅ぎまわって和倉温泉のどこに宿泊しているのか、を聞いてまわるので、社内の記者や事業部員にも聞かれれば「○○じゃないだろうか」と、行き先を知りながらも、とぼけて見せたが、それも今では懐かしい思い出である。どこにでも口軽(くちがる)クンは居るもので、こうした同僚には、ことのほか警戒したものである。

 ちなみに、きょうのドラフト。大石達也が西武、斉藤祐樹が日本ハム、沢村拓一が巨人と決まった。

 きょうの読売新聞運動面は、日本シリーズ(中日×ロッテ)を前に、「元チームメート 両監督激突」「『競争』の落合 『結束』の西村」と要点をうまくまとめていた。
―中日とロッテで2人を知る仁村徹(現楽天2軍監督)は指摘する。「落合さんは選手を乗せるのがうまく、西村さんは周囲を気遣って和ませる」。落合は闘争心をあおって戦闘集団を作り上げ、リーグ制覇からの“完全優勝”を狙う。一方の西村は「和」をスローガンに結束力を高めリーグ3位から初のCS突破で“逆転日本一”を期す。といった具合でなかなか読み応えがあり、本当にこの通りだと思う。

 【笛猫茶番日常の劇】お父さん、今夜は十年来の大事な友だち・Aさんと名古屋で食事をしてきたそうです。Mがせっかく夕飯の用意をして待っていてくれたのに。当てにならないったら、ありゃしない。昔のブンヤ時代と何ら変わらないのだから。

 でも、オトンのいいところは、いつだってどこでどうしてきたのか、をアタイだけには教えてくれることで~す。きょうは、その友だちと、『インナーチャイルド』の話になり、彼女が幼いころの疑似体験をしたい、という話になって、そのうち「今を生きる」ことの大切さを語り合ってきたんだってサ。
 そして。オトンも彼女も、ともにそれぞれの頂点を目指そう、といい意味でのライバルを約束しあってきたそうです。なんでもウエイトレス嬢に言わせれば「凛としておいでになるところに、とてつもなく大きなものを感じさせ、たよりがいのあるお姉さん」そんなお方だそうです。

 オトンったら。話を交わすにつれて小説の新たな素材と発想も出てきたみたい。やはり、持つべきは友ですね。それ以上は、オトンのプライバシーにもかかわるのでアタイだけの胸に収めさせてもらいます。みなさん! 二人のこと、誤解だけはしないでね。Aさんは、ほんの少しだけ老境に入り、あの世には千寿観音さまに囲まれ、自ら描いた竜の襖絵とともに旅立ちたい、と話しておいでだったんだってサ。

 誰も知らないがある隠された事実を教えましょうか。
 それは、オトンが過去、地方の記者生活で培ってきた人脈、権太ワールドの無限の広さで~す。オトンの人脈といったら、それこそ男女の別なく全国津々浦々まで、すごいんだから。
 このことだけは、アタイも自信をもって言えます。オトンさえその気になれば、アッという間に大勢の権太ファンがわれも吾も、と集まってきますよ。それも、この世をひたむきに歩いている皆さんばかりです。

☆ミャンマーのニャン・ウィン外相が二十七日夜、ハノイで開かれた東南アジア諸国連合外相の夕食会で、自宅軟禁中の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさん(六十五歳)が「十一月に解放される」と発言。

平成二十二年十月二十七日
 早大ОBでドラゴンズで活躍した谷沢健一氏が来季、東京六大学野球で26年連続最下位の東京大学のコーチに就任する。
 かと思えば、この日楽天監督に就任した星野仙一氏が来月二十七日に行われる「明治大学 野球部創部一〇〇周年記念行事」に参加し、その席でかつての愛弟子川上憲伸投手(元中日で現ブレーブス投手)獲得に動く可能性があるとか、「プロ野球横浜ベイスターズの買収を目指していた住生活グループがTBSホールディングスとの間で進めていた交渉が、本拠地の場所などで合意に至らず、買収を断念した」とか、はてまた横浜の村田修一内野手(二十九歳)が今季取得した国内フリーエージェント(FA)権を行使する可能性を示唆したー等など。
 新聞各紙の野球を巡っての話題は、相変わらずかまびすしい。

 こんな中、ボクの目に特についたのが、中日スポーツのコラム欄「セブンデイズ」の「清田と大島」(高田実彦)である。筆者は「中日対ロッテの日本シリーズは、直前に行われる有望選手いっぱいのドラフトの話題の陰に隠れてしまいそうであるが、このシリーズには、去年の『指名下位』の1年生が出てくる」としてロッテの清田育宏(去年の四位指名、NTT東日本出の右投右打の外野手。公式戦には64試合しか出ていないが、CSでは2番を打つことが多くファイナルでも本塁打を2本放った)と中日の大島洋平(去年の指名五位、日本生命出の左投左打の外野手、公式戦では104試合に出場、ファイナルでは代打のチャンスに内野安打を放った)をあげて「去年の一番人気・雄星クンは、いまどうしているだろう」と結んでいる。

 そのドラフト会議が、いよいよ明日開かれる。ドラゴンズには、清田クンや大島クンのような隠れた逸材を掘り起こしてもらいたいものである。

 【笛猫茶番日常の劇】オトンはけさ早くから、Mとごみ出しにいったが「みんな寒さに震えていた」そうです。つい先日まで猛暑、猛暑と言っていたのにね。
 やっぱり、自然には勝てないよね。秋が消え、冬が一足飛びにやってきたみたい。
 そのわけは、といえば。アタイも妹のシロも、この二、三日というものカーペットの上とか掘り炬燵のなかとか、そんなところばっかりに居るからです。いまは、オトンの足元で高いびきで~す。猫だってMと同じ、どんなにかわいくたって。イビキはかきますよ。だって、これでも生きている証拠なの。

☆菅首相が二十七日、名古屋で開かれている生物多様性条約第十回締約国会議でホスト国としてあいさつし、今後二〇二〇年までに世界が連帯して取り組む指針「生物多様性の十年」を提唱、そのための貢献策として「いのちの共生イニシアチブ」を創設し、ことしから三年間で二十億ドル(千六百億円)の途上国支援をすると表明した。
二十七日朝、岐阜県高山市の北アルプス・乗鞍岳(三〇二六メートル)などで初冠雪が観測され、うっすら雪化粧した山並みが広がった。

平成二十二年十月二十六日
 きょうの野球のニュースときたら、なんと言っても世界の王さん、王貞治さんがことしの文化功労者に決まったことだ。王さんは、満七十歳。元プロ野球選手・監督としての栄誉が称えられたもので、受章理由には「数々のタイトルを獲得し、通算本塁打868本の世界記録を樹立したこと」があげられている。一般大衆と共に歩いてきた王さん、“一本足打法”の野球文化が認められたわけで、プロ野球界にとっては、喜ばしい限りだ。

 ついでながら、同じ文化功労者には、「ゲゲゲの鬼太郎」など妖怪漫画や歴史漫画を多数発表してきた漫画家の水木しげるさん(八十八歳、鳥取出身)、常に新たな役柄に挑戦し、数々の優れた演技を披露してきた女優の吉永小百合さん(本名岡田小百合、六十五歳)も名を連らねている。吉永さんといえば、ボクはかつてずっとサユリストだった。

 きっかけは、ボクが、まだ新聞記者の駆け出しで松本支局に在任していたころだった。当時、松本司法記者クラブに所属し、いわゆるサツ回りをしていた。
 吉永小百合さんが松本労音の招きで市内でのコンサートに来たときのことである。こんなエピソードがある。
 あのころ、記者クラブの幹事をしていたこともありボクは彼女を松本警察署内にある記者クラブにお呼びし、記者会見をひらいた。今から思えば、各社とも、小百合ちゃんがどんな女性なのか、知りたい一心だったような気がする。そして。あのときの思い出といえば、小百合ちゃんから逆に質問され、たじたじになったことがある。
 「サツ回りの新聞記者さんって、どんなことをしておいでですか」「日々の生活は、どんなですか。夜、昼ないんでしょ」といったもので、大半を幹事記者としてボクが説明させていただいた気がする。

 数日後、「労音のためなら、と吉永小百合さん」「松本でコンサート開かれる」とボクの書いた記事だけが大々的に載ったことがある。以降、彼女からは、ご主人と結婚されるまでの間、「サユリスト」という名の機関紙が発行のつど送られてきた。
 話はとんだ方向に飛んでしまったが、王さんにしろ、小百合さんにせよ、大衆とともに歩かれてきた点からも文化功労者には当然、値すると思う。

 大衆と共に歩んできた、と言おうか。ファンを大切にし続けてきた中日の前2軍監督川相昌弘さん(四十六歳)が巨人軍の2軍監督に就任することになり、巨人が二十五日発表した。現役時代に533犠打の世界記録をもつ川相監督の古巣復帰だけに、中日スポーツでも五段見出しで大きく報道された。敵ながらアッパレの人事である。

 【笛猫茶番日常の劇】つい先日まで猛暑、猛暑と言っていたのに、ここ二、三日の寒さは尋常でなく、秋を飛び越え冬到来の感さえします。アタイは、急な季節の変化にけさほど体調悪化もあり、二度三度……とゲロをはいてしまいました。それでも、この笛猫野球日記を中絶するわけにもいかず、遅がけでしたが、なんとか深夜未明にオトンを起こして、こうして日記をなんとか書いている次第です。
 きょうは北海道の札幌や旭川、青森などで初雪が降り、近畿地区でも木枯らし第一号が吹いたそうです。

 それから。昼間、あの都々逸博士の中道風迅洞さんからオトンに「四十年目の約束―きわめて私的な中国戦記」(発行所・ブックワークス響)の著作が送られてきました。中道さんといえば、NHKラジオの「文芸選評」選者(折り込みどどいつ)を三十年の長きにわたり続けられたことでも知られます。現在、御年は九十一歳、若いころはNHKの名古屋放送局長でもありました。オトンとは、名古屋は熱田生まれ、東京育ちの都々逸のよしみで知り合って以降、ずっと音信を交わす間柄でもあります。

☆政府は二十六日、二〇一〇年度の文化勲章をノーベル化学賞が決まった有機合成化学の鈴木章(八十歳)と根岸英一(七十五歳)、ほかに原子核物理学の有馬朗人(八十歳)建築家の安藤忠雄(六十九歳)演出家の蜷川幸雄(七十五歳)服飾デザイナーの三宅一生(七十二歳)、日本中世史の脇田晴子(七十六歳)の七氏に贈ることを決めた。(26日付中日新聞夕刊から)、「酷暑のち厳冬? ラニーニャ現象持続」「早くも冬型気圧配置」(同毎日夕刊1面見出し)

平成二十二年十月二十五日
 月曜日―
 きょうもプロ野球の試合がなく、なんとなく気合が入らない。(ただ職場=ドラゴンズ公式ファンクラブ事務局=の方は、三十日から始まる日本シリーズを前に、スタッフのだれもが活気に満ちあふれている)。

 そこで、きょうは、ドラゴンズが日本シリーズ進出を決めた先日のCSファイナルステージ対巨人戦で勝利をおさめ、感激の落合監督胴上げの後に起きた思いがけない珍事について補足させていただこう。

 このハプニング、二十四日付中日スポーツ5面でも詳しく紹介されている。事件が“発生”したのは、落合監督の胴上げ後のことだった。
 胴上げを終えた選手たちが観客席に向かって歩いているさなか、急に、この日サヨナラのホームを踏んだ「ブーちゃん」、すなわち中田亮選手が、喜びのあまりグラウンドで一人だけ、それこそ浮いたように大きく飛び跳ねた、と思ったらズッコケてグラウンドに寝転んでしまったというのだ。

 いったい何が。とうとう東海地震が起きたのか。
 と思いきや。今度は歩いていた全選手が、ブーちゃんの名演に引きずられて? スローモーションビデオの如くずっこけ、戦場だったグラウンドに多くのドラ戦士たち(言っておくが“死体”ではない、みな“生体”である)が横たわったというのだ。これには、大観衆も大喜び。日ごろまじめしか取り得のない、こつこつ人間ばかりのドラゴンズ選手たちだけに、名演にはみな拍手喝采だったというのだ。

 ボクはそのころ、九十歳の母に付き添いMと一緒に、ひと足早くドームを出てタクシー車中でラジオを聴きながら「和田のサヨナラ打」の余韻に浸っていた。なんという運の悪さなのだろう。世紀のパフォーマンスを見る、というわけには行かなかった(でも、幸い息子たちは見ていてくれた)。なんでも、この見事なパフォーマンス、陰の演出家は荒木選手で、大リーグ、ブルワーズのプリンス・フィルダーがやっているのを見た荒木選手からのリクエストだったそうだ。
 記事は、1中田“ブーちゃん”がうれしさのあまりジャンプすると…2着地したら地面が揺れてみんなずっこけて…3そろってゴロンと倒れちゃいました、の説明入り3コマ写真に「ブーちゃん飛んだら…みんなこけた」の微笑ましい見出しつきで、歴史的な紙面でした。

 二十四日付中日スポーツでは、同じ5面で川相前中日2軍監督が巨人軍に招へいされている、との話も載っていました。きのうの野球日記で恥ずかしながら、ボクはふたつの特オチをしてしまったことになります。
 「おまえは一体全体何を見ていたんだ。目を開いていていながら何も見ていなかったではないか、バカヤロウ。なんのために新聞記者をしてんだ。ウチの地方記者は、そこらへんのわけの分からん記者ポッポたちとは違うんだ。足と目と耳で確かめてこい。もう一度現場に行って来い!」。

 昔、支局員を何度も何度も叱り、どなりつけていた、おまえはどこにいってしまったのだ。現場百回の精神を忘れてしまったのか。そんなことでは、死に体も同然だ。……
今夜は、自身を攻める言葉ばかりが脳天を突いてくるのだ。
 あ~あ。これも、体力の限界なのか。でも、こうした時は、すなおに後追いしなければ歴史の重要なひとコマを書き損じることになってしまう。そう自身に言い聞かせて、きょうは特オチバージョンということで。

 【笛猫茶番日常の劇】というわけで、きょうのお父さん、特ダネどころか、特オチを後追いで書くことになり、すっかりしょげ返って元気がなくなってしまい、見ていてもかわいそうでした。アタイまで責任感を感じてしまいました。

 それにしても、このところは、秋が日に日に深まってきており、風も強くどこからか、冬の足音さえ聞こえてきます。アタイもオトンの座る掘りコタツでじっとしていることが多くなりました。みなさん、風邪など引かないようにしてくださいね、とはMからの伝言です。

☆名古屋の芸者でつくる「名妓連組合」の事務所とけいこ場が、これまでの東新町からテレビ塔近くのビルに移転、二十二日「名古屋の花柳界の灯を絶やしてはいかん」と新しい稽古場で名古屋甚句の踊りを披露して再出発の第一歩を踏み出した。
 鹿児島県・奄美豪雨で臨時休校していたすべての学校が再開。

平成二十二年十月二十四日
 日曜日のお休み。なんだか、きょうは久しぶりにホッとした一日だ。
 きのうドラゴンズが巨人に勝ったからよいものの、もし負けていたなら、CSシリーズのファイナルステージはまだ続き、いまごろ(午後七時過ぎ)は、勝つか負けるかでピリピリしていたに違いない。

 それが、きょうは心も周りもなんと静かなことか。
 というわけで、ボクは書斎でこうしてパソコンの前に座り、新聞各紙を傍らに野球日記を書いている。こんな時は、簡潔な見出しと分かりやすい写真がいい。
 ちなみに中日新聞本紙では「オレ竜劇的」「完全制覇へ ぶれぬ指揮」「和田決めた 4番の仕事サヨナラ打」「『最後に打ててよかった』 矢の一撃でMVP」が、中日スポーツは「落合監督誓う 完全Vでもう一度舞う!!」「ファンと一緒に大合唱 やりましたぁ~」といった見出しが、写真では本紙の「クライマックスシリーズのチャンピオンプレートを掲げる落合監督」の表情が、なんとも素朴でいい。またワードクリックの「もう一回できればいいな。その時は本当の日本一だ。56年ぶりのな 落合監督」も印象深い発言といえよう。

 そんな記事の中で、運動面の「脱衣室」では、元中日エースとして活躍したプロ野球評論家・今中慎二さんの著書「中日ドラゴンズ論」(KKベストセラーズ)の26日発売の話題が紹介されている。どんな本か、百聞は一見にしかずだ。

 【笛猫茶番日常の劇】お父さんとM、きょうは久しぶりに自宅で、のんびりできたみたい。
 そんな中、夕方にはカトマンズに住むドラゴンズファンの女性から「ドラゴンズ 頑張りましたね! 今朝ネットニュースで知りました。日本シリーズも応援しています。…」のうれしいメールが入り、オトンったら。感激したみたい。
 メールによれば、「3日前位から、カトマンズからもヒマラヤの一部、ガネシュやランタンなどの雪山が見られるようになりました。これからネパールは本格的な旅行シーズン到来です。『熱砂』はインターネットでお気に入り登録してありますからネットが繋がる限り読めます……」なんだってサ。
 世界がこんなに近くて、速く、短くなるだなんて、驚きだよね。アタイは妹・シロを見つめ、そう言うと彼女もウンウン、そうだよねとうなづきました。

☆死者68人を出した新潟県中越地震から丸六年を迎えた二十三日、各被災地では発生時刻の午後五時五十六分に合わせ、遺族や住民らが犠牲者の冥福を祈って黙とうを捧げた。
 名古屋市の日本ガイシアリーナであったフィギュアスケートのグランプリシリーズ第一戦NHK杯女子フリーで、村上佳菜子(十五歳)=愛知・中京大中京高1年=が最終成績で3位となり、表彰台に上がった。浅田真央は8位だった。

平成二十二年十月二十三日
 きょうハ、「な・ご・やじゅう」が笑っている。
 喜んでいる。
 いや、岐阜が、三重が、浜松が、滋賀、長野、北陸……、 東京も、だ。
 むろん、北海道、秋田、沖縄、関西、九州、世界の至る ところ、でも。
 ドラゴンズファンの誰もが笑っている。
 「人間たちの喜び」とは、こういうことを言うのか。
 もしかしたら。
 ことし亡くなった多くの人々も、
 笑顔で「みんな、よくやって、ここまできたね」と。
 そんなエールを送ってくれているのかも知れない。

 今宵、ナゴヤドームであったセ・リーグのクライマックス・ファイナルステージの第4戦。
 四回裏、ことしの流行語大賞間違いなしの「やりましたぁ~」の小田の二塁打で2点を先制、八回にも押し出しの四球1点を加点しながら、八、九回表の土壇場で浅尾が適時二塁打を打たれるなど巨人に3―3にまで追いつかれた九回裏。ドラゴンズは2四球で1死一、二塁とし、岐阜出身のベンちゃん、すなわち和田選手が左翼手の頭上を越えるサヨナラ打を放ってドラマチックに試合を決めた。巨人もよく最期まで粘った。
 総立ちの観客。テープが舞い、旗がふられる。拍手の雨。「やりましたぁ~」の声が空に向かって何度も何度も響き渡る。「やりましたぁ~」。「やりましたぁ~」。ドーム全体が生きものように、歓喜のるつぼに酔い、二度三度、三度四度と、大きく揺れている。

 「待っていました」とばかり、選手たちが落合監督を胴上げする。一度、二度、三度…。すなおに空に舞う。
 胴上げは(当初、CS優勝の段階ではやらないーと球団では言っていたはずだけれど)劇的サヨナラ勝ちだからこそ、の自然の流れなのだろう。これでいいと思う。
 みな、いい顔だ。
 インタビューでは「ことしは始まる前から大変な年になると思っていた。ナゴヤの皆さんの声援のおかげで、(日本シリーズ進出を)決めることができた。ぜひとも、この地でセ・リーグの名に恥じないよう、(完全)日本一のフラッグを勝ち取りたい」と語った、いつもとは違って殊勝な落合さん。信子夫人のアドバイスが、胸をよぎる。弓の弦の如くに怖いが、とっても勘所をつかんだ、いい奥さんだよね。

 さっそくヤンチャ男の権化でもある、「いがみの権太さま」あてにメールが深夜から未明にかけ、数通届いた。中でも東京のドラゴンズファンから届いた珠玉の一匹(ボクの大好きな能登では、こんな時“いっぴき”と表現する)を紹介させていただくとー
「こんばんは。夜中にすみません。宿敵の読売を押し返した形でしょうか。嬉しいです。きょうは、胴上げはないものと思ったので、思わぬ形で? 僕の連続胴上げ立ち会い記録は7で止まってしまいました。でも、今年らしい勝ち方でした。いつも聴いているアナウンサーから落合監督の胴上げシーンを伝える言葉が出てきて最高でした。ゲストの元楽天監督、野村克也さんも『落合監督は何かを持っている男』と語っていました。すばらしいシーズンでしたが、あと一山ですね。必ずや日本シリーズにも優勝してくれると信じています」

 なんと、温かく晴れがましい言霊なのか。
 三十日からは、いよいよ「完全日本一」をかけ、パ・リーグ代表・ロッテとの戦いが、このナゴヤドームで始まる。まだまだ、これからだ。

 【笛猫茶番日常の劇】きょうは、ドラマ、ドラマの楽しい一日でした。まず、昼間わが家を訪れたアタイのお母さん・Mのお兄さんから褒められたのです。アタイがジュウタンに座り、みんなの話に黙って聴き入っていると、お兄さん曰く「この猫はすごい。ビクともしない、王者の風情がある。こんな気品漂う猫は見たことがない」のだって。真剣な顔して話していらしたから、おべっかでもなさそうでした。

 ほめられたか、と思っていたら。オトンたちは、みんなで出掛けてしまい、夜遅く帰ってきました。なんでもクライマックスシリーズの第4戦を見にナゴヤドームに行ってきたそうです。その模様の一端を、聞きかじりの中から、紹介させていただきます。

―この夜、オトンはことし大病を患い、切開手術という荒ら業で奇跡とも言える、この世への「生還」を果たしたMの退院祝い、そしてオトンの母親である大おかあさんがこの六月一日で満九十歳になった両方のお祝いを兼ね、家族に召集をかけナゴヤドームのスゥイートルームで「野球を見て楽しむ会」を実現させたのです。ちいさな幸せとは、こういうことを言うのでしょうか。

 はじめは、九十の老体には、とても無理だよ、と腰が引けていた大おかあさんも、孫たちと一緒なら、とついついその気になり名古屋まで名鉄電車で出て、ここからタクシーでドームへ。Mと長男の妻に手を引かれ、ゆっくり、ゆっくりと歩いて室内に入りましたが、その雰囲気には圧倒された様子。「たかちゃん(オトンのことらしい)、こんなにいい場所だったなんて。おかあちゃん、思い切って来てみてよかった」と感激の面持ちだったそうです。
 中日が点を入れたり、先発投手のマサさん(山本昌)が巨人打者を三振で射止めたりするたびごとに歓声が沸きあがるドームの雰囲気には、珍しく興奮した様子で「まあ、二度とこんなイイモンは見れえへん。いいものを見せてちょうた。これもチュウニチのおかげがあればこそ、だぎゃあ。みんな感謝せな、アカンよ。おかあちゃん、久しぶりに名鉄電車に乗り、思い切っておまえたちについてきてよかった」のだって。

 この夜は部屋の券に少し余裕があったこともあり、オトンとは昔からの友人でもあるドラキチ仲間で元劇団主宰かつ詩人でもあるОさんを招待。Оさんは、お兄さんと一緒に現れたが、なんと二人は十二歳違いの同じ辰年生まれと分かった。辰年生まれといえば、Mも同じ辰年。そんなこともあり、座はすっかりなごやかに。

 辰年兄弟のお兄さんの方は七人兄弟の三男で父が早く亡くなり、跡を取って、つい最近まで町工場を経営、最初は村のかじやも同然だった工場をこつこつと巧みの技で大きく育て七十を境に仕事をやめ、今は中部国際空港近くの海などで釣り三昧の毎日。草野球にも古くから、いそしんできたというだけあって、アゴヒゲも加えチョッとした達人の風情だったそうです。

 この達人が曰くー
 「最近のプロ野球を見ていると、バットが折れるケースがやたら、多い。バットの腹の、膨らみのあるところか、バットの木目に刺激を与えない、真の勘所で打てば打力もつき、折れることもないはずだ。金属バットに慣れてしまったこともあるだろうが、豊山のあの空港乗馬クラブの近くにあったバッティングセンターで毎日、父親とバッティングをしていたイチローさんを見てごらんなさい。バットが折れただ、なんて話あまり聞かない。あの子はいつも“木の感覚”で打っていた。だから折れない。これも野球文化の一つだ、と思う」と。

 とまあ、こんなわけでして。家族にとって貴重なひとときは、光りとまではいかなくとも、矢の如く過ぎ去り、最後はドラゴンズの勝利に沸く、そんな一日でした、とサ。

☆中日ドラゴンズが巨人を下し、三年ぶりの日本シリーズ進出を決めた。生物多様性条約第十回締約国会議(CОP10)に合わせた「子ども環境会議」(子どもCОP10)が二十三日、愛知県美浜町で始まった。世界三十二カ国から小中学生二百二人が参加。ゆるキャラブームの火付け役、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」はじめ、各地のご当地キャラクターが集まる「ゆるキャラまつりin彦根~キグるミさみっと2010」が二十三日、始まった。二十四日まで。
 「ドングリなく クマ人里へ 14府県で凶作 目撃2・7倍に」「『校長暗殺犯は誰』出題 東海市の県立高・教員名を選択肢に」(二十三日付、中日夕刊より)
 体操の世界選手権個人総合決勝が二十二日、オランダ・ロッテルダムで行われ、日本の内村航平(日体大)が、二年連続二回目の優勝を果たした。

平成二十二年十月二十二日
 今夜のセ・リーグCSシリーズ。ナゴヤドームでのファイナルステージ第三戦は、巨人が先発・朝井、中日が先発・山井で始まった。
 五、六回に山井から各1点を奪った巨人がそのままリードし、もうダメかなーとあきらめかかっていたところ、ドラゴンズは八回裏、大島の内野安打、野本の本塁打と若手の活躍が続いて2点を取り返した。デ、このままいけば引き分けでドラゴンズの日本シリーズ進出がとうとう決定する、と思っていたが、そうはいかなかった。
 最終回の表。守護神・岩瀬の投球が、巨人・阿部のひと振りで3―2と引っくり返され、日本シリーズへの進出に「待った!」がかかったのである。でも、進出に王手がかかっていることに変わりはない。一ファンとして、ドラゴンズには、きょうこそ、日本シリーズへの進出を決めてほしく願う。
 ドラゴンズファンならば、思いは皆同じだ。
 
 ここで緊急ニュース。ボクの携帯に、つい先ほどドラ☆パ・メルマガが入りました。「ー無料待受プレゼントー ボク、ガブリ。公式ファンクラブのマスコットさ。ドラの強さの陰の主役だよ。巨人もロッテも鼻息で吹き飛ばしてやる。力は強いけど、本当はさびしがり。応援仲間がほしくてたまらないんだ。ファンクラブの会員募集を今月末までやっているから、絶対入ってね。ドームで待ってるよ。」
 だってサ。みなさん、ぜひ見て、(会員に)入ってよネ。

 【笛猫茶番日常の劇】お父さんに、よく聞かされます。
 ドラゴンズが「今」あるのは、公式ファンクラブのマスコットである『ガブリ』の存在はむろんのこと、選手たちのたゆまぬ自分との戦い・すなわち向上心と、球団スタッフ全員の骨身を惜しまない努力、そして名伯楽・落合監督の当意即妙な天性の采配と選手への思い、チームワークの良さのたまものだが、こうした“力”の一方で多くのファンの方々の存在も忘れられないのだ、と。

 たとえばナゴヤ球場一角で2軍の選手たちを、いつも笑顔で優しく見守ってくれているファンクラブのお母さん、落合信者を自認し時には仕事を犠牲にしながらも、ずっと応援を続けてくださっている東京のご夫妻、同じく東京在住でドラゴンズに関することなら何でも知っているドラ博士・X氏、これまた仕事の合間を縫っては夫妻でドラを愛し続ける三重県に住む病院職員夫妻や、北陸のドラ党たち、全国各地に点在するドラゴンズファンの居酒屋大将と、それぞれのドラ客人たち、中日新聞の各販売店の後押し……

 そればかりではありません。
 2006年の中日ドラゴンズ公式ファンクラブ創立の年からずっと家族そろって継続会員としてドラゴンズを愛してやまない数え切れないほどの人々がいるかと思えば、京都ではドラゴンズの躍進を日々生きがいとして生きる京野菜の栽培農家、浪速では毎朝担任のクラスでドラゴンズの話しを子どもたちにして聞かせ、小学校には青い帽子に公式ファンクラブのユニホーム姿で自転車で通っている女性教師がいます。
 名古屋ではドラゴンズの存在を愛してやまない名古屋鉄道の運転士と車掌さんから成る「パノラマ名竜会」のめんめん、松坂屋など各百貨店従業員たちの心からの応援も忘れられません。

 また、北海道には帯広ドラキチ会、飛騨の里にはドラゴンズを愛する会、中日の春季キャンプで知られる沖縄でも北谷(ちゃたん)協力会、読谷(よみたん)友の会、FM読谷スタッフのめんめん……と、ファンの輪は無限大に広がってきました。
 なかでも帯広ドラキチ会メンバーには、全国の球場を転戦し1シーズンの半分以上を観戦に費やす豪の男性まで。ほかにも、横笛や三味線片手にいつもドラゴンズには熱い目を注ぎ続けるご婦人連、東京からエールを送り続ける日本ペンクラブの作家仲間たち、中部ペンクラブのドラキチ詩人、果てはマスドラ会メンバー等など‥

 あっ、そうそう。今夜はオトンの友だちでカトマンズに住む、ドラゴンズファン(公式ファンクラブ継続会員)の日本人女性からも応援メッセージが入ったんだってよ。
 こんなにも多くの人たちから応援されてるドラゴンズの選手たちって。とっても幸せだよね。「日本シリーズに出て、ぜひ日本一になってほしいな。」

 オトンはあらためてアタイに向かってこう、言い聞かせました。話は、こうです。
 「これらのファンは皆、純粋な方たちばかりなんだから。どこかの誰かサンのように表面できれいごとを言う一方で“上”にすこぶる弱く、取引業者に対しては権力をふりかざしてやまない、そんな教養のカケラもないチャカチャカ人間、チィーチィーパッパ野郎(この世には、こうした下品極まる見かけ倒しの男が、ごくたまにいる。オトンは、そうした社会の屑を決して許しはしない)などとは違う。なんの計算もない。純粋無垢な。こうしたファンの皆さん、一人ひとりこそが、真の宝なのだから。偏見で見ることなく、みな平等に大切にしなければ、ね」と。

 アタイは「ハイ」とうなづきました。

☆大阪地検特捜部の押収資料改ざん隠ぺい事件で、最高検は二十一日、犯人隠匿罪で前特捜部長と副部長を大阪地裁に起訴。法務省は、ふたりを懲戒免職処分とし、当時の上司ら六人の処分を発表した。これに伴い、最高検の大林宏検事総長は異例の記者会見を開き「前代未聞の事態に至ったことを国民に深くおわびする」と陳謝。
 名地検特捜部は二十一日、中京大資格センターがテキスト代として学生から受け取った約二億四千万円を巡る着服問題で、センター元部長の畑和孝容疑者(五十二歳)=五月に依願退職=を業務上横領容疑で逮捕、名古屋市瑞穂区の自宅マンションを家宅捜索、その後波紋が広がっている。「中京大 ずさん会計横領助長か」「元部長『当初は大学側に入金』「畑容疑者 親身な指導 学生に評判 信頼壊し『つらい』」(二十二日付、中日夕刊から)

平成二十二年十月二十一日
 このところは、時間がほしくてならない。何かと綱渡りの日々である。
 今夜は、日本ペンクラブの先輩で作家仲間、元べ兵連の旗手でもあったKさんはじめ、大学学長で元NHKの看板アナNさん、美術館学芸部長Yさん、大学教授で工学博士のTさん、某マスコミОBのОさん、女性ピアニストSさんら気のあった者同士でクライマックス・ファイナルステージを見て飲んで楽しむ会が、ナゴヤドーム内のプライム1の312号室(スウィートルーム)で行われた。言い出しっぺは、Kさんとボク。幹事役として某民間人Hさんに白羽の矢を立ててのわいわいガヤガヤ、なかなかに、楽しくなごやかな集まりとなった。

 試合の方は、巨人内海、中日吉見投手の先発で始まり投手戦となったが、二回裏に2死一、二塁から吉見投手自らが先制適時打で1点を入れ、三回裏にも連打と死球で無死満塁となったなか、ブランコの犠打で2点目。4回以降は、中日打線も1安打に抑えられたが、吉見が八回途中まで無失点のまま踏ん張り、高橋聡文投手に継投、高橋も小笠原を遊ゴロ、ラミレスを三振に討ち取って、ピシャリ抑えた。

 九回の表。午後八時四十五分過ぎ。1死になったところで高橋がマウンドを下がり、代わって抑えのクローザー岩瀬ではなく、「ピッチャー、アサオ。ピッチャー、アサオ。背番号41」とセットアッパーの浅尾投手が場内放送されると、観客席からは溜め息を伴った大歓声が湧き上がりドーム全体が大きく揺らいだ。
 アサオの心臓音が、かなたに離れたスウィートルームにまで届いてくる。
 息を止め、全観客が見守るなか、アサオは緊張のなか、1球1球を大切に投げ高橋由伸、長野久義と残り打者を締めた。かつては常滑北高校生、甲子園出場など夢の夢だった一人の球児が、このようにプロ野球界を背負う日が来るだなんて、一体誰が思ったことか。その浅尾投手らが、いよいよ日本シリーズ出場への王手をかけたのであるー

 午後八時五十五分過ぎ。ゲームセット。
 いつのまに歩み寄ったのか。正面のスクリーン(大画面)にアサオの肩を抱く谷繁捕手の笑顔が大きく映し出された。「九回に見どころをつくってくれた」。やはり、ことしのドラゴンズは強い。
 投手陣がよい。チームに勢いがある。記者への対応が悪い、何様になってんだ。なんだかんだと“ヒヨッコ記者たち”がわめこうが、やはり落合監督は野球の申し子だ。よく研究し努力もし、これぞ、という時を見逃すことなく、徹底して勝負に出てくる。記者たちには、それを超す努力が望まれる。
 落合監督とて、マスコミ各社から批判の雨に曝され(当たっている場合もある)、それなりに記者に対する応対は少しずつよくなってきているのでは。憎いヤツほど生き残るとは、このことか。

 スウィートルームでは、ただ一人、巨人ファンのHさんが、へェー、とてもかなわないと頭を抱え込んでしまい、あげくに「オチアイヒロミツを、許せん。オチアイは絶対に経営者にはなれない」「なんで勝ってしまうのだ。もったいない」といった表情。
 美人ピアニストのSさんも「ナゴヤドームに、こんなにステキな場所があっただなんて。知らなかった。また来た~いです。きて良かった。中日を、ますます好きになりそうです」と興奮した様子。
―というわけで、今夜のプロ野球を楽しむ会は無事終わった。(と思いきや、興奮したあまり、帰りにタクシー車内に携帯電話を忘れられたお方もいたようで、とんだオチまでつきました)。

 【笛猫茶番日常の劇】お父さん、このところはお仕事に、新作小説の執筆に、と大車輪です。それどころか、深夜から未明にかけては、この野球・笛猫日記も書かなければいけないし……。もう、大変なの。睡眠時間もほとんどないのでは。仮眠してたかと思うと、起きて書いたり、読んだりの繰り返しで~す。
 超人的とは、こういうことを言うのでしょうか。落合監督には、とてもとても勝てっこないですが……
 でも、昔のサンズイ(汚職)取材や災害取材の厳しさに比べたら、どうってことないそうです。
 でもね、アタイが毎日、午前三時か四時になるとは、ニャオ、ニャオ、ニャオ……と、Mにはそんなに鳴かないで、と叱られながらも、オトンをこうして起こしてあげるからこそ、日記文学が続いていることも読者の皆さまには知ってほしい、な。

 これでも、多いときは一日に五百~七、八百件ものアクセスがあるのだから。かといって、オトンには収益が入るわけでもなく、あくまでボランティア。そしてキザかもしれないが、オトンたちのウエブ文学同人誌「熱砂」は世に先駆けての文学活動で、同人すべてが自らへの努力と鍛錬でいいものを、この世に残していけたら、それだけでいいそうです。
 デモね、これはある種の記録文学でもあるわけなのだから。ニンゲンたちが、こうして生きていた時代もあったということが、歴史の証言者として伝えられれば、それなりに価値も十分あるような気がします。

 本物の文学は、名も無く、貧しく、清く、美しく。そう、オトンたちのような名もなき文人たちがいてこそ、成り立つのだから。文学に一番たいせつなもの。それは書き続けることと、やせがまん。そして何より、批判精神も重要です。百歳を超えて少し認められる、そんな小説家になるのが、オトンの夢なのだから。まだまだ、先は長いで~す。

☆羽田空港の新国際線ターミナルが二十一日、開業した。
 活発な秋雨前線の影響で二十日、鹿児島県奄美地方では一時間に120ミリを越す局地的な大雨となった。死者一人、行方不明一人のほか、家屋の浸水やがけ崩れ、道路の冠水などの被害が続出。2000人以上に避難指示・勧告が出され(二十日午後九時現在)、六校で百三十八人が孤立している。

 女優長岡輝子さんが十八日、老衰で百二歳の生涯を閉じた。盛岡出身の長岡さんは、一九二八年にパリに留学し演劇を学び、帰国後、夫とともに劇団テアトル・コメディを結成。三九年に文学座に入団、日本の女性演出家の草分けとして活躍した。

平成二十二年十月二十日
 十三夜(後の月)である。深夜未明の空は、曇り空で見えない。
 俳人・伊神舞子、すなわちMは午後七時ごろ、二階ベランダからぼんやりとではあるが、下がやんわり欠けた幻想的な「後の月」を、しかと見たという。
 十五夜と十三夜の両方を見てこそ、お月見をした、と言われるだけに一体、ボクは何を見ていたのか。そのころ、私はナゴヤドームで野球を見ていた。
 
 今夜は、ナゴヤドームでクライマックス(CS)シリーズのファイナルステージが始まり、ボクもドラゴンズ対巨人戦を見た。
 試合を見ながら、その華麗なプレー、強靭な、筋金入りともいえる選手たちのからだ、そしてしなうようなエース・チェンの投球術を目の前に「これは、もはやプロ野球という域を超えた、むしろ日本の野球文化のひとコマであり、芸術そのものだ」と思ったのである。
 故岡本太郎画伯が生きておいでなら、いま時のプロ野球を、どう表現されたか。いちど天国まで出向き、その全体図だけでもデッサンしていただき見てみたい、と思う。またボクの尊敬する詩人・長谷川龍生さん(現大阪文学学校校長)だったら、目の前の試合の光景を、どんな詩にうたうのか。ふと、そんなことを思ったりした。

 実際、荒木選手のホームを蹴っての華麗なる滑り込み、先発・チェン投手のひと呼吸おいたあとに流れる星のように打者の胸元に食い込んでくるミラクル球…(三回表には長野、古城、東野の三者をバッタ、バッタと三振に切って捨てた)、そして。バットを折りながらの藤井のヒット性の当たり、森野、ブランコの痛烈打と、どれもこれもが、まさにいっぷくの絵のようでもあった。
 当然ながら、今夜の初戦はチーム全体の均衡が見事に取れ、選手一人ひとりが心底、それぞれがプレーを楽しんでいるように見えた(森野は初回、ガチガチに緊張していたという。この緊張感も大試合には必要である)ドラゴンズが5対0で巨人に勝ち、初戦をものにしたのである。観客の興奮、歓喜の表情もビンビン伝わってきた。

 ここでボクは大好きな巨人、彫刻のような体をしたラミレスにも触れておきたい。
 4回表の巨人の攻撃。一死一塁に小笠原、三塁に脇谷を置いてラミネスは、バッターボックスに立った。息詰まる大観衆。バットでちょんちょんと軽く二度地面をたたいたラミネスが、チェンをにらみつける。投げるチェンと打とうとするラミネス。巨人側外野席からは、ラミネ、ラミネ、ラミネッ、……の大合唱が聞こえてくる。
 すごい呼吸だ。心音が高鳴る。大相撲の仕切りさながら、一球一球繰り返される投手と打者とのにらみあい。ラミネスのバッターボックスに立つ姿を見ていて、ボクは「もはや、これは勝負師を超えた芸術の世界そのもので、ここで芸術が爆発するかどうか、だ」とさえ思った。

 ドラゴンズは、この夜、一回に安打で出た荒木出塁を皮切りに、英智(送りバント)、森野、和田、ブランコと続いた、まさにたたみかけるような攻撃の刃で得た4点に、その後ラッキーセブンの裏に堂上直倫のタイムリーでたたき出した1点も加え、5―0で完勝した。これでアドバンテージも加え、2勝0敗と幸先のよいスタートとなった。あすからは、どう展開していくか。一気呵成に打ち倒したいところだ。敵を撃破するのに遠慮はいらない。

 【笛猫日常茶番の劇】今夜も遅く帰宅。と、Mが例によって「あのねえ~」と話しかけてきた。(あのねえ~、だけでは分からないーと言いたいところだが、これが本来無口な彼女の癖だからとあきらめ)「なんだ」と聞くと。
 「あのねえ~、きょうの新聞に載ってた」
 「……」
 「きょうのマイニチに」
 「だから、何が、だよ」
 「柳家小三亀松さんと純子さんが」
 ボクは、あわてて毎日新聞朝刊を開いてみる。
 載っている。載ってた。あっ、ほんとだ。
―そこには仲むつまじかったころの柳家小三亀松さんと愛妻、日々純子さんの夫婦愛が「仲むつまじく『名古屋名物』」の見出しで紹介されていた。
 ♪俺とお前は卵の仲よ 俺が白身で君(黄身)を抱く

 その小三亀松さんも昨年の二月二十七日に八十六歳で亡くなり、はやいもので一年半以上がたつ。合掌―

☆CОP10(生物多様性条約第十回締約国会議)が開かれている名古屋市熱田区の名古屋国際会議場で十九日、日本政府が自然との共生モデルとして提唱する「里山」にちなみ、各締約国へ里山保全のあり方を訴える組織が発足した。環境保全を訴える「世界を救う十三人のグランマザー」が近くの熱田神宮で円卓会議を開催し、「生きものにはお金に換えられないつながりがある」と、生態系を守るメッセージを訴えた。(20日付中日新聞朝刊から)
 「名古屋市議会リコール 署名11万人分に疑問 選管、審査一カ月延長」「トリプル選 困難に」(20日付中日夕刊)