あぁゝ大震災を悼む 笛猫人間日記・4月11日

平成二十三年四月十一日
(この日記はアタイ=こすも・ここ=が、お父さんの「私」になりきって書き進めています。ごくごく、たまにアタイそのものが出てくることがあります)

 『ねぇ~』   こすも・ここ
 

       『なぁに』  シロ

 マグニチュード9・0の巨大地震と大津波が東北沿岸部などを襲った東日本大地震から十一日で一カ月となった。死者・不明者は計二万七千人を超え、十五万人以上が厳しい避難生活を送っている。

 きょうも被災地では二度、三度いや四度、五度…と余震があり、午後にはここ名古屋でも職場である新聞社の七階に居たら、いきなりグラ、グラッときて仲間が互いの顔を見渡すほどの揺れがきた。ただの一回だけでもヒヤリとするのに、こうした揺れが頻繁に起きている被災地を思うと、心が寒くなる。
 あまりに頻発しているので、このところはテレビやラジオの「緊急地震速報をお伝えします」のアナウンスにも日本中がたいして驚かなくなってきたのでは。これではそれこそ、オオカミ少年で「あっ、まただわ。どうせ余震だろう」とタカをくくっているところへ、私たちが恐れている東海大地震がドカンと襲いくるのでは、とそんな気もする。

 きょうの余震は福島県の浜通りを震源に、マグニチュード6弱とかなり強く、一時は津波警報も出され、テレビでも被災地の混乱ぶりが映し出されていた。私が先日、いち早く現地入りした、いわき市もかなりの揺れに人が崩れた土砂に埋まっている、と報じられている。現地を見てきただけに、段差や亀裂だらけの路面、瓦礫の原を思い出し、なんとか被害が拡大しないようにと願う。滞在中は、それこそ揺れどおしだったが、きょうほどの強さではなかった。

 東日本大震災の影響で遅れていたファン待望のプロ野球がいよいよ明日、開幕する。ドラゴンズは横浜スタジアムで横浜との対戦だ。ウイークデー、それもデーゲームの開幕なので名古屋から出かけるファンは、あまり多くはないようだ。社会部員が、観戦にいくファンクラブ会員を教えてほしいといってきたので心当たりに電話し四人紹介しておいた。選手には、少しでも好ゲームで被災地の人々を励ましてほしく思う。

☆「大震災一カ月 復興進まず 福島を離れ新しい日記 埼玉に避難の主婦」、「大村与党 過半数届かず 減税・愛知の会 18議席どまり愛知県議選 民主全国で退潮」(11日付、中日朝刊)、「大震災一カ月 がれき山積 『阪神』の倍、復興の壁に」、「福島・飯館村 全員避難へ 政府要請『一カ月』以内に 避難拡大 自治体と協議」、「宮城の死者8000人超える 避難なお14万人」(11日付、中日夕刊)
 「東日本大震災一カ月 誓うあすへ 被害全容いまだ不明」、「東電社長福島へ 知事は面会拒否」、「福島第1原発 高濃度汚染水移送へ 保安院了承 きょうにも」(11日付、毎日夕刊)

平成二十三年四月十日
 日曜日。母とMを伴い、隣町・大口のリバーサイド・桜橋公園に出かけた。リバーサイドとはいえ、ほんのちいさな公園である。
 春らんまん、五条川両岸の桜は満開で見事だった。満九十歳を過ぎている母は当初、車の中から見るだけでいいと話していたが、私が「少しは川岸を歩かなければ、それじゃあ情緒も何もあったものでない」と不満を述べると、しぶしぶ歩き始めた。それでも、よほど気に入ったとみえ、しばらくはそのまま川岸に立ち、透明な川面に白い花びらを浮かべ、かぜに揺れるソメイヨシノの花々に満足そうだった。散り初めし花々。白い花弁が、川面を流れてゆく姿には、えもいわれぬ美しさを感じた。

 母は「せっかくだから、おかあちゃんが死んだときに仏さまに飾る写真を撮っといて。いつ死んでもいいように、今から準備してかな、アカンで」と言いながらも、Mと一緒に私のデジカメに納まり、結構満足そうだった。「じかにあるいて気持ちよかった、ろ」と私が言うと「ウン、そりゃそうだよ」とうなづいていた。それにしても、五条川の桜は本当に見事だ。

 東京都知事選で石原慎太郎氏(七十八歳)が四回目の当選を果たした。当選のインタビューに答え「出口調査でまだ開票も始まったばかりなのに、当確を打つ君らのやり方には腹がたってしかたがない」とマスコミに対する不満を訴えていたが、まったく同感だ。
「人間は、もっと我欲を抑え慎ましく生きるべきだ」との意見にも大いに賛成である。こんな慎太郎さんだが、Mは「何も政策が悪いなんて言ってはいない。ただ、(先の天罰発言など)文学者にしては、言葉を知らなさ過ぎる」と手厳しい。

 【きょう1番のニュース】中部ペンクラブ編集部から、ずっと前から頼まれていた掌編小説(四百字詰め五枚半)をきのう、きょうと何度も書き直し、やっと書き上げた。題名は、「死の町」にしようか、それとも「美歩」、「死の町再生」にするか、まだ迷っている。何度書き直しても満足がいかない。締め切りが十五日なので、もう一度推敲のうえ提稿しよう。

 締め切りといえば、私たちのウエブ文学同人誌「熱砂」のテーマエッセイ(テーマは『たより』)の締め切りも4月末に迫っている。ほかに、本職の方の原稿も、あれやこれやと提稿日が迫っており、気ぜわしい日が続いている。

☆「保安院 全原発 安全対策見直し 『五重の壁』甘さ認める」、「大震災あす一カ月 15万人避難続く 不明者なお1万4921人 復興へ手作業給油 南三陸のガソリンスタンド」、「統一選前半戦きょう投開票」、「癒やしの船 岩手へ出航 入浴、食事 無料で被災者に」、「故郷の未来が見えない 原発が爆発…集団避難 双葉町長 苦闘の一カ月語る」(10日付、中日朝刊)
 「希望は捨てない つながる心と心 東日本大震災被害者は今 立ち上がるしかない」、「東日本大震災 被害状況 一カ月 傷痕依然深く」(10日付、毎日朝刊)

平成二十三年四月九日
 「うちらは普通に暮らすのが責任よ。いままでどおりでいいのだから」。
 先月十一日に東日本大震災が起きてからというもの、この世の中、なんだか暗いものばかりの集合体のような気がしてきた。そんな折も折、Mが私に向かって話したのが冒頭の一節である。そうだ、ふつう通りに生きていればいいのだ、と思うと、どこか肩の荷が下りたみたいに感じられるから不思議だ。
 日本人はいま、誰もが心のどこかで病んでいる、そんな気がするのである。

 きょうの被災地は朝から雨がそぼ降る一日となった。
 そんな中、岩手県陸前高田市では仮設住宅への入居が始まった。気仙沼では、長崎新地中華街の人々が、ちゃんぽんの炊き出しをして喜ばれた。先日、いち早く私が訪れた福島県小名浜では死と化した町の一角に桜の花六輪が咲き、小名浜まちづくりの役員が「桜の開花を宣言します」と高らかに宣言し、被災地の春は目前、いや突入といったところだ。

 【きょうの1番ニュース】きょうの通風筒にアタイたちの仲間が載っていました。茨城県のひたちなか海浜鉄道のアイドルで東日本大震災で一時、行方不明となっていたひたちなか市那珂湊駅にすむ雄の黒猫「おさむ」が無事だったという。「おさむ」は五、六歳で一昨年から駅に住み着き、『黒ネコのタンゴ』で知られる歌手皆川治さんから名前を拝借。先日の大震災で木造駅舎から逃げ出し姿を消していたが、最近になり駅舎にひょっこり姿を現し、居なくなっていたもう一匹の雌猫「ミニさむ」も戻ってきたという。めでたし、めでたしとは、このことか。

☆「東北電女川原発 冷却機能1時間余喪失 使用済み燃料プール 余震で電源停止」、「楽天ナイン『がんばろう』 東松島の避難所で交流」、「義援金 死亡・不明35万円 配分割合委1次分 原発30キロ内世帯にも」(9日付、中日朝刊)
 「球界新時代 苦難を越えて 1959年、伊勢湾台風で中日球場水没 5,098人が犠牲に 鉄骨むき出しボード グラウンドに大木 本拠地を追われながら竜は戦い抜いた 最後は超過酷日程 3日間で6試合」(9日付、中日スポーツ)
 「悲しみ仲間と共感して 『阪神』遺児の大学生 体験、支援策伝えに宮城へ」、「山口組組長が出所 警察、活動活発化を警戒 愛知県警、徹底捜査へ」(9日付、中日夕刊)

平成二十三年四月八日
 昨夜の午後十一時三十二分ごろ、宮城県北部と中部で震度6強の地震があった。東日本大震災の余震で、気象庁は一時、宮城県の太平洋沿岸で一メートル程度の津波の恐れがあるとして、津波警報を出した。また七日夜の地震で山形県警と宮城県石巻赤十字病院は本日、計三人が死亡したことを明らかにした。警察庁によれば、今回の地震による東北六県での負傷者は百三十二人に及んだという。

 というわけで、一時は四百万世帯が停電となり、先の大震災のあと、やっと電気がついた矢先だけに、日本中が重苦しい一日となった。

 【きょうの1番ニュース】久しぶりにMとゴミ出しをした。大震災発生後、初めてのペットボトルや缶類、新聞紙、その他の不燃物出し日だけに、身も心も、すっきりしたのである。

☆「宮城で震度6強 M7・4余震 福島原発異常なし」「東通など外部電源喪失」「各地で火災、けが人」、「汚染水放出 米が内諾 政府、実施3日前に協議」(8日付、中日朝刊)
「M7余震 数年続発も 専門家『本震の規模に比例』 『阪神』より長期化か」(8日付、中日夕刊)

平成二十三年四月七日
 新聞、テレビ各社のこのところのトップニュースは、連日、福島第1原発の事故のことばかりだ。被災した1号機炉内にある核燃料の70%が損傷した、とか、1号機原子炉格納容器への窒素注入作業が順調だ(格納容器内の水素と酸素の濃度が一定比率になると爆発する危険があるため、不燃性の窒素を入れ、水素の濃度を低下させるのが狙い)とか、…といった具合だ。

 今夜のNHKのクローズアップ現代。この番組でも行き場を失った原発被災者に焦点をあて「原発事故の避難者たち いつ町に帰れるのか? 救助も遺体確認も困難 放射性物質」をテーマに、どうすることもできない中で苦悩する人々を報じていた。
 第1原発から七キロ地点にある浪江町。ここの町民たちは、二本松市内の浪江町臨時役場と避難所で、「この町では、すべての町民が失業者です」「原発事故のおかげで、何百とあるはずの遺体の捜索や行方知れずとなっている家族の安否確認ができない」「放射能の拡散が町をダメにしてしまった」「情報開示がまったくできていない」と口々に悲痛な叫びをあげていた。なかに「町を失いたくない」「でも、チェルノブイリと一緒で、もはや一生、町には戻れないと思います」の声も。
 それでも、家が津波で流されてしまったが家族四人ともに助かり、避難所生活をするある女性は「別に生きているから。生きている、から。大丈夫よ」と自らに言い聞かせていた。生きる、ということが、どんなに大切かを思い知らされるひとコマだった。

 それにしても、原発事故の放射能拡散は、暴れだしたら止まらない。ニンゲンたちは自分たちで作ったものを鎮めるのに、手をこまねいている。どうしてよいのか、分からないままだ。あれやこれや、と試みているが、元の木阿弥にならねばいいのだが。
 一体全体、何ということだ。文芸家が文学でニンゲンたちを救うなんて、とてもできっこない。関東大震災で被災し寝食に不自由した菊池寛の言うとおり、何の力もない。それこそ、愚の骨頂か。今は驕り高ぶっていたニンゲンたちが、見えない神の手による絞首刑を順番に待っているのかもしれない。心当たりがあるのは、愚かなニンゲンたちばかりだ。こんなときこそ、救世主の登場に期待したい。科学者でも、なんでもいい。要は放射能を収めてくれるニンゲンを、である。
 そして。自分も含めた、すべてのニンゲンたちには「反省せよ!」と訴えたい。

 こんなにも暗く、絶望的な話しのなかで、一筋の光りとなっているのが中日新聞夕刊本紙にあった「選手宣誓に反響 今でも 選抜高校野球」といった記事である。このところ被災地への思いが込められた創志学園高校(岡山市)の野山慎介主将の選手宣誓に「心を打たれた」「感動した」といった感想が閉幕後のいまも全国から同校に寄せられている、というのだ。
 ここに一部を抜粋しておこう。
―被災地ではすべての方々が一丸となり、仲間とともに頑張っておられます。人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えることができると信じています。私たちに今できること。それはこの大会を精いっぱいに元気を出して戦うことです。頑張ろう日本。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々とプレーすることを誓います。

 【きょうの1番ニュース】中日新聞の社友会総会がきょうの午後、本社六階ホールで開かれた。私は恥ずかしながら社友五年にして初めて総会なるものを少しだけ覗き、社のトップの話を聞いた。白井会長の「原発事故現場に、取材記者を近づけるな」の言葉には、社員への心遣いが感じられ、友好社で今回の大震災で甚大な被害を受けた河北新報はじめ、各社の現況がいかに危機に瀕しているのかもよく分かった。牧真一郎中日労組執行委員長の言葉からも、深くて重い、凛とした、決意のようなものが伝わってきた。会費2000円を払い、刊行した「中日新聞社友会五十年史 時代とともに 新聞とともに」を手に職場に戻った。

☆「(人工浮島)メガフロート 横浜到着 汚染水保管 防食など実施」「避難指示区域で不明者捜索開始 福島県警」「米国務長官 来週来日へ」(7日付、中日夕刊)
 「残された家族も 行き場なく…漂流避難 福島遠く離れ凍死した認知症の母…」(7日付、毎日朝刊)

平成二十三年四月六日
 今夜、帰宅し、NHKテレビのニュースを聞こうとすると、「もう放射能のニュースなんて、聞きたくなんかない。だって発表されるデータが、とても信じられないもの」とM。彼女にしては珍しくCBCテレビの「あなたが聴きたい! 歌の4時間スペシャル」を見るはめになった。

 それにしても東日本大震災が起きてからというもの、各局とも歌謡番組を意識して流しており、このこと事態は良いことだと思う。東北の被災者の皆さんに少しでも思い出の歌を通して安らぎを、そして希望、勇気などを与えるきっかけになればいいな、と思う。

 とはいえ、午後九時を過ぎると、私はチャンネルを切り替え、結局はNHKのニュースウオッチ9の画面を見ることに。そこでは、放射能汚染で漁をしても引き取り手がいない、なぞ深刻な事態に陥っている茨城県漁連などが東京電力に抗議する模様が流されていた。
 汚染水や大気中の濃度が基準の何千倍だの、何万倍だの、それでも「人体には影響のない濃度だ」などといった台詞は、もはや聞き飽きた。「あっ、そう」といった具合で、さして驚きもしない。

 要するに私たち人間の危機管理に対しての国の感覚が麻痺してきた。これは、ある面で恐ろしいことに通じる、この先、何もなければよいが。

 【きょうの1番ニュース】出る、出る、出ていく。何が出ていくか、だって。それは乏しい金だ。
 先日も、確定申告をしに行ったMから「ことしは珍しく五、六万は戻ってくるそうよ。毎年取られるばかりだったのに。私が入院した分が医療費控除として戻ってくるみたい」と聴き喜んでいたら、その後税務署から電話が入り「申し訳ありません。計算を間違えてました。収入が多いので」とのこと。逆に五、六万円徴収された。

 そればかりでない。
 年度初めの、このころになると、まるで集中砲火でも浴びせられるように市内数ヵ所の私たち土地所有者に対する税金の課税明細書や固定資産税・都市計画税の徴収書が届く。どれも万単位だけに、「なぜなの」と泣きたくもなってくる。
 でも、しかたないか。東北で大切な肉親を、家を、田畑を、小学校を流された人々に比べたら、こうして日常生活をすること自体に感謝せねば。

☆「福島第1原発 汚染水流出止まる 2号機 止水剤注入が効果」、「計画停電 今月で終了 経産省調整着手 夏場、企業に使用制限」「入学式『うれしい』 福島各地 避難で転出人増」(いわき市では、津波被害を受けた小学校二校と、原発から三十キロ圏周辺にある小学校二校の合同で、新入生の「入学を祝う会」が開かれた。)=いずれも6日付、中日新聞夕刊
 「保安院 分離へ 経産省と一線安全委と統合 原子力規制強化」「2万人 集団避難へ 南相馬など政府が検討 受け入れ先県外も」(6日付、毎日朝刊)

平成二十三年四月五日
 ここ尾張地方の桜は、ほぼ満開と言っていい。あと一歩で全開だ。これから桜前線が日に日に北上し、東北の地にも桜ふぶきが舞うに違いない。

 北茨城市の近海で四日に採取したコウナゴ(イカナゴの稚魚)から暫定規制値の一キロ当たり五百ペクレルを上回る五百二十六ペクレルの放射線セシウムが検出された。茨城沿海地区漁連は五日、県内全域でのコウナゴ漁の休漁を決めるなど、放射能汚染の影響は日に日に深刻になってきている。

 先月十一日に東日本大震災が起きてからというもの、新聞紙面は連日、悲しみの満載だ。どこを見ても「悲しみ」ばかりが先行している。そんな中で、家族の再会はじめ、希望を見出す記事を目にすると、どこかしら、ホッとする。きょうも先日、宮城県気仙沼市の沖合いで屋根に乗って漂流しているところを救助された犬(名前は「バン」。雑種のメスで二歳)が県動物愛護センターで震災以来二十四日ぶりに飼い主の五十代女性と再会したニュースが報道されていた。
 (ここで、アタイから、ひと言。なぜ、犬が家族と再会した話ばかりなの? これまでの報道では、アタイたち猫の話が一匹=イッピキ、能登方言で一度の意味=も出てきていない。これは、おかしい。
 それともアタイたち猫は集団で津波にさらわれ、海のかなたへ連れ去られたって、こと。アタイ、すなわちこすも・ここだって、妹のシロだって、人間社会に帰りたいと思っているのだから。なぜ、犬ばかりなのよ。
 でもアタイたちのような自分勝手で薄情な猫たちよりは従順な犬が先になるのだ。仕方ないかと自問自答)。

 「悲しみ」の満載紙面。たとえば、本日付の中日新聞の軟派(社会面)と二社面(第2社会面)の見出しの一部を拾っただけでも、次の通りだ。
 「早く家族の元へ 宮城・陸自捜索ルポ 母子、男女…隊員絶句 『ご遺体』涙流し包む 隊員テント生活懸命の救援活動 温かい食事は被災者に」、、「ここにいる 寝られねぇ 大槌の男性 不明の家族捜す」、「漂流犬 感動の再会 気仙沼 大喜び、飼い主に抱かれ」…(軟派)
 「通学『放射線は大丈夫?』 国指針なく、保護者ら不安 30キロ周辺の小中学校』」、「原発自主避難圏内の男性 届かぬ薬 病におびえ 薬局閉鎖/物流混乱 津の妹に依頼 受け取りは半月後 電話診療でも処方箋」、「冷たい海に残せない 気仙沼 漁師が200遺体を収容」…(2社面)

 【きょうの1番ニュース】きょうは午前中、Mを伴って二カ月ぶりに江南厚生病院へ。早いものでMが脳腫瘍摘出手術を受けてから、この十四日で一年になる。
 まだまだ油断はできない。でも、まずは順調な回復ぶりで内心、安堵してもいる。なんと言っても、担当のI医師の柔らかな患者を思いやる視線と物腰には頭が下がる。東日本大震災で命の大切さを身に染みて感じるなか、一度はあきらめかけた命だけに、感謝している。

☆「福島第1原発 低濃度汚染水 海に放出 高レベル貯蔵優先 『応急』で1万1500トン」、「出荷停止 市町村単位に 政府 農水産物で細分化発表」、「庁舎襲う大津波…フェンス、アンテナつかみ 宮城・南三陸 写真館主が撮影」●第55回長良川中日花火を中止 中日新聞社(5日付、中日朝刊1面)

 日本相撲協会は八百長に関与したとして引退勧告した力士十九人全員の引退届けを受理。退職勧告されていた谷川親方(元小結海鵬)は、身に覚えがない、と退職届を提出せず。

平成二十三年四月四日
 今夜のNHKニュースによれば、福島第1原発は、とうとう汚染水を海に流すという苦渋の決断をし、午後七時から流し始めたようだ。あくまで、素人目だが、福島原発の放射能漏れ事故は、もはや八方塞がり、どうしてよいものか、が分からず、途方に暮れているようにもみえる。どうやら、低レベル汚染水を海に流し、代わりに高濃度汚染水を原子炉建屋内に閉じ込めよう、との腹のようだ。

 ところで昨晩のETV特集「原発災害の地にて」は、吉岡忍さんと玄侑宗久さんの対談ということで従来のどの番組よりも一歩踏み込んだ形となった。放射能の見えない恐怖のなかで生きている人々に焦点が当てられた点で大変、参考になった。欲を言えば、いつも決まり文句で「いまのところ健康には影響ありません」という国やマスコミの姿勢、そして国が発表する放射能汚染の濃度と対応の遅れに疑問を感じた以上、なぜこの点の質問を国をはじめとした関係機関にぶつけることをしなかったのか。せっかく核心をとらえた、最近にない番組だっただけに、この点が心残りだった。

 【きょう1番のニュース】「お変わりなくお元気にお過ごしですか」と、ネパールに住む友・長谷川裕子さんからメールが入った。
 「日本で信じ難いような大災害があってから、3週間経ちました。今なお行方不明者が多数いらっしゃり、放射能災害への対応や復興の目途も立っておらず、日本全国民が落ち着かない日々をお送りのことでしょう。私もネパールにいても落ち着かず、正直早く日本へ帰りたいと思っています。……
 今回の東日本大震災のため、弊社社長が中心となってネパールのロータリークラブや銀行、旅行会社などに呼びかけて日本への義援金募金のための朝食会を四月九日に開くことになりました。……」といった内容である。
 異国の地で祖国の不幸に胸を痛めている裕子。世界じゅうの人々がいま、日本のこの先を息を潜めて見つめているのである。

☆「福島2号機汚染水 ポリマーでも防げず 管路に投入 止まらぬ流出」「津波37・9メートルに到達 岩手・宮古 国内で史上最大級」「78遺体発見 日米集中捜索終了」「南三陸町1100人 集団避難開始 『必ず戻ってくる』」(4日付、中日朝刊)
 「福島2号機汚染水 トレンチと別経路か 着色用の粉末投入 流出止まらず」「30キロ外で10ミリシーベルト超 屋内退避基準に 福島で11日間積算」、「『もしかしたらこの中に』 身元不明のまま…埋葬 震災から3週間余 家族捜す人絶えず 死者・不明 2万7653人に」「(アスレチックスの)松井日米通算2500安打 新天地初安打 慈善試合で節目(4日付、中日夕刊)

平成二十三年四月三日
 日曜日。新月。陰暦で、その月の“第1日の月”の日だ。
 Mに言わせれば、新月の日には過去にも悪いことが起きがちで、月の動きが微妙に自然界に影響を及ぼすからでは、とのことだが…。案の定、東北地方で大震災の余震とはいえ、少し強い揺れの地震が起きた。でも、人間たちは負けない、いまのところ(午後七時現在)は、何もなさそうだ。
 きょうは久しぶりに、ゆっくりとしている。とは言っても、新聞を読んだり、整理したり、本に目を通したりして、である。何より大切なのは、Mの買い物のアッシーくん役。それに、もう一つ。母のところに顔を出す、ことだ。この人間社会、年がいけばいくほど、それなりにやらねばならないことが増えてゆく。

 ところで、新聞の番組欄によれば、今夜のNHK教育テレビ午後十時からのETV特集「原発災害の地にて」でノンフィクション作家・吉岡忍さんと小説家玄侑宗久さんの対談があると知り、吉岡さんに先日、私が福島県いわき市を訪れたときの状況をあくまで参考になれば、とメールしておいた。

 もっと早くから知っていれば電話で詳しく説明するところではあったが、昨夜遅くMから「吉岡さん、出られるのだってね。NHKさんが前触れで流してたわよ」と教えられた次第。デ、お邪魔虫を承知の上でせめていわき市の、それも放射能漏れという重体に呻き続ける福島原発南側の住民の深刻な表情を少しでも伝えることができれば、とメールをさせていただいた。
 テレビでは二十~三十キロ圏の抱える問題点こそ、よく報じられているものの、四十~五十キロ前後の地域となると、ともすればマスコミ各社にとってエアポケットともいえ、ノーマークとなりがちだからである。

 今度の大震災で吉岡さんの残した名言は前にも触れたが、夕刊本紙(中日、東京)文化欄の緊急寄稿「被災者と生きる」のなかで強調していた『人間的崩壊が起きていないことに私は目を見張った。…これは私たちが自負してよいことである』と記した“人間的崩壊”の下りである。これは誠に良い視点だ。

 【きょうの1番ニュース】まもなく九十一歳になる母を訪ねたらちょうど自転車で「これから隣村の勝佐にある美容院にいってくる」と自転車で出かける矢先だった。これまで、いつも母と亡き父の乗りなれた車が置かれていた車庫のシャッターがぴしゃりと閉じられ、事情を聞くと「廃車処分にしたのだから。もう、車はあらへんよ」と母。 彼女は耳が少し遠いので、自転車で美容院に行ってくれるのも心配だが、下手に口に出すと逆効果だと判断。内心、好きにしたらいいーと自身にも言い聞かせて帰った。

 帰る途中、Mがホームセンターに寄ってほしい、と言うのでよると、防護ヘルメットを一式買わさせられた。彼女なりに地震への備えを考えてくれていることに感謝した。

☆『福島第1原発 亀裂から海に汚染水 2号機取水口近くで確認 配管用トンネル経由か」、「新たに31遺体発見 日米集中捜索」、「漂流犬 元気だワン 海上に3週間? 動物愛護センターが保護」(宮城県気仙沼市沖で一日午後、漂流していたがれきの上から救出された犬が二日、第二管区海上保安部=塩釜=の巡視艇に乗って塩釜港に到着。元気な様子で県動物愛護センターの職員に保護された)、以上いずれも3日付、中日朝刊。
 「『まけるな! 日本』 広がる絆 田中・斎藤両投手が協力 プロ野球慈善試合(札幌ドーム)」、「浸水と汚染 農家悲痛 こんな耕作日和に何もすることがない 福島・宮城 作付けに暗雲」(3日付、毎日朝刊)

平成二十三年四月二日
 中日ドラゴンズはきょう、ナゴヤドームで巨人と東日本大震災復興を願う慈善試合、チャリティーマッチを行った。試合に先だち、両チーム選手らによる募金活動があり、チケット販売などの収益金と合わせ全額が、被災者支援のためNPBを通じ被災地に寄託されるという。この慈善試合はあすも同じ方法で行われる。

 ドラゴンズ選手らによるこうした東日本大震災の救援募金活動は、既に震災発生まもない三月十八、十九日、さらには二十二日(このうち十九日は楽天選手も。二十二日はナゴヤ球場で)にも行われているが、きょうとあすは、巨人、中日の選手に加え、高木守道さんら中日ОBによる募金も行われた。

 やはり高木さんやウーヤン、鈴木孝昌さん、鹿島さん、立浪さんらが募金会場のオープンデッキに並んで立つと、なんだか、それだけでホンワカと、あったかいものが伝わってきて、いい感じである。

 選手たちが熱い心なら、ドラゴンズファンも負けじ、と熱い心で、この日もドームの円周には先月の十九日同様、延々と募金をするための長い列ができたのである。みんな、温かい人たちばかりなのだなあっ、と真底思った。

 人間というもの、こうした危機に瀕すると、互いに相手の気持ちを慮(おもんぱか)り、助け合いの気持ちが芽生えるステキないきものだ。だから、「万物の霊長」と言われるのだろうか。もっとも、この場合、そう呼ぶのは人間なのだが。いまこそ万物の霊長たる所以を発揮すべきときなのかも知れない。

 それにしても募金活動を遠巻きにして見守っていて義援金を募金箱に入れた人たちの顔という顔が、キラキラと誇らしげに輝いていることを、あらためて思い知った。

 【きょう1番のニュース】ウエブ文学同人誌「熱砂」の同人仲間で古くから私の兄貴分でもある詩人・牧すすむさん(琴伝流大正琴弦洲会の会主かつ大師範)が今夜、娘さんの住むイギリスに向け、飛び立った。娘さんに赤ちゃんが誕生したためで、めでたいことだ。弦洲会主は、今度の東日本大震災を深く悼んでの渡英で、イギリスでは大正琴による復興支援チャリティーコンサートも開くことにしている。さすがは、牧さんだ。

☆「福島第1原発 1号機地下水も汚染 1万倍ヨウ素 雨で染み込む?」「プライバシー テントで守る 大船渡の避難所」、「41道府県議選3457人が立候補」、「大相撲八百長問題 関与23人 角界『追放』 九重ら3理事が辞任」(2日付、中日朝刊)
 「(菅直人)首相、陸前高田を訪問 復興『最後まで頑張る』 被災地2度目視察」、「東北3県、水田に打撃 津波で塩害 宮城は14%作付け不能」、「名もなき墓標270本 宮城・石巻」(2日付、中日夕刊)

平成二十三年四月一日
 復興、復興、復興。福島県いわき市の現場をほんの一部ではあるものの、この目で確かめてきた私としては、復興を唱える以前に現地の人々がやることがあるのではないか、とそんなことを思ってしまう。それは何か。
 まず、男性たちが中心となり瓦礫の山を取り除き、たきぎ代わりになるものがあったら、それで火を燃やし、そこに生活のとりあえずの拠点を設けたらどうか、と。これをするにもお上の制約があって出来なければ別だが…。

 これは被災者に対して大変失礼なことかも知れない。
 だが、被災地の撤去作業を自衛隊ばかりに任せておいてよいものかどうか。避難場所を飛び出し、やれることからやっていったら道が開くのでは、と単純に思う。現に、報道されないだけで、やってる被災住民は居るような気がしてならない。
 被災者の苦しみも知らないで随分と身勝手な、と指弾を受けるや知れない。でも、被災者が現場を一番知る以上、瓦礫の撤去を自分たちで互いにしていくなかで活路が見出されてくる。そんな気がしてならないのだ。人間だったら、ここでくじけてはいけない。現在ある環境下で、何ができるか、をまず冷静になって考えることだと思う。

 きょうも、つい先日、私の元に届いたばかりの文芸同人誌「じゅん文学」と「北斗」を手に電車の行き帰りや、お昼の食事どきなど仕事の合間に、この世で初めて遭遇する作品を読み漁りながらの一日が音もなく過ぎていった。 私のこのところの読み方は、愛読している「文学界」にせよ、他の文芸雑誌にせよ、作品の出だしの五、六行を次から次へ、とパパンと猛スピードで読んでゆく手法である。短時間にその作者の文章表現力を読み取り、何か得るものがあると判断した場合、そのまま一気に最後まで読み通すというものだ。
 だから、自分に何かを教えてくれる作品には、いつだって敬意を表すことにしている。

 【きょう1番のニュース】この地方の桜(染井吉野)が一気に、ほころび始めた。

☆「義援金42億円超す 1次分 近く現地へ」(1日付、中日新聞朝刊。東日本大震災で、中日新聞社と中日新聞社会事業団に寄せられた義援金は、三十一日現在で二万七千四百五十六件、四十二億二千六百三十万一千三百四十四に達している。)
 「人は残った。復興に役立ちたい」「新社会人 誓いの春 入社・入庁式 中止・延期も」、「臨時役場で辞令 岩手・大槌町」(1日付、中日夕刊。)