あぁ~大震災を悼む 笛猫野球・人間日記/4月28日

平成二十三年四月二十八日
(この日記はアタイ=こすも・ここ=が、お父さんの「私」になりきって書き進めています。ごくごく、たまにアタイそのものが出てくることがあります)

 『ねぇ~』   こすも・ここ
 

       『なぁに』  シロ

 東日本大震災から四十九日目に当たる二十八日、東北地方の各被災地の寺院や公共施設で慰霊の法要が営まわれた。全校児童の七割が死亡。行方不明となった宮城県石巻市立大川小の合同供養式典も午前十時から、近くの飯野川第二小の体育館で行われた。

 午後八時前のナゴヤドーム・ライスタ。
 「あとひとり」「あとひとり」から、「あと一球」「あと一球」へ。午後八時になるかならないか、でドラゴンズの横浜戦4―0による勝利が決まった。私はライトスタンドに立ち、ファンが歓喜する姿を目の前に、野球の底力というようなものを感じていた。大人も、子どもも、お年寄りも、だ。みな歓喜している。大喜びだ。総立ちの観客の波間に浮かぶようにして、大漁旗さながらの旗四、五枚が打ち振られている。太鼓にトランペットの楽しそうな音色。勝ってホントニよかった。
 野球に勝つ。たったそれだけのことが、そんなにもよいことなのか。きょうは、今シーズンずっと鳴りを潜めていた主砲・和田が四回裏に本塁打(1号2ラン)を放ち、先発吉見投手が尻上がりに球の切れと制球が増し、6イニング無失点で今季初勝利を手にした。ドラゴンズは、これで三連勝だ。
 最終回。九回の表。投手が鈴木義広、小林正人、平井正史とバッター一人に対して一人ずつ投入されるのを見て、落合采配の手堅さと同時に、選手をなんとか晴れ舞台で投げさせたいという親心のようなものを感じた。ヒーローインタビューのお立ち台には本塁打を放った和田と先発吉見投手が立ったが、私が大好きなふたりだけに、なぜかホッとした。
 ふたりは引き続き、ボールを観客席に投げ入れたり、手をふったりしたかと思うと、一人ひとりと握手して回るなぞ、至れり、つくせりで、なんだか、これでファンサービスが悪いと言ったら、それこそファンの甘えでバチがあたってしまう、そんな気にさえとらわれた。

 きょうは、ナゴヤドームの一番ゲートを入ったところで、中日ドラゴンズ公式ファンクラブが、球団の東日本大震災の被災者に対する義援金募集を手助けするーという形で、募金呼びかけにスタッフやボランティアの会員らが声を枯らした。この呼びかけは、あすもあさっても行われるが、会員ボランティアを自分から買って出てくださる皆さまには、ただただ頭が下がる。三時間立ちどおしでも「平気、平気」と、協力呼びかけをしてくださる姿には胸が熱くなった。

 【きょうの1番ニュース】Mが短歌研究5月号を差し出すので、何げなくページを開くと日本現代詩歌文学館の広告記事が掲載されていた。よく見ると、そこには「東日本大震災において被害にあわれた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。当館はお陰様で大きな被害はございませんでした。おこころ遣いに厚く御礼申し上げます。」と書かれていた。
 詩歌文学館には、私が尊敬する詩人最匠展子さんが詩歌文学館賞を受賞しまもないころ、訪れたことがあるだけに、そのページを前に私の心のなかを、安堵のかぜが走り抜けた。

☆「浜岡3号機 再開計画 中電、7月までに 夏の電力需要に対応」、「名古屋市議会 報酬半減条例を可決 来月から 暫定的に年800万円」「JR東海高島屋 新社長に久末(裕史)氏」、「父、息子、寺失った大槌の僧侶 涙ふき四十九日の読経 『すべての犠牲者悼む』」(28日付、中日朝刊)
 「悲しみ癒えぬ四十九日 84人笑顔の写真 石巻・大川小」「大震災 現実か」「神も仏も ない」(28日付、中日夕刊)

平成二十三年四月二十七日
 今夜の地方球場・豊橋でのドラゴンズは、Mに言わせれば「ブランコさまさま」だった。六回裏途中降雨コールドゲームとなったが、ブランコがホームランを打ち、1―0で横浜に勝ち、山内壮馬投手がプロ初完封勝利。これで横浜に2連勝だ。
 それはそうと、けさの中日新聞運動面・A記者の記事がよかった。Aとは、すなわち私が大津主管支局長のとき、オートバイで支局に乗りつけ「ボクは将来、スポーツ記者になりたいので、よろしくお願いします」と半ば、おどおどしながら純粋な、目を輝かせた表情で記者生活を駆け出した、あの記者である。
 記事の何がよいか、と言うと『球心』の出だしと最後のひと言である。
 「井端は逃げる球に食らい付き、ブランンコはバットを折りながら打球を外野に運んだ。0ー0の三回。1死一、三塁から井端の右前打で1点を先制し、2死満塁でブランコが左前打を放ってさらに2点を加えた。勝利への道筋を付けた3点は、実に24イニングぶりの得点だった」
 「……残りはまだ130試合以上ある。ここが開幕だと思えばいい。」
 おそらく、最後のワンフレーズは、すべてのドラゴンズファンの思いを代弁した言葉に違いない。読者の誰もが、うんうんと、うなづきながら読んだに違いない。

  今夜のNHKテレビ。天皇、皇后両陛下が東日本大震災で被災した宮城県下をお見舞いに訪問され、南三陸では津波で被害を受けた市街地に向かって黙礼された。さらに避難所では、被災地の民家庭先で地震発生後に花を咲かせたスイセンを被災者佐藤さんから手渡され、皇后さまがそのスイセンを胸に抱いたまま回られる姿を放映していた。国の象徴として、復興への精神的手助けとなり、皇室のこうした行動には心から敬意を表したい。
 テレビではこのほか、「津波と地震だけなら、もっと復興も進んでいたろうに。原発事故のため、漁にいつ出られるのか、検討もつかない。俺たちの海を本当に、いつになったら返してくれるのか」と海を前に茫然とする若い漁師の姿を映し出し、その心情を思うと、こちらまでが辛く、切なく、とても悲しくなってきた。
 昨年のいまごろの岩手、宮城、福島は、どうだっただろう。大船渡、気仙沼、仙台、南相馬、浪江町、いわきはどうだったか。人々は、ふつうに自転車のペダルを漕ぎ、買い物をし、学校や職場にも通っていたはずだ。それが、いまは放射能汚染で自然界そのものが破壊され、変形し始めている。なんということだ。

 【きょうの1番ニュース】ネパール・カトマンズに住むドラゴンズ公式ファンクラブ会員の知人(女性)から、ネパールでの東北に対する義援金集めの話がメールで送られてきたため、公式ファンクラブのホームページ「ガブリの目」欄にアップしておいた。ネパールでは親日家が多く、今回の東日本大震災を悲しみ、日本にエールを送る人たちが、数え知れないほどいるという。

☆「東北3県 漁船9割 使用不能 2万5000隻超 津波で流出など」「中部地方 船や網、物資提供 漁師ら支援へ心意気」、「農家の怒り 頂点 東電本店前で250人抗議」、「津波にマケズ・岩手陸前高田から 津波で九死に一生 郵便局員 がれきの街 元気も配達 『人つなぐ力』信じ仕事」(27日付、中日朝刊)
 「ソニーPS3 7700万人の情報流出か 59カ国で利用 ネットに不正侵入」、「気仙沼 離島復興 希望行き 退役フェリー出航」(27日付、中日夕刊)

平成二十三年四月二十六日
 たったいま家に帰ったところだ。午後八時を過ぎた。
 先ほど名鉄電車内でケータイ中スポのドラゴンズ情報をのぞいたところでは、浜松球場で行われている対横浜戦でドラゴンズは三回を終わったところで3点をリードしていた。きょうの先発はネルソン、3回裏に谷繁、荒木、井端、森野、ブランコと理想的な安打が続いて(和田も四球)一挙3点を入れたのである。ドラ本来の攻撃のスタイルが戻ってきた。
 というわけで、あらためてドラゴンズ情報を見てみる。八回表で3―0のままである。なんとか、きょうこそは勝ってくれそうだ。(結局、横浜は九回、代打・一輝の2点二塁打で追い上げたものの、及ばなかった。ネルソンが1勝、岩瀬が4試合で2セーブ)。
 海の向こうでは、カブスの福留(元中日)が5打数5安打で打率4割7部8厘と驚異的な成績を残している。ヤクルトは巨人に2―1で勝ち、7連勝。セ・リーグトップを走っている。

 きょうは、旧ソ連時代の一九八六年に起き、史上最悪となったチェルノブイリ原発事故から丸二十五年で、同原発があるウクライナの各地では追悼行事が行われた。東日本大震災に対する中日新聞社会事業団への義援金は相変わらず連日多くの心ある人々から寄せられている。きょうも私の友Hさんが、わざわざ寄託しに本社を訪れてくれたので、社近くで食事を共にした。彼女はニンゲン、最後に残るのは「愛」と「感謝」の気持ちである点を強調、つい最近訪れたマレーシアでは町の至るところで日本への募金活動が行われていた、とも。
 この日は、元ドラゴンズ球団社長Sさんを囲む女性親衛隊など2団体からも社会事業団に義援金が寄せられた。この世の人々は本当にいい方ばかりだな、と実感した。

 【きょうの1番ニュース】互いに男と女でありながら、深い仲といっていい彼女が私にこう、言った。
 「東日本大震災と原発事故は、人間世界が過度期にさしかかった証しともいえる。この場にこうしている私たちが本来の形に戻ってゆく。飽食、贅沢社会から、ちょうどUターンの時期かもしれない。神話の世界と同じで、これからはノアの箱舟と同じになるかもしれない」。
 彼女は、そう言いつつ「それでも、孫たちはたくましく生きていくと思う。そう。だから、そうした未来のニンゲンたちを見てみたいから。アタシ、百歳まで生きてみようと思うの」とも。

☆「3・11から玄侑宗久さん 自然の力 復興の礎に」、「『天国で被災者のお役に』 スーちゃん生前の肉声 告別式でテープ再生」(26日付、中日朝刊)「福島・双葉病院 苦渋の90人放置 患者440人 避難死45人」(26日付、毎日朝刊)
 「原発惨事 防止の祈り チェルノブイリ事故25年追悼」、「堀江被告 実刑確定へ 最高裁が上告棄却 ライブドア事件 虚偽記載、懲役2年6月」(26日付、中日朝刊)

平成二十三年四月二十五日
 きょうもドラゴンズの試合はない。少し寂しい。
 中日スポーツを読んでいて「(運を)持ってる」日本ハムのルーキー斎藤佑樹投手が二回裏に2点を奪われながらも味方打線の援護に助けられ、楽天に5―3で勝ち2勝目をあげた(二十四日。ほっともっとフィールド神戸)。やはり、持ってる男だな、と思ってしまう。
 だが、私にとっての最大ニュースは、昨日、ナゴヤ球場であったウエスタンリーグ、対広島戦に2661人もの観客が訪れた、という事実である。おそらくナゴヤ球場の観客数としては、少なくとも公式ファンクラブ誕生後、私の知る限り最大の観客数だと思う。
 仕事で同球場を訪れていた同僚の目には「なんだか、みんなプロ野球に飢えているみたいな気がした」とのことだが、東日本大震災の余波による開幕の遅れ、などドラゴンズファンの中には、なかなか始まらなかったプロ野球に飢えていた人が多いのも事実だ。

 月曜日。いつものように始まった週の初めだが、ナントナク気ぜわしい一日だった。
 それはそうと、けさの中日1面で、衆院愛知6区補選で当選し花束を掲げる丹羽秀樹氏の写真をみながら、つくづく、かつて一時代を築いた祖父丹羽兵助さんにそっくりだ、と思った。小牧、春日井、犬山には郷土の政治家の家系を守ろうとする、そんな空気のようなものが有権者に感じられる。それはそれとして、悪いことではない。だが、その分、丹羽氏は有権者の希望に応える政治家になるよう、努力すべきでもある。

 【きょうの1番ニュース】今夜のNHKニュースで見た気仙沼の被災地の中学生からなるジャズバンド、気仙沼スウィングドルフィンズの演奏にはただただ感銘した。津波で流されてしまったトロンボーンやギターなど楽器の数々。消えた楽器が七年前にハリケーンの被害に泣いた米国ニューオリンズから送られてきた。そして被災地でジャズコンサートが開かれた、というなんともすばらしい話だった。
 スイングスイング…のジャズの音色に人々は口々に「生きる希望と元気をもらいました」と話していた。聞けば、ジャズの町・ニューオリンズがハリケーンに襲われた際、日本から送られた楽器により、ジャズの町が再生、その恩返しに気仙沼の中学生に楽器が送られてきたのだ、という。

☆「晴れ舞台 悲しき証書 石巻の大川小 一カ月遅れ卒業式 死亡・不明児童の家族 代わりに受け取り涙」、「わが子遺体に『よぐいだな』 学校周辺 今も捜す親」
 「衆院補選 自民が圧勝 愛知6区 丹羽氏返り咲き 減税・川村氏及ばず」、「津市長に民主系・前葉氏 統一選 瀬戸は増岡氏4選」、「世田谷 脱原発の保坂氏 後半戦も民主振るわず」、「鈴鹿に女性市長 末松さん中部初」

平成二十三年四月二十四日
 けさの中日スポーツによれば、開幕九試合で打撃1割7分2厘のドラゴンズの主砲・和田選手が二十三日、ナゴヤ球場で居残り特打を敢行したという。ベンちゃんのこと、なんとか上昇のきっかけをつかんでくれるに違いない。彼さえ復調すれば、チームも勢いづいてくる。記事によれば、主砲の姿に落合監督も敏感に反応、自らバットを手にケージに入り、現役時代そのままの神主打法で手本を示して見せたという。あさってからの試合に期待しよう。

 復活祭。きょうは第十七回統一地方選挙の後半戦、
市町村長・市町村議選が行われた。同時に東日本大震災後、初の国政選挙となる衆議院愛知6区(春日井、小牧、犬山市)の補欠選挙の日でもある。私は夕方、息子とともに近くの投票所に足を運んだ。 

 この日、午前中は現在、執筆中の小説のストーリーにつき、ずっと熟考。午後はMのアッシーくんを務め、この後、実家の母の元へ。家に自転車がないので約二、三キロ離れた畑まで行くと、案の定、母は備中を手に、野菜づくりのための土起こしをしていた。
 風が強く母の自転車は、田の畦道で荷台のカゴごと倒れたまま。起こすと「また倒れちゃうから。そのまんまで、いいから」と手ぬぐいで姉さんかぶりをした母。あまり、うるさく言うと、返って調子が悪くなってしまう母なので「あ、そう。あまり無理しないでよ」とだけ声をかけ、その場を辞した。内心は、すごく心配だ。でも、九十になっても、この元気さは私の自慢でもある。

 というわけで、この後はMを伴い、きのうも現場を訪れた江南市内の前野家跡地の古土蔵、さらには一宮市萩原にある詩人佐藤一英(故人)ゆかりの碑が立つ万葉公園までドライブを兼ね足を伸ばしてみた。Mは万葉公園が随分と気に入ったようで、気がついたら、いつもの癖であちこち散策を始め行方不明に。私は一時間近くも探し回った。園内には【春されば卯の花くたし 我が越えし妹が 垣間は荒れにけるかも 詠み人知らず】【手折らずて散りなば惜しと 我が思ひし秋の紅葉を かざしつるかも 橘奈良麿】といった表示板があちこちに立てられ、それは風情ある公園だった。

 【きょうの1番ニュース】わが家の飯台のコップに添えられていた大根の白いちいさな花が、けさ、野に咲く花に変わっていた。それも黄色い花びらのカタバミと紫色のイヌフグリに。名もない野草をいとおしむMのしわざだ。とはいえ、このカタバミとイヌフグリ、わが家の庭に咲いていたなかの一部である。野草ではないが、今夜出た食事のおかずに仙台産焼きしそ巻きと山形産沢庵が出されていた。それにしてもMらしい。私が東北産の酒を捜している間に、彼女は国産しその葉使用の宮城県産みそを手に入れていた。

☆「3・11から 辻井喬さん 消費社会から転換を」、「福島第1原発 がれきから900ミリシーベルト 3号機建屋前で回収」、「避難所移転拒む 大槌町 『おまえ、あそこ住めんのか』 説明会で怒号 改善へ日程延期」、「大賀典雄元ソニー社長死去 81歳 東フィル会長など歴任」(24日付、中日朝刊)

平成二十三年四月二十三日
 けさの中日スポーツ。1面左肩に「孤独トレ…スランプ脱出しないと!! ブラ打ち込み100分」の見出し。中身を読むと「中日のトニ・ブランコ内野手が22日、ナゴヤ球場で“孤独トレーニング”に励んだ」とあった。3面トップも「中田賢『休むより練習』」の見出し。みな一生懸命なところが、ドラゴンズの選手らしくてよい。
 「若い選手をどんどん使うべき時がきた」「被災者を勇気づけるためにできることは、プロ野球選手であれば、一生懸命に頑張っている姿を見てもらうことだ(略)全員が泥んこになってプレーすれば被災者の励みにもなる」「どうした!(略)来週からは連勝でいってほしい」とは、5面わいわい広場に寄せられた箴言だ。

 秋に予定される中部ペンクラブの文学散歩のシナリオを描いて、と若き日の女優八千草薫さんそのままのIさんに促され土曜休みを充て心当たりに足を運んでみた。なんとか私が文学散歩の目玉に当て込む「武功夜話」の見学場所に、と狙っていた古文書が発見された土蔵までたどり着いた。
 ここで簡単に説明しておくと、「武功夜話」とは、戦国時代に信長・秀吉が尾張の地を出発点に天下人になっていったことを中心に前野氏一族の武功について記された前野家(現江南市前野町、27代吉田龍雲氏)の覚え書きだ。昭和三十四年九月二十六日の伊勢湾台風で古土蔵が損壊した際、多くの収蔵品と一緒に発見されたことで知られる。これらのなかに、三百八十四年もの間、人知れず埋もれていた「武功夜話」があったのである。文学散歩では、ほかに源頼朝から梶原景時に与えられた名馬・磨墨(するすみ)が眠る犬山市羽黒の磨墨塚史跡公園と景時が菩提寺として建立した興禅寺、羽黒城跡にも足を伸ばすつもりだ。あとは長編詩「大和し美(うるわ)し」で知られる一宮の生んだ詩人佐藤一英ゆかりの場所を探すことである。

 きょうは、武功夜話につき事前のヒントを得たいーと家を出る前に滝中学時代からの親友で社会的にも大変な要職にあるSに電話し、留守電に要点を吹き込んでおくと、Sから返電が入っており、「このところ、ずっと気力が出ない。イガミ、まあ~アカン」と珍しく弱気な声が入っていた。心配して電話すると「たたりの木を切って、おかしくなった」と盛んに泣いている。
 「何を言っているのだ。俺の声を聞いた以上、また元気が出てくるから」と励まして電話を切った。どうやら、東日本大震災の被災者のことを思い、その霊にとりつかれ、申し訳なさでいっぱいのようだ。「おまえが、めそめそしていてどうするんだ」と私。

 【きょうの1番ニュース】日本ペンクラブの会報403号(2011年3月号)が手元に届いた。1面は全頁にわたって阿刀田高会長による「東日本大震災に際して」の言葉である。全文を抜粋する。
―日本ペンクラブは、このたびの東日本大地震の、すべての被災者に対して心からなる痛嘆を申し述べます。亡くなられた多くの方々には、ただ祈るよりほかにありません。行方不明の方々には一人でも多くの命が救済されるよう切に願っております。もどかしさばかりが募ります。
 被災地への救助もままならず、私たちに何ができるのか、会員それぞれの活動とはべつに、文筆家の団体として、あらためて惨事の真因をさぐり、長く警鐘を鳴らし続けること、それが責務であると痛感しております。とりわけ惨事を拡大した原子力発電については確かな安全性を求めてこの存在を注視し、真実を世論に訴えていきたいと襟を正しております。
 なべて一日も早く惨害の地が回復するように、また健やかな日々が戻って来るように、言葉の力を信じて声高く希求いたします。この願いは被災地だけのものではなく、日本全体のテーマでもありましょう。こぞって「がんばれ、日本」と叫びます。  会長 阿刀田 高

☆「『家に帰して』住民怒号 東電社長、避難所で謝罪」「津波でも浸水でも帰りたい 危険地帯に1400世帯 石巻で調査」「精神的被害も賠償 福島事故で文科省審査会 来週にも一次指針」、「同僚多く犠牲『休むわけには』 妻不明…走り続けた 市職員高橋さん誕生日、指輪で死亡確認〈津波にマケズ・岩手陸前高田から〉=妻の安否が分からないまま、災害復旧に奔走した。岩手県陸前高田市職員の高橋一成さん(44)は、同僚百六人が死亡・行方不明となる中、休まず働いてきた一人だ。発生から一カ月がすぎ、妻の貴子さん(46)は遺体で見つかった。悲しみを心の内に押し込めて、今も現場で走り続ける。…、いずれも23日付、中日朝刊。
 「ストレスが病気を誘発 避難所 救出出動1500回 被災3県『仮設に早期移転必要』」、「生産回復『11~12月』 トヨタ 世界700万台割れも」(23日付、毎日朝刊)

平成二十三年四月二十二日
 きょうのY紙スポーツ面の見出しは「竜21イニング無得点」というもので、本文は「中日は2試合連続の完封負けで、19日の試合から21イニング得点なしとなった。中軸の森野、和田、ブランコがこの3連戦で3人合わせてわずか3安打で、チーム打率もとうとう一割台に。」というものだった。そして落合監督の談話は「(3連敗で今季2勝6敗1分けに)いい薬じゃないか。最悪9連敗も想定してたから二つ勝てば御の字だ」とある。
 この日の連勝チーム同士、ヤクルト対広島戦は、ヤクルトが広島に5―0で勝った。広島の連勝は6で止まり、ヤクルトは5連勝だ。

 「風評 牛豚避難に壁」(中日)「『今のうちに』自宅へ 通帳・印鑑・写真…」「3・11の記録 大地が海が 車いす押し 必死に坂へ 直後に濁流『まだ中に大勢』 老人福祉施設55人犠牲」(読売)「津波てんでんこか 集団避難か 陸前高田 点呼の区長ら犠牲多く」(毎日)……
 新聞を読んでいると、このところの新聞が血染めにされたペーパーに見えて仕方がない。新聞テレビ、そして週刊誌などの類も、東日本大震災を報じれば報じるほど、真っ赤な血に染められてゆく。

 仕事を終え、大須にある横笛の稽古場に行くと、師匠曰く「イガミさん。最近、お弟子さんの中に“霊にとりつかれた女性”がいてね」と。師匠は、日ごろから霊にとりつかれないよう身の回りを清潔にしておかなければいけないーとも、おっしゃった。
 どうやらニンゲンの中には、霊にとりつかれやすいタイプと、そうでない人がいるらしい。
 私は、その話を聞きながら、東北で地震や津波で命を奪われた人たちの霊は、いまこの世のどこらへんを浮遊し彷徨っているのだろうか。ふと、そんなことを思った。もし、その人たちの霊が私の心身に縋りついてきたなら、私は抱きしめたまま人生をそのまま歩いてもいい…。そんな、まったく別のことを思ったりしていた。合掌―

 【きょうの1番ニュース】Mが、近江源太郎監修、ネイチャー・プロ編集室構成・文による一冊の本「色の名前」をわざわざ自転車のペダルを漕いでアピタ内、夢書房まで行って買ってきた。角川書店発行で一冊二千五百円ナリ。虹や花、染め色など。すばらしい色彩ばかりが満載されており、Mの俳句や短歌、1行詩など作品づくりにも大いに役立ちそうだ。私も利用させてもらおう。(と言いながら、本は既に私の傍らに鎮座ましましていなさる)。

☆「首相に『もう帰るんですか』 避難住民憤慨=福島県田村市の市総合体育館で」(22日付、読売朝刊)、『5市町村計画的避難 原発20キロ圏外政府が発表 来月中に完了」「東電社長 福島で謝罪 知事『原発再開あり得ない』 『ひもじい思い、分かってますか』知事、東電対応に怒り」「沖縄ノート訴訟 集団自決の『軍関与』確定 上告棄却、大江さん勝訴」(22日付、中日夕刊)「伝説のアイドル『キャンディーズ』田中好子さん スーちゃん 55歳、乳がん 死す 二人三脚で闘病19年『最高の妻だった…』 夫・小達一雄さん語る」(22日、中日スポーツ1面)
 「米誌の『100人』に南相馬市長 ユーチューブで厳しく政府批判 南三陸の(菅野武)医師も」(22日付、毎日夕刊)= 米タイム誌は21日発表した「世界で最も影響力のある100人」に、福島第1原発事故での政府対応を動画投稿サイト「ユーチューブ」で厳しく批判した福島県南相馬市の桜井勝延市長(55)と、宮城県南三陸町の公立志津川病院、菅野武医師(31)を選んだ。

平成二十三年四月二十一日
 きょうの神宮。ドラゴンズはヤクルト館山投手の前に、いいところなく2―0で完封負けした。
 私は職場でラジオを聞いていたが、ドラゴンズの貧打は、とても昨シーズンのリーグ制覇チームとは思えない。「いまの状態ですと、チームはなかなか浮上できない、投手陣がちょっとかわいそうだ」「優勝候補のチームがこういう負け方をすると、お先真っ暗になりかねない」と悲観的な声が飛び交うなか、「(それでも)ポッと火がつけば、ポッと燃え上がりますよ」と語る楽観論者もいる。
 ヤクルトは四連勝、広島は六連勝、中日は最下位である。

 菅直人首相が福島第一原発事故で深刻な被害を受けている福島県の佐藤雄平知事と県庁で会談し、原発周辺二十キロ圏内は住民の立ち入りを禁じる「警戒区域」にするよう指示した。この警戒区域は二十二日午前零時から実施される。また半径二十キロの避難区域外にある飯館村、南相馬市の一部などを二十二日に計画的避難区域に指定する方針を伝えた。

 【きょうの1番ニュース】文学界五月号を読むうち、清水良典氏の「21世紀のオイディプスー村上龍『心はあなたのもとに』に至る軌跡」が気になった。村上龍の作品に見た変化、成熟について書かれているのだが、苦心の論評だ。村上龍の最も新しい文章として東日本大地震の直後にニューヨークタイムズに寄稿したものがあげられていたので、ここに記しておこう。
《全てを失った日本が得たものは、希望だ。大地震と津波は、私たちの仲間と資源を根こそぎ奪っていった。だが、富に心を奪われていた我々のなかに希望の種を植え付けた。だから私は信じていく。》(『危機的状況の中の希望』タイムアウト東京)

☆「住み慣れた土地 離れたくない 高台移転 揺れる被災地 建築制限進まぬ指定 陸前高田の男性 仮設抽選に外れ がれきの中にプレハブ」(21日付、中日朝刊)
 「福島原発事故 一時帰宅3キロ圏除外 20キロ圏警戒区域発表」、「(東日本大震災の大津波で壊滅し全児童百八人のうち七十四人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市の)悲劇の大川小 再出発」「子や孫の手掛かり求めて 壊滅校舎 絶えぬ家族」、「広がる善意 義援金64億円に (中日新聞)本社社会事業団」(21日付、中日夕刊)

平成二十三年四月二十日
 「あっ、三塁への暴投、悪送球だ。こりゃ、もういかん」
 隣席の野球通の同僚がパソコンを前にひと言つぶやいたのを聞き、「あ~あ、もうだめだ」と思ったのが、きょうの、神宮デーゲームでの、それこそぶざまな負けである。
 いまさら、とは思いながらも帰宅後、それでもケータイ中スポのドラゴンズ情報で、こわごわ確かめると案の定、九回無死一、二塁で投前犠打と河原投手の悪送球で万事休す。先発吉見は七回まで無失点で好投したのに自軍打線の援護射撃を得られず、ヤクルトにサヨナラ負けを喫した。ヤクルトは三連勝。先発の由規は9イニングを3安打に抑え、今季初勝利となった。
 やっぱり、勝たないかん、勝たないかんのだ。勝ちこそ、すべて。いや、最高のファンサービスだとは。誰かは知らぬが、名言である。やっぱり、なんだかんだと言ってみたところで勝たないかんのだわ。

 桜(ソメイヨシノ)は、どこもかしこも、すっかり葉桜となってしまったが、きょうも朝晩は結構冷え込み、東北の被災地では零下になったところまであるそうだ。そうしたなか、被災地でも新しい学期が始まった。瓦礫の山を見ながらの登下校は、どんなに辛いものか。でも、みんな踏ん張れ! 負けないで! 

 【きょうの1番ニュース】中日新聞本紙夕刊で太田治子さんの「夢さめみれば…洋画家浅井忠と明治」の連載が始まった。とは言っても、月曜日十八日付夕刊から始まっており、私が初めて気づいたのが、きのう夕刊を読んだときだった。浅井忠に目をつけたところは、やはり彼女の才といえよう。「グレーの洗濯場」「グレーまで」「続・グレーまで」と、これまで三度続いたが、まずは順調な船出といえよう。特に、今夕の写真「パリ郊外のグレー村の橋」(筆者撮影)は大変な出来栄えだった。これから、毎日の夕刊が楽しみである。

☆「津波被害の気仙沼『男山本店』」「もろみは耐えた 新酒希望の一滴」「酒蔵に亀裂、タンク傾く」「全国から注文、営業再開」(20日付、中日特報)「作業員 心のケア急務 診察の産業医訴え 休む場所なし いびき対策も」(20日付、中日朝刊)
 「福島第1原発 『水棺』1号機で開始 窒素注入と並行作業」、「20キロ圏を『警戒区域』に 官房長官明言 一時帰宅と同時設定も」(20日付、中日夕刊)、

平成二十三年四月十九日
 ドラゴンズは、鬼門の神宮でヤクルトとデーゲームを戦い、先発・中田賢投手が踏ん張れず、二回表に1点を先制したものの、その後、畠山の3号ソロ(二回)、田中の適時打(三回)、武内、畠山の連続適時打(五回)などを浴び4―2で敗れた。ヤクルトの石川は、6回2失点で今季初勝利となった。

 新学期が始まったが、教室避難者は一体、どこに移ったらよいのか。生活再建のための公的支援などに必要な罹災証明書の発行遅れ。いまだに行方が分からない夫や妻、わが子、父や母など。被災地では苦闘の日々の繰り返しが続いており、こちらの心までが萎えてしまいそうだ。被災者たちは、それでも生きていかなければならない。まさに生き地獄とは、このことか。
 そんな折、たまたま河北新報社が発行した「緊急出版特別報道写真集 3・11 大震災 国内最長M9・0 巨大津波が襲った 発生から10日間東北の記録」を、目にした。瓦礫を前に一人座り込む少女、壊滅した町、襲いくる大津波、壊れた家の屋根で横転したままの姿をさらした車、岸壁でひっくり返った船……。
 ただ、どうしても陸前高田、大槌、釜石、仙台、石巻、気仙沼、南三陸、相馬、浪江……といった市や町に集中しがちで、なぜか福島県のいわき市の写真が1枚もない。私自身が現地入りし、この目で確かめた、いわき市とて小名浜の永崎から北への海岸線、四ツ倉や豊間など壊滅した町は同じだけに、最低2、3枚はほしい。被災地があまりに広過ぎ、少し離れているのでやむおえないだろう。となると、塩屋岬直下の地獄絵と化した、いわき市北部の写真は、もしかしたら私が1番多く撮っているかも知れない。

 【きょうの1番ニュース】ネパールの首都カトマンズに住む日本人や日系企業社員らが東日本大震災の被災地への義援金を集めた話が、「大震災 心の傷和らげたい 義援金募金 ネパールでも」の見出しで中日新聞の名古屋市民版と尾張版トップ扱いで、写真入りで紹介された。この話はネパールの旅行会社で頑張る友人で稲沢出身の長谷川裕子さん(中日旅行の元海外担当)から寄せられた貴重な情報が元で日の目をみた。写真も彼女から何枚も提供されたなかの1枚が使われた。

☆「福島1~3号機 核燃料『溶融』認める 保安院再臨界『ほぼない』」、「教室避難者どこ移れば 新学期明け渡し求められ」(19日付、中日朝刊)「がれき通学路 日常へ一歩 中学で学習会 出席3割だけど」、「学校 戻った歓声 仙台・若林区校長が激励『泣いてもいい 前を向いて』」、「日東あられ廃業へ 負債30億円『雇用継続は困難』」(19日付、中日夕刊)
 「パンと牛乳だけでもおいしい 仙台の小・中 給食再開」(19日付、毎日夕刊)

平成二十三年四月十八日
 月曜日でプロ野球はない。選手でもないのに、精神的になんだかホッとした感じだ。昨夜からけさにかけての新聞テレビは、早大出身のルーキー、日本ハム・斎藤佑樹、広島・福井優也両選手一色の感だ。そんな中、同じプロ初勝利の三重県出身のオリックスの救世主・西勇輝投手(二十歳)の存在が私の目にとまった。テレビで瞬間的に見た彼は、はちきれんばかりの笑顔でこれは天性のものなのだろう、こういう選手が出てくると、茶の間までが明るくなるような、そんな気がした。
 中日スポーツによれば、「こちらも初勝利 西ユウキ 菰野高出身」の見出しに、ウイニングボールを手に笑顔の西投手の写真入りで「オリックスの救世主は三重のユウちゃんだ。西勇輝。20歳。抑えの岸田が登板した9回、ベンチから身を乗り出すようにして見守り、祈り、両手を重ね合わせて拝んだ。3年目の初勝利が決まった瞬間、満面に笑みを浮かべて右腕を突き上げ、バッテリーを組んでいた伊藤と抱き合った。『粘ったら必ず打ってやるからとベンチでみんなに声を掛けてもらっていた。うれしい。人生イチ楽しかった』」という。
 この記事に、野球の神髄を見たといっても言い過ぎではないだろう。

 名古屋城から金沢市の兼六園までの250キロを走破する「2011さくら道国際ネーチャーラン」が無事、終わった。中日新聞の「虹 いま寄りそう」によれば、ことしは東日本大震災で被災した家族への思いを込め、走破する人や海外から日本へのエールを込めての参加者など、いつもの年に増しドラマチックなネイチャーランが話題となったようだ。
 見出しにも「被災地へささぐ完走 伯父亡くした沖山さん」とあり、まさに涙、涙…で歴史に残る大会となった。このネイチャーラン実現に当たっては、大垣支局長時代に西濃運輸の後援と助成金を取り付けるため本社事業部員と奔走したことがあり、あのときの西濃運輸さんの協力があればこそ、これほどまでの大会に育った。私にとっても、感慨ひとしおのネイチャーランなのである。

 【きょうの1番ニュース】社で春の健康診断。血圧が少し高くて再検査されたが、まずまず。その後の問診では「塩分を控えるように」と若い医師に言われてしまった。五十代のころまでは、いつも7、80~120前後だったのに、ここ数年は、いつも90代~150前後だ。歳が高くなるに従い、血圧が少しずつ高くなってきている。塩辛いのが大好きなうえ、酒も飲めば、睡眠不足も始終だ。少しは気をつけよう。そのうち、コロリといくかもしれないな。今晩も飲みすぎて、Mに叱られた。

☆「児童の列に車 5人死亡 登校中 クレーン運転手逮捕 栃木・鹿沼」、「トヨタ全工場再開 大震災5週間 6月まで稼動5割」、「セントラル宮城も再開『車つくり復興貢献』」

平成二十三年四月十七日
 わが中日ドラゴンズ、ナゴヤドームのデーゲームで阪神にサヨナラ勝ちし本当によかった。ドラゴンズファンの誰もが歓喜したに違いない。
 それも延長十回2死1塁から和田が左越えに二塁打を放ち1点をもぎとって、の勝利である。きょうはテレビをつけた時は、既に中継が終了。ケータイのドラゴンズ情報でチェックすると、七回を終え、両チームとも無得点。7時過ぎに、いま一度、ドラゴンズ情報をチェックし中日の勝ちを知った。先発ネルソンが7イニングを3安打無失点と好投、以降は浅尾、岩瀬、小林正とつないで、五番手の鈴木が今季初勝利となった。
 正直私は野球に関しては何も知らない。でも、この繋いで繋いで、しっかり勝ちにまでもってゆく采配は、素晴らしかった。手堅い落合監督ならでは、だろう。阪神も下柳、久保田、小林忠、福原とつないだが、「投手一人の差」が出たのではないか。それと、拮抗した試合の場合、投手はたくさん出てきた方が観客も喜ぶ。
 さて、『持ってる』日本ハムのルーキー斎藤佑樹投手だが、きょう札幌ドームのロッテ戦に初先発、ロッテの井口に3本打たれたものの、味方打線にも助けられ、8―4でプロ初先発初勝利をあげた。この日は斎藤とは同期の広島・福井優也投手も、巨人戦に初先発し、4―3で初勝利をあげた。巨人ラミレスまでが3打数ノーヒットに終わり、ことしのプロ野球は、いろんな要素が加わり、こんごますます面白くなりそうだ。

 きょうは年に四回ある土用でも、春の土用だ。
 うち午前中、Mと一緒に自宅二階と一階の本棚や、冷蔵庫の上に地震対策用の突っかい棒を計八個、施した。やりながら「東海地震でも来ようものなら、気休めに過ぎないかもね」と彼女。それでも、あとで後悔するよりは「やるべきことはやっておこう」というのが私たちの考えである。「本って。意外と凶器なのよ」との言に、催促されての作業となった。
 きのう、きょうとこの町の祭りということで、興味本位も手伝ってふたりで近くの古知野神社に。このあと買い物がてら、まちなかを車と足で流したが、あちこちにお休みどころとか献馬宿、奉納獅子頭の安置所などがあり、法被に身を包んだ老若男女が屯していた。「へえ~え。こんなにも子どもたちが居たんだ」と目を丸くするMを傍らに私はこうした営みこそ大切なのでは、とふと思った。

 むろん、祭り半島・能登のデカ山やキリコに比べたら、それこそオモチャみたいな獅子頭や子ども神輿かもしれない。でも、そこにはその土地土地に住む人々に共通した匂いといおうか、哀愁といったようなものがあるのである。小牧しかり、戸田城主・十万石の大垣しかり、そして大津も、これまたしかりだ。古知野神社の場合、馬を奉納するところに歴史上のわけが秘められているのでは、ふと思いもする。なぜなのか。一度調べてみよう。

 【きょうの1番ニュース】けさの中日新聞訃報欄で一番で知った。NHKラジオの折り込みどどいつ生みの親、元NHK名古屋放送局長、芸能局長なども務められたあの中道風迅洞さんが十五日、心不全のため亡くなられた。九十二歳だった。
 風迅洞さんには私が、かつて編集局デスク長時代に夕刊特報欄で「どどいつ」を連載し、どどいつ対談で紹介させて頂いたこともあり、ずいぶんとお世話になった。辛口のなかにも、綽綽とした余裕があり、万人に対してなんとも風雅な愛をお持ちの方で、この先、ああしたタイプの文人はなかなか出ては来ない気がする。
 「新編どどいつ入門」などご本を出版のつど、音信を兼ね送ってくださった。昨秋も「四十年目の約束―きわめて私的な中国戦記」が送られてきたばかりである。追記に、この私も「露命いかなる道の草にか落ちん」であろうーと書かれており、ある種覚悟のようなものを感じ心配していたが、まさか本当になろうとは。あぁ~。世は、どこまでも無情だ。なんて言うことだ。合掌。

☆「官房副長官 計画避難 飯館村に謝罪」「住民説明会『早期に区域告示』」「輝く笑顔 7000冊 被災地に絵本、読み聞かせも」、「人影戻る日 来るのか 原発から5キロ福島・大熊町 男性が一時帰宅 見慣れた町 不気味な静けさ」、「やはり高台移住しか…『日本一防潮堤』津波は越えた (岩手県)宮古・田老地区 繰り返す悲劇、揺れる住民」「警察庁舎も壊滅被害 南三陸など 署員ら懸命の業務」(17日付、中日朝刊)

平成二十三年四月十六日
ナゴヤドームでの阪神戦。ドラゴンズは延長十一回、1―1で阪神と引き分けた。ドラゴンズは先発小笠原が三回2死から左ふくらはぎを痛め退場するというアクシデントに襲われた。それでも、この後は山内、三瀬、河原、浅尾、岩瀬、平井、小林正、鈴木投手と続き、なかなかの投手リレーで、それなりにファンからは喜ばれたに違いない。
  そればかりか、六回無死から森野がプロ野球二百六十三人目となる通算1000本安打を達成、一塁に到達すると、ヘルメットを取り、ファンに一礼する嬉しい光景まで見られた。 試合後、落合監督自身、「不思議なゲームだったよな」と語ったそうだが不思議を演出したのは、一体だれなのか。監督にほかならない。でも、負けなくてよかった。負けたら、終わりだ。

 土曜日。きょうとあすは、この町の春祭りということで「二人とも、昼間は家に居ないので山車を引くこどもたちに渡すご祝儀を宿(シルバーセンター)詰めの人に渡しておいてよ」とMに言われるがまま、直接、宿まで出向いて男の子と、女の子用に役員さんに手渡しさせていただいた。
 この後は社に上がって昨夜、ナゴヤドームで撮った写真を私の記者パソコンに取り込んだ。ナゴヤドームで取材中、再生出来ません、と調子が悪くなった割には、すんなり保存でき、ひと安心だ。ついでに本日付中日スポーツに掲載されたファンクラブ通信をホームページにアップ、しばらく新聞をチェックしたのち、帰宅した。
 祭りというので江南駅から花霞の自宅まで、ゆっくりと歩いてみたが、あちこちに献馬宿とか、みこしの安置所などがあり、法被姿の若い衆がなにやら飛び回っている光景になんども出くあした。それにしても、こどもたちがハッピ姿でみこしを引く光景には、たまたま社に出向いていたためなのか、不運にも一度も見かけなかった。それとも、みこしは明日なのかもしれない。昨年は、Mが入院する病院と家を往復する間に何度も見かけたのに…。と思うと、少しばかり寂しい。

 【きょうの1番ニュース】帰宅後、埃だらけになっていた私の部屋の掘り炬燵をきれいにした。ここには、たいてい、私がパソコンの前に座って執筆している間は、こすも・ここが寝そべっている。いやはや、ここはよくあんな不衛生なところに居たものだ」とは私の率直な感想だ。きれい好きなシロは、なぜか、これまで掘り炬燵に入ってきたことは一度もない。「もしかしたら、お姉のアタイに遠慮しているからじゃないの」とは、こすも・ここの弁である。

☆「福島原発事故 出荷制限農家8万4000戸 産出額671億円 各省庁が被害報告」「観光や医療、輸出も深刻」、「がれきの町 福よ来い 陸前高田・こいのほり」、「震災孤児 100人超す」、「田中 甲子園で勝利 無四球完投 東北へ『やりました!』」、「避難区域の福島・富岡町 ひっそり 桜満開(河北新報)」「1500年 悠久の美 本巣の淡墨桜」(16日付、中日朝刊)

 「茨城 震度5強 東海原発異常なし」「中高生ボランティア奮闘 僕らの町 支えたい 岩手、宮城の避難所 調理、掃除、FM放送」、「G20 日本復興へ連帯 世界経済『回復に広がり』 共同声明採択」、「日本文学研究で知られる米コロンビア大名誉教授のドナルド・キーンさん=八十八歳=が、日本に永住する意思を固め、日本国籍取得の手続きを始めた。……ニューヨーク発共同」(16日付、中日夕刊)

平成二十三年四月十五日
 今夜は今シーズン、ナゴヤドームでは初の試合。
 相手は阪神。私も、公式ファンクラブの仕事を兼ねて会員に対する取材の合間にドーム一角で事の顛末を見守っていたが、一度は5―0と開いてしまった点差を縮めたものの、5―4で破れ去った。先発・朝倉は、みんなの期待を背に受けての投球となったが、敗戦投手となり残念無念のひと言に尽きる。
 ただ、こんな試合にもドラゴンズにとっては、ひとつの光りがあった。それは2点を追う9回裏の土壇場に代打登場の福田永将内野手が、阪神の抑えの切り札、剛球・藤川から右翼席にソロアーチを打ち、見せ場をつくったことである。福田は十三日の横浜戦でも本塁打を打っているだけにますます楽しみな若武者が出てきた。この日は阪神・金本が8回に打席に立ったものの、自軍の盗塁失敗で打席が完了せず、公認野球規則により、連続試合出場が1766で途切れるハプニングまであった。

 今シーズンは、東日本大震災発生後のペナントレースということで、どこかドームを包む空気が違う中、試合開始前には選手もスタンドの観客も全員そろって黙とうをした。1番ゲートを入ったドーム内の入り口には義援金を募る募金箱が置かれ、球団のチアドラやОBが交互に立ち「協力おねがいしまあーす」と声を枯らした。試合の間、私は例によって観客席をあちらこちらと回ってみたが、なじみのドラゴンズファンの多くの方々にお会いすることができ、うれしく思った。三塁側と一塁側の外野席を見比べてみたが、阪神の三塁側応援席の方が圧倒的に熱くなっているように感じた。

 桜は、いよいよ葉ざくらへ、と一直線だ。
 どこかしら、哀愁のような、もののあわれを感じる。地下鉄のナゴヤドーム前矢田駅からドームに通じるドラゴンズロードを人々は黙々とあるいてゆく。ウイークデーでもあってか、いつもに比べたら、確実に少ない。少ないとは言っても、結構に多い人波で、行く手には「あまり券ありませんか」「ありませんか」「あったら買うよ」といった男たちの声が飛び交う。見慣れた光景だ。
 ドームに向かいながら、私はこれらの多くの人たちの中で一体、何人を知っているのだろうか。おそらく、わが人生の網膜に映るすべての人が、きょうの物言わぬ出会いが人生で最初で最後に違いない、とそんなことを思ったりした。みな一人ひとりが一匹のアリさんと同じなのだ。人間の場合、一人ひとりに意識があるから、やっかいだ(いやいや、アリさんにだって意識はあるだろう)。

 中日新聞夕刊・夕歩道によれば、吉村昭著「三陸海岸津波」(文春文庫)が、大震災後、全国の書店で相次いで売り切れになって五万部の増刷に。―なっている。

 【きょうの1番ニュース】ドームで取材中写真撮影につかうデジカメのカードが再生不能となった。下手に、これ以上、撮ったり再生すると、これまでに取材済みの大切なコマまでだめになってしまうのでは。あすは、土曜日だが、さっそく社で必要なコマだけでも記者パソコンに保存しておかなければ…。でも、うまくできるか。不安だ。

☆「福島第1原発 10キロ圏 本格捜索開始 福島県警 遺体収容、アルバムも」「福島第1原発 3号機温度上昇 圧力容器上部 冷却水不十分か」、「義援金 3県に30億円 本社と社会事業団 読者の心届ける」(15日付、中日朝刊)
 「原発事故賠償 世帯100万円 月内支給へ 東電発表 仮払金 単身75万円」、「米どころ 塩害に泣く 石巻海から6キロの田も浸水 『2、3年は作れない』」、「悲しきウミネコ乱舞 松島・磯崎漁港」(15日付、夕刊)

平成二十三年四月十四日
 横浜スタジアムで行われた横浜との開幕三連戦の最終日のきょう、ドラゴンズは岩田投手を先発で起用したが、結果は8―1と惨たんたる負け試合となった。村田選手ら相手チームの打撃ばかりが目立ち、ちょっぴり厳しく寂しい一日となった。
 でも、負ければ負けたで、ドラゴンズファンは「あ~あ、ボコボコにやられてまったがや。あれじゃあ、見る気がせえへんわ」とか「勝つことこそ、何よりのファンサービスだと言うんなら、勝たないかんがね。オチアイさんは、何やっとるだね」と手厳しい。ある野球通になると「きょうは、最初から勝とうとする気持ちがあれへんだった。テレビを見ていて、よう分かった」とくる。というわけで、我々ファンとしては、勝ってもらわないかんのだ。
 私は個人的には、岐阜県の出身で礼儀正しい岩田投手が先発と聞いてすごくうれしかった。でも、野球は人生と同じだ。勝つときもあれば、負けるときだってある。

 このところ、私には被災地でたくましく生きるすべての人たちが、極限の姿、「天使」のように見える。家族を失いながらも、苦しみ、悲しみ、悔しさを乗り越え、それでもただヒタスラにめげないで生きていこう、とする人々が、普通に毎日を過ごす人々とは比べものにならないほど純粋かつ、けなげに映るのである。東北で被災した人々をどうして励ましたらよいのか、と周囲が右往左往している間に被災者たちはその時々の目的に向かって自分だけを頼りにただヒタスラに、前を向いて歩いているのである。一歩、一歩がたくましいばかりか、美しいのだ。

 今夜、Mと食事をしていると、彼女は私にポツリと、こう言った。
 「あのねえ、原発事故は明らかに人災だが、津波は自然災害だから仕方ない、と言う人が多い。でも、私は津波による被災とて人災だと思う。海はなんにも悪くはない。なぜかといえば、過去三度も大津波に襲われながらもニンゲンたちは、それでも慢心し、住宅を海の方へ、海の方へ、と近づけてつくっていった。過去の歴史の教訓から、高台での住宅街化を計るなど、当然万一に備えた手を打っておかなければならないのに、おざなりになっていた。」

 この日、中日新聞社と中日新聞社会事業団は、読者から東日本大震災の被災者のために寄せられた義援金三十億円を、宮城、岩手、福島の三県にそれぞれ十億円ずつ届けた。東京の首相官邸では、東日本大震災復興策の青写真を政府に提言するための復興構想会議が開かれ、議論のたたき台として「震災復興税」の創設検討を明記した基本方針が示された。テレビニュースによれば、明治三陸津波(一八九六年)では最大三十八・九メートルの高さの津波が確認されており、今回の大震災津波は、この高ささえも上回る可能性が強い、と報じている。

 【きょうの1番ニュース】Mが昨年の四月十四日に脳の大手術をしてから、ちょうど一年がたつ。術後の経過はよいので、このままよくなってほしい。担当医師によれば、Mの脳はすこぶる強くて良い“脳力”だということで、きっと良くなると信じている。

☆「福島第1原発 4号機プール燃料破損 放射性物質 濃度通常の100倍超」「3・11から 瀬戸内寂聴さん 思いやりの念 届く」、「気仙沼・大島 壊滅の島 負けない 孤立…島民が消火、食確保」「償い炊き出し黙々 賭博で解雇元大嶽親方(元関脇貴闘力) 『お相撲さんだ』久々笑顔」(14日付、中日朝刊)
 「津波で壊滅 南三陸・志津川病院 医療再生避難所から 診療所開設、感染症を予防」、「震災後初 塩釜漁港17トン水揚げ 復興へ希望のマグロ」、「『被災地に力を』高山祭始まる」、「復興のテント村 石巻にボランティア拠点」(14日付、中日夕刊)

平成二十三年四月十三日
 横浜スタジアムであった開幕第2戦、ドラゴンズは中田賢投手が先発し最後は岩瀬投手が抑えて8―7で辛勝し、1勝をあげた。この試合、点の取り合いとなったが、5―5の四回に森野のソロ本塁打で勝ち越し、五回に谷繁の適時打、七回にも代打福田のソロ本塁打で、なんとか逃げ切った。岩瀬投手は、通算225セーブをあげ、ファンともどもホッとひと息といったところか。
 この日、ヒーローインタビューに立った森野選手は「東北の被災地の方々に元気を与えられれば。当然、二連覇を目指します」と語った。きのうも書いたが、ことしのプロ野球選手には、復興支援シーズンの名にふさわしく、東北の被災者に勇気と希望を与えたい、といった気迫が全選手に見て取れる。好ゲームの一喜一憂が、被災地に希望の光りを与え続けられれば、と私自身も、そう願っている。
 QVCマリンフィールドであった楽天―ロッテ戦は、山崎のスリーランなどで、5―1で、前日に続いて楽天が勝った。北九州であった巨人―ヤクルト戦は僕の大好きな、ひょうきんおじさん・ラミレスの本塁打もあり3―0で巨人の勝ち。本塁打を打ったあとのラミレスの独特のしぐさによるパフォーマンス「ウイ・アー・ワン がんばれニッポン」のひと言が効いていた。あの(これまで、ガムをかみ続ける姿があまり好きでなかった)小笠原が「野球をできるだけでも、ありがたい」と述べており、あらためて見直し共感した。

 東日本大震災で被災した仙台空港が、きょう約一カ月ぶりに旅客便の運行を再開した。きのうの本紙夕刊・大波小波「どの神話を信じるか」が、なかなか良い。「電力会社を大口スポンサーに持つテレビには『安全』を唱える学者ばかりが登場しているような印象があり、一方、原発を危険視する学者は大学でも一向に出世できないという。何かを信じることが人間にとって不可欠である以上、『神話』が無意味だとは言えない。だとすれば、どの神話を信じることが幸せに繋がるかが重要だ……(エピメテウス)」と。
 中部ペン編集部から依頼されていた掌編小説「美歩」を再三の推敲のうえ、未明に提稿。

 【きょうの1番ニュース】桜が赤みを増し、いよいよ葉桜が始まった。少しずつ、空に舞って散る、さくら吹雪―。その、ひとひら一ひらから、大震災で命を落とした人びとの無念さ、哀切の響き、が伝わってくる。私は先日、五条川で写した桜の画像を、Mの携帯電話に流し込んだ。ことしの桜は二度とこないからである。

☆「闇サイト殺人 2被告に無期懲役 名高裁判決堀被告死刑破棄 『模倣性高いといえず』」「被害者1人 判例を踏襲 破棄、より丁寧な説明を」、「福島『レベル7』 チェルノブイリの1割 保安院放出推計 大半は2号機から」(13日付、中日朝刊)
 「15歳未満脳死 少年同士初の心臓移植 10代後半男性に 阪大で手術終了」、「希望乗せ 仙台に鶴 旅客便再開 JALが1番機」、「医療従事者に心のオアシス 専用休憩室、心理士が訪問…自らも被災 過酷勤務のストレス緩和」(13日付、中日夕刊)

平成二十三年四月十二日
 「見せましょう。野球の底力を」(東北楽天選手会長・嶋基宏選手)。
 突然の東日本大震災と原発事故で日本の行く末が案じられるなか、当初開幕予定が二週間以上遅れて、きょうプロ野球が始まった。ことしは、どのチームもどこか違って選手のだれもが一様に輝いて見えたのは、なぜか。大震災と放射能汚染に苦しむ人々のためにも、希望と勇気、そして元気を与えるプレーを、との意気込みが感じられるからである。中日スポーツ1面に載った中日ドラゴンズ・落合監督の顔もなかなかいい表情だった。
 わがドラゴンズは横浜スタジアムで横浜との開幕戦(デーゲーム)に臨んだが、たのみの浅尾投手が九回裏に一死一、三塁から代打内藤に中前打を浴び5―4で敗れ去り、昨年に続き2年連続の黒星スタート、横浜はサヨナラ打で八年ぶりの開幕戦勝利となった。
 注目の星野監督率いる楽天はQVCマリンフィールドでロッテと対戦し、嶋選手のスリーランなどで楽天がロッテを6―4で突き放した。けさの中日春秋にもあったように、いよいよ、<九つの人九つの場を占めてベースボールの始まらんとす>正岡子規、の季節到来である。

 福島第1原発の事故で、経済産業省原子力安全・保安院はきょう、原発事故の深刻度を示す国際評価尺度(INES)の暫定評価を現在のレベル5から最悪のレベル7に引き揚げた。これは、一九八六年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故と同レベルである。作家の瀬戸内寂聴さんがテレビでこうおっしゃっていた。
 「原発は人間のつくったものなので明らかに人災です。いまは被災地の方々に“がんばれ”などと言っちゃあだめです。何かをしてあげたい、と、そう思うだけで相手にも通じるはずですから。そして一日に一度でいいから笑うように。人間はこれまで驕りすぎだった」と。そういえば、菅直人首相も「被災地の農産物を楽しんで食べよう」と呼びかけていた。
 Mが有無を言わせない物言いで「津波だって被害者なのだから。海を怒らせた結果がこうなったのだから。ウチらは、気負うことなく普通に暮らしていればよいのでは。普通に暮らすことって。一番、むずかしいよ」と話す。そういえば、昨年のいまごろ、Mは入院中だった。
 きょうは仙台と福島でも桜の開花が宣言された。♪さまざまな事を思いて桜かな…、か。東北地方の余震は相変わらずで、この日もかなり強い揺れが被災地を再三にわたって襲った。

【きょう1番のニュース】ネパール・カトマンズ在住の長谷川裕子さんから、ネパールで日に日に広がる日本支援の輪に関するメールをいただく。親日家の間で最近行われた支援のための朝食会の話しなどホッと、心がなごむ内容だ。それから何げない話だが、帰宅するとわが家のストーブが一台だけ残し、一斉に撤去されていた。Mのしわざに違いない。温かい季節になったということだ。

☆「福島、茨城震度6弱 いわき土砂崩れ2人死亡 M7・0余震」、「20キロ圏外に『計画避難区域』 飯館村など 汚染累積値を考慮 一カ月めど退避」「3・11 午後2時46分 被災地 祈り 震災一カ月 全容なお見えず」(12日付、中日朝刊)