【一匹文士、伊神権太がゆく人生そぞろ歩き/2018年7月6日から】

平成30年7月31日
 31日夜。火星が15年ぶりに地球に大接近。5759万㌔にまで近づき2003年いらい、6000万㌔を下回る大接近になった。
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 あさ。1番で相棒と不燃物のゴミ出しに出向く。
 ゴミ出しのさなか、花霞の元総代さんから「いがみさん」と声を掛けられ「ハイ。おはようございます」と答えると「いがみさんの本=文庫本短編集「ピース・イズ・ラブ 君がいるから」(人間社)=、駅前の本屋さんで購入し読ませてもらいましたよ」とのこと。私は思わず「ありがとうございます」と礼を述べた。思いもしてなかった方に、こうして読んで頂けたとは。痩せても枯れても作家冥利に尽きる、とはこのことか。
 午後。こんどは胸懐のスマホからポン、ポロリンと何やらラインの小気味よい音。開くと「文学者の会」の仲間で東京在住の詩人野武由佳璃さんからで「本は読みましたよ。OFFにのせたのと時代小説いろいろ多彩でした。お暑い日が続きます。お身体にきをつけてね」といった内容。私は彼女に「ありがとう」と返信させて頂いた。

 昼前に舞と江南厚生病院へ。
 このところは私と舞のふたりで競って病院めぐりをしている、そんな感覚にとらわれる。でも、ふたりとも正直言ってまだ若い。大丈夫だ。
 きょうは、先に行った舞の心臓の超音波、24時間のホルター心電図検査に続く心臓に負荷をおわせてのトレッドミル検査(主に細動心房の有無を調べるための検査だという)の結果を聞くためだったが、結論から言えばトレッドミルは検査データが取れなかったという。
 デ、担当医師が言うには「それか。もうひとつ、上のカテーテル検査をされるか。このまま診療を止められ、これまで通りの生活をされるかです。幸い、先に実施済みである超音波検査も24時間心電図の方も特に問題なく心臓の動きもすこぶるよい。今段階では大きく引っかかるものはありませんので。どちらでもいいですよ」とのことだったので舞の言葉「もうこれ以上の検査はしたくない」を優先し「普通どおりの生活をする」ことにした。

 ここで疑問点がひとつ。舞に付き添った私が「それはそうとトレッドミルの検査結果は、どうだったのですか」と聞くと医師からは「それが検査できず、データも得られませんでした」の返事。そういえば、あの日検査室から出てきた舞は「用意されたベルトコンベアの上をめちゃくちゃ速く何度も歩かせられるので『そんなに速くは歩けません』と言いながらも、私なりに歩いた」と言ってはいたが。
 結局のところ「検査そのものを中断してしまい、データは取れていない」とは、初耳だった。私は内心「検査が出来ない検査など、検査といえないのではないか。それより何より心臓の病が心配される患者に、歩けないほどの負荷を与えて何度も何度も走るように歩かせるなど、そういう一方的な検査方法そのものがおかしい」と思ったのだが、ここは患者と医師双方の感情を害してしまうのもよくない、と判断。
「ああ、そうでしたか」と言うにとどめたのである。

 いずれにせよ、私たち家族を不安に陥れていた舞の心臓検査は、こうした形でひとまずは決着。検査に至らなかったトレッドミルとは別に、医師の言うそれ以外のひと通りの検査結果を見る限り心配はありませんーとの判断を信じるほかない。
 あとは舞自身が自らのからだを大切にしなければ。かつて私が記者として第一線で飛び回っていたころ、「自分のからだは自分で守ってよね」とよく彼女に言われたことばをそのまま返させてもらおう。ふたりとも、いつまでも若くはないのだから。
 あまり、無理はしないことだ。
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 日銀が31日の金融政策決定会合で、これまでの金融緩和策を修正し、0%程度になるよう誘導してきた長期金利の上昇を容認することを決めた。黒田東彦総裁は0・2%程度の上昇を念頭に置いていることを明らかにした。
 日本ボクシング連盟が日本スポーツ振興センター(JSC)から交付された助成金を不適切に流用していたことを認める謝罪文を日本オリンピック委員会(JOC)に提出していたことが分かった。

7月30日
 2020年の東京五輪・パラリンピック組織委員会が30日、福島県のJヴィレッジで開いた理事会で両大会の開閉会式の企画、演出の体制を承認。総合統括を狂言師で演出家野村萬斎さん(52)が務めることに。
 野村萬斎さんとは、なかなか味のある選択である。どんな演出となるのか。いまから楽しみだ。
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 台風12号は29日夜から30日未明にかけ、小田原、熱海、豊橋、田原などの海沿いや離島のホテルはじめ、救急車を含む通行車両など多くに思いがけないほどの甚大な被害を与え、この日は九州南西を進み海上に居座ったままの状態が続く。名古屋では緑区と南区境にある天白川の大慶橋付近でボラ1万8000匹が死んだ。台風の接近で川底のヘドロが巻き上がり、水中の酸素が減ったためらしい。
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 京都大学がヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った神経細胞をパーキンソン病患者の脳に移植する世界初の臨床試験を8月1日から開始し、年内にも1例目の移植手術をする、と発表。
 福岡高裁が国営諫早湾干拓事業(長崎県)をめぐり国に開門を命じた福岡高裁判決を事実上、無効化する逆転判決を言い渡した。

7月29日
「今夜はすごい月だよ」と言われて見た月。右の白い点が火星(わが家のベランダにて)
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 弓張り月のような台風、逆走台風は逝った。豊橋で農業用ハウスが吹き飛ばされたり、熱海でホテルの窓ガラスが割れたりするなどの被害は出たものの、被害は最小限にとどまった。
 少なくとも昨日からきょうにかけ私のからだに確かに吹き付けていた風は、わが体内に少しだけ強風の余韻を張り付けはしたものの、九州の西のどこかの海へ去った。
 こんなことを言ったら叱られるかもしれない。でも〈かぜ〉の余韻は嫌いではないだけに、なんだか寂しい気もする。ニンゲンたちはじめ農地や家屋などにケガや破損などの被害さえ与えなければ。の、話だが。

 午後。名古屋国鉄会館6階602号室での中部ペンクラブの理事会に出席。シンポジウムや秋企画などの進め方についてみんなで話し合った。帰り、有志で近くの喫茶店に入り談笑したが、これがまた笑い転げるほどに楽しくて。時の過ぎゆくのも忘れるほどだった。中に中ペンの顔的存在でもある八千草薫さんそっくりの美女がひとり。彼女はなんと84歳だが会うほどに若々しく、いろいろと厳しく教えをこうた。
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 大相撲夏巡業が大垣市総合体育館で始まり左大胸筋痛などで8場所続けて休場した横綱稀勢の里が昨年の秋巡業いらいとなる初日からの参加で四股などで調整した。
 台風12号の影響で1部行事が中止となった夏の風物詩「おりもの感謝祭 一宮七夕まつり」は、この日が最終日。歌手の荻野目洋子さん(49)がJR尾張一宮駅前盆踊り会場でヒット曲「ダンシング・ヒーロー」を披露して閉幕。
 2016年のノーベル文学賞を受賞した米シンガー・ソングライター、ボブ・ディランさん(77)が新潟県湯沢町での野外音楽イベントに出演。相変わらず歌以外はいっさい話さず、16曲を披露。最後に代表曲【風に吹かれて】をバイオリンを交えてうたった。

 夜。NHKスペシャル「アインシュタイン 消えた天才脳を追え」を見る。

7月28日
 ひそと待つ気まぐれあなた台風を
 =伊神舞子〈きょうの俳句〉minuetto-miから

 午後6時過ぎ。
 風が強くなり始めた。なんだか生暖かい。不気味だ。8時過ぎには新幹線が静岡―掛川間で一時、運転を見合わせたが同半過ぎには運転を再開。台風12号は三宅島を西へと進む異例のコースを取り浜松市の南を西に進み未明には伊勢市に上陸したようだ。 
 台風が異例の進路を取ったわけは、北海道付近にチベット高気圧と太平洋高気圧が張り出していて、北や東には進めず、日本の南の上空にある反時計回りの空気の渦である【寒冷渦】の力で西に強く押し出されたためだ、という。

 土曜日。きょうは近くの古知野食堂まで昼食に出向いた。全身に陽射しが突き刺さる暑さに、思わず「あつい」の声が出てしまう。これでも台風12号が弓張り形の放物線を描いてきょう深夜からあす未明にかけ、ここ東海地方に上陸、豪雨を持たらすだなんて。
 信じられない。
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「いいねえ、すごくいい。」
 読み残していた文學界6月号の平野啓一郎の創作「ある男」(550枚一挙掲載)をきょう、読み切った。読み切ると同時に私の口からは誰に言うとはなしに読後の実感としてこんな言葉が漏れ出たのである。

(本文から)
一体、愛に過去は必要なのだろうか?(略)
――わからなかった。ただ、事実は、彼の嘘のお陰で、自分たちは愛し合い、花という子供を授かったのだということだった。

 私もこういうケレン味のない小説を書きたいな、と心底思う。
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 ことしも、〈レディース麻雀〉生みの親で知られる、あの木村東平=キムラトンペイ=さん(日本プロ麻雀連盟中部本部 本部長八段。中日文化センターレディス麻雀教室講師、松坂屋友の会カトレヤ文化教室講師、名鉄カルチャースクールレディス麻雀教室講師など)から暑中見舞いのはがきが届いた。
 内容は次のとおりだ。
「ショックだ、盟友の小島武夫氏が亡くなった 予感はあったが、82才は5年早かった
 長途(チョウド)36年前、私が中日スポーツの王位戦で優勝した時(生意気にも) 生まれて初めて祝賀パーティーをナゴヤキャッスルでやった時 お祝いに来て挨拶をしてくれました……皆んなの前で、麻雀界を背負って立つ佛の東平(トンペイ)だと渾名をつけてくれました 今一度だけ卓を囲みたかった…」で始まるこの暑中見舞い。
「猛烈な豪雨が西日本を襲う 裏山が崩れ、家ごと潰され 死んだ人達の無念を想うと 唖然として、言葉も出ない 元気でへこたれずに講師を続けたい」とあった。

 がんばって。トンペイさん!
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 第百回全国高校野球選手権記念西愛知大会はこの日、愛知県岡崎市民球場で決勝があり、愛工大名電が9―4で東邦に勝ち、5年ぶり12回目の夏の甲子園出場を決めた。
 福島県で千年以上続く戦国絵巻さながらの「相馬野馬追(そうまのまおい)」が28日、始まり浪江町の商店街を騎馬武者行列が練り歩いた。この相馬野馬追は南相馬市を主会場に30日まで開催される。この日はサッカー施設「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)のスタジアムなど主要施設の営業も再開。

 満月が地球の影にすっぽり入る皆既月食が28日明け方に起き、沖縄県・与那国島では、皆既月食特有の赤黒い「赤銅色」に染まった姿が見られた。この日はたまたま15年ぶりに地球に大接近している火星とも並び、貴重な天体ショーとなった。台風12号が異常な進路を取ったのは、この皆既月食の仕業ではなかろうか。ふと素人考えでそんなことまで思ってしまう。
 この世は、なぞ、またナゾ。すべてが謎の世界の繰り返しである。

7月27日
 金曜日。台風12号は28日午後にも関東に接近、その後は弓張り月のように西に大きくカーブする珍しい経路を辿り、29日明け方には東海か近畿付近に上陸しそうだという。
 こんご西日本豪雨の被災地を含め、広範囲で非常に激しい雨が降る恐れがあるというが、被害のないことをただ天に願うだけである。
 というわけで、28日に岐阜市の長良川河畔で開催が予定されていた第62回全国選抜長良川中日花火大会も台風12号の接近に伴い、来月25日に延期となった。

 翁長雄志沖縄県知事が27日、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設で、前知事が出した沿岸部の埋め立て承認を撤回する手続きに入る方針を表明。

 第100回全国高校野球選手権記念東愛知大会決勝が27日、岡崎市民球場であり愛産大三河が西尾東を3―1で退け、22年ぶり2回目の夏の甲子園出場を決めた。 夏の甲子園は8月5日に開幕する。
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 巨人の山口俊投手が中日戦でプロ野球史上79人目、通算90度目のノーヒットノーラン、無安打無得点試合を達成。中日は巨人に5―0で完敗、竜の負け越しはなんと12にまで膨らんだ。
 中日のふがいなさを嘆く声は、いまだに私のもとにメール(ショートメール、ライン含む)やフェィスブックで憤慨やるかたなし、の心境を送りつけてくる熱狂的ともいえるドラファンが多いことからも分かる。あぁ~、なんたることよ。

 ここに北海道の熱烈ファン、會川貞子さんが私のスマホに送りつけてきたメールのごくごく1部を以下、紹介させていただく(いずれも26日夜。3度にわたって届いた分の紹介に留める)。
「【1、2軍とも最下位】こんばんは。2軍はオリックスにナゴヤ球場とナゴヤドームで3連敗してしまいました。オリックスと入れ替り最下位になりました。1、2軍とも最下位です。森監督以下1、2軍とも辞任した方がいいですね? 次期監督は私がやりたいくらい(中略)北海道は毎日23度と寒いくらいです」
「【ガルシアと平田】こんばんは。平田が首位打者、ガルシアが防御率1位なのに、最下位です。大島と京田の出塁率とその他投手陣が悪いから最下位なんだよ 岩瀬や荒木や山井や松坂のベテランが頑張っているけど、北海道ハムみたいに若い人が出てきて欲しいですね 来週からNMB48全国ツアーで2ヶ月全国各地に行ってきます。北海道ニトリ文化ホールに8月17日金曜日に来て下さいます。」(26日夜)
「【1、2軍とも最下位】こんばんは。やっぱり今日も横浜に負けましたね。ことしは辻西武を応援します。おやすみなさい」(26日夜)
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 北朝鮮が27日、朝鮮戦争(1950~53年)で戦死した米兵らの遺骨を米側に返還。東京地検特捜部が先に収賄容疑で逮捕した文部科学省の前国際統括官川端和明容疑者が出向していた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の関係先を捜索。

7月26日
 心が暗い。重い。きょうという日。おそらくは日本人の多くの心が閉ざされた日になったやも知れぬ。

「事件の真相はその人に聞かないと分からない。これで本当の真実はなくなった」(松本サリン事件の被害者で一時容疑者扱いされた河野義行さん=68歳。愛知県豊橋市在住=)「お世話になりました。被害者の方々に心よりおわび申し上げます」「今回の水害でたくさんの方が亡くなられ、命のはかなさを感じます。私の執行があっても、それはどうか寿命だと思ってください」
「報復で彼らの命を奪っても真相解明にはつながらない」「いや、わが国は真にやむを得ない場合だけ死刑にしている。遺族の心情を考えれば、特定の価値観だけで死刑執行を批判すべきではない」
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 オウム真理教による一連の事件で殺人罪などに問われた教団元幹部6人の死刑が26日午前、東京、名古屋、仙台の各拘置所で執行された(うち岡崎一明、端本悟死刑囚以外の4人は再審請求中だった)。6日には教団元代表の麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名・松本智津夫=ら元教団幹部7人の死刑が執行されており、これでオウム事件の死刑囚13人全員の刑の執行が終わり死者29人、負傷者6000人超を出した未曾有の凶悪犯罪事件の有罪が確定した教団関係者190人全員に対する刑事手続きが事実上、全て完了し集結した。
 この日、「慎重なうえにも慎重な検討を重ねたうえで、執行命令を出した」「犯行は身勝手な教義の解釈で無差別テロに及んだ。過去に例をみない、二度と起きてはならない凶悪重大なものだった」と事件を総括した上川陽子法相は、前回の法相在任中(2014年10月~2015年10月)を含め、過去1989年~93年に当時の法相のスタンスなどから死刑執行が停止状態となっていた以降の法相としては最多の計16人の死刑執行を命じたことになる。
 これにより、刑事施設に収容中の確定死刑囚は111人(うち再審請求中は88人)となった。

 死刑が確定したオウム真理教元幹部13人の集中執行については「平成の事件は平成のうちに終える」との国の強い意思の表れとも言える。ただ各紙の論調によれば、今回執行された6人については共犯者の死刑執行は同時に行うのが慣例とはいうものの、「麻原元死刑囚らとは責任の質が違う」として執行に慎重な声があったのも確かだ。
 それだけに、なぜあれほどまでに残虐極まる事件が起きたのか。その真実を究明するためにも「安易な全員執行という集中執行はすべきではなかったのではないか」との批判があることも事実である。

 この点についてはきのうの中日(東京)新聞の【特報面】でオウム真理教事件の麻原彰晃元死刑囚にも接見した作家で精神科医の加賀乙彦さんが、記者の問いかけに前回の7人の死刑執行につき〈命の軽さを痛感している〉と指摘。『昨今起きた事件のみならず、それはオウム事件の元死刑囚7人の執行にも表れている。この執行は、世界的には「野蛮さ」の文脈でセンセーショナルに報じられた。だが、その野蛮さに、この国の政府も国民も反応していない』と話されているが、そのとおりだと思う。
【特報面】ではこのほか、他作家の言葉として「現政権に象徴されるようなエゴイズムが社会に広がっている。目先のことやしがらみに心がとらわれ、その先に待ち受けている本質的な危機からはあえて目を背ける」としているが、いい点を突いているなと思ったのは私だけではないのでは。いずれにせよ、死刑執行が【命の軽さ】を助長することだけにはなってほしくはない。
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 国内最高齢117歳だった横浜市西区在住の都千代さんが22日に亡くなっていたことが分かった。これにより、国内の最高齢者は1903(明治36)年1月2日生まれの福岡市東区在住の115歳、田中力子(かね)さんとなった。
 トランプ米大統領と欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長が25日、米ホワイトハウスで会談し、EU側の最大の懸案だった欧州車に対する追加関税は当面、見送られることになった。
 日本サッカー協会は26日都内で開いた理事会で日本代表の新監督に2020年東京五輪男子代表監督の森保一氏(49)の就任を決めた。

 台風12号は日本の南の太平洋上を発達しながら北上、29日にかけて本州に上陸する見通しだという。

7月25日
 台風12号が25日午前3時ごろ、日本の南太平洋上で発生、北寄りに進んでいる。

 豪雨の影響で中止していた長良川鵜飼の観光船運航が25日夜、再開。きょうは「かき氷の日」でなんでも1933年のこの日、山形市で当時、国内最高気温40・8度を観測した日にちなんで名付けられ、長年親しまれてきたのだという。この日本最高気温は、その後、2007年に岐阜県多治見市などで40・9度を観測するまで実に74年間続いた。
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 夜。このところの猛暑続きに物申すかの如く、いっとき猛烈な雨がわが家の屋根をたたいた。
「道がつづら折りになっていよいよ天城峠に近づいたと思ふころ、雨脚が杉の密林を白く染めながらすさまじい早さで麓から私を追ってきた」という川端康成の【伊豆の踊子】の一節が思い出される。
 猛暑も大変だろうが、豪雨を忘れちゃいけないぞと威嚇してくる、そんな挑発的な雨だ。雨にそれぞれの思いを重ねる。強烈な意識を持つ私雨(わたくしあめ)と言えようか。やがて、3男坊がずぶ濡れのまま何かに追われて逃げ出してくるように帰ってきた。

 きょう25日付中日新聞の朝刊に『「ニンジャ不足」偽情報拡散 世界から反響、伊賀市長否定』の見出し。どうやら中日の特ダネだったようでNHK総合の〈ニュースウオッチ9〉で後追い記事を流していた。
 募集もしていないのに年俸945万円で忍者を募集しているというフェイクニュースがアメリカのメディアに流れ、アメリカやネパールなど14カ国から「忍者になりたい」との応募が伊賀市に相次いだそうで、これには「世界の人々がいかに忍者を好きか、を実感しました」と岡本栄伊賀市長。

 いやはや、いろんなニュースが飛び交うものだ、と思った次第。
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 1998年に和歌山市の自治会の夏祭りで起きた凄惨極まる毒物カレー殺害事件(4人が死亡)が、25日で発生から20年になる。殺人罪などで死刑が確定した林真須美死刑囚(57)の長男は現在、30歳。新聞報道によれば、長男は自分を苦しめ続けた母の存在を恨んだ時期もあったが、今は「無実を訴える母を信じたい」と話しているという。
 一方で湧き上がる「それは凶悪犯の味方をするものではないか」との葛藤は、20年たった今も消えはしない。

7月24日
 京都・祇園祭は24日、後祭の「山鉾巡業」。10基の山鉾が前祭とは逆ルートで都大路を進んだ。政府はこの日、西日本豪雨を含む5月20日~7月10日の各地の大雨被害を激甚災害に指定することを閣議決定(指定は27日付)。

 岐阜県多治見市で39・1度を観測するなど日本列島はきょうも暑い1日に。
 気象庁は関東甲信から西日本にかけての各地に高温注意報を出し、水分補給や適切な室温管理など必要な対策を取るよう呼びかけた。消防庁によれば、16日から22日までの1週間に熱中症で搬送されたのは全国で2万2647人に及び、2008年の統計開始いらい最多。実に65人が亡くなり、2008年以降で最多となったという。
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 午後。市内のCafe(カフェ)画廊「音彩」へ。
 ここのご主人、後藤正敏さん(尾張音楽協議会会長など。Radioname・愛称は、ごとう正五郎さん)から【江南文芸村(仮称)】をたちあげたいので、相談に乗ってほしい――と先日来、電話をいただいていたので失礼があってはいけないと思い、参上した。
 そして。ざあ~っ、とその趣旨と理想なるものをお聞きしたが、前向きな少年の如き純粋なる大志、姿勢には同意し共鳴した次第。あまり高望みはせず、ちいさくとも人々の心に根付く地道な形で【江南発】の市民のための市民の、真の文芸復興活動が始まるとしたなら、それはそれでとてもステキなことである。協力させて頂いてもよいか、と思う。

 私自身、かつて新聞記者だった当時には三重県志摩半島での【真珠の海・英虞湾を守る会の設立運動=英虞湾が富栄養化現象で真珠母貝のアコヤガイがぷかぷか浮いて海の汚染が大変な騒ぎのころ、英虞湾沿岸の真珠養殖漁協が一丸となり〈英虞湾を守る会〉ができた。私は当時26、7歳だったが先頭に立ちペンを手に飛び回った=】に始まり、多くの市民活動に携わってきた。
 その後も能登での地元七尾青年会議所メンバーと一緒になっての【海の詩(うた)大賞公募】、大垣時代には世界1の花市場であるアムステルダムのアールスメルまで飛んでの【オランダ花物語】の展開、湖国・大津でも小学生に対する【うみのこ=湖の子。滋賀県では子どものことを〝うみのこ〟という=詩の旅】の詩の募集と紙面化(週に1度は、びわ湖放送の女子アナウンサーによる朗読披露)など数々の試みを実現させてきたが、後藤さんが目指すものは、こうしたものとは少し違うようだ。
 でも、ステキな試みに挑戦しようと思われていることだけは響いてくるものがあるので、こんごお話を伺いながら少しでもお役に立てたら、と思っている。要はこの町に作品を通じ【文芸復興の気風と家族愛の大切さ】といったようなものが市民の側から自然発生的に芽生えれば、それはそれでよい、と思っている。
 なぜかといえば、木曽川河畔に広がるこの町は私が社会に巣立つまでずっと過ごしお世話になった愛すべき古里といってよく、戦国の世には信長や秀吉、蜂須賀小六らが飛び回っていた、かけがえなき土地柄でもあり、文芸復興の芽は大いにあるからである。

 それに今は亡き歌人春日井建さんはじめ、同じく歌人の稲葉京子さん、西村ひさのさん、書家の大池晴嵐さん(いずれも故人)、最近では中日スポーツの4コマ漫画「おれたちゃドラゴンズ」のくらはしかん(倉橋寛)さん、小説「ああ炎の鯱」の長谷川園子さん、郷土史家で名古屋弁にも詳しい舟橋武志さんら多くの文人を輩出しており、文芸復興にはふさわしい土地柄だからだ。
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 自民党の岸田文雄政調会長が24日、記者会見。9月の自民党総裁選不出馬と安倍晋三首相の総裁3選支持を表明。
 東日本大震災の津波で被災した宮城県立気仙沼向洋高(気仙沼市、生徒数359人)が新校舎への移転を前に24日、7年間「学びや」だった仮設校舎で閉校式。佐藤浩校長は「手狭で整った環境とはいえなかったが、多くの人たちの支えで活動できた。感謝の気持ちを心に刻んでほしい」とあいさつ。

 夜。NHK総合のクローズアップ現代【御嶽海・密着3年半! 秘蔵映像……意外な素顔】を見る。

7月23日
 ピーポーと何度も走らせ猛暑日や
 =伊神舞子〈きょうの俳句〉minuetto-miから

 大暑。
 午後5時前、舞が「多治見よりすごいよ。すごい」と私の部屋に飛び込んできた。
「一体全体、何がすごいんだよ」とデスクから振り返ると、「熊谷が41・1度だって」といつも物静かでクールなはずの彼女にしては珍しく興奮した様子で「多治見よりも高温なんだって。日本一よ」と少女のように言うので「ウン、すごい。すごいよね」と私。
 この日、NHKニュースのアナウンスと字幕には「命の危険にかかわる温度」といった表現が何度も流れた。
 なんだか、いよいよ人間社会と自然界との間で本気の戦争が始まったような、そんな錯覚にとらわれたのである。かと言って、ニンゲンたちが自然現象に勝てるはずもない。ついでながら、日本最低気温は1902年に北海道旭川市で記録した氷点下41・0度で、自然界の敵は寒さもある。
 ほかに大雪、吹雪、大地震、大津波、大型台風に竜巻、雹に霰…と怖い敵、役者が揃っている。

 月曜日。けさは朝1番で江南厚生病院へ。舞の心臓のトレッドミル検査のためだが、なんでも10㍍ほどのところをベルトコンベアの流れに合わせて大幅な歩速で繰り返し駆けることを繰り返し、心臓に負荷を与えた場合の心電図の動きを見るためのものらしい。「もっと速く。はやく」と言われて駆け回っている彼女を想像するだけで舞がかわいそうになってきた。
 そして、その一方で「そんな無理強いともいえる単純動作で心臓の内部機能のことが本当に分かるのかどうか」疑念を抱いたのである。素人考えだが、信憑性という点で首をひねらざるをえない。ほかの同様負荷診査を同時にすれば別だが。
 一回こっきりのランだけで結論が出るはずがない。検査を受けた彼女自身、「もうこれ以上の検査は絶対にしたくないから」と私に向かって宣言したが、その気持ち分からぬでもない。

 午後、久しぶりに小牧時代からの友が顔を見せたので近くの喫茶へ。
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 日本列島はこの日も高気圧に覆われ、埼玉県熊谷市で午後2時16分、41・1度を記録し国内最高記録を5年ぶりに更新。熱中症による救急搬送は2377人に。愛知県東海市の女性(77)や三重県松阪市の女性(87)など9府県で13人が亡くなったという。気象庁はこの日、猛暑に関する異例の記者会見を行い、「命の危険がある暑さで、災害と認識している」と異例の表明をした。
 ちなみに、これまでの国内最高温度は2013年8月12日に高知県四万十市で記録した41・0度。過去には1933年7月25日に山形市で40・8度の記録がある。

7月22日
 日曜日。日本列島は全国927観測地点のうち約4分の1の237地点で35度以上の猛暑日となり、きょうも1日暑い日であった。中部地方では、岐阜県郡上市で39・8度、多治見市と美濃市で39・4度、揖斐川町で39・3度、名古屋市千種区でも39・5度に。静岡、三重県などでも38度を超えた。

 大相撲はきのう13勝をあげ、優勝を決めた関脇御嶽海が平幕豊山と熱戦の末、掛け投げに屈したが、見ごたえある1番で観客を魅了した。御嶽海は優勝と共に3度目の殊勲、2度目の技能賞のダブル受賞にも輝き、幕内朝乃山が2度目、豊山が初の敢闘賞に同時受賞、来場所への夢と期待をつないだ。
 また昨年10月に元横綱日馬富士の傷害事件で被害者となった十両貴ノ岩(貴乃花部屋)が優勝決定戦の末、13勝2敗で優勝。事件後に2場所連続で全休した影響から十両下位に後退していたが、来場所の再入幕を手中に収めた。
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 夕方、舞とカンカン照りの畑〈エデンの東〉へ。
 きょうは熱中症にやられてもいけないので茄子やピーマンなど野菜に水をやるだけで、あとは柿の木の剪定を以前と同様に無手勝流で行い、早々に帰宅した。
 それにしても、この夏の暑さはいったい何奴なのか。
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 2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が大会マスコットの名前を五輪は「ミライトワ」、パラリンピックは「ソメイティ」と決めた。
 組織委員会によると、「ミライトワ」には、素晴らしい未来が永遠に続くように―との願いを込め、「ソメイティ」は桜を代表する「ソメイヨシノ」と英語の「so mighty(とても力強い)」を組み合わせたという。

7月21日
 江戸時代の町家が残る岐阜県美濃市の町並みで浴衣姿の親子連れらがひしゃくを手に桶やたらいから道路に打ち水。美濃市では13日から9日連続で35度を超す猛暑日が続き、18日には観測史上最高の40・6度を記録している。
 きょうも、とても暑くて熱い日であった。

 御嶽海の初優勝を告げる中日新聞朝刊(7月22日付)と21日夜のNHKニュース
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 名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で行われている大相撲名古屋場所14日目、西関脇の御嶽海(25)=長野県上松町出身、出羽海部屋=が栃煌山を寄り切りで下して13勝1敗として千秋楽を待たずに初優勝を決めた。
 長野県の出身力士の幕内優勝は優勝制度が確立した1909(明治42)年以降では初。平成生まれの日本出身力士の優勝も初となった。名門出羽海部屋としては50度目、1980年の横綱三重ノ海いらい、実に38年ぶりの優勝である。
 この日のインタビューで御嶽海は「周りの声援を聞いて優勝しなければ、という気持ちになりました。目標の勝ち越しと二桁勝利を達成でき、優勝まででき、何も言うことはありません。出すつもりはなかったけど。(男泣きで)自然に出てしまいました」と大粒の涙をぬぐった。
 出身地である地元木曽の上松町公民館では母親でフィリピン出身の大道マルガリータさん(48)が息子の勝利に友人と抱き合って喜び、近くの理髪店で観戦した父親、春男さん(69)も「ようがんばったな、とねぎらってやりたい」とひと言。出羽海部屋が宿舎を置く愛知県犬山市の善光寺ではこの日夜さっそく祝勝会が開かれ、みんなで初優勝を祝った。
 おめでとう! 御嶽海。
 なお、地元長野出身では江戸時代に強さを誇った雷電為右衛門(江戸本場所在籍36場所中、大関在位27場所で通算黒星が僅か10、勝率9割6分2厘で大相撲史上未曾有の最強力士とされている)がいる。今回の御嶽海の優勝には雷電の再来だ、との声も強く地元で期待の声が上がっている。
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 元デカ(刑事)から毛書で「暑中お見舞い申し上げます 連日の猛暑 ご自愛下さいませ」の丁寧なるはがき。この1通に刺激されてか。私はあわてて、思い当たる友人知人の何人かに暑中御見舞いのメールをした。
 そういえば、このところは多くの友人から国産フルーツゼリーはじめマンゴ、ハム、ビール、ジュース、お茶、モモ、銘菓あられ、高級素麺などといったお中元や暑中見舞いのはがきを頂きナンダカ、申し訳ない気がしている。中に1通、石川名産の一房ウン万円かもしれない、高価なブドウ(デラウエア)を送ってくださった能登は七尾の笹谷憲彦さん夫妻から届いたはがきは、といえば。
 次のような内容だった。
――6/23~6/26と、のとしんさんの「日本丸クルージングツアー」で函館、秋田をまわってきました。船内でのお料理がとてもおいしかったです。(中略)年々バテ気味の二人ですが一日一日を大事に元気が一番でやっていこうと思っています。……
 
 やはり昔お世話になった人々からの便りには何につけ、心を打つものがある。この夏は特に酷暑続きだけに、皆さま。くれぐれもご自愛ください。
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 夜。NHKスペシャル「相模原障害者殺傷事件 被害者たち2年に密着 獄中の植松(聖)被告はいま 〝ともに、生きる〟とは」を見て、いろいろ考えさせられた。

7月20日
 土用の丑の日。夜。舞、手づくりの蒲焼き。
 おいしくて、ビールもうまかった。

 日本列島は高気圧に覆われ、相変わらずの酷暑が続く。京都では7日連続の38度超えとなる38・6度を記録。滋賀県高野連はこの日、連日の酷暑対策として全国高校野球選手権滋賀大会で気温が上がる午後の試合を取りやめるなど日程を変更する、と発表した。環境にやさしく敏感な湖国ならでは、の対応である。
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 きょうもナンダカンダとあったがこの暑さのなか、ニンゲンたちはむろん、朝、晩と食事時をねらって1日に2度は決まってわが家の庭を訪れる野良猫ちゃんたちだって。みんなみんな、一所懸命に生きている。
 というわけで相棒の配慮もあって、〝猫パン〟が愛称の黒白くん(時折、猛烈なパンチを浴びせてくるので少し怖い)はじめ、ギンギツネ、シロと半分野良の〈半のら〉3人組はたまたまその時刻に庭に居たこともあって、蒲焼きの頭と尻尾の部分の思わぬ分け前に預かり、何やらウ~ン、ウムウムと奇っ怪な声をあげ、むしゃぶりついたのである。
 あいにく、たまにかわいい顔を出す黒猫のタンゴとギンネコちゃんのこども2匹は行き先を誤って他の庭先や路上を放浪しているのか、姿を見せなかったためご相伴には預かれなかった。飼い猫と違い、野良の世界は厳しい。早いもの勝ちだからしやうがない。これも生存競争のひとつや知れぬ。
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 カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備法が20日の参院本会議で自民、公明、日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。
 映画「羅生門」「七人の侍」はじめ、松本清張さん原作の「張込み」など数多くの日本映画の脚本を手がけ、脚本・監督作に「私は貝になりたい」がある橋本忍さん(はしもと・しのぶ=脚本家)が肺炎のため東京・世田谷区の自宅で死去。100歳だった。

7月19日
 岡山県倉敷市真備町など西日本豪雨の被災地では19日が各小学校の終業式だったが、各小学校とも休校のまま夏休み入り。水浸しの校内からは被災した備品などの運び出しが行われた。
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 あの夏の陽のふり注ぐジャズのごと
 =伊神舞子〈きょうの俳句 minuetto-mi〉から

 木曜日。きょうも暑い。私は極寒の地・満州の奉天生まれなので、やはり暑いのは苦手だ。むしろ寒くて、寒くて。どうしようもないほどに寒い日の方が精神的にもピリッ、として好きである。

 きょうは暑さにめげることなく、夕方リビングの椅子に座って、久しぶりに横笛をふき、ハモニカもふいた。横笛は〈座頭市〉〈さくら〉〈惜別の歌〉など、ハモニカは〈赤とんぼ〉〈琵琶湖周航の歌〉〈ふるさと〉など、どちらも数曲ずつを、だ。
 別にどうということもなく、両方共思いのままスイスイと楽にふくことが出来た。ほんとはサンポーニャも、と思ったのだが。欲張り過ぎて病み上がりのからだにさわってもいけないと思い、自制した。

 深夜遅く。舞のジャズ俳句に思いついたように、久しぶりにこの町では隠れ家的存在でもある、自宅近くジャズの店〈Tom SHOT&COCKTAIL〉さんへ、歩いてとぼとぼと出向いた。ママさんから開店し40年がたちます、と聞き、ハードボイルドタッチのウオッカ・ギムレットを味わいつつ、これまでの労苦に耳を傾けた。いろんなことがあったに違いない。
 ただ、この町というか。木曽川河畔の江南では唯一無二の、ジャズのショットバーだけに、希少価値はあり、いろんな時代が通り過ぎたに違いない。そう思うと、何か熱いものが溢れ出てくるような、そんな気がしたのも事実である。ママさんの苦労ときたら、それこそ言葉では言い表せないだろう。
 ジャズといえば、モントレージャズ・フェスティバルを七尾商工会議所が和倉温泉に誘致した、あのころが懐かしい。支局員らと七尾の街なかの一本杉通りをカッポし、スクリュードライバーのカクテルでみんなを楽しく泣かせた日々が懐かしい。
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 常田富士男(ときた・ふじお=俳優)さんが脳内出血のため亡くなった。いい脇役だったばかりか、市原悦子さんと語り手を務めた「まんが日本昔ばなし」での温かな語り口は多くの人々に親しまれた。
 遊郭時代に「稲本楼」の名で全盛を極めた、あの中村遊廓の面影を残す名古屋の「料亭稲本」がいよいよ、取り壊されることになったという。「料亭稲本」といえば昭和五十年代のころ、新聞社の社会部に在籍し名古屋中村署担当記者当時に、サツカン(警察官)幹部と中村記者クラブとの忘年会で2、3度利用したことがある。
 それこそ赤い塀が印象的な風格ある建物だった。惜しい気がする。

7月18日
 岐阜県多治見市で午後2時半に40・7度、美濃市でも同19分に40・6度を観測。高知県四万十市で全国観測史上最高の41・0度を記録した平成25(2013年)年8月12日いらいの40度超えを記録した。

 それにしても暑い。
 この日は愛知県豊田市39・7度、名古屋市39・2度、京都市39・1度。また30度以上の真夏日となったところは全国観測点の7割、35度以上の猛暑日となったところは2割に上った。主要都市では東京都心が35・3度、大阪市37・0度、岡山県倉敷市36・1度、福岡市33・4度。
 もしかしたら私が生まれて以降、長い人生のなかでことしの夏が1番暑い日の連続かも知れない。テレビやラジオからは再三にわたって「各地で命に関わる危険な暑さになっています」のアナウンスが流れているが、こればかりは分かる気がする。
 事実、わが家の近くでも救急車の音が絶え間なく聞こえて来、そこには自然界に翻弄される人間たちの姿が映し出されてもいる。
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 朝。舞が食事をしながら何を思ったのか。ポツリと口を開き、8月4日に能登の七尾に行きたい、と言い出した。なぜ、と問うと「御祓川のイベントを見てみたい。私たちがいたころの御祓川はだいぶ汚れていたけれど、その後の市民運動が実って清流に生まれ変わったそうよ」とのこと。
 さっそくネットで調べてみると御祓川会社、能登留学…など私たちがいたころには聞いたこともない面白そうな存在があり、七尾の町づくりが相変わらず広範囲で進んでいることを思い知ったのである。
 私たちが居た30年前には〈海を感じる心〉を国内外に発信しよう―と七尾JCと新聞社共催の海の詩(うた)公募をはじめ、七尾を日本の西海岸にしよう、とJCメンバーを中心とした米国西海岸への研修視察、モントレージャズ・フェスティバルの和倉温泉への誘致など【港の町づくり運動】がとても盛んだった。
 あくなき市民運動はやがて国を動かし、能登フィッシャーマンズワーフ(能登食祭市場)の誕生となって開花したが、能登の人たちの町づくりは相変わらず強いものがあるな、と思った次第だ。

 というわけで、さっそく昔の友人でもある日本のお宿「さたみや」さんのご主人に電話を入れ、宿泊を予約した。御祓川の水の流れとその河畔がどのように顔を替えているのか。私も見て確かめてみたい。
 そういえば、七尾の港まつりでは御祓川河畔に大型演芸車を止めての中日民芸の夕べを行い、牧すすむさんに来て頂いて大正琴の演奏をしてもらったり、越中おわら風の盆保存会に声をかけ、風の盆の町流しを実現させたことなど思い出は尽きない。
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 劇団四季生みの親で知られる演出家浅利慶太(あさり・けいた)さんが13日、悪性リンパ腫のため死去。東京都出身。85歳だった。

 第159回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が18日、東京築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞は高橋弘希さん(38)の「送り火」(文學界五月号)、直木賞は島本理生さん(35)の「ファーストラヴ」(文藝春秋)にそれぞれ決まった。
 参院定数を「6増」する改正公職選挙法が18日の衆院本会議で可決、成立。

7月17日
 火曜日。日本はきょうも、ほんとに暑い。
 将棋の羽生善治二冠(47)=竜王、棋聖=に愛知県一宮市出身の豊島将之八段(28)が挑むタイトル戦「棋聖戦」五番勝負の最終第五局が17日、東京都内のホテルであり、後手の豊島八段が百八手で接戦を制し五度目の挑戦で初のタイトルを手にした。

 正午ごろ、愛知県豊田市の市立梅坪小学校1年男児が近くの公園であった昆虫採集や滑り台など遊具遊びをする校外学習から帰ったあと、教室で意識不明となり搬送先の病院で死亡。死因は熱中症のなかでも最も重い熱射病と診断され、「判断が甘かった」と薮下隆校長は謝罪した。
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 舞はお店を休みにして朝から私とふたりそろって江南厚生病院へ。私の右肺の手術後の検診(血液検査とレントゲン撮影)と先日行った舞の24時間心電図の検査結果をそれぞれ担当医師からお聞きするのが主な目的である。
 結論から言えば私の方は血液検査、レントゲン撮影ともに大丈夫で、結果は良好。これまで服用してきたペニシリン系抗生剤もあと1カ月ほどのみ、次の検査で問題なければ診療は終わる。舞の方は、心電図検査はおおむね良好で心臓の動きもよく、今すぐに問題という心配はない。ただ心電図の波形を見る限り心臓に通じる血管がもしかしたら細くなっていることも考えられるので、念のため運動負荷検査をして万全を期した方がよい―ということになり今一度、【トレッドミル検査】をすることとなった。
 いやはや検査、検査ではあるが、ここはしっかりと医師の指示に従ってすべきことはしておいた方が良い気がする。

 それはそうと3連休明けということもあってか。きょうの江南厚生病院は患者たちでいっぱいだった。以下は病院待合室で耳に入ってきた、ある70歳前後の女性の尾張弁丸出しのひとり言、いや嘆き節といった方がよいのかもしれない。この方は自分に言い含めるようにポツリポツリと話しておいでだった。こんな内容である。
【「ええことあらへん。びょうきがふえてくだけ。いやんなるわ。ねえ~アカンね」「どういうふうにするだかわからんけど。もう年寄りだから。楽しみもなくなってしまい」「ただ食べるだけ。ほんでも量も減ってまった」「もう動きたくもないもんな。なんかやるにもおそなったしね」】だってさ。
 彼女のひと言一言。実感がこもっていてナンダカ、とってもよく分かる。
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 安倍晋三首相と欧州連合(EU)のトゥスク大統領、ユンケル欧州委員長が17日、首相官邸で日本と欧州連合の経済連携協定に署名。2019年までの発効を目指す。発効すれば、双方の貿易品目の9割超で関税が撤廃され、世界の国内総生産(GDP)の約3割を占める巨大な自由貿易圏が誕生するという。 

7月16日
 月曜日だが【海の日】で祝日。暑い日だ。岐阜県揖斐川町でことしの日本最高気温39・3度を記録。岐阜市と多治見市でも39・0度を、美濃市や郡上市でも38・8度をそれぞれ記録。

 西日本豪雨の被災地では岡山、広島、愛媛の各県などで35度以上の猛暑日に。炎天のなか、「これでもか」とボランティアも加わっての復興作業が延々と続く。水がないのでたまった泥を家屋から出すにも出せない。家財道具を出したりする際に釘を踏んでしまい、ケガをした人。熱中症で運ばれた人。ほかにも目が痛い、のどが痛いと訴える人、がんばり過ぎて体力を消耗しダウンしてしまった人と、まさに戦場だ。
 岡山のブドウ、もも。そして愛媛のミカン畑が豪雨被害に痛手を受けている。なかには3代にわたり続いてきた、その大切な水田が全滅してしまったとの悲しい話には言葉もない。立ち尽くし、頬を流れる滴に「汗か涙か。情けない」とつぶやく男性は「だれにも文句を言えない。天災だから」とただ天を仰ぎ、唇をかむ。
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 私の部屋は冷房がきくのに。そればっかりは良くない、と時折、冷房を切り団扇であぶって過ごすのだが。本来が汗かきサンとあってか、本を読んでいても文字を書いていても全身から汗が噴き出し、滝の流れのように流れ出てくる。
 汗といえば、昔、柔道に打ち込んでいた中高校、大学生のころを思い出す。あのころは乱取りなどの稽古で柔道着がびしょ濡れになる日が続いた。よくも懲りないで連日、噴き出す汗をものともせず、厳しい練習に耐えたものだ―と我ながら感心する。

 そして。きょうは〝海の日〟だ。能登にいたころは、毎年、このころになると新聞社の七尾支局長として7月末の七尾港まつりはじめ、8月に七尾湾で催される和倉温泉北陸中日花火の準備に本社事業部の腕利きスタッフとともに奔走したものである。
 港まつりでは小丸山公園で〈ちびっこ広場〉を開催。北中花火ではスターマインや芸術花火、尺玉など数々の花火に加え、和倉名物として全国的に知られた3尺玉花火2発(水上と水中)の打ち上げも忘れられない。
 なかでも3尺玉花火は真冬に雪深い新潟・長岡の嘉瀬煙火を本社事業部員とともに訪ね、当時は門外不出とされた3尺玉の供出を願い出るなど準備を進めた一大イベントだった。それだけに、あの当時、飛び回った日々のことはいまだ脳裏に焼き付き離れない。
 花火が終われば和倉の浜掃除、そしてボートに乗って不発弾が湾内に残っていないかどうかを調べて回ったことも今となれば懐かしい。
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 ロシアでのサッカーワールドカップ(W杯)決勝が15日、モスクワで行われ、フランスがクロアチアに4―2で快勝。フランスは自国開催だった1998年大会いらい20年ぶり2度目の世界一で、パリのシャンゼリゼ通りは優勝パレードに沸いた。 米ロ首脳会談が16日、世界の目と耳が見守るなか、ヘルシンキのフィンランド大統領公邸で行われた。

7月15日
 天空をゆきつもどりつ鬼やんま
 =伊神舞子きょうの俳句 minuetto-miから

 日曜日。
〝いびがわマラソン〟で知られる岐阜県揖斐川町では38・8度を記録。西日本豪雨の被災地はじめ、ここ尾張名古屋など日本中が昨日に続き炎熱に見舞われる1日に。きのうに続き、きょうも熱中症で多くの人々が病院に救急車で運ばれた。
 そして。西日本豪雨の被災地ではこの日も猛烈な暑さのなか、多くのボランティアが加わっての復旧作業と警察、消防、自衛隊による不明者の捜索が進んだ。この暑さは、あすも続きそうだという。
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 午後1時45分。ネパール、カトマンズの長谷川裕子&ニルマニ夫妻から「ナマステ~。一昨日深夜、無事ネパールへ戻りました。日本滞在中にお会いでき、大変嬉しく思っています。おかげで素晴らしい方々とお会いできて本当に嬉しく、感謝いたしております。……」とのメールが入った。私は「カトマンズに無事到着とお聞きし、うれしく思いました。(98歳の私の)母が手編みでつくった縁起物のぞうりを二足、江南郵便局からEMS(国際スピード郵便)で送っておきました。一週間ほどで届きます」と返信した。
 
 異国でがんばる長谷川裕子さんあてに送った母手づくりの日本のぞうりと先月1日に満98歳となった、異国満州の奉天で私を生んでくれた母の伊神千代子
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 夕方、舞と畑〈エデンの東〉へ。
 きょうこそは猛暑でもあるし、このところあまり体調もよくない舞のからだに障ってもいけないので知らぬが仏を貫こうーと思ってはいたのだが。やはり午後4時を過ぎたところでそれまで舞の部屋で横になっていた女がスックと立ち上がり「さあ。行くわよ」と、まるで閻魔大王さまみたいな命令が下った。私は「ハイ。ハイ」とふたつ返事で、車で15分足らずの畑へと向かう。
 それにしても暑い。なんて暑いのだ。ついこの間に除去したばかりなのに。草という草たちがあっという間に成長して背丈を伸ばしており、身がすくむ。手に負えない気がしてしまう。それでも西日本災害に苦しんでおいでの被災者に比べたら、どおってことはない―と自身に言い聞かせ作業を進めていく。
 彼女が病身をものともせず、どんどん作業を進めていくので私もやらないわけにはいかない。「もう、やめようよ」と途中で二度、三度と声をかけてはみるのだが。舞は答えることなく黙々と草刈りを進めていった。

 というわけで私たちはふたりとも汗だくに。
 作業をしながら彼女がポツリと曰く。「でもネ。西日本豪雨の被災地にボランティアで行っている方々、ホントに頭が下がるよ」。そう言って私をにらみつける。被害ひとつ受けていない私たちが自分たちの畑の草を除去する。そのことだけでも、これだけバテている。これは、これまで楽ばかりをしてきた私に対する見えない神のしわざなのか。

〈見えざるモノ〉がきょうも、どこかで私を呼び止め「君、きみ。甘っちょろいね」と言っている。そんな気がする。そんなことを思って作業を黙々と進めていると突然、アッと声を出す舞。「なんだよ、いきなり」と言うと指をさしていきなり「トンボ。トンボだわ。撮ってよ」ときた。あわててポッケにしのばせてあるスマホを取り出したが、トンボはスーイスイ。空高く消え去った。
 でもトンボを見て相棒が喜んだのだから。これで畑に来て良かったか、と思う私。天では「せっかく、おまえたちに(畑を)残してやったのに」と亡き父が笑っていることだろう。

 帰って。スマホをチェックしたら親愛なる日本の友から「猛暑日が続きます。ご自愛ください。」のメール。「そっちもね」と思わずつぶやく私。
 ありがたき幸せかな、とは。このことか。

7月14日
 奥美濃の夏を彩る国重要無形民俗文化財、郡上おどりが14日夜、開幕(9月8日まで。8月13~16日は徹夜おどりも)。この日夜、三重県伊勢市の宮川河畔では伊勢神宮奉納全国花火大会もあり、1万発が夜空を彩った。

 政府は14日、西日本豪雨を「特定非常災害」に指定することを閣議決定。被災により、さまざまな行政手続きができなくなった住民を救済するのが目的で、過去には阪神大震災や東日本大震災など震災が4件指定されている。豪雨での指定は、初。
 大相撲の西大関栃ノ心(30)=本名レバニ・ゴルガゼ、ジョージア出身、春日野部屋=が名古屋場所7日目の14日、日本相撲協会に「右親指関節の靭帯損傷で約1カ月の休業、加療を要する見込み」との診断書を提出して休場。6日目の取り組みで右足親指を痛めたためで、新大関の休場は全休した2000年夏場所の武双山いらい。
 今場所は鶴竜、白鵬、稀勢の里が休場し、19年ぶりに3横綱全員が不在。初日から5連勝だった注目の新大関までが離脱する異常事態となった。そうしたなかで能登・穴水出身の遠藤が危なげない相撲、きょうも旭大星をおしだして1敗を守っているのが救いでもある。
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 雨に攻められ日に攻めらるる嗚呼日本
 =伊神舞子〈きょうの俳句〉 minuetto-miから
 3連休の初日。西日本豪雨の被災地ではきょうも猛烈な暑さと炎天のなか、岡山、広島、愛媛の各県を中心に大勢のボランティアが繰り出し、熱中症を警戒しながらの泥かき出しなど支援に当たった。連休中に3県で延べ1万8000人以上の参加が予想されるという。
 また警察庁はこの日、被災地での死者が14府県で209人(広島100人、岡山59人、愛媛26人など)に達したと発表。13日夜の段階で16府県で5900人が避難生活を続けているという。

 気象庁によると、日本列島はこの日、太平洋高気圧に覆われて気温が上昇。岐阜県多治見市で全国最高の38・7度を観測。京都38・5度、岐阜県揖斐川町38・4度、三重県松阪市で38・2度、名古屋は37・5度を記録した。全国927カ所ある観測点のうち6割を超える613地点で最高気温が30度以上の真夏日となり、うち161地点で35度以上に。熱中症で救急搬送された人は全国で1535人に上ったという(うち6人が死亡)。

 暑くて、どこまでも厳しい夏が続く。

7月13日
 自由と平等、友愛の国、フランスが誕生したパリ祭前夜である。
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 茜色の雲がたなびいた南の空と、米ニューヨークのマンハッタンヘンジ(NEWS23から)
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 午後7時過ぎ。わが家の空高く。江南名物でもある茜色の雲が映え、アメリカではニューヨーク市マンハッタンの大通りの東西方向の通りに沿って太陽が沈む〝マンハッタンヘンジ(至点)〟が顔を表し、街は赤く染まったという。
 この世は不思議、妖怪である。

 西日本豪雨に泣き、泥まみれの復旧作業が進む被災地はじめ、私たちが住む尾張名古屋、岐阜、三重と、どこもかしこも暑い1日となった。午前中、気分一新を兼ねて近くの床屋さんへ。店内は大入り満員だったが、なんとかカットだけをして頂き、午後には名古屋へと出向いた。このところ、1カ月に1回平均で訪れているペインクリニックで念のために診てもらうためだが「もう大丈夫かと思います。一応お薬は出させていただきますが、来院されるかどうかはご自身の判断にお任せします。痛くなければこなくてよいですよ」と医師。
 なんだか、そのひと言に目の前が開けた。

 夜。三重テレビでたまたま目にしたのが、第100回全国高等学校野球選手権記念三重大会開幕スペシャル。地域社会に溶け込んだとてもよい番組だ、と思った。野球といえば今夜はプロ野球オールスターの第1戦が京セラドームであり、ファンの人気投票断トツの松坂大輔(中日)が全セ先発として12年ぶりに球宴に登板。1回5失点だったがファンは皆、大喜び。打たれても存在感の大きさを見せつけた。
 また、この日は試合前に日米通算507本塁打の松井秀喜さん=米大リーグ、ヤンキースのゼネラルマネジャー(GM)特別アドバイザー=、1492試合連続フルイニング出場のプロ野球記録を持つ阪神の現監督金本智憲さん、前巨人監督でリーグ優勝7回、日本一3度の原辰徳さんに対する表彰式も行われ、京セラドーム大阪は観客でどよめいた。3氏とも殿堂入りにふさわしい実績とキャリア、プロ野球界への貢献があるだけに、異論のないところだろう。

 テレビ番組といえば、NHKEテレの「ドキュランド ベールのイスラム詩人 70万人の視聴者の前で 女性抑圧へ抵抗の声! 社会に旋風を起こす▽保守強硬派から脅迫も」は大変、中身の濃い内容だった。アラブ圏の人気番組「百万人の詩人」に初めて出場したヒジャブ姿の女性。サウジアラビアの女性詩人レミア・ヒッサ・ヒラルさんが生み出す詩の精神の強さには圧倒された。
 ベールに包まれ、全身黒づくめの中からヒッサさんが絞り出すようにして発する一言ひと言。これこそが、これまで抑圧されてきたアラブの女性たちの気持ちを代弁するものだといっても過言でない。女性への厳格な戒律と男性優位の社会に旋風を起こしたといっていい。
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 西日本豪雨の被災地では、きょうも炎熱のなか全国からのボランティアも加わっての作業が進んだ。全てが泥に埋まった中での先の見えない、延々とつづく難行苦行が続いている。中日新聞夕刊によれば、被災地での死者は14府県で204人、依然として60人以上の安否が分からず、計6000人が避難生活を余儀なくされている。
 この日、被災地を訪れた安倍晋三首相は今回の西日本豪雨を激甚災害に指定する考えを表明したというが、早急の指定が望まれる。このほか、被災地では雨が上がっても「ため池」決壊などへの警戒を要する状態が続いている。土手の亀裂など、危険な「ため池」は全国で約20万カ所に及ぶという。

7月12日
 昨年のきょう、私たちが家族でかわいがってきた雌の愛猫シロちゃんが老衰で23歳の長寿を閉じた。あの日から1年がたつ(シロちゃんの物語は私の著作【ピース・イズ・ラブ 君がいるから(人間社)】の中に〈シロ、約束だよ|別れのシンフォニー〉として所蔵)。安らかに―

 警察庁が西日本豪雨の死者が200人になった、と発表。ほかに安否不明は広島、岡山を中心に60人超。15府県で7000人が、なお避難生活を余儀なくされている。中日新聞の夕刊によれば、西日本豪雨で観測した72時間雨量が全国に1300地点ある観測点の1割近い119地点でそのカ所での記録を更新して過去最大となっていたことが、気象庁のまとめでわかったという。JRが下呂―飛騨古川間で運転再開。
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 連日、30度を超す厳しい暑さ。こらえきれない悪臭。車は今もあちこちで逆さまに転がったままだ。断水した中での生活と復旧作業。自然界は容赦がない。無情だ。ずう―っと、汗びっしょりの作業が進み、脱水症状が続く。あげくに水がない。被災地では23万戸が断水したままだ。このままだと、不衛生な避難生活の長期化による感染症の発症やエコノミークラス症候群などによる災害関連死も多発しかねない。
「村が見る影も無くなってしまった」。
 汗が全身に噴き出し、滴のように垂れる。暑い。あつい。熱い。被災地では極限の環境のなか、人びとが懸命の復旧作業、いや先の見えない作業に挑んでいる。断水が続くなか、泥まみれの作業が進む。困るのがトイレで水も出ず、使うにつかえない。衣類もグジャグジャで、着替えがない。こんご、どうしたら良いのか。
 それと土石流や河川の決壊、氾濫などで容赦なく破壊され尽くされた交通インフラ。被災地は今も地盤が緩んでおり、いつ何時河川が破れ、土砂が流出、道が陥没したりポッカリ割れてもおかしくない。元通りの生活に戻るには。いったい、どうしたら良いのか。何日かかるのか、と思うと気が遠くなる。村も、家も、人までが。みんな失くなってしまった。
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 午前中、重いからだを引きずって社交ダンスのレッスンに出向く。タンゴ、ジルバ、ワルツと、いつもの曲を踊るが、自分だけがこんなことをしていてよいものか。なぜかきょうは、いつも以上に息切れがし、足の動きも鈍い。
 やはり、暑さのせいか。西日本豪雨で多くの人々が苦しんでいる、というのに。そう思うと、よけいに胸がちりちりといたむ。でも「こちらはこちら。私は、わたし。仕方ないよ」と自らに言い聞かせながら、贅沢なステップを踏み続けた。
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 2020年東京五輪の聖火リレーで47都道府県を巡る順番と日程がこの日、大会組織委員会、東京都、政府など大会準備に関わる組織のトップを集めた調整会議で了承され、決定した。東日本大震災からの復興五輪を前面に、東電福島第1原発事故など震災で甚大な被害を受けた福島県を3月26日にスタート、日本列島を時計回りにめぐり7月24日の開会式で東京・新国立競技場の聖火台に点火されることが決まった。
 横浜市の旧大口病院(現横浜はじめ病院)で発生した元看護師による点滴連続中毒死事件。その後の調べによると、殺人容疑で神奈川県警に逮捕された久保木愛弓容疑者(31)は引き継ぎで入院患者の容体が良くないのを把握し、自分の勤務が始まる前に殺害しようとした疑いのあることが分かった、としている。県警は、久保木容疑者が遺族に説明するのが苦手で、これを避けようと勤務時間前に病室に行き、消毒薬「ヂアミトール」を点滴チューブに注入して殺害したと見る。
 北海道と青森県で死者・行方不明者230人を出した1993年の北海道南西沖地震から12日で25年。津波に襲われた奥尻島では、この日島民らが海に灯籠を流して犠牲者を悼んだ。

7月11日
 夏空へトントントトン心の臓
 =伊神舞子きょうの俳句 minuetto-miから
 きょうも1日、トントントトンではなく、バタバタバタッ、と時が過ぎていった。

 滋賀県日野町で1984年(昭和59年)に酒店を経営する女性が殺害され金庫を奪われた日野町事件で大津地裁が11日、強盗殺人罪で無期懲役が確定し服役中の2011年に死亡した阪原弘元受刑者(当時75歳)の再審を認める決定。「捜査員の暴行や脅迫で自白した合理的疑いが生じた」と批判した。
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 西日本豪雨の被災地では警察や自衛隊などが厳しい暑さのなか、きょうも土砂災害や浸水被害現場での捜索に全力を挙げた。各府県のまとめによると、死者は12府県で176人に、安否不明者も60人を上回っているという。

 午前中、相棒と病院へ。彼女の両の胸に装填されている24時間ホルター心電図の取り外しのためである。いったん帰って彼女は自ら営むリサイクルショップ「ミヌエット」へ。私はいつものように新聞をチェックしたあと、執筆、読書にーと打ち込んだ。結構何かとあわただしい。
 書いているうち急に本日は歯医者に行く日だったと思い出し、自宅近くの歯科医院へ。先日抜歯された跡は「大丈夫です。心配ないです。(お酒は、の問いには)いいですよ」とのことで、ひとまず安心した。

 岐阜市の「長良川鵜飼」と関市の「小瀬鵜飼」がいずれも11日は大雨の影響で中止に。4日夜から中止していた愛知県犬山市の「木曽川うかい」はきょうの昼から再開した(夜は午後7時半から)。
 サンマの初売りが11日早朝、名古屋市熱田区の市中央卸売市場であり、入荷量が少なかったこともあり、最高で一匹2300円の高値をつけた。高値といえば、本日付中日新聞通風筒によれば、石川県が開発した高級ブドウ「ルビーロマン」の今季の初競りが10日、金沢市中央卸売市場であり、最高で一房110万円の値がついたという。
 
 きょうのところは、ここらでやめておこう。このところはナンダカンダとあって結構、体力的にも疲れた。暑さもあってか、息切れがしやすく胸の動悸も気になる。無理はしないでおこう。

7月10日
 西日本豪雨の被災地では10日、岡山県倉敷市真備町で新たに18人の遺体が見つかるなど死者は計157人に増加、広島、岡山両県を中心に依然として56人が安否不明のままだ。また午後1時の時点で1万人超が避難。この日は各地で30度を超える気温でうだる暑さのなか、捜索や被災者を取り巻く環境は過酷さを増している。
 大雨のあとは猛暑だなんて。いったい全体、何たることか。被災者にはことばもない。この窮地をなんとか乗り越えられるように、と願わずにはいられない。
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 火曜日。舞を伴って江南厚生病院へ。
 先日、息苦しくて胸が詰まる―という「わが家の大事」発生に、近くの町医者さんのアドバイスもあって急患として江南厚生病院を訪れ、舞を診て頂き心電図と血液検査をしてもらった際「心不全の心配はなく大丈夫です」とは言われたものの、万全を尽くすべきだ―と判断。あらためて取った予約日に合わせ、きょう2人で出向いた。
 舞は、生理検査と書かれた窓口で受け付けをしたあと、心臓を脇の下から観てもらう【心臓超音波検査】をし、引き続き24時間胸に張り付け心電図を計る【ホルダー心電図】なるものを両胸に装填して頂き、普通どおりの生活を、という指示を得て帰った。
 あすの午前中には、取り外しに再び病院を訪れる。

 装填中は残念ながら「おふろには入れない」が、あとは普段どおりの生活を―ということなので、彼女の希望に従って大雨のあとの畑〈エデンの東〉を少しだけ見て回り、ピアゴでの買い物に付き合って帰宅。畑では早々と実をつけていた茄子1個とピーマン2個をもぎとる嬉しそうな表情を前に「これなら、なんとか大丈夫だ。心配ない」と思った次第だ。でも、このところの私たち2人は何だか〝病院ながし〟をしているような、そんな錯覚に陥ってしまう。

 昨日、弁護士をしている私の兄から「おふたりの体調はいかがですか。40年廃炉裁判で使用済み燃料に関して私が準備書面を書きました。約半年かけて準備したものです。一読していただければうれしいです。」との添え書き付きで【高浜原子力発電所1号機及び2号機運転期間延長認可処分等取消請求事件】の準備書面(放射性廃棄物の審査不存在)が送られてきた。
 私自身「脱原発社会をめざす文学者の会」のメンバーでもあり、この準備書面は大変勉強になるので、さっそく電話で礼を述べておいた。兄はこれまで爆弾魔・加藤三郎らによる北海道庁爆破事件(1976年3月2日)や神社本庁爆破事件(1977年10月27日)小塚ヨットスクールのリンチ殺人(1979年~1983年)など数々の大事件を加害者や被害者、それぞれの家族らの立場に立ち長年こなしてきており、昔から正義感の塊のような弁護士だけに、おそらく原告団のためを思い、いろいろ調べ上げ「世のため人のために」と書いた力作に違いない。
 
 いつも舞の短歌・俳句雑誌などをわが家に届けてくださる馴染みの本屋さんが集金においでたため、脱原発社会をめざす文学者の会の仲間でもある上山明博さんの力作『地震学をつくった男・大森房吉――幻の地震予知と関東大震災の真実』(青土社、四六判)を注文。
 深夜。「熱砂」同人の平子純さんから出稿されてきていた【達磨の匕首】を編集整理して、ウエブ作品集の平子さんの欄で公開。
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「13人全員を助け出しました。みんな元気です。捜索にかかわった全ての人に感謝したい」(現場責任者のナロンサク・前チェンライ県知事)。
 タイのチェンライ郊外、タムルアン洞窟に閉じ込められた地元サッカーチームの少年らの救出作業は10日も前日に続いて再開、あらたに5人を脱出させ少年12人と男性コーチ(25)の全員が、世界中が救出劇を見守るなか、洞窟に閉じ込められてから18日目にして無事、救出された。
 ロンドン郊外オールイングランド・クラブで開かれたテニスの4大大会第3戦、ウィンブルドン選手権男子シングルス4回戦で錦織圭(28)がエルネスツ・ガルビス(ラトビア)に4―6、7―6、7―6、6―1で逆転勝ち。自身初、男子日本勢では1995年の松岡修造いらい、23年ぶりのベスト8に進出した。
 
 中国の民主活動家でノーベル平和賞を受賞した故・劉暁波氏の妻劉霞さん(57)が10日中国を出国し、北京から空路でヘルシンキを経由しベルリンに到着。石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油が2019年4月に経営統合する、と発表。

7月9日
 名古屋地方気象台は、この日、東海地方(愛知、岐阜、三重、静岡)が梅雨明けしたとみられると発表。平年より12日、昨年より6日早いという。

 なるほど9日午前の東海地方は広い範囲で晴れ、となった。
 とはいうものの、午後3時半を過ぎると突然、パラパラパラ、パラッと大粒の雨が天から地上をたたきつけるように降ってきた。一体、何ごとかと思っていたら雨は知らぬ間にやみ、先ほどまでの雨は、まるで嘘のよう。と思ったのだが。しばらくすると今度はゴロゴロゴロの威嚇音とともにまたしても空から雨がこの地上を急襲しはじめ、雨はなんとも言えない轟音を時折たてては降り続けている。
 またしても、猛烈なゴロゴロゴロの炸裂音が上空でしている。空がまっぷたつに割れたのか、と思うほどだ。何か私が悪さでもして、それをたしなめられてでもいるような。そんな威圧的かつ一方的な雨である。が、それも僅かの間で気がつくと雨は再びやむ、といったそんな繰り返しである。

 夜に入り。今度こそやんだと思いきや、またしてもパラパラパラ、パラパラ、ドーン。ピシャ、とこんどは心臓がたたきのめされるような雷雨である。轟音を伴った豪雨たち。彼らは明らかに人間たちに何かを言わん、としている。それが何かは、分からないが。挑戦的な雨だ。
――きょうは、そんな無言の強い雨たちの急襲に責め立てられる1日だった。
(中日新聞の10日付朝刊には【尾張北部で激しい雨 江南や扶桑、道路冠水】【落雷で特急が停電 1時間半閉じ込め 名鉄犬山線】の見出しで「愛知県の尾張北部で九日夕、一時間に四〇㍉を超える激しい雨が降り、江南市や扶桑町で複数の道路が一時、冠水した。/江南市によると、市内九カ所が冠水し、うち四カ所では最大で二時間弱、通行できなくなった。車が水に浸かったとの報告も二件あった。……」「九日午後六時十分ごろ、名鉄犬山線柏森―江南間で、新鵜沼発豊橋行き特急列車に雷が落ちた。列車は停電し、乗客約百九十人が約一時間半、車内に閉じ込められた…)。
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 平成最悪西日本豪雨の現場(NEWS23画面から)
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 本日付中日新聞夕刊によれば、西日本豪雨の死者は105人、安否不明は80人超で15府県でなお、2万3000人が避難している、とある(その後、10日朝の中日新聞では死者126人、安否不明86人、15府県で1万1000人の避難が伝えられた)。
 このうち小田川の堤防決壊で全面積の3割が浸水、一帯の約4600戸が水に浸かった岡山県倉敷市真備町では「まひ記念病院」の重篤患者や老人ホームのお年寄りらをヘリやボートで救出したという。
 それにしても、なぜ。なぜ、自然界は罪もない人々を。それこそ、思いつきでもしたように容赦なく打ちのめすのか。一瞬にして家族が、罪のない町や村が、幼い子や高齢者らが水魔に消えてゆく。言葉には言い表せない悲しみの連鎖が果てしなく広がっている。誰にどんな罪があるというのか。こんなことがあってよいのだろうか。
 この世はやはり、地獄なのか。
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 少年ら13人が閉じ込められたタイのタムルアン洞窟では閉じ込められてから16日目の8日夜、4人が奇跡の生還を果たしたのをはじめ、9日にも4人が生還。残る5人全員の救出が望まれている。6日に死刑が執行されたオウム真理教の麻原彰晃元死刑囚=執行時(63)、本名松本智津夫=の遺体が9日、東京都府中市の葬祭場で火葬された。遺骨は東京拘置所に戻されたが引き取り先はまだ決まってないという。3女になるか、それとも4女になるのか。
 日産自動車は9日、出荷前の車を対象とした排ガスや燃費測定試験で測定結果を改ざんする不正行為が見つかった、と発表。テレビ時代劇「大岡越前」などで知られた俳優の加藤剛さん(かとう・ごう、本名剛=たけし)が6月18日、胆のうがんのため東京都内で死去した。80歳だった。

7月8日
 日曜日。西日本を中心とした豪雨被害は相変わらず、ふえる一方だ。各報道によれば、午後8時現在、10府県の死者は78人、安否不明70人、ほかに5人が心肺停止に陥っているという。当然ながら、いまも警察、消防、自衛隊と5万4000人態勢による捜索、救出活動が必死で進む。
 特に岡山県倉敷市真備町では町内の河川が氾濫し市内の多くが水没。一時、病院などに1000人が孤立、ボートやヘリコプターによる懸命の救出作業となっている。幸い、雨の勢いは弱まってきたようだ。被災した方々を思うとき、どう言ってよいのか。ことばもない。

 真備町では多くの人々が豪雨に泣いた。救助された女性と水没した集落(NHK総合)
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 ここ尾張名古屋は朝のうち断続的に降っていた雨も知らぬ間に上がり、午後には晴れ間がのぞいた。そんな中、相棒は「車で送るから」と言っても「バスがいいの。ひとりで行きたいのだから」と頑固一徹で名鉄バスの最寄り駅から一宮へ、と向かった。一宮の名鉄百貨店からお中元を出すためで、年に2回のお中元とお歳暮は彼女の責任で出しているからである。
 毎回、もうそろそろ出すのはいかがなものか―と思いつつもことしも既に各地から多くのお中元が届いており、どれにも真心が込もっている。それだけに、放っておいたらバチが当たる。年に2度のこうしたあいさつこそ、年賀状も合わせ互いの心と心を結びつけていることは自明の理だけに、おろそかにするわけにはいかない。

 私はわたしで6日の金曜日にどうしたわけか、本欄【そぞろ歩き】への写真の貼り付けが出来なくなってしまい、急きょサーバー(管理業者)の担当者と電話で何度もやり取りするなど七転八倒の1日に。幸い翌7日未明になって、システムエンジニアでもある息子のひと言でやっと原因が解明でき、貼り付けることが出来、きのうはその後の執筆もあって、床に着いたのは午前2時過ぎ。かなりの体力を費やしたのである。
 というわけで、きょう8日は少し落ち着いてはいたが舞からは一宮に行く前に「あなたのパソコンが改善されたと思ったら、こんどは私のタブレットの調子がおかしくなってしまった。だから私がいない間に直しておいてよ」と突然の厳命が下る始末。使い慣れないタブレットを手にあれやこれやと修正を試みてはみたが、なかなか直すことが出来ないまま、1日があっという間に過ぎ去った。
 毎日毎日、こうして何かに急き立てられている。これを忙しいと言ったら鬼が笑うだろう。

 西日本各地で被災した方々のことを思えば、これしきのことは、かえってありがたいものだ。被災地で突然の災難に遭った方々には心からお見舞いをし、かつ申し訳ない気がするのである。被災地の皆さんは大変ですが、この窮地をなんとか乗り越えられるよう。心から祈っている。

7月7日
 七夕雨ミルキィウエイの溢れ出す
 =伊神舞子作きょうの俳句 minuetto-miから

 きょうは七夕さま。暦のうえでは小暑。これから8月中旬の立秋前日までが、いわゆる【暑中】である。が、このところのこの国は、西日本を中心とした雨また雨の連続なので、織姫と彦星が年に一度、会うことができる〈天の川〉なぞ望めそうにもない。
 昨年の、この日。わが家では今は亡き愛猫シロちゃんが老いの衰えから、とうとう自由に動けなくなり(それでも12日に亡くなるまで懸命に立ち、身の回りだけを何度も何度もやっとこせ歩いてみせた)、舞はじめ家族みんなで一生懸命に水をのませたり、食事を与えたり、下を取るなど懸命の介護と看病に当たっていた。
 もう1年がたつ。

 今は亡きシロちゃん(昨年の今ごろ)
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「数十年に一度しかない災害が差し迫っています」「高知、愛媛、岐阜県にも大雨の特別警報が出ています。1時間に80㍉以上。平年の7月1カ月分の雨量の1・5倍から2倍の雨です」「広島では23人が亡くなりました」「車の移動は危険を伴います。決して(ガード下など)アンダーパスはしないようにしてください」………
 ニュース報道を聞いていると、梅雨前線の停滞に伴う豪雨は、九州北部から中国・四国、大阪、京都、中部と相変わらずの記録的豪雨を見せつけている。気象庁はこの日、岐阜県高山市、関市、山県市、飛騨市、本巣市、郡上市、白川村にも大雨の特別警報を出した。

「身の回りの安全」を呼びかける気象庁職員と被災現場(NHK総合)
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 山や道があっけなく崩れ河川が氾濫し、道路も寸断。民家が押しつぶされている。
 橋が、家が、車が。鉄道が。市街地。集落、住宅街も。家族だろうか。濁流にのまれた民家の屋根瓦では疲れ果てた人が5、6人座りこんでいる。水に阻まれ、孤立した家々。押しつぶされた家屋の中からは救助を求める声がひきりなしに聞こえてくる。電気にガス、水道など。ライフラインも死んでしまっている。そして被災地では豪雨のなか、警察、消防、自衛隊員による必死の救助作業が果てしなく続く。
 まさに事実は小説より奇なり、で断末魔の地獄絵が各地で繰り返されている。お昼のニュースによれば、昨夜来の豪雨で正午現在、11人が死亡、45人の安否が不明となったままだという。その後に届いた中日新聞夕刊によれば、17人死亡、50人安否不明と犠牲者はなお、増えつつある。夜のニュース報道によれば、死者は45人、安否不明も57人にまで増えた(翌8日朝のニュース報道によると、死者51人、安否不明44人、意識不明の重体が7人)。
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 こうした水害現場をニュースで見るたびに私はかつて飛び回った長崎大水害=昭和57(1982)年7月23日夜から24日未明にかけ長崎を襲った未曾有の大水害。2時間雨量286㍉と過去最高を記録し、299人が死亡。被害総額は推定3000億円。当時10日から20日にかけての積算降水量は1000㍉を超した=など数々の被災現場と、あの辛く厳しかった日々を思い出してしまう。

 水害はいつの世にも起きる気がしてならない。
 が、なぜか大水害のたびに犠牲者が長崎と広島に集中するのはなぜか。私には原爆の被害者たちの魂が時折、大雨となってこの地上に降り注いでくるような、そんな気がしてならないのだ。
―昭和49(1974)年。同じ七夕の日だった。参議院選挙の投票日に三重県御薗村で豪雨のため投票用紙がプカプカと流れてしまい、やり直し投票で日本中が大騒ぎしたことがある。あのとき、私は志摩半島から伊勢支局に駆けつけたが、購入したばかりの新車サニーを途中の高台に置いたまま、胴体まで水に浸かって半日かけ支局に辿り着いた。支局1階事務所では原稿用紙などがプカプカと浮いて漂っており、同僚支局員が2階に引っ越す姿を間近に、私も手伝った。
 2年後。昭和51年の9月。岐阜にいたときだった。豪雨で転覆した鵜飼い船の取材を終え、倒壊家屋の現場取材に向かう途中、目の前で長良川の支流・伊自良川の堤防が切れ、みるみる水かさが増え、濁流が猛烈な勢いで首まで迫った。あの時、私と同僚記者は、それでも商売道具のカメラと無線機を両手で上にあげたまま、水流に押し流されそうになりながらも声をかけあって行軍。命からがらやっと辿り着いた民家の屋根からびしょ濡れのまま無線機を使い、勧進帳で本社に原稿を送ったが、援軍の取材陣はズタズタの道路に阻まれ、なかなか来なかった。
 あのとき、雨は来る日も来る日も降り続いた。とうとう穂積町(瑞穂市)の牛牧団地が水没。こんどは連日ボートに乗っての水害取材がつづく。やっと晴れ、長い水害取材から解放されると思ったその日、9月12日午前10時28分に長良川が安八町で決壊、以降は泥まみれの水害取材が長良川決壊訴訟(川堤の近くに丸池があったから決壊したのだ、とする丸池破堤説が争点だった)も含め、「これでもか」と延々と続いたのである=この模様は私の著書【泣かんとこ 風記者ごん!(能登印刷)】に詳しい。

 このほか、栃尾温泉郷が土石流に押しつぶされ、瓦礫に埋まった時は辛うじて確保した民家を基地に黒電話とロウソクの明かりだけを便りに原稿を送り続けた。トンボ眼鏡の赤いフェアレディーZの女で有名になった長野富山の連続女性誘拐殺人などの凶悪事件や嬉野豪雨、山陰豪雨に能登豪雨、さらには中部日本海地震、三宅島噴火を含む大災害、オホーツクの海への大韓航空機撃墜、日航ジャンボの御巣鷹山墜落など大事件発生のつど取材機(ジェットやヘリ)で現場へ急行した。
 前述の長崎大水害の現場では相棒のカメラマンと足を棒に泥だらけになって何日間も歩き回り、現地の人々の声に耳を傾け「長崎市民救った長崎放送」の特ダネをものにするなどした。半壊した重要文化財・眼鏡橋を【眼鏡橋は泣いていた】の記事としてニュース前線に出稿。あのとき被害が甚大だった鳴滝、本河内を取材中、年老いた女性が「身内3世帯の家族9人が全滅してしまった。この土の下さ、だれもおらへん。みんな死んじまった、だ」と語ったあの姿は今も忘れられない。
 このほか、嬉野豪雨取材では取材後、現地警察官も加わり、カメラマンと丸1日をかけ、渓谷と渓流が続く川沿いの道を崖伝いに歩きつづけ、やっとの思いで生還したあの難行苦行は今も頭に染み付いている。
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 遠い過去に触れてばかりも良くない。
 デ、きょうは私が第一線の記者時代に現場で体験したホンのごく1部だけについて触れてみた。言いたいことは、今はスマホや携帯電話も含めてあれもこれもそろい便利になった分だけ、本物の取材が出来ていない。このところNHKのニュースなどでよく聞く「数十年に一度の大雨」「重大な危険が差し迫った異常な状態です」表現も過去を十分に調べないまま気象庁に言われるままのハンで押したような安易表現に終わっている気がしてならない。
 うわっつらな報道だけは避けてほしい。

 だから、きょうは敢えて歩く取材の大切さを強調したくて書いてみた。自分の【目】で見、【耳】で聞き、【足】で書く。百聞は一見に如かず、だ。取材記者には現場100回の精神を忘れるな、と言いたい。
 ただそれだけだ。
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 神奈川県警が横浜市の大口病院(現横浜はじめ病院)で2016年9月に起きた点滴連続中毒死事件で入院患者、西川惣蔵さん(当時88歳)を殺害したとして当時、病院に看護師として勤務していた久保木愛弓容疑者(31)を7日、逮捕。調べに対して久保木容疑者は容疑を認め、他に20人前後の患者の点滴にも消毒液を混入した、と話しているという。

7月6日
 麻原彰晃死刑囚の刑執行を報じる夕刊
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『麻原死刑囚刑執行 オウム真理教元代表 地下鉄・松本サリン首謀 井上・中川元幹部ら6人も 理系エリート殺人集団に 執行の検討過程説明を』『「真相語らぬまま オウム死刑執行 麻原死刑囚面会拒否10年 運動、入浴は抵抗せず』『遺族「その時が来た」「麻原以外回避」望む声も』『区切り「ようやく」 松本サリン遺族「24年待った。とても長かった」 「真実迫れず残念」河野義行さん』『【教団元幹部6人】教団の犯罪告発井上嘉浩死刑囚 麻原元代表の主治医中川智正死刑囚 武装化の推進役早川紀代秀死刑囚 豊富な化学知識土谷正実死刑囚 最古参幹部の一人遠藤誠一死刑囚 殺人事件7件関与新実智光死刑囚 同級生「怖さ消えない」』……

 以上は、本日(6日)付中日新聞夕刊の見出しだ。全てが簡潔な表現で、これだけ読めばオウム真理教事件のあらかたが分かる。ちなみに平成7年3月20日に起きた地下鉄サリン事件では13人が死亡、約6300人が負傷している。

 というわけで、1995年の東京・地下鉄サリン事件などオウム真理教による13事件を首謀したとして殺人罪などに問われ、死刑が確定していた教団元代表・教祖の麻原彰晃死刑囚(63)=本名・松本智津夫、東京拘置所=はじめ、元教団幹部の土谷正実(53)、遠藤誠一(58)、中川智正(55)、早川紀代秀(68)、井上嘉浩(48)、新実智光(54)の死刑囚7人の刑が6日朝、東京や大阪などの各拘置所で執行された。
 その後、すなわち朝の死刑執行後の午後の記者発表では上川陽子法相が「慎重にも慎重な検討を重ねた上で執行を命令した。被害者家族が受けた恐怖、苦しみ、悲しみは想像を絶するものがある」と毅然とした表情で述べた。

 記者発表する上川法相、死刑を執行された7人の死刑囚、事件が残した教訓につき話す江川紹子さん(いずれもNHK総合ニュース画面から)
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 さらに地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(71)は「(死刑囚の)名前を聞いたときには動悸がしました。いまは、その時がきたなというそれだけしか思いはない」と話し、オウム事件を長年取材してきたジャーナリストの江川紹子さんは「事件をちゃんと生かしていかないと犠牲になった人たちは浮かばれない」と釘を差した。
 またオウム真理教元幹部で現在は「ひかりの輪」代表の上祐史浩さんも「当時は私も教団において重大な責任を有し、被害者遺族の皆さまに深くおわびを申し上げたい」と述べ、死刑廃止を訴える市民グループの深田卓さんは「オウム事件の全容が明らかにならない形になってしまった。7人同時執行という暴挙には強く抗議したい」との態度。人それぞれに死刑に対する思いをあらたにする1日になったのである。

 ちなみに。わが家の舞は「私は死刑廃止論者なの。それと、一度に7人同時に死刑を執行してしまうだなんて。事件の全容をはかる道を探るためにも良くないわよ。どんなに悪いことをした人でも、私は最後まで自身に考えるさせるべきだと思う」との見解で、実は死刑廃止論者なのだ、という。
 私はこれまで彼女の強い性格からして、てっきり死刑廃止論者ではないとばかり思い込んでいたのだが。どうやら、間違っていたらしい。そんな舞ではあるが。もちろんオウム真理教の事件そのものについては「許せない」との強い姿勢だ。
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 活発な梅雨前線による大雨。断続的な強い雨は収まる気配がなく、九州から中国・四国、近畿、中部地方へと雨は次第に東へと進み、広範囲で記録的な大雨に。6日夜現在で福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取、兵庫、京都と1府7県で大雨特別警報が出され、死者3人、行方不明者も5人に。
 岐阜の下呂でもこのままだと、河川の氾濫が心配されており、京都の嵐山など19府県の56万世帯、127万人に避難指示が出されたという。土砂災害や河川の氾濫から市民を守ろうと気象庁はじめ、NHKなど各メディアも再三の発表や報道で命がけである。ここは、被害の少ないことを祈ろう。

「周囲の状況の確認を」と訴える気象庁の予報課長と京都の嵐山(いずれもNHKニュースから)
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 きのうの話だが、ひょっこり社交ダンスのレッスン教室を訪れ、元気な顔を見せて下さったヒデさん。ピンクのグラジオラスを胸にかかえ、先生(愛称は、お若いのでワカさん)に手渡されたことを、ひと言付け加えさせていただく。これには「ありがとう」と、ワカさんが喜ばれたのは当然のことだ。

 写真は「グラジオラスをあなたに」と花束を手渡すヒデさん
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