新連載・地球一周船旅ストーリー〈海に抱かれて みんなラヴ〉8月16、17日

 【写真は横浜を目前に海を見守る乗客たち、ゴールまであと一息だ=16日写す】
 十六日午前5時過ぎ。
 私はいま、オーシャンドリーム号の8階後部デッキの椅子にただ1人で座っている。時差も前日の15日24時で消えた。日本の海に向かってまず横笛をふく。〈風の盆恋歌〉〈越後獅子の唄〉〈さくら〉〈よさこい節〉を2度、3度とふいてみる。かぜに飛ばされそうな膝の楽譜をノートと肘で抑えながら、それでも、ふきつづける。
 横笛演奏をやめた私は、今度は携帯バッグからハーモニカを取り出す。
 そして。〈浜辺の歌〉を最初に〈この道〉〈うみはひろいな〉〈みかんの花咲く丘〉〈公園の手品師〉〈蛍の光〉〈仰げば尊し〉〈ふるさと〉〈夕焼け小焼け〉〈お富さん〉…などの唱歌や往年の流行歌を、まるで気でも狂ったように、次から次へとふき続けた。演奏を横目に早朝ウォーキングの人たちが『おはよう』と言って、通り過ぎていく。
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(十七日)5月8日から102日間に及んだこのピースボート(ジャパングレイスのオーシャンドリーム号に乗船)を下船するに当たって、最後に【平和って、一体何ですか】の問いに私・伊神権太なりの平和論を本欄に記述しておきたい。
―平和って何? こう聞かれたら、私はこの先確実に〝愛に満たされた、笑いの世の中と社会です〟と答えるでしょう。そう、愛と笑いがあれば平和な世の中は保たれるのです。5月8日に、このピースボートに乗船して以降、私は各国寄港地や船上で「あなたにとっての平和とは何ですか」という素朴な問いかけをし続けてきました。
 この結果、「平和」とは、いまだに世界中で繰り広げられたり止まない戦争や貧困、飢え、病のほか、最近では東日本大震災と福島原発事故に代表される災害と原発事故など、これら不幸のない社会であるのはむろん、何よりも日ごろの何げない、精神面での豊かさの必要性を感じたのです。
 もちろん、各国を回るうち「戦争は人の心の中で生まれるものであることから、人の心の中に平和のトリデを築かなければならない」といったパリ・ユネスコ憲章はじめ、ゲルニカの平和博物館で耳にしたマハトマ・ガンジーの言葉「平和への道はない、平和そのものが道である」、さらには先の大戦で日本兵が多くの現地人をチャンギの浜で銃殺したシンガポールでは「許そう! でも忘れない」の指摘に、胸を突かれたのも事実です。

 そんな中、私の心に止まったのは、フランスのル・アーブルを訪れた時、バス停で出会った中学1年の少年が「ピース イズ ラヴ」と目を輝かせて答えてくれたことです。これほど分かりやすい言葉はありません。ほかに中国厦門(アモイ)に住む女性ガイドや中学生、イギリスのロンドンで出会った台湾人女子大生らは「平和? それは母と一緒にいられることです」と母との何げない普通の生活のありがたさを強調、平和を語る時、ふつうのお母さんの存在がいかに大切か、をあらためて思い知りました。
 まさに母は強しで「母の存在」こそが、もうひとつの平和のシンボルだといってよいでしょう。それとピースボートの映像チームスタッフがさらりといってのけた「笑うこと」。確かに笑うことは大切で〝笑い〟の中にこそ、平和があるのです。

 最後に、【旅が平和をつくり平和が旅を可能にする】といったジャパングレイスさんの社是もその通りです。平和な日本だからこそ、こうしてピースボートの地球一周の船旅が出来た、とつくづく思いました。   
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 日本が見えてきたところで、かつて可愛がっていただいた宇野千代さん(小説家、故人)にチョッと似た、旅は道連れ世は情け、を地で行く〝サッちゃん〟が私に向かってしみじみと、こう言いました。
 「ゴンタさん。ひとこと言わせていただいてよいかしら。あなた、ね。今回の船旅は奥さまのスゴイ決断があったことに大いに感謝しなきゃ。本当よ」
 
 17日早朝、オーシャンドリーム号は横浜港に無事、入港した。   (完)

(伊神権太の新連載・地球一周船旅ストーリー〈海に抱かれて みんなラヴ〉は、これにて終了します。長期にわたる読者の皆さまからのご声援、そして船上や寄港地で知り合った多くの方々に心から感謝とお礼を申し上げます。これからも新生「熱砂」ともども、くれぐれもよろしくお願いたします)。

 なお、私がピースボート映像チームの理解と協力を得てユーチューブで〈中国・厦門(アモイ)編〉〈シンガポール・プーケット(タイ)編〉〈スリランカ/コロンボ編〉〈エジプト編〉の順で世界に発信してきた「伊神権太が行く世界紀行 平和へのメッセージ/私は今その町で」の〈ヨーロッパ前編〉〈ヨーロッパ後編〉〈中南米編と総括〉は近く公開予定です。よろしく、お願いいたします。