生きてゆく人間花たち/十一月の唄

平成二十四年十一月三十日
 のんびり屋の秋は、尾張とて同じ。赤い紅葉がまだまだ彩りを放つ=愛知県江南市で
  

 このところは、ある長編小説の執筆に時間を費やし、午前二~三時過ぎに床に入る毎日が続いた。取り敢えずは今日で当面のケリはつけたので新たな創作の世界にチャレンジしていきたい。

 徹夜に近い日々。さすがに今は全身が睡魔に襲われている。私を形成する細胞の全因子が「もう、そろそろたっぷりと寝かせてよ」と迫ってくる。自ずと本欄〈生きてゆく人間花たち/十一月の唄〉を書く時間は連日深夜から未明にかけて、だ。
 この十一月の唄。たとえ、身の周りに題材を得ての身辺文学とはいえ、一定のレベルと品格と文学性、文章力を保つからには、それなりの資料のチェックも欠かせない。また、ある程度の情報収拾もなければ希薄な内容になってしまう。

 というわけで、このところは日々、その日の執筆の目安をつけたところで本欄「熱砂」作品集の執筆にかかってはきたが連日、真夜中の執筆となり、どうにも眠くて全身が仮死状態のなかでの筆さばきとなったのも事実だ。
 その証拠に二階寝室に上がって行く時には、足はふらふら、泥酔した酔っぱらい以上で、なんだか宇宙遊泳をしながら目的地まで、あと一息といった感じで歩いてきた気がする。
 幸か不幸か。妻も家事やら、俳句や短歌の作句、読書で寝るのが私に負けず劣らず、かなり遅い(もっと早く寝なければ健康に悪い、とは言ってはいる。私なりに合間を見て食器洗いやら、洗濯ものの片づけ、買い物など諸々を助けてはいるつもりだが)。
 おかげで二人は睡眠不足を共有し、互いに切磋琢磨することで、ここまでこれたのかもしれない。

 さて。きょうの目玉は何と言っても、衆院選を前にこれまで合従連衡を繰り返し、それなりに淘汰されてきた十一党首による「党首討論会」か。
 日本記者クラブ主催によるものだが「前に進むか後ろに戻るか、だ」(野田首相、民主)とか「2%というインフレターゲットを設け、まっとうな政治をしていきたい」(安倍自民党総裁)、「政治は未来を作る力です。皆さん、なぜ小沢さんを怖がるのですか。小沢さんを使いこなせずして、官僚を使いこなすなんて出来ません」(嘉田由紀子滋賀県知事、日本未来の党代表)、「暴走族の石原です。安倍さん、尖閣をどうするのですか」(日本維新の会代表)など。各党首ともそれぞれの持ち味を曝け出した点で、それなりに良かった。

 きょうの中日夕刊2社面に「のんびり屋の秋でした」「紅葉、初雪、記録的遅さ」「9、10月 北日本の高温一因」の見出しが気にかかり、記事の中身を読むと「この秋、札幌市のイチョウの黄葉が過去約六十年の観測史上最も遅いなど、北日本を中心に紅葉・黄葉や初雪が記録的に遅かったことが三十日、気象庁の生物季節観測などで分かった」とあった。

【新聞テレビから】
☆『名曲ベストヒット歌謡〝昭和30年代40年代〟』(30日夜、三重テレビ)『世界びっくり旅行社▽魅惑の世界遺産イスタンブールへ、ほか』(30日夜、NHK総合)
☆『緑区にメガソーラ― 政令市最大級 名古屋市年内に業者公募 埋め立て処分場跡地活用』、『井山天元が初防衛』、『(中日新聞社が)福島特別支局を開設』、『中国残留孤児の時さん一時帰国』、『関電顧客情報 3年で数十人分漏えいか 愛知県警 子会社社員を逮捕』(30日付、中日朝刊)
☆『パレスチナ「国家」格上げ国連で決議採択 イスラエルに圧力』『日本は賛成票「和平前進を」』、『名古屋の風 感じて観光 オープンバス 試験運行へ』『嘉田、小沢氏が会談 未来の党候補調整』(30日付、中日夕刊)
☆『パレスチナ「国家」格上げ 米など9カ国反対 国連総会採択』(30日付、毎日夕刊)

平成二十四年十一月二十九日
 喪中につき新年のご挨拶を失礼させて頂きますーこのところは、〝喪中はがき〟ばかりが、どんどんわが家に届く。みなさん、それぞれに大変な一年だったと思うと、何と言ってよいのやら。言葉に詰まる。

 「今年一月に父が永眠」「四月に妻が」「夫が六月に永眠致しました」「夫が七月二十四日永眠いたしました」など。生きていることが、どれほど大切かを思い知る。文面を読み進めるつど、少々の立身出世よりは健康で、元気で、楽しく生きてゆくことの大切さを今さらながらに感じる。

 楽しさ、を感受ということなら。きのうの師匠宅での横笛稽古に続いて、今日は江南市民文化会館で社交ダンスのレッスンに参加。ワルツとジルバ、ルンバのステップを学んだが、そこそこ出来るようになり、結構楽しいひとときとなった。小説執筆など、それ以外にもしなければならないことばかりで、一日はアッと言う間に過ぎ去っていった。

 きのうの本欄で嘉田滋賀県知事率いる「日本未来の党」の飯田哲也代表代行が、どんな人物なのかが、気になると書いた。幸い、本日付の中日新聞朝刊で紙面を割いて紹介しており、なるほどな、と思った。
 それによると、飯田氏は環境エネルギー政策研究所所長で橋下大阪市政スタートと同時に府と市の特別顧問に。しかし五月、関西電力大飯原発の再稼働に反対姿勢だった橋下氏が一転、一時的な運転を容認してから二人の間に距離が出来、温度差が目に見えるようになった、とのこと。
 要は橋下氏の心がわりに飯田氏が反発したことも、新党立ち上げの一員になったようだ。飯田氏は、このほか七月に中国電力が進める上関原発建設計画が争点となった山口知事選に脱原発と自然エネルギー導入を訴え出馬、善戦の末に落選し、この時に滋賀県知事の嘉田さんが応援に訪れている。
 と、ここまでは分かった。でも、だ。そもそも環境エネルギー政策研究所長とは何なのか。これまでどういうことに携わってきたのか、具体的なところを知りたい。でないと、それこそ背後の黒幕に操られポッと出てきた人間と思えなくもない。
 
【新聞テレビから】
☆『〈チャイナ・プラス1〉脱中国依存に動く企業 ミャンマー詣で過熱』『人材確保争い 激化必至』、『嘉田氏「再稼働あり得ぬ」 日本未来の党が発足』、『伊賀にメガソーラ― 中電系が建設、管理 近鉄、来春に着工』、『佐渡5遺体 沈没後、長時間漂流か 北朝鮮漁民? 一部白骨化』(29日付、中日朝刊)
☆『未来の党 子ども手当 年31万円 公約要綱「もんじゅ」は廃止』、『石原都政 継承か転換か 都知事選告示 8氏届け出 衆院選と同日投票』、『関電の顧客情報漏えい 営業秘密侵害容疑 子会社の女逮捕へ 愛知県警』(29日付、中日夕刊)

平成二十四年十一月二十八日
  私愛用の横笛と〈酒よ〉の楽譜
 

        ×        ×
 新聞テレビを見ていると、昨日、原発を計画的に減らしゼロにする〝卒原発〟を掲げる新党「日本未来の党」を発表した滋賀県の嘉田由紀子知事が、マスコミ陣に追い回され、かつモミクチャにされ、大変。いや、かわいそうである。

 この事態に至っては、マスコミ各社バラバラの取材もいいが、嘉田さんのことを思えば、滋賀県庁か琵琶湖ホテル、いや大津プリンスホテルでもいい。時間を決め共同会見を出来ないものか。取材を知事の日程に出来るだけ合わせる配慮が望まれる。老婆心ながら、ついそんなことを思ってしまう。
 そうは言っても【嘉田ジャンヌ・ダルク(この名前は私・伊神権太が勝手に命名)】は昔からフットワークがきく女傑だから、これしきのマスコミ包囲網にダウンすることはないはずだ。それに今度の新党結成は嘉田さんご自身の発想だけに、これしきではへこたれることもないだろう。
 夜のテレビニュースで新党立ち上げにつき「嘉田さんは、あくまで目くらましで、背後に〝国民の生活が第一〟の小沢代表がおり、小沢代表が仕掛けた罠に違いない」といった意見も一部にあるにはある。現に本日、党のアジェンダ(行動計画)を発表し、未来の党との合流につき「ありえません」と語った「みんなの党」の渡辺喜美代表は「最後に大物の操り人形にならないようにしてほしい」と釘をさしている。

 衆院選を前にした嵐は驚速で、吹き荒れている。
 が、私自身は、あくまで国の行く末を案じた嘉田知事ご自身の仕掛けであると見たい。その証拠に、嘉田さんならでは、いち早く党の理念となる【びわこ宣言】を発表したばかりか、女性の政治、社会参加を進める「活女性、子ども」も訴えている。
 ただ、一つだけ気になるのは、けさの朝刊各紙で新党「未来の党」の党名を嘉田知事とともに掲げ写真に写っていた党代表代行・飯田哲也氏が一体、いかなる人物であるか、ということだ。嘉田知事は、ここまでくるに至ったいきさつについて飯田氏の存在も含めより詳しく有権者に説明した方がよいのではないか。
 でないと、背後に大物がいるとかいないとか、下種の勘繰りをされかねない。
 
 既に新党には「国民の生活が第一」と「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」などが合流を決定。元自治体の首長やその他の候補者からも参加を希望する動きが相次いでいるという。ドンレミの少女、すなわち【嘉田ジャンヌ・ダルク】には、この際、周囲の雑音などに惑わされることなく初志貫徹、信念を貫いてほしい。それでこそ、命の湖・琵琶湖とともに生きる環境先進県の知事といえよう。【滋賀らしさ】を天下に見せつけてほしい。

 きょうは午後、大須の横笛師匠宅へ。先日の日本ペンクラブのペンの日懇親会で聞いた女性の横笛演奏の話になり、「師匠と同じくらいうまかった」と私。あらためて師匠ご自身の笛の音を聞かせていただいた。師匠の場合、うまさに経験からくる何ともいえない情緒、それに彼女ならでは、の品格が加わり、あらためてそのステキな音に感動、横笛を習っていてよかったーとしみじみ思ったのである。

 名古屋地方気象台によると、けさ名古屋市で初氷を観測。平年より四日早く昨年に比べたら十一日早い。ちなみに、各地の最低気温は名古屋市1・9度、岐阜市1・4度、津市2・9度で十二月中、下旬並み。週末は冬型の気圧配置が強まり、厳しい冷え込みになりそうだという。

【新聞テレビから】
☆『この不況下で雇用増 太陽光発電に参入加速』(28日夜、メ~テレ〈報道ステーション〉)
☆『嘉田滋賀知事 脱原発結集し新党 日本未来の党 生活と減税合流 女性の政治参加促進』、『みどり3人合流 参院は残留』『脱原発のため脱盟友 第三極 嘉田新党で二分 河村氏「一緒にやる」 合流決定で嘉田氏と電話』、『原発ゼロ、TPP推進 民主がマニフェスト発表 対自民鮮明に』(28日付、中日朝刊)
☆『嘉田新党 第三極が二分 「未来の党」生活・脱原発合流』『卒原発 柱に』、『ノロウイルス流行の兆し 手洗い励行を』(28日付、毎日朝刊)
☆『嘉田氏 「22年に原発ゼロ」 衆院選100人規模擁立へ』『嘉田新党 波立つ足元 議会「県政両立は?」立候補予定者も賛否』、『8万人火星移住構想 米宇宙ベンチャー「今世紀前半に」』、『反政府デモ20万人 エジプト 改正憲法令に抗議』、『拉致被害者松本京子さん 母・三江さん死去(89歳、米子市内の病院で)』、『津波被害忘れない 岩手日報が小冊子』、『「大名古屋ビルヂング」 新ビルも同名で 看板は掲げず目立たずに』(28日付、中日夕刊)

平成二十四年十一月二十七日
 北海道で暴風雪。鉄塔が倒れて登別、室蘭などで五万六千世帯以上が停電。えりも岬では最大、風速42・1メートルの風が吹き荒れたという。いよいよ厳しい冬の到来である。

 十数党が乱立し混乱の一途を極める、といってもいい衆院選はと言えば、ここ二、三日の間に滋賀県の嘉田由紀子知事がいきなり、新党の旗を掲げて政界に躍り出てきた感じがする。その名も脱原発を旗印とした「日本未来の党」だ。党名に日本の行く先を何とかしなければ、といった意欲が感じられる。
 嘉田さんを見ていると私はなぜか、十五世紀はじめ、フランスは北東部シャンパーニュの一農村から突然、現れ出たオルレアンの乙女、すなわちドンレミの愛国少女【ジャンヌ・ダルク】の存在とだぶるのである。百年戦争の末期に彼女が軍を率いてイギリス軍を撃破しオルレアンを奪還した事実は歴史上、知られたことでもある(最期は異端の宣告を受け、裁判のうえ焚殺刑)。

 たとえが良いのか悪いのか。それは読者の皆さんの判断で考えもさまざまだろう。でも、少なくとも私、脱原爆を進める文学者の会メンバーでもある一匹文士・伊神権太の目には嘉田さんこそが、今の日本を救う【ジャンヌ・ダルク】に見えてしかたがない。私自身、かつて大津主管支局長として在任当時、琵琶湖博物館学芸員として博物館開設に飛び回る嘉田さんの姿を間近とし、かつ随分お世話になったばかりか、その燃える情熱に絶えず接してきただけに彼女が今回の行動に何故出たのか。その訳がよく分かるのである。
 離合集散にうつつを抜かし信念も何もあったものでない、そんな男どもに任していたら日本が滅びてしまう、と真剣に思われたのだろう。

 琵琶湖と命を共にする滋賀県と言えば、かつての粉せっけん運動に始まり、環境浄化には日本の先端を走りリードしてきた。このままでは日本が危ない、今こそ〝滋賀力〟〝琵琶湖力〟を発揮して沈没寸前の日本丸を救わなければ、と新党・日本未来の党結成の決断をしたに違いない。【嘉田ジャンヌ・ダルク】の出現により、日本の政治全体がギア・チェンジされたらいいな、と心底から思う。
 もしかしたら、今回の総選挙で日本の政治は再生されるかもしれない。期待していい。

【新聞テレビ】
☆『脱原発連合 急ぐ』『滋賀知事と減税・生活・みどり 比例で統一名簿案』『死票少ない メリットも 統一名簿』、『河村氏が衆院選不出馬表明』『市長再選へ「全力投球」』、『SKEら12組が初 第63回「紅白」出場者発表』(27日付、中日朝刊)
☆『嘉田知事 新党結成へ きょう会見 脱原発掲げ「知事辞任せず」』、『(ローリング・)ストーンズ50周年ライブに2万人(ロンドンの02アリーナ)』、『北朝鮮で墓参へ 豊橋の男性出発』、『関ジャニ8ら紅白初出場』『小林幸子さん落選』、『長久保容疑者 「これから信金襲う」 150メートル離れたカラオケ店で』『高校卒業時「夢は酪農家」』(27日付、毎日朝刊)
☆『大卒内定率63% 連続増も先行き不透明 来春予定』、『日活創立100周年 あの輝きをもう一度』、『ギリシャ融資再開合意』『ユーロ圏財務相会合 債務不履行を回避』(27日付、中日夕刊)

平成二十四年十一月二十六日
 東京会館で日本ペンクラブの〝ペンの日〟懇親会があったのでかなり激しい雨の中、新幹線で上京し出席してきた。会の冒頭、横笛、それも若い女性奏者による篠笛の演奏があったのには感激した。私自身笛をふくこともあってか、こうした席での笛は哀調を帯び、しんみりして、なかなかいいものだな、と得心した。

 会は浅田次郎会長が最初に「昭和十年十一月二十六日に私たちの日本ペンクラブが誕生し、七十七年になりました。いつの時代でも、どんな社会情勢にあっても言論と表現の自由は保障されなくてはならない。言論と表現が薄くなると戦争が起きる。きょうは日本ペンの歴史よりも先輩にあたり、昨年春〝日本人〟に帰化され、日本の文化勲章受章者でもあるドナルド・キーンさんをお迎えしました。キーンさんは、日本の文学を世界に広めてくださり、昨春、日本に帰化された時は嬉しくて仕方なかった。日本の近代史を書くに当たって御著【明治天皇】は、いつも手に取れる場所に置いてあります。今宵は日本への帰化をみんなでお祝いしましょう」とあいさつ。キーンさんの話を、みんなで聞いた。

 椅子に座って日本文学について話すドナルド・キーンさん
 

 「腰を下ろし大変失礼です。でも、九十歳の老人ですので。お許しいただいて」と椅子に座って始まったキーンさんの話は、文学を志す者にとって大変示唆に富む内容ばかりで気がつくと私自身、話の世界の中に引き込まれていた。
 具体的には、「日本文学を初めて知ったのが十八歳の時。当初は、浮雲と細雪しか知らなかった。でも、勉強していくうち、やがて日本の偉大な文学・源氏物語を知るに及んだ」。そして、日本人として帰化した点については「私にとっては、ごく自然な話なのです。日本人になれ、本当に嬉しかった」とも話した。

 引き続き登壇した、中西進日本ペンクラブ副会長もドナルド・キーンさんが帰化するに当たっての顔写真の収集など手続き面の秘話などにつきユーモアたっぷりに披露。「ペンの力は、あくまで平和を願うものである」点を強調。中西副会長の乾杯の音頭で懇親に移った。
 この日は先に私が実現させた地球一周船旅の帰朝報告会で祝電をいただいた作家小中陽太郎さんにもお会いし、お礼を申し上げたほか、中西さんはじめ石井紀男さん、吉岡忍さん、下重暁子さん、森詠さんら全国各地で活躍されている多くの文人仲間にも会え、行ってよかった。

 雨に濡れたイルミネーション。思わず心が躍った=東京会館近くの歩道で
 

 東京会館から東京駅までは十分ほど、いろいろ思いながら歩いた。目の前の歩道に浮かび上がる雨に濡れたイルミィネーション、この光りのなかの道を、好きな友と、共に歩きたい衝動にかられた。

【新聞テレビから】
☆『〈2012衆院選 私たちの手で 争点の現場・上〉脱原発 具体策示して 30キロ圏 子育てる母不安』、『変節かすんだ「脱原発」 名古屋のデモ 維新に失望』、『北京マラソン日本人も走れた! 沿道応援 国境なし』、『四日市市長に田中氏が再選』、『羽島市長に松井氏 現職破る』(26日付、中日朝刊)
☆『河村氏、衆院選出馬せず 次期市長選に前向き 「市民の期待に応えないかん」』、『滋賀知事、新党を検討 「減税」など 脱原発結集 目指す』、『飯舘から避難、一度は牛処分 廃業の酪農家 福島で再出発 「復興のエンジンに」』、『年末ジャンボ発売 史上最高6億円』(26日付、中日夕刊)

十一月二十五日
 通りすがりに、それもホンの僅かな時間ではあったが、中日ドラゴンズ公式ファンクラブ事務局の花・平田瑠奈さん(岡崎市在住)に名古屋駅構内でバッタリお会いし、とても嬉しかった。
 彼女とは2006年春から丸六年、同じ職場の同僚として机を並べた仲だけに、懐かしかった。平田さん、すなわち〝ルナ〟の場合、ファンクラブ誕生当初からずっと毎年、10~12万人前後にも及ぶ会員サービスに尽くしてきただけに、貢献度は高い。親身のファンサービスに始まり、ファンや選手への対応、全国津々浦々にまで至る会員受け付け業務、さらには会員諸氏からの苦情処理まで大変な仕事だ。時によってあった会員とのバトル・ロワイアルも今となれば、熱心さのあまりで避けては通れない道だったかもしれない。
 でも、ある面で多くの人々に幸せを届ける〝天使〟のようなやりがいのある仕事だけに、これからもプロ野球界とドラファンのために大いに役立ってほしい、と心から願い、握手して別れた。ますますの、ご活躍を祈ろう。

 出会いと言えば、大垣支局時代からの友人で中部ペンクラブ会員でもある椿井愛一郎さんと名駅近く「つちやホテル」であった理事会のあと、地下街で一献。あれやこれや、と文学談義を交わし有意義なひとときだった。〝ルナ〟には、地下街の飲食店を出て歩いて名鉄ホームに向かう途中にJR改札口近くで偶然、お会いした。洪水のような人々が、幾千万……と通り過ぎてゆく。その中での、こうした再会だけに、運命みたいなものを感じたのである。

 八重(ヤエ)姉さん夫妻から届いた甘い信州りんご
 

 きょうは、名古屋に出かける前に宅急便が届いたので開けると、大きな信州リンゴがいっぱい出てきた。中に「こんにちは! 皆さま 第76回ピースボート出逢いに感謝します。長野県安曇野のりんごです。1つずつ大切に箱に入れ大切なあなた様に送ります。召上って下さい。 平成24年11月23日 〒242―0008 神奈川県大和市 小泉正道・八重子」とあり、船友仲間の八重姉さんからだった。
 思ってもいなかった信州りんご。それも私にとっての長野県の安曇平は新聞社の松本支局員、すなわち地方記者として駆け出した当時に毎日、北アルプスを望み見ながら飛び回った土地である。恋もあれば、大失敗、スクープ…と、いろいろあった土地だ。その後、長野・富山連続誘拐殺人事件の時には、名古屋の社会部から応援部隊として現地入り。赤いフェアレディーZに乗ったトンボメガネの犯人、宮崎知子がよく利用したとされるリンゴ畑の一角にあったモテルに女装をして潜入する、など忘れられない思い出が多く残る土地柄でもある。
 その信州からのりんごにまさか、出会おうとは。りんごは、元々大好きで少年時代から、よく丸ごとかぶりついただけに、八重姉さんのご配慮には礼のしようがないのである。ありがとう。

【新聞テレビから】
☆『「クジラ対シャチ」 大海原の決闘を世界で初撮影! 4万頭大集結感動! 子を守る母の愛、弱いものを守るザトウクジラ魂』(25日夜、NHKスペシャル)
☆『〈世よだん談〉 莫言小説を読む(経済部長・鈴木孝昌)=中国古代の最も残酷な処刑とされる「凌遅(りょうち)」。罪人の身体を三千三百五十七もの細かい肉片に切り刻む。途中で死なせず、最後の一刀と同時に絶命させる技は芸術の域にあるという。/ノーベル文学賞を受賞する「白檀(びゃくだん)の刑』は、凌遅の進行をリアルに再現している。肉片の切り口に至るまで細部を描ききる冷徹さには、……」』、『復興の地日本勢輝く NHK杯 真央と羽生V』、『〈脱衣室〉ナゴヤドームで2年ぶりにファン感謝デー』、『〈訃報〉「クレヨン王国」の福永令三氏。83歳』(25日付、中日朝刊)

十一月二十四日
 サンフレッチェ広島がセレッソ大阪を4―1で破ってJ1初優勝。「我々は日本一になれました」と監督が絶叫、広島が燃えている。フィギュアNHK杯は、17歳の羽生結弦が男子シングル・フリーで初優勝。大相撲は白鵬が鶴竜に勝ち、13勝1敗で23回目、4場所ぶりの優勝を決めた。新横綱日馬富士は終盤4連敗で9勝5敗。

 夕方。「〝志摩のイケウチ(池内)さん〟が亡くなられた」と妻が喪中はがきを手に握りしめ、少し興奮気味に、室内に入ってきた。
 「喪中につき新年のご挨拶は謹んで遠慮させていただきます
 一月に夫池内正彦が七十八歳で永眠いたしました
 永年にわたるご厚情に改めて心から御礼申し上げます
 なお 時節柄一層のご自愛のほどお祈り申し上げます
            平成二十四年十一月」
                           
 はがきは三重県志摩市志摩町布施田在住の池内さんの奥さま・チイさんからだった。
 池内正彦さんと言えば、昭和四十年代の後半、私が阿児町鵜方の中日新聞志摩通信部に地方記者として在任中、当時、中日写真協会志摩支部長の要職にあり、御座白浜シーサイドフェスティバルや伊勢えび祭り、海女さんの潮かけ祭り、英虞湾の真珠まつりの際など、そのつど行われた撮影会で企画を提案していただくなどお世話になった。
 通信部で続けた写協支部月例会にもリーダーとしてほとんど毎回出席され、志摩のアマチュア写真活動に大きく貢献されたことは、伊勢志摩地方の写真愛好家なら、だれもが知っている。私たちが志摩を離れてからもずっと、年賀状や転勤挨拶を交わす間柄で能登にいたころは、支局の女性が結婚するに当たり真珠の贈り物の手配をお願いしたところ、気安く応じてくださるなど、その後も随分と助けていただいた。「イガミさん。あのなあ~、ホイでなあ」が口癖で、口調には人柄がにじみ出ていた。

 でも、その池内さんは今はもう、この世にいない。
 帰らない人は帰らない。ここは、お安らかにと、ご冥福を祈るほかない。合掌―
 
 きょうの中日新聞の夕刊が〝名古屋飛ばし〟について、いいことを書いていた。こんな調子である。
 ―名古屋では、嫌な言葉を思い出した人も多かろう。「名古屋飛ばし」。二十年前、東海道新幹線で運転を始めたのぞみの下り一番列車が名古屋を通過し新大阪へ。愛知や名古屋の政財界は大反発。最近の名古屋飛ばしは第三極連合。……
云々ときて
 「減税を見捨てた維新は、強引な合流で政策のほころびがポロポロと。市長は新たな連合に踏み切った。……政策優先の合流なら、名古屋飛ばしもケガの巧妙さ。」(24日付、中日夕刊「夕歩道」から)と結んでいる。

 そう、ケガの巧妙で名古屋の底力を天下に見せつけてほしい。

 わが家の庭のモミジ。ピークは少し過ぎたが、まだまだ赤い 
  

 ガブリとモミジの愛らしいアンソロジー=自宅玄関で
  

 テレビニュースの紅葉に見とれていると「うちのモミジもきれいよ」との声。アッそうかと思い、少しピークは過ぎてしまったが庭に出て愛用のカメラに納めた。家に入ると、なんと、玄関先にガブリと一緒にモミジが飾られているではないか。
 ガブリと言えば、ドラゴンズ公式ファンクラブのマスコットキャラクターでドラファンなら、知らない人はいない。ガブリが、これほどモミジがお似合いとは思ってもいなかった。きょうは、ナゴヤドームでファン感謝デーが行われ、多くのファンが満足そうにしている姿をたまたまテレビでみたが、みんなの努力でファンと選手の距離は確実に縮まっている。いいことだ。
 
【新聞テレビから】
☆『地球の笑顔 関口照生 イヌイットと暮らす カナダ』、『〈風の色〉ちょっと 心がポーッ 日色ともゑ(俳優)』、『本物の改革の時 私たちの願いに一番近い政党 作家あさのあつこさん』(11月25日号、しんぶん赤旗日曜版)
☆『「オッサンくさい 政治もう飽きた」 「全日本おばちゃん党」大阪で始動』、『新党大地・真民主 清水宏保氏を擁立 北海道1区』、『立てこもり32歳男逮捕 監禁容疑 人質4人無事 豊川信金 13時間後 全面解決』、『イチョウ黄金色に 稲沢・祖父江でまつりにぎわう』(24日付、中日朝刊)
☆『100年の記憶乗せ 広島電鉄』、『「捕まった これで終わり」 立てこもり真意読めず 豊川信金 うたた寝時 急襲 県警特殊捜査班 2階窓焼き破る』、『〈訃報〉元ハンセン病国賠訴訟の原告団会長 曽我野一美さん(85歳)』

十一月二十三日
 勤労感謝の日。
 お昼のNHKニュース。広島で路面電車が走り始めて百年になる、という。この電車、広島に原爆が投下され、その三日後には既に走り始めたそうだ。それこそ、市民の悲しみから幸せまで何から何までを乗せ、走り続けてきたに違いない。

 昨日午後、発生した豊川信用金庫蔵子支店へのサバイバルナイフ(刃渡り11センチ)を手にした男の立てこもりは、きょうの未明、午前三時過ぎに警官隊が現場に突入し住所不明、無職の長久保浩二(32)を監禁容疑で逮捕、人質になっていた四人全員が保護され一件、落着した。
 逮捕された時、長久保はソファでうたたねをしていたという。動機は今後の調べで明らかにされようが、それにしても人騒がせな事件だった。十九歳の女性店員が腕に切り傷を負った以外は皆無事でとまれ、よかった。

 『ガザ停戦合意 ハマス「勝利宣言」』『実効支配正統性印象づけ イランの武器供与認める』(23日付、中日朝刊)の見出しが躍るガザ地区にも少しは平静さが戻ってきた。昨夜のテレビニュースでガザ市民が「パレスチナの民衆は、イスラエルに何をされようと負けない」と語っていた、あの〝目の光り〟が忘れられない。
 新聞も「イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスの停戦合意は、イスラエルの地上侵攻を回避し、ガザ封鎖の緩和も獲得したばかりか、アラブ諸国の支持を広げて実効支配の正当性を印象付けるなど、ハマス側にとり政治・外交上の大きな得点となった。」(中日朝刊)と報じている。その通りだと思う。
 こうなったのも停戦の仲介をしたイスラム原理主義組織ムスリム同胞団出身のエジプト・モルシ大統領の存在が大きい。カイロで満足そうな表情で記者会見するハマスの指導者マシャル氏の笑顔を見るにつけ、モルシ大統領の出現により、中東そのものが少しずつギア・チェンジされていきそうな、そんな予感がする。

 宮城県セキスイハイムスーパーアリーナで始まったNHK杯フィギュア・ショートプログラムで仙台市出身の羽生結弦(17歳。はにゅうゆづる。宮城・東北高校)が95・32の世界歴代最高得点で、これまでの自己記録をさらに更新、マオちゃん(浅田真央)もトップの67・95点で折り返した。サッカーJ1昇格プレーオフ(東京・国立競技場)で大分トリニータが千葉ジェフに1―0で勝ち、四年ぶりにJ1復帰を決めた。

【新聞テレビから】
☆『〝帰村〟村長 奮闘す▽村の再生へ遠藤雄幸村長の涙 放射能に負けない』(23日夜、NHKスペシャル)
☆『井山天元(23)5冠 囲碁王座戦史上2人目』、『刃物男 信金立てこもり』『人質5人 1人は解放 豊川信金蔵子支店 食料と水を要求』、『減税、「脱原発」も党名に』『亀井氏らとの合流発表』、『大津の自殺で緊急調査 いじめ認知14万件 4~9月 半年で昨年度の倍』(23日付、中日朝刊)
☆『ガザほぼ平静さ戻る 停戦合意』『「封鎖解除」認識ズレ ガザ停戦発効 ハマス「全て開放』 イスラエル拒否崩さず」』『8日間で死者166人に』(23日付、毎日朝刊)

十一月二十二日
 夜のNHKニュースウオッチ9。それによれば、午後二時二十分ごろ、豊川信用金庫蔵子支店に五十歳くらいの男が刃渡り十センチの刃物を手に女性客一人と職員四人を含む計五人を人質に立てこもっている。男は支店次長を通じ携帯電話で十人分の食料と水、拡声器、たばこ二箱を持ってくるよう要求(拡声器は差し入れ済み)、金銭は要求せず報道関係者を呼べと話し、野田内閣の退陣を求めている、ともいう。
 奇妙な事件だが、今後どう推移するのか、気になるところだ。

 同じニュースで河村たかしさん率いる減税日本が亀井静香前衆院議員らのグループと合流。【減税日本・反TPP・脱原発を実現する党】(略称・脱原発)という名で船出することになった、と知った。ちょっと長い名前だが分かりやすくていいじゃないか、と思う。共同代表に河村氏と山田正彦元農相が、幹事長には亀井氏が就いた。【脱原発】を支持する私としては党勢の拡大、発展に期待したいところだ。
        ×        ×
 晩秋の紅葉がことし最期の彩りを見せる=江南市民文化会館敷地内、中央公園で
 

 枯れ葉が冬の訪れを感じさせる。歩道が見えない音を奏でていた
 

 午前中、江南市民文化会館であった社交ダンス教室へ。ジルバ、ワルツ、ルンバの順にレッスンし、それぞれ少しずつ教えていただいた。まだまだ若い女性教師いわく「ステップは出来るだけ大きく。最初のうちは、しっかりフロアを踏みしめて声を出しレッスンした方がよいです。あなたは、まだお若いのだから」と。なぜだか、きょうはレッスンの合間に〈あなたは、まだ若い〉の言葉を三度ほど聞いた。
 そういう、彼女は私よりずっと若い。私が「まだ若い」と言われることは、年はとっていても、その割に若いーということなのか。私は内心「〝若い、若い〟と言われなくても。いつだって。誰よりも若いよ」と反論していた。この先生、教え方に真心と誠意がこもっており、ナントカ続けられそうだ。

 きょうは十一月二十二日のゴロ合わせで【いい夫婦の日】。ダンスのレッスンで市民文化会館を訪れると、館内では結婚五十年の金婚式カップルに対するお祝い会が行われていた。どのカップルも仲睦まじく会場に向かう姿を見ながら「皆さん、ここまで来るのに山あり谷ありだったのだろうなあ」と妙に感心していた。各カップルには市民文化会館敷地内の真っ赤に染まった紅葉が、そこはかとなく彩りを添えていた。「幸せ」って。こういうものなのだろう。

 帰宅後は新しい執筆に着手する一方、過去私が書いた小説の整理と読み返しに追われた。基本姿勢は、日本でただ一人の〝一匹文士〟としてマイペースで。慌てない。焦らない。ゆっくりと。しかし絶えず書き続け、歩みは止めない。後世にのこる伊神権太の世界を不動のものにしてゆくことだ。

【新聞テレビから】
☆『栗山監督に会いたい ハム入り前進? 大谷(花巻東高・大谷翔平投手) 26日入団交渉に出席』(22日付、中日スポーツ)
☆『安政東海地震で詳細震度図 堤防背後の湿地強い揺れ』『防災研・都司氏 愛知など被害分析』、『大村知事・河村市長「村・村」雪解け? 減税、維新合流消え再接近』、『御園座支援で名商基金 子どもの観劇料助成構想』、『関でユズ収穫 裏年でも香り満点』(22日付、中日朝刊)
☆『「改革本気なのか見極め必要」(テインセイン)大統領に不信感 スーチー氏単独インタビュー 民主化推進で確執』、『〈検証大震災〉仏60年代の原発 廃炉見えぬ終着点』、『MVPともに初受賞 〈セ・リーグ〉阿部 日本一に貢献 〈パ・リーグ〉吉川 前年勝利なし』(22日付、毎日朝刊)
☆『パリコレに見るものづくりのヒントー日置千弓 スマホ的未来感 台頭 21世紀はデザイン勝負?』、『〈大波小波〉三島由紀夫の季節(11月25日の命日前に)』、『オウム菊地(直子)被告かくまう 高橋(寛人)被告に猶予判決(懲役一年六月、執行猶予五年) 東京地裁』(22日付、中日夕刊)(22日付、中日夕刊)
☆『ガザ停戦合意 封鎖解除協議へ』『合意順守、波乱含み』『エジプト【イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」出身でハマスを説得できる立場にあるモルシ大統領】の指導力評価 米大統領』(22日付、毎日夕刊)

十一月二十一日
 昨夜帰宅すると、大津市のWさん、Mさんから連名で葉書と小荷物が宅急便で届いていた。
 「その後、いかがお過ごしでいらっしゃいますか。伊神様にいろいろとお世話になっていました母(Mさん)ですが、80歳を機に施設に入居することになりました。近日中です。長年お世話になりました。気持ちをこめ父の故郷の柿を送ります。私もこれからの人生を考え引っ越しますのでご連絡を取ることが難しくなりますが、どうぞお元気でお暮しください。長い間お世話になりました」
 
 わが家に届いた気持ちのこもった富有柿、まるまるとおいしそうだ
 

 人生いろいろ。だれだってドラマの連続、不連続はある。
 Mさんには私が中日新聞の大津支局長在任当時に、県全域の読書サークルを紹介するに当たってことのほか、お世話になった。それだけに、そのMさんが家を離れられると聞き、何だか寂しい気がする。当時のMさんは他の同志とともに女性ながら滋賀県読書連絡協議会を束ね、それこそ県内を東奔西走。まもなく幅広い活動が認められた滋賀県読連協には社団法人・読書推進運動協議会から全国最優秀の野間読書推進賞が授与されるほどに読書運動の輪は拡大していった。
 毎年観光バス五、六台を連らね、三重県伊賀市の芭蕉庵や名古屋市中村区の秀吉ゆかりの地などに一緒に文学散歩で訪れ、私も付き添いとして。そのつど、同行したものである。

 そして。そのMさんが中日社会功労賞にも輝いたことは知る人ぞ知る。あのころは、読連協の奉仕活動をするに当たって今は亡きご主人が運転手役を務められたこともしばしばで、私もよく一緒に乗せていただいた。

 そういえば、ご主人の古里は富有柿の里・岐阜県本巣地方のはずだった。私は同封された葉書と一緒にわが家に届いた大きなおいしそうな柿を前に、かつて〝蛍の里〟で知られる本巣町や糸貫町を飛び回り、木守り柿のことーなど柿余話を二十回ほど連載した日々のことを思い出しもした。

 いずれにせよ、Mさんが住み慣れたご自宅を離れて施設に変わられ、それに合わせ、これまで母の世話をされてきたWさんも引っ越され、住居を移される。なんでもないようなことではあるが、こうした家族はほかにも一杯あるだろう。
 私たちだって、いずれかが逝き、同居の息子が結婚して家を離れれば、残された方が施設で暮らす日が来るかしれない。最近、人生とはそういうものか、と思うことが、ふとある。重ねた齢のせいなのか。まだまだ若い気持ちではいるのだが。それだけに、日々、一瞬一瞬を大切に生きていかなければ。一枚の重い葉書は、そんなことを教えてくれてもいる。

 妻が出がけにさっそく「富有柿を半分、江南市内の授産施設の子どもたちに、お裾わけしたい」と言うので「それはいいことだ」と賛成。その方が、Mさんも喜んでくださるに違いない。

 夜の各テレビニュースによれば、けさ朝刊各紙が報じた〝ガザ停戦合意〟は、まだ実現しないままだ。早く停戦に至ってほしい。一体、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスとは、いつになったら仲良くなれるのか。殺し合いの連鎖が、罪のない人々の大切な命を、きょうも容赦なく奪っている。

 きょうの夜。ひょんなことから中日新聞のきのうの夕刊紙面で見つけた短歌を以下に記しておこう。
♪いつだって夫(つま)とうおのこいち人を月夜の海に放り出そうぞ 伊神舞子(岐阜特別歌会秀歌、20日付、中日夕刊)
 
【新聞テレビより】
☆『減税、維新と合流断念 大村氏も維新顧問辞任』『減税4人 1次公認』、『ガザ停戦合意発表へ ハマス幹部が明かす』、『寒風の味付け 岐阜・山県の「連柿」』(21日付、中日朝刊)
☆『積極緩和論 日銀(白川方明)総裁安倍氏に反論 3%物価目標「非現実的だ」』、『衆院選 鳩山元首相 不出馬 反TPP 民主公認望めず』、『〈雑記帳〉◇「日本のクリスマス発祥の地」をアピールしようと、山口市は12月限定で「クリスマス市」を名乗る。渡辺純忠市長は自ら「クリスマス市長」の名刺を配るなどPR行脚を始めた。……』

十一月二十日
 東京に行ってきた。
 市ヶ谷のアルカディアで開かれた「脱原発をめざす文学者の会」の第一回未来サロン・プログラムに一人の文学者、会員として出席するためだ。せっかくなので、都内のある出版社も訪ねた。
 というわけで、本日組本欄のアップが大幅に遅れた。

 未来サロンは、宮内勝典さんの開会あいさつに続き、第一部として小説家加賀乙彦さんが書き上げた長編小説「雲の都」について文芸評論家川村湊さんが概略説明、これを受けて加賀さんご自身が大作を書き上げるに至った思い入れといきさつ説明をしながら、〝いまの日本〟についても話し「僕らには時間がない。福島がもたらした残酷さ。これをどうやって書いたらよいのか、が問われている。これは小説家の務めではないのか。もっと若い人がきちんと書いてほしい」と付け加えた。
 第二部は、俳人黒田杏子さんの福島原発被災地からの報告「福島被災地での俳人たちの絶唱」と、「日本の国を、どう変えるべきか」をテーマとしたサロン談義。このうち被災地からの報告では、黒田さんご自身が選者を務める福島県文学賞での選評と審査経過につき感じたままを論評。俳句を詠むことが被災地の人々にとって、どんなに心の支え、安らぎになっているか、を力説した。

 【17音の言霊信じ】〝福島被災地での俳人たちの絶唱〟を報じた福島民報紙面と、脱原発「文学者の会」発足を報じた月刊『創』
 

 引き続き「日本の国を、どう変えるべきか」では小説家森詠さんから〈脱原発社会実現のために、必要なこととは何か〉が▽戦後民主主義の総括▽必要な価値観の転換▽経済成長路線からの脱却―を論点に整理して説明され、討議に移った。午後六時から始まったサロン談義の合間にはワインも出され、アッという間に八時に。
 この後は場所を替え懇親ということになったが、私は新幹線に乗らねばならず、座を辞した。でも、和気あいあいと自然体で〈脱原発と文学〉について考えることが出来、名古屋から出かけた甲斐があった。これからも自身のためにも出来るだけ出て人々の心をとらえる、伊神権太ならでは、の作品化を心がけてゆきたい。

 脱原発と言えば、きょうお会いした出版社の若手編集者が嘆いていた。「ボクは魚釣りが好きなのですが、江戸川放水路でのハゼ釣りが魚体に含まれる放射線量が多過ぎて出来なくなりました。これからはヒラメのシーズンなのに。水産庁のホームページに各地の放射線量が載っていますが、あのデータを見る限り、とても魚釣りを楽しむ心境にはなれません。放射能汚染は東日本だけでなく、東京でも深刻なのですよ」と語っていた。国は素朴なこの発言をどう、受け止めるのか。科学者たちは人間の手におえない原発を今後、どうするのか。英知の結集が望まれる。

 きょうは、時間があったので、出版社にも足を運んだが、出版不況の中で熱心に新境地を開こうとするスタッフの息遣いがピンピン伝わり訪問してよかった、と思っている。
        ×        ×

 今朝、江南の家を出てから、バスに乗り名鉄に乗り、新幹線に乗り、品川から山の手線に乗り、渋谷で降り、東京メトロ副都心線で北参道へ…と行ったが、この間、私の知った人には一人も出会わなかった。当たり前といえば、当たり前だが私はそうした世の中だからこそ、そこに文学が存在する、文学こそが知らない人間同士を結ぶ橋だ、と。そう思っている。
 帰りは市ケ谷から御茶ノ水まで出て中央線で東京に出て、キンキラキンの大東京を逃げ出すようにして新幹線に飛び乗った。だから、東京の友人たちにお会いする時間はなかった。心からお詫びしておきたい。

 終車直前の名鉄犬山線。これに乗って江南まで来てタクシーに乗り、人通りのほとんどない町を走りながら寂しさとともに安堵感も感じたのはなぜなのか。福島の人々は、そうしたわが家にさえ帰れないでいるのだ。私は東日本大震災が発生してまもなく、被災地に入るなどこれまで三度、現場を歩いているが、今はなんだか、被災地に出向いてなけなしの金をはたいて、被災地の人々と一緒に居酒屋で大いに飲み人間の真の部分を語り合いたい。そんな衝動にかられるのである。

 新幹線車内から瞬間的にとらえた冠雪した富士
 

 それはそうと、新幹線から行きに見た富士山は、とてもステキで美しかった。よくよく考えてみると、現役の新聞記者時代に品川や日比谷には出張でしばしば訪れたが、新幹線の窓から富士を仰ぎ見たことは一度もなかった。それだけ、余裕がなかったのかもしれない。新幹線など天気さえよければ、簡単に見えたはずなのに。
 その富士山が今、大噴火しても何ら不思議はない。私たちは、そういう中で生きているのである。だから人間すべて、ひとつ心でいたい。かつ、知り合った人とは、いとおしくもしていたい。ましてや恋する人とあれば、なおさらだ。

【新聞テレビから】
☆『衆院選トレンド調査 自民23%民主10% 比例投票先維新7%』『首相は安倍、野田氏拮抗』、『民主化努力へ賛辞 米大統領 スー・チー氏と会談』、『土岐・核融研 重水素実験 地元同意へ 県・3市、年度内に協定』(20日付、中日朝刊)
☆『福島 終わらぬ闘い 除染しても線量再上昇 放射性物質 雨で側溝、軒先へ』、『維新 企業献金禁止を撤回 目玉政策、太陽側に配慮』(20日付、中日夕刊)

十一月十九日
 長野、札幌でこの秋初めて氷点下に。名古屋で最低気温が4・0度、奈良も3・1度と上空の寒気の影響で全国的にこの秋一番の冷え込みとなった。

 きょうは月曜日。わが家では〝力仕事の日〟である。
 というのも、妻の舞は天気が良ければ月曜日を【布団干しの日】と自分で決めているからだ。私としては放ってくわけにいかない。デ、朝食後、手伝おうと二階ベランダに出向いた時には既に彼女が一人ですべて干してしまった後だった。
 いつも思う。なぜ、ひと言声をかけてくれないのだ、と。それにしても、あの小柄な体のどこにあれほどの力が秘められているのだろう。さっぱり分からぬ。大病から復活して元気になった証拠なら、それに越したことはない。
 
 国際宇宙ステーションに長期滞在していた宇宙飛行士の星出彰彦さん(43)が、四カ月ぶりに宇宙ステーションから切り離されたロシアのソユーズ宇宙船でカザフスタンの平原に着陸し、地球に無事、帰還。資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐり、政治資金規正法違反(虚偽記入)罪で強制起訴され、一、二審とも無罪になった「国民の生活が第一」の小沢一郎代表(70)について、検察官役の指定弁護士三氏が最高裁への上告を断念。これによって、小沢代表の無罪が決まった。
 この世の中、毎日毎日いろんな事が起きては消え、消えては起きる。
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 寄せられた本の中には若山紀子さんの詩集「夜が眠らないので」も。
 

 きょうは少し余裕があったので、これまで私(「熱砂」主宰)あてに届き、まだ未掲載だった文芸同人誌や詩集をまとめて「熱砂」の〝WHAT’S NEW〟欄で簡単に紹介させていただいた。
 付記させていただくとー
 寄せられた本は、☆「北斗 尾関忠雄第一回斎藤緑雨文化賞 アフォリズム賞受賞記念特集 十一月號」(発行所・北斗工房)に始まり、☆文芸同人誌「2012/11 海」(編集発行人・遠藤昭己)☆文芸「弥 IYOIYO  第三号」(発行所・栄印刷)☆「№62 峠」(発行所・峠の会)☆詩集「夜が眠らないので」(発行所・土曜美術社出版販売)☆「詩遊 №35 2012 Summer」(発行所・詩遊社)と、どの本も地方作家たちの魂が込められたものばかりである。
 出版に至った、それぞれの同人誌、そして詩集誕生に携わった同人各位や作家、詩人の方々に心から敬意を表したい。

 以下に詩集「夜が眠らないので」の帯と抜粋詩を、ここに紹介させていただく。
ー若山紀子さんの詩群を、かさねて読み、立ち向かっていたら女の一生が、男の一生に透きとおってきた。モンパルナッスのサルトルの墓を訪ねたとき、素直で美しい。過去は過去でしか、未来は未来でしか、現在(いま)は現在(いま)でしかない。路傍の雫(しずく)石が毅然(きぜん)として光る。  (長谷川龍生)

 人は誰でもいっとき/殺意を抱く瞬間があるのです/あなたの/沈黙の抵抗は届いているのに/それでも尚/ナイフを刺すときがあるのです/刺すときに掌に伝わった/あの恍惚と虚しさは/尾を引いて/ときどき/ふっと優しい貌に戻るのです(「追伸」より)

【新聞テレビから】
☆『ボクシング井上尚弥 〝怪物〟、衝撃デビュー=19歳。49キロ級。お父さんいなかったら今の自分ない。最強の世界チャンピオン、すなわち家族の夢です』(19日夜、メーテレ・報道ステーション)
☆『私たちの手で〈上〉2012年衆院選問われるもの 脱原発票 無駄にしない』『候補者調整 市民が動く』、『晩秋の美極まる 香嵐渓 紅葉「当たり年」』、『米軍中尉沖縄で逮捕 酒に酔い、住居侵入容疑 外出禁止違反か』、『〈備える3・11から〉 第58回歴史は語る④ 大正の大火災』(19日付、中日朝刊)
☆『自民17%維新13%民主12% 比例投票 三つどもえ鮮明 本社世論調査』、『北朝鮮「拉致も協議」 宋大使「解決済み」口にせず』、『侍J(3―1で)キューバに連勝 強化試合第2戦』(19日付、毎日朝刊)
☆『浅尾 SAMURAI JAPAN 侍守護神浮上』(19日付、中日スポーツ)
☆『衆院選 市川房枝に学べ 女性の力政治変える あす記念シンポ 「自らの候補を立てよう」』、『米大統領 ミャンマーを初訪問 2年間で138億円支援へ』、『「地球に生まれてよかった」 星出さん4カ月ぶり帰還』(19日付、中日夕刊)

十一月十八日
 日曜日。
 本日付の中日春秋、なかなか良い点をついていた。次の下りである。
ー……▼新党が乱立する中、「太陽の党」は短命だった。旗揚げから四日しかたってないのに、共同代表の石原慎太郎東京都知事は「日本維新の会」の代表になり、太陽は昇らないまま沈んでしまった▼気の毒なのは「減税日本」代表の河村たかし名古屋市長だ。石原氏と共同会見して合流を発表しながら、一夜でほごにされた。維新の会を率いる橋下徹大阪市長との一体化に懸ける石原氏には、河村氏との信義は取るに足らないことなのだろうか▼……(18日付中日春秋、抜粋)」
 ここで気に入った表現は〈太陽は昇らないまま沈んでしまった〉の下りだ。太陽は昇るためにあるのに。昇らなければ、既にその時点で融かされ、この世から消えたと思われてもしかたがない。
 それにしても、原発や消費税減税など政策面でかなりの隔たりがあるのを承知で〝合流ありきの野合〟をした石原、橋下両氏には【節操がないとしかいいようがない。】
 第三極か何かは知らないが、政治が国民の声そっちのけで、ただ離合集散だけを狙いに動いていること自体、嘆かわしい。言わせてもらえば、河村さんは減税日本を掲げ、堂々と躍り出ればよい。石原氏から「粗雑だ」と言われた【減税日本】の党名、決して悪くなんかはない。
 日本維新の党とか太陽の党とか、ちょっと聞きには悪くはないが抽象的すぎ、国民に何をしてくれるのか。何をしたいのか。言葉だけが走り、迫るものが全くない。【減税日本】の方が、庶民の気持ちをとらえた、より具体的で、はるかに素晴らしい名前だ、と私・伊神権太は思うのである。

 滝学園で開かれた〝オータムフェス2012夢の学校in滝学園〟の文化講座で「しの笛・鼓にチャレンジ♪」がある、というので午後、二人で出かけたが。あいにく講座時間は午前10~11時ということでガッカリ。鼓はともあれ、「しの笛(横笛)は色んな曲を吹くことができます。初めての方も大歓迎です。希望の方プラスチック本調子笛(1600円)を用意します」と新聞の折り込みチラシにあったためで、私も興味をそそられ出向いたが、既に終わっていた。
 私自身、本物の横笛でもう五年以上も師匠について習っていることもあり、チラシを見つけた彼女とともに訪れたのだが、もっと、しっかり時間を確認しておけばよかった。プラスチック本調子笛が、どんな音色を奏で、実際にどんな形のものかも確かめたかったのだが。後の祭りである。よくよく考えれば、母校の滝学園(中高併設)を訪れたのは、一宮主管支局長当時に講演講師として招かれて以来で十数年ぶりとなる。いやはや、月日の流れること、脱兎の如しか。

 きょうは文学界の第115回新人賞に輝いた守山忍「隙間」と二瓶哲也「最後のうるう年」を読み上げ、ほかに広小路尚祈の「寺部海岸の娘」を少しだけ、読んだ。「隙間」「最後のうるう年」ともに自らと身辺の人々の体験をうまく作品化しているな、というのが率直な感想である。文学作品は、やはり書く以前の体験がものを言う。体験を素材に、これをどう作品化、フィクション化していくか、にポイントがある。この面で二作とも読者を作品世界にぐいぐい引き込んでいく筆力を感じさせた。二氏とも、まだ若い。この先大いに期待してよい。私自身、作品化に当たっての手法など、大変参考になった。見習いたい。

【新聞テレビから】
☆『「がんワクチン」密着 命をかけた最終治験▽生存率は上がるのか=毎年70万人がかかり、毎日1000人もが亡くなっていく、がん患者のなかで〝がんワクチン〟は夢の治療薬となるのかどうか。患者と医師の闘いが続いている』(18日夜、NHKスペシャル)
☆『維新に太陽合流 代表に石原氏 原発ゼロ明記せず』『維新47人 一次公認』『譲らぬ持論に維新は「無理」 河村氏、合流なお意欲』、『衆院選1134人立候補準備』、『羽田国交相公認せず 長野3区にくら替え 民主、脱世襲で 県連は公認申請へ』、『無良(崇人)GP初優勝 フィギュアフランス杯』(18日付、中日朝刊)
☆『100万ドル CIAに情報――「核の闇市場」支えた一家』、『イスラエル ガザへ大規模空爆 200カ所破壊 地上侵攻の可能性』、『海づくり大会 両陛下 戦没者に祈り 8年ぶり沖縄入り 遺族に気遣い』、『石ノ森萬画館再開 石巻・1年8カ月ぶり 仮面ライダーも登場』(18日付、毎日朝刊)
☆『初の昇竜王 CD 大島』『竜戦士半世紀ぶり 連続盗塁王狙う』(18日付、中日スポーツ)

十一月十七日
 きょうは雨、雨、雨の一日となった。寒くて冷たい雨である。

 例によって、妻の舞が営むリサイクルショップ・ミヌエットで町のボランティア、小倉敏子さん出演による〝ちいさな音楽会『としこ』お楽しみ会〟があるというので、顔を出し、その模様をビデオとカメラに収録しておいた。
 雨の中、大勢が集まった=愛知県江南市のリサイクルショップ「ミヌエット」店内で 
 

 『としこ』さんは、市内に住む女性で途中、衣装替えをして再登場。この日は雨の中、界隈に住むちょっと気品に満ちた奥さまたちばかり二十人近くが店内へ。楽しいひとときとなった。
 お楽しみ会は『としこ』さん自ら〈みかんの花咲く丘〉に始まり〈里の秋〉、〈岸壁の母〉をいずれも、分かりやすいナレーション入りで歌って披露。「戦争が終わった年(昭和二十年)の12月にでき、川田正子さんが歌って大ヒットしました」と誕生に至る秘話に触れた〈みかんの花咲く丘〉を、みんなで一緒にコーラスする場面も。さらにアンコールに応え、春日八郎や三沢あけみ、村田英雄、東海林太郎など往年の売れっこ歌手の真似をしてみせる、など終始なごやかで微笑ましいひとときとなった。

 熱唱する『としこ』さん、こと小倉敏子さん
 

 〈みかんの花咲く丘〉を一緒に歌う女性たち
 

 それにしても、アメニモマケズこうして集まってくださる女性のパワーには感激。ちいさな音楽会は舞が長年胸に秘めてきた夢の実現だけに、盛況でよかったな、と思った。

 私は、ことし五月から八月にかけ、ピースボート(オーシャンドリーム号)による102日間世界一周の船旅をしてきたが、寄港した先々で何より心が通じ合ったのが、世界共通の音楽だ、ということを痛切に感じた。交流ツアーの際には決まって〈幸せなら手をたたこう〉とか〈ふるさと〉などの音楽が互いの心の架け橋になったことを、あらためて思い返したのだった。
 そして。〈みかんの花咲く丘〉の作詞者、加藤省吾さんは、かつて七尾青年会議所が公募した「海の詩(うた)大賞」選考に当たって大変、お世話になった恩人でもある。能登半島の七尾で、二人で飲んだ夜のことが忘れられない。加藤さんといえば、〈紅孔雀〉や〈怪傑ハリマ王〉、〈かわいい魚屋さん〉の作詞でも知られる。若僧だった私には随分、よくして頂いた。亡き今も、こうしてみんなで〈みかんの花咲く丘〉を歌っていると知ったら、さぞかし目を細めて喜ばれるに違いない。
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 オノ・ヨーコさん、そして先の102日間地球一周船旅の戦友・小泉八重子さんから嬉しいメールが届いた。

 ヨーコさんからは十二月八日に東京武道館で開かれるジョン・レノン音楽祭2012「スーパー・ライヴ 世界の子どもたちに学校を贈ろう!」の案内を兼ねたビデオ・レターのメッセージが、八重子姉さんからは十二月二十四日に大和市のご自宅で行われる小泉家恒例の「餅つき大会」への丁重なる出席案内だった。

 このうちヨーコさんのビデオ・レターはいつも通り、私の昔のペンネーム「伊神ごん太(現伊神権太)さま」あてで、オーストリアのウィーンで撮影されたメッセージだとのこと。「音楽祭も早や12回目。ことしも世界の恵まれない子たちに学校をお贈りします。その数は既に120になっています。私たちDream Powerの輪がアジア、アフリカ、ラテンアメリカのこどもたちに大きな希望と夢を与えています……。一人で見る夢は、ただの夢。みんなで見る夢は現実になります」といったものだった。
 平和を求めてのヨーコさんのたゆまぬ歩みに、この「熱砂」紙上からも心からエールをお送りしたい。十二月八日は、ヨーコさんの夫、ジョン・レノン(元ビートルズメンバー)がニューヨークの自宅、ダコタ・ハウス前でファンマーク・チャップマンに銃を発射され、殺された日でもある。でも、たとえジョン・レノンが亡くなっても世界平和を願う「イマジン」の魂は永遠である。
 
【新聞テレビから】
☆『暮らし、原発、課題残し 衆院解散 12月4日公示16日投開票』、『維新・太陽 合流へ 減税とは一転白紙に』、『名古屋飛ばし衝撃 太陽と合流白紙 「よう分からん」 河村市長、顔こわばる』、『フロイス記述と一致 信長の庭 美しき池の跡 岐阜の居館跡で発見』(17日付、中日朝刊)
☆『減税日本 かやの外 衆院解散総選挙 一晩で約束ほご』『維新、太陽合流へ 政策譲歩難しく』(17日付、毎日朝刊)
☆『〈知りたい!〉習近平中国総書記 歌うファーストレディー=国内では習氏より有名な歌手、彭麗媛(ほうれいえん)=』、「男勝りの女王蜂』『解散一夜明け 雨中 舌戦火ぶた 自奪還に燃え民は防戦』『党首も走る』『みんな「維新に合流せず」』(17日付、毎日夕刊)
☆『「12・16」へ党首始動 解散一夜明け 論戦、本格モード』、『第三極共闘 河村氏訴え』、『ミャンマー禁輸 米が大半を解除 9年ぶり正常化』(17日付、中日夕刊)

十一月十六日
 ここ二、三日はグンと冷え込み、冬の風情になってきた。周りの紅葉も旬を通り越した観がある。

 きょう夕方の衆院本会議。「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」と横路孝弘議長が解散詔書を読み上げると同時に議場内には「バンザイ、バンザイ」の声が響き、十二月四日公示、十六日投開票の選挙戦に事実上、突入した。
「2013年以降の日本のかじ取りをどの方向感で進めていくのか。前へ進めるのか。後ろに戻るか。これが問われる選挙」と野田首相がいえば、「これは、まさに〝バトルロワイアル〟です。勝ち抜くしかありません」と自民党の小泉二世、進次郎議員。
 いよいよ、いわゆる混沌とした〝第三極〟も含め、実に大小十五政党が乱立するなか、野田首相の「近いうち発言から丸100日目」のきょう、衆院が解散した。
 争点は当然ながら、消費税増税、脱原発、環太平洋連携協定(TPP)といった日本の将来を左右する課題である。

 それはそうと、きのう「減税日本」との合流を発表した石原新党、すなわち「太陽の党」が、きょう行われた「日本維新の会」の橋下党首との会談で新たに日本維新の会との〝合流〟を発表、河村たかし(名古屋市長)率いる減税日本との合流が怪しくなってきた、という。
 橋下党首曰く「石原さんと僕の間で合意できたと思っています」。だとしたら、「河村の減税日本」はどうなってしまうのか。このままだと、一人ぽっち、大海をさまよう政党になってしまいかねない。ここは、大名古屋の意地にかけても、やってもらわなければ。信長、秀吉、家康の三英傑に「おみゃあさん、何やっとるんだ。理念も何もあったもんでない若造辺りに負けとってアカンがや」と、ど叱られるデ。

 河村さん自身が、予期せぬ展開に今夜の記者会見で「山あり、谷あり。耐えがたきは耐え、だわなも。いっぺん(石原さんに)確認してみますわ。いっぺん確認してみますわ。よう分からんもんで」と人のいいところを披歴し言っているだけに、どうやら雲行きは、良からぬ方向に向かいつつある。それにしても、原発の有無、TPPの是非で互いに主張が違う、というのに。太陽と維新が合流したところで、所詮、空中分解するだけ、のような気がしてならない。
 河村さん! 負けとらんで、ここはおみゃあさんだけのわが道を行け、と言いたくなってくる。名古屋飛ばしだけは、ぜったゃあ、やらせてイカン。やらせてはいかんのだわ、という名古屋びとの大合唱が聞こえてくるようでもある。河村さんにしかない、ドエライ逆転満塁ホームランを見せるいい機会だがや。

 山本浩二監督就任後、初めての試合となる、野球の国際親善試合、日本代表―キューバ代表の初戦が今夜、福岡のヤフードームであり、日本が2―0で勝った。テレビのニュースでドラゴンズの井端、大島、大野選手をチラリと見たが、竜の三選手はともに溌剌とした光る表情でなんだか、ホッとした。なかでも八回途中から登板、無失点に抑えた大野投手の勇姿にはほれぼれしたのである。

【新聞テレビから】
☆『〈社説〉カリスマなき大国よ 中国・習体制が発足』、『新党乱立で異例の戦い 民主離党相次ぐ』、『イスラエル 住民ら3人死亡 ロケット弾直撃 ガザ攻撃報復か』、『減税・太陽 合流を発表 きょう橋下氏と最終調整』、『0増5減案を可決 衆院 歳費削減法案も通過』(16日付、中日朝刊)
☆『衆院 今夕に解散』『「0増5減」、公債法成立』、『維新、太陽 結論持ち越し』『合流協議 あすにも再会談』、『〈見極める衆院選〉いざ解散 奮い立つ』、『テルアビブを攻撃 ガザからロケット弾2発』(16日付、中日夕刊)

十一月十五日
 解禁され、わが家の食卓を飾った大金賞(トロフィー・リヨン)のラベル入りボージョレ・ヌーボー
 

 午前中、江南市文化福祉会館へ。
 週に一度の社交ダンス教室を受けるためで、前回はあくまで見学ということだったので、本格レッスンは事実上、きょうから始まった。タカちゃん、いっちゃん、オオモリさん…と皆さん、良い方ばかりで楽しいレッスンとなった。ジルバ、ルンバ、ワルツの初歩のステップを繰り返し教えていただいた。

 「2級を初めてやられる割には、のみこみがいい」とお褒めの言葉を頂いたが、先の地球一周の船旅で曲がりなりにも初心者教室でレッスンを積み重ねてきたからだろうか。それにしても、1時間のステップは結構、下半身にこたえた。先生のモットーは〈何でもいい まず動こう〉ということなので、せめてレッスンの間だけでも「まず動こう」と自身に言い聞かせ先生をお手本に、繰り返しステップを踏んでみた。

 ダンスのあとは、余裕があったので、久しぶりに母を誘って回転すしへ。彼女は、いつものように茶碗蒸しとお稲荷さん、だしまきをおいしそうに食べてくれ、嬉しかった。実家まで車で送り届けたところで「たかのぶ。庭の柿を持っていったらいい」と言うので、挟みで一個ずつ切りにかかると「ついでに、柿の枝の剪定もやっておくだわ」と気がつけば、彼女のペースにはまっていた。
 内心、嫌だと思いながらも、母に柿の枝の切り方を教えてもらいながら一本一本丁寧に切っていったが、枝のどの部分を切ったらよいか、が大体わかった。それにしても、九十二歳の母は庭の柿に限らず、畑に植わった柿の木の剪定までしてくれていた、だなんて。すごい。全くもって頭が下がる、とはこのことか。「順番に覚えていきゃいい」。ということは、これからは俺にやれ、ということか。
 でも、人間、誰だって。どんなに歳がいっていたって自分でやらなくては、生きてはいけない。これまで私が余りにもやらなさ過ぎだっただけ、のことか。

 そんな母も一見丈夫そうには見えても、そこは高齢の身。つい、一週間ほど前には自宅玄関先廊下の床で滑って転んで左手首に大けがをした、とのこと。「手首がアオニエになっちゃい痛くてしようがなかった。でも、だいぶ良くなった」と聞いて胸をなでおろした。

 夕食の膳に座ったら、目の前にボージョレー・ヌーボーが一本、さりげなく置かれていた。そういえば解禁日だったのだ。昔は「さあ、解禁だ」とばかり、取材フィーバーしたものだが、いまは静かなものだ。この方が本場のワインを自然体で味わえ、なんとなくクリスタルな気分になる。

 きょうは先日、大津の竹花外記さんから送られてきた随筆「音もなく忍び寄る」を「熱砂」の眞鍋京子作品集に収録。なかなか味わい深い内容だけに、読者の皆さまには、ぜひ読んでいただきたい。
 
【新聞テレビから】
☆『おしゃべりで老化防止 ぎんさんの娘たち(平均年齢93歳の4人姉妹)』(15日夜、NHK〈クローズアップ現代〉)
☆『衆院選来月16日 首相あす解散』『一票の格差 違憲状態のまま 定数削減に自民協力』『第三極あたふた』、『森光子さん死去 「放浪記」2017回、国民栄誉賞 92歳』『さよなら日本のお母さん 森光子さん死去「放浪記」41歳から』(15日付、中日朝刊)
☆『PC遠隔操作 位置情報改変か 自殺予告メール 捜査かく乱狙い』、『せりふ自在に 森光子さん死去 遅咲きの主演女優 体当たり演技 晩年まで』(15日付、毎日朝刊)
☆『冬 駆け足で…高山で積雪 名古屋5・2度 岐阜は3・9度 今秋一番の寒さ』、『習近平体制スタート 中国共産党 最高指導部7人に』、『森本NHKアナ逮捕 電車内で女性触った疑い』(15日付、中日夕刊)
☆『ボージョレ解禁 東海でも店頭に』、『舛添氏が「不出馬」都知事選』(15日付、毎日夕刊)

十一月十四日
 赤く染まった、わが家のレインボーツリー(その名の通り七色に変わる、とか)の葉も、寒気にふるえていた=14日午前、裏庭で
 

 日が暮れるのがホントに早い。午後五時ともなれば、真っ暗闇だ。
 正午のNHKニュースによれば、あすにかけ真冬並みの強い寒気が流れ、ところによっては、落雷、雹、竜巻の恐れがあるという。寒気の通過で大気が不安定になるためだ。そういえば、北陸の福井と金沢ではきょう雹が観測され、滋賀と岐阜県境の伊吹山では初冠雪が伝えられた。いよいよ〝伊吹おろし〟の季節到来である。
 これからは急速に冬の足音が高まってきそうだ。

 今日行われた党首会談。この席で野田佳彦首相は、「定数削減は来年の通常国会で必ずやり遂げる。ご決断いただくならば、16日に解散をします。やりましょう」と発言。これに対して自民党の安倍晋三総裁は「それは約束ですね。約束ですね。よろしいんですね。16日に解散するから、そこ(総選挙)で国民のみなさんにゆだねようじゃないですか」と答え、十六日の衆院解散(衆院選は十二月四日公示、十六日投開票)が事実上、決まった。この日のふたりの応酬はそれぞれ思い入れがあり、なかなか迫力があって聴きごたえがあった。
 民社党内では年内解散に否定的な議員も多く輿石幹事長自らも、ここまでくる過程で『年内解散には否定』の意向を示す局面もあったが、終わってみれば、どうやら策士・輿石幹事長のペースに。なんだか輿石さんならでは、の周囲を欺く筋書き通り、ことがここまで来たような、そんな気がしてしかたない。彼には、それだけの人生経験と人間観察力があると見てよい。

 野田首相は元々、2012年度予算の執行に必要な公債発行特例法案の成立―など前提条件が実現した場合の「年内解散」を一貫してにおわせており、結果的に彼がいみじくも語った「近いうちに解散する」の約束通り、来るべきものがとうとう、やってきた。

 W杯アジア最終予選で日本はオマーンとアウェイ(オマーン)で対戦、岡崎が決勝ゴールを決め2―1で勝ち、ワールドカップ出場に王手をかけた。私は久しぶりにサッカーの試合を見たが、「サッカーとは、一瞬のスキをつくプレーである」ことを、実感した。

 舞台の「放浪記」(林芙美子原作)で林芙美子の生涯を演じ続け過去、2017回出演。一人の俳優の主演舞台最多記録を誇ったばかりか、国民栄誉賞と文化勲章にも輝いた女優・森光子さんが今月十日午後六時三十七分、東京都文京区内の病院で肺炎による心不全で亡くなっていた。九十二歳だった。放浪記の舞台でそのつど、披露した名物〈でんぐり返し〉は永久に人びとの心にすみつき離れないだろう。おやすらかに。

【新聞テレビから】
☆『聖夜への虹の滑走路 中部国際空港 試験点灯』、『新出生前診断 20施設以上 臨床研究へ』『名市大など 学会、来月に指針』、『「太陽の党」旗揚げ 石原氏』『河村氏と石原氏 連携協議で合意』(14日付、中日朝刊)
☆『PC遠隔操作 ウイルス米サーバーに 「Dropbox」高い匿名性 悪用か』、『遺族ら「さっちゃん自殺じゃない 「西成」支援の女医死亡』、『38歳男性殺される 自宅離れで後頭部から血 鈴鹿』
☆『胡総書記、完全引退 中国指導部、脱・院政狙う』『江(沢民)氏の影響力も排除』、『年内解散反対「党の総意」』『民主党常任』幹事会 首相に伝達』
☆『伊吹山で初冠雪』『トヨタ国内最多リコール プリウスなど152万台 海外含め276万台』、『「真犯人」メールで自殺示唆 遠隔操作「私の負け」 添付写真は横浜で撮影』(14日付、中日夕刊)
☆『横田めぐみさん拉致 あす35年 「早く お帰り」 小学校時代の恩師 自作曲歌い続け』、『「火球』と遊ぶ赤いオーロラ=米アラスカ州の夜空で、珍しい赤いオーロラを背景に「火球」と呼ばれる明るい流星が流れる様子を、東京都三鷹市のベンチャー企業「遊造」が設置したカメラがとらえた。』

十一月十三日
 写真は、満17歳の次女猫・シロちゃん2態、赤いリボンの首輪がよく似合う
 

 

 きょうは名古屋で長年の知己と私が目指す【真の創作とは】何かを、トコトン話しあった。

 その友は「イガミさんには自分のなかから出てくるもの、自分が表したいものをヒタスラに書いてほしい。もっと、もっと、自分の内面をさらけ出し暴き出してほしい」「社会的対面などを気にしてセーブしないでほしい」「普通の人の入れない領域にまで踏み込むべきだ」「自分を変えなくていい。でも、自身を徹底的に掘り下げなければ」「余分なほかの説明は出来るだけカットする」。
 さらに「(100日以上もの)船旅をしてきた。ということは、少なくとも自分ひとりになって〝パンドラの箱〟を開け、過ごすことができたはず。その貴重な体験を生かしてほしい」「異常な体験をしたのだから。場合によっては、異常にならなきゃ」「船旅の途次には、どこかで〝魔〟がすんでいたはず。その〝魔〟の虜になることも大切。自制しないでトコトン、底の底まで書いて!」と私のことを思って、厳しい指摘をしてくださった。

 別れ際に友はこうも、言った。
「地図にも載っていない。あるのか、ないのか分からない。そこに確かにいたのかどうか、も分かりゃしない。そういう洋上を体験したのだから、そのなかで生まれた自分をトコトン掘り下げた創作に全力で挑むべきだ。そして自分が本当に表したかったものは何なのか。常に自分に正直でなきゃ。もっと、もっと【いがみたかのぶ(私・伊神権太の本名)を通して出すものを出す】。掘り下げて書いてほしい。そうしたら、素晴らしい作品が誕生する。そう、信じている。
 それから。余分なものは、どんどん〝捨て去る〟。そうすれば、その分新しいものが入ってくるのでイラナイものは思い切って、どんどん〝捨ててよ〟。別に有名人にならなくってもかまわない。文学の世界にいつまでも残る作品の誕生を待っている。そうした面では世に出てほしい」とも。

 私は有り難くも温かい眼差しにうなづきつつ伊神権太ならでは、の創作の世界にさっそく船出しよう、と決意を新たにした。
 ところは真昼の名古屋都心の、あるホテル最上部レストランで、である。
        ×        ×
 話はかわる。
 きょうは、あちらこちらと移動する合間に携帯電話で私たちのウエブ文学同人誌「熱砂」の仲間一人ひとりに「短い作品でも、よいので積極的に執筆して私あてに原稿を送るように」と、メールを送らせて頂いた(積極的に作品を発表されている同人は除く)。同人の仲間たちは皆、逸材ぞろいだけに、全員の積極的な提稿が望まれる。

 ところで、わが家の次女猫シロちゃんだが、赤いリボンの首輪がとてもよく似合う。あまりに可愛いのでそのうち、誰かに誘拐されないか、心配だ。彼女は、きょうも舞が帰宅すると同時に、お出迎えに玄関先に出ていった。チリン、チリン、チリン……と、軽快な鈴の音を響かせながら、だ。なぜか、この鈴の音は、かつて能登半島で共に生きた愛猫・てまりを思い出させる。かわいく聡明な猫ちゃんだった。

 きょう一日で、秋という名の季節がまた一段と深まったようだ。

【新聞テレビから】
☆『愛大跡地はスマートタウン トヨタホームみよしで計画』『中部最大級400戸開発』、『晩秋の華 競演 豊田で四季桜開花』、『(石川)遼 涙の最年少10勝 太平洋マスターズ』、『水の都水浸し ベネチア 豪雨、1・5メートル上昇』(13日付、中日朝刊)
☆『小沢氏無罪判決 上告困難な情勢』『虚偽記載 元秘書の故意一部否定』(13日付、毎日朝刊) 
☆『ステラ出産 新たな命シャチ多かれ 名港水族館初「4人」家族に』、『猪瀬副知事 自民擁立へ 都知事選』、『ダル(ダルビッシュ投手、レンジャーズ)新人王逃す』、『〈人類をとりまく 究極の災害〉干ばつ・砂漠化 大地震超す死者も(吉田薫)』、『バングラ貨幣 造幣局が製造』『流通分 海外は戦後初受注』(13日付、中日夕刊)

十一月十二日
 新聞休刊日で、けさの朝刊はない。

 〈つなげよう 我らの 熱き思いを 地域に〉をスローガンに充実した内容が目立つ一宮サウスライオンズクラブの会報
 

 午前中、一宮駅前iビルへ。
 昼過ぎに二階大会議室で行われた一宮サウスライオンズクラブ(町田和雄会長=プログレス代表取締役)の第1296回例会「結成記念例会」にスピーカーとして招かれていたためで、私はことし五月八日から八月十七日まで百二日間、地球一周の船旅をした際、ユーチューブで船上から世界に向けて発信した「伊神権太が行く世界紀行 平和へのメッセージ/私は今この町で」の体験を基に【平和ってなんですか】をテーマにお話しさせていただいた。
 せっかくの機会なので船上から発信した七本のユーチューブのうち、中国厦門(アモイ)編とシンガポール・プーケット編、中南米総括編の三本も放映。スピーチの合間に挟む放映は、私の著書〈いがみの権太 大震災「笛猫野球日記」〉出版に当たり発行元である〝笛書房〟立ち上げに尽力頂いた書房顧問・小畠辰彦さんが、町田会長とは知人でもある関係上、一役買ってくださり、無事終えることができた(小畠さんは、かつて劇団「小牧はらから」主宰。今も演劇の虫である)。
 前もって担当役員の森部克明さん(GMT・GLT委員長=東栄工業取締役社長)にスピーチの時間をお聞きし確かめたところ、30~40分の間で「あとは、ご自由に。アバウトで結構です」とのことだったが、放映準備の時間も考慮に入れれば、会議全体の流れを考慮し、もっと早く切り上げるべきだったな、とも反省している(私の時計では40分を少し超えていた)。

 それでも、例会の席では、同ライオンズクラブ幹事の宇佐見治さん(中日新聞宇佐見新聞店代表取締役)や尾北自家用自動車組合の永井幹夫組合長、さらにはこの七月に入会されたばかりの元ミス尾西の斉藤八重子さん=居酒屋「つわの」の女将・ヤエちゃん=にも久しぶりにお会いすることが出来た。ヤエちゃんには自著「笛猫野球日記」まで買って頂き、感激した。
 実は、この日は「笛猫野球日記」も小畠さんの方である程度、用意して頂いたのだが、本を売る会とは少し趣旨が違う気がしたので、御仕着せになってはかえって失礼になると判断。会場での販売は遠慮し、自粛させて頂いた。ヤエちゃんの場合は、帰り際にわざわざ「ガミちゃん」と私の元を訪れられたので、この時に買ってくださったのである。【つわの】さんには、早い時期に罪滅ぼしを兼ねて飲みに行かなければ、と思っている。

 ドラゴンズ・リーグ連覇に至る秘話が書かれた【〈いがみの権太 大震災「笛猫野球日記」〉と、陰の著者である長女猫こすも・ここ】。12日深夜撮影。購入希望者は笛書房=電話052(901)7667、または090(3301)4473まで=
 

 例会に同席し幹事報告や例会報告などを聞かせていただくうち、一宮サウスライオンズクラブのスローガン〈つなげよう 我らの 熱き思いを 地域に〉が、ヒシヒシと伝わってきた。ちなみに本年度ライオンズの334複合地区スローガンは〈奉仕の世界は 熱い情熱と 固い絆から〉、334―A地区のスローガンは〈知恵合わせ 力合わせて 感動を!〉である。
        ×        ×

 ライオンズでのスピーチを終え、帰宅すると舞から「それで、一宮駅に出来たiビル見てきたの」と言われ、「アッ、しまった。そういえば時間が十分あったのだから、見てこれば良かった」と、またまた深く反省。「せっかくの機会なのに。バカね」と言われ「やっぱりオレニハ何か欠けたものがある」と、しみじみ実感したのである。
 あ~ぁ。トホホ。やっぱり、俺は抜けている。だから小畠さんが「35点だった」と私に厳しいのだ。でも、「つわの」のヤエちゃんは僕への慰めかも知れないが「すごく、良かったよ。ガミちゃん。残りのユーチューブも見るからね」と言ってくださり、とても嬉しかった。町田さん、何かと失礼いたしました。ありがとう。

 帰宅し、ひと息ついたところで私は、このところ連日続いた睡眠不足を解消するため、久しぶりにぐっすり寝込んだ。午後八時近くになり、「ごはんよ」の声に起き、夕食後、中日新聞の夕刊を開く。
 あの小沢代表が東京高裁での控訴審判決公判で予想通り「二審も無罪」が報じられ、昨日、投開票があった豊橋市長選で佐原光一氏(無現)が再選、三重県伊賀市長選では新人岡本栄氏(無新)の当選が、それぞれ報じられていた。
 世の中は、いつだって川の流れの如く一瞬たりとも止まってはいない。動いているのである。

 けさ、初めて気づいたが、わが家の次女猫シロちゃんの首輪がいつのまにか黄色から真っ赤なリボンのそれに替えられていた。聞けば、これまでの「黄」が古くてキレそうだったため息子が真っ赤な太陽にも似た、情熱的な「赤い首輪」を新しくプレゼントしたのだ、という。シロちゃん、なんだか若返ったみたい。

【新聞テレビから】
☆『週刊朝日 橋下市長に直接謝罪 出版元の社長辞任』、『〈サッカーW杯アジア最終予選〉オマーン戦まであと2日 独占本田圭佑にインタビュー』(12日夜、報道ステーション)
☆『小沢代表 二審も無罪』『陸山会の虚偽記入 共謀否定「一審で審理完結」東京高裁』、『9000人 紅葉ロード快走 いびがわマラソン』、『桜井センリさん死去 86歳 クレージーキャッツ』(12日付、中日夕刊)
☆『首相、年内総選挙の意向 「16日解散」も浮上 第三極結集前狙う』(12日付、毎日夕刊)

十一月十一日
 ひとっ子1人いない、寂しい町を歩いて帰る=愛知県江南市の愛栄通りで。11日夜
 

 世の中には、いつだって、良いニュースと悪いニュースがある。
 
 「良いニュース」は先に乗船した地球一周102日間の船旅で、私がユーチューブを通じ世界に向け発信した「伊神権太が行く世界紀行 平和へのメッセージ/私は今この町で」の制作にあたって船内で大変お世話になった〝コンちゃん〟こと、近藤さちえさんと久しぶりに電話で話ができたことである。
 というのは〝コンちゃん〟、すなわち、オーシャンドリーム号船内から〈平和へのメッセージ〉の朗読を7本【中国/厦門(アモイ)編、シンガポール・プーケット編、スリランカ/コロンボ編、エジプト編、ヨーロッパ前編、同後編、中南米・総括編】ともボランティアでしていただいた、その人だからだ。
 彼女は、東京で看護師として活躍中で、これまでなかなか連絡することが出来なかったが、きょうはピースボートスタッフの橋渡しもあって、無事、電話でお話しが出来た。私は「船上ではお世話になりました。ありがとう」と心からお礼を言い、下船後の帰朝報告会など、あらかたについても報告させて頂いた。
 〝コンちゃん〟曰く「ゴンタサン、上京される折はぜひ連絡してくださいね」と。私は「ウン分かった。ありがとう。それじゃあ。また」とだけ述べて電話を切った。〝コンちゃん〟には本当にお世話になっただけに、お礼を言えてやっと肩の荷がおりた。
        ×        ×
 きょうは秋雨のなか、傘を手に名古屋駅前の【ういんくあいち(愛知県産業労働センター)】へ。その足で引き続き、名古屋から名鉄犬山線に乗って国宝犬山城で知られる木曽川河畔の【名鉄犬山ホテル】に出向いた。
 〝ういんくあいち〟には、ピースボートの方から乗船した体験談を乗船予定の方々に話してほしいーと要請があったためで、たとえ僅かでもお役にたてたら、とお引き受けした次第。久しぶりに懐かしいスタッフにお会いすることも出来、スタッフ全員が溌剌と「今」を真剣に生きている感じがして、嬉しく思った。

 続いて訪れた名鉄犬山ホテル。滝高校の同窓会に出席するためで、こちらの方は旧交回想となった。なかで、ある級友いわく。『伊神のところの新聞社に以前、【武功夜話】にまつわる、とっておきの秘話など貴重な情報提供を、と電話させていただいたが、電話に出た女性記者から「そんな話はいっぱいある。これから出なきゃ、いけない。忙しいから、もう電話を切ってもよいですか」と言われた。〝おまえは、どこのおじさんか〟といった横柄な態度で、もう金輪際、中日新聞(東京新聞)など取ってやるものか、と思った』とー。
 これには、さすがの私も言葉がなく「(ろくに話も聞かないで〝そんな話はいっぱい、ある〟だなんて。ひどすぎるので)それは申し訳なかった。読者あっての新聞社、読者のおかげでメシを食べている、という基本をわきまえていない。記者のなかには良い記者もいるのだが…。その一件に関しては明らかに、こちらが悪い。私が代わっておわびさせて頂く。本当に失礼なことをして申し訳なかった」と頭を下げざるを得なかったのである。
 新聞、ましてや、天下の「中日新聞」は地方の人々と共にある。それなのに。せっかくの貴重な話題提供を鼻であしらう態度に出るとは。モノには言いようがある。『後ほど、こちらから電話をさせていただきます』となぜ、言えなかったのか。記者という1枚の名刺に周囲からチヤホヤされ、のぼせ上がっているからこそ、そうした失礼な態度に出た、としか言いようがない。

 つい先年前までの私自身の経験から言わせてもらえば、たいして忙しくもない記者に限って『忙しい』『忙しい』を連発していた。だから、私は事件取材などで「これは」と勝負に出る際どい仕事を指示する場合、どんなに忙しくても泣き言ひとつ言わないで打ち込んでいる、そんな記者に指示したものだ。
 ひと口で新聞記者と言っても、玉石混淆である。私とて中日新聞社の卒業生、〝社友会〟のメンバーである。読者のおかげがあればこそ、今があると思っている。嘆かわしい限りだ。電話の一件は、ただただ本当に申し訳ない、の一語に尽きるが、いまは同窓会に出ればこそ、心からの忠告を聞かせていただいたと感謝している。

 もしも、このブログ【生きてゆく人間花たち/十一月の唄】を読んでくれている後輩の記者諸君が居たならば、今後は読者からこうした後ろ指をさされることのないよう、相手の立場にたった取材活動に徹してほしい。別に無理して記事にする必要はない。でも、大切な読者を前に「私は忙しい」は禁句だ。読者のなかには、もっともっと忙しい方々の方が多い。四十年近く、新聞記者ひと筋に生きてきた私が言うのだから。そこは、謙虚に反省してほしい。

 というわけで、今宵はホロ酔いかげんながら、ちとホロ苦い、ちょっぴり悔しい夜となった。
        ×        ×

 あすはライオンズクラブでの講話があるので、二次会で「酒よ」を歌い、ひと足早く帰ったが江南駅からはタクシーでなく、自己反省も込め、歩いて帰ることにした。
 歩きながら私は「きょうは〝コンちゃん〟と電話で久しぶりに楽しく話しあえたが、そのあとの滝高同窓会がいけなかった。私自身ずいぶんと傷ついた。世の中こうしたものだ。良いことがあれば、悪いことだってある。それを、どう乗り越えて生きてゆくかだ」などと自身に言い聞かせた。
 雨上がりのあとだけに、星空は美しく大気もさやかだった。夜かぜ、がアレヤコレヤとはなしかけながら、少しずつ私のなかに入り込んできた。自宅に近づき、目の前に〈愛栄通り〉の看板とネオンがたちはだかる。誰ひとりいない、この町をただ無言であるく私。わが家は目の前だ。一日が終わろうとしている。

【新聞テレビから】
☆『戦地から妻へ 140通の恋文 比戦死の大尉 郷里・中津川で保管』『明るく楽しい恋心さ/「心配しない」がうれしい 戦況も詳しく記録 ◇すべて書き写す』、『北極海の温暖海域拡大 海水熱量90年代の3倍』、『川面も燃える黄金色 香嵐渓(紅葉の名所、愛知県豊田市足助町)ライトアップ』(11日付、中日朝刊)
☆『〈日本の伝統〉折り紙 世界と日本 大図解シリーズ №1069』(11日付、中日サンデー版)
☆『〈’12知事選 首都急転〉猪瀬氏より舛添氏? 自民都連に支援の動き 民自公相乗りも』、『神奈川・逗子ストーカー 逮捕後再び住所読む』『県警、配慮要望応えず』、『TPP交渉参加「公約に」 野田首相が表明』(11日付、毎日朝刊)
☆『シンドラー製エレベーターまた死者 息子の事故生かされず 悔しい… 二重ブレーキ早く徹底究明今度こそ』(11日付、しんぶん赤旗日曜版) 

平成二十四年十一月十日
 十一月十日。語呂合わせで【トイレの日】だとか。知らなかった。
 それよりも、夕刊で見た熱田神宮(名古屋市)で七五三のお参りがピークを迎えている、との話題が胸に響く。「男の子は紋付き羽織はかま、女の子は色鮮やかな着物やドレスに身を包み、祖母や両親に手を引かれて参拝」とあり、日本の秋の平和な光景でもある。
みんなそれぞれの愛を大切にスクスク育ってくれたらイイナと思う。

 明るい話題といえば、もう1題。朝日新聞朝刊1面の「冬へ急旋回」の見出しと写真で、記事には「ラムサール条約に登録されて今月で10年目となる名古屋市港区の藤前干潟に今年も冬の使者ハマシギが飛来している。……。体長約20センチの渡り鳥で、夏の繁殖期をアラスカやシベリアで過ごし、越冬のため日本にやってくる。」といった内容。この干潟では現在、二千羽が確認されているそうだ。

 昨夜は京都市東山区の清水寺できょうからの秋の夜間特別拝観を前に試験ライトアップがあった。〝清水の舞台〟で知られる本堂(国宝)や色づき始めたモミジ約千本がライトで照らし出され、幻想的な姿を浮かび上がらせたという(特別拝観は12月2日まで)。
 このほか、パキスタンでイスラム武装勢力を批判し銃撃され重傷を負ったマララ・ユスフザイさん(15)が銃撃から1カ月となる九日、入院先である英国の病院で父親、ジアウディンさんを通じて、世界中の支援者に謝意を表した。
 ジアウディンさんは「階級、人種、信条の違いを超えて世界から寄せられる心温まるメッセージに感謝している」「多くの人が思想や表現の自由、平和と教育を求める運動を支援してくれている」などと述べたという。

 そしてーきょうは何といっても、中日朝刊2面の3コマ政治風刺漫画「冷え込んできました 佐藤 正明」が決まっていた。田中真紀子文部科学相をマナ板の鯉となぞらえ、「火種ができてあったかいでしょ」という真紀子さんに「いや まったく」と答える野田首相と輿石幹事長の表情がなんともいえず当を得ていた。

【新聞テレビから】
☆『しなやか 血栓防ぐ 極細1ミリ絹で人工血管』『2年後実用化目指す 福井の繊維会社 世界初』、『首相が参加表明し年内解散? TPP 民主分裂含み』、『岡崎でしめ縄作り いい年を 祈り込め』、『難民一晩8000人(シリアから)トルコに越境』(10日付、中日朝刊)
☆『日朝15・16日 局長級協議 モンゴルで 日本、「拉致」議題に』、『(前日本弁護士連合会長の)宇都宮健児氏 立候補を表明 東京都知事選』、(10日付、毎日朝刊)
☆「女性自殺助けた疑い 鳥羽ネット心中 男逮捕(十日付、朝日朝刊)
☆『「最高の舞台」』『北京マラソン日本人排除 組織委「安全考慮」尖閣影響か』『モンロー 永遠の輝き 〈落札されたイブニングドレス姿のマリリン・モンローの写真。お値段は?(145万円)〉』(10日付、中日夕刊)
☆『CIA(米中央情報局)長官「不倫で辞任」 オバマ政権に痛手 機密漏えい容疑で捜査』、『ビンラディン容疑者殺害の米部隊が漏えい ゲーム制作会社に 軍事機密情報』、『マララさんに(ノーベル)平和賞を ネットで署名活動』、『史上2番目高値 モネ「睡蓮」35億円』(10日付、毎日夕刊)
 
平成二十四年十一月九日
 本日付の読売新聞朝刊に『本社、週刊文春に抗議書 「秘書部長日記」捏造の疑い』なる見出しに気付き、注意深く読んでみた。
 記事は『読売新聞東京本社は八日、同日発売の週刊文春(11月15日号)に掲載された「ナベツネの違法行為を暴露する読売現秘書部長『爆弾日記』公開!」と題する記事について改ざん、捏造の疑いのある記録や出所不明の資料をもとにしており、事実と全く異なる記述によって名誉が著しく毀損されたとする抗議書を、発行元の文芸春秋に送付した。……』とある。
 どちらが真実なのか。推移を見守りたい。
 それにしても読売は、昨年のジャイアンツ球団の内紛劇に始まり、原監督の女性問題、今度の話……と週刊誌諸誌に、かっこうの材料としてよく取り上げられている。見方によっては、内部がそれだけ活気に満ちている、ということか。どれもこれも、いわゆる読売の総帥である〝ナベツネさん〟に当たっては砕けて散ってゆく。その構図が興味深い。企業というもの、得てして皆そうしたものなのだろう。

 福島原発事故発生に伴う放射能を除染した汚染削土の処分が各地とも難航を極め、宙に浮いた状態だ。やむをえず倉庫とか校庭一角、空き地などにビニールシートをかぶせてそのまま保管せざるを得ないケースがあちらこちらで目立っている。この削土の処理につき「海底深くに沈めるわけにはいかないものか。海なら自然に戻してしまうのでは」と素人考えでつぶやいたところ、妻からの刃が飛んできた。
 「何言ってるのよ。それは海をバカにした話よ。海だって一生懸命に生きてるのだから。だったら、海がせっかく怒って大津波を発生させた意味がないじゃない。あなたの言う海だから捨ててもいい、という発想は間違いなの。人間の傲慢よ」と舞。「だったら、人里離れた山の中などでも言いじゃないのか。この際、そうでもしなければ削土があふれてしまう」と反論すると「そうじゃない。山は海につながってるの。山を汚せば、海だって汚染されてしまうのだから」と彼女。

 だったら、どうしたらいいのか。除染作業をスムーズに進め、できれば大気中の放射能汚染も中和剤か何かで消滅させてしまう科学者が現れないものか。今こそ、科学者の頭脳と英知が求められている。
 限りなく親バカだが、そろって日本を代表する科学博士である息子夫妻をはじめとした全科学者に「放射能汚染の絶滅」を期待したい。科学者には緊急時に人間たちを救う義務があるのではないか。またまた素人考えだが、東日本一円に【雪墨(ゆきずみ)】を丸一週間ほど降らせてみる(これはド素人である私の荒唐無稽な発想ではあるが)とか、それが無理なら全域を【灰の原】にするとか、そういうことで消滅出来ないものか。
 案外、原始に立ち返った力で放射能を壊滅出来そうな、そんな気がしてならないのだ。
 
【新聞テレビから】
☆『松本清張没後20年特別企画・疑惑』(9日付、〈金曜プレステージ〉東海テレビ)
☆『【2012世界変貌〈上〉日本を取り巻く新潮流】海洋強国を宣言 中国新体制』、『伊勢湾・木曽岬 丸紅、メガソーラ受注 発電パネルも地元調達へ』、『好天の恵み 高山で赤カブ収穫』(9日付、中日朝刊)
☆『理事会分裂 学長室に電子ロック 解散命令答申の群馬・堀越学園 小学校並み校訓 靴をそろえて」 2人の学長』(9日付、毎日朝刊)
☆『〈第41回三井ゴールデン・グラブ賞〉2年連続ゴールデン・グラブ賞 CD大島 両リーグ最多得票』(9日付、中日スポーツ)
☆『歴史絵巻 着物に躍動【初代若乃花土俵入り(昭和34年)美空ひばりの「お祭りマンボ」(昭和37年)大阪万博(昭和45年)宇宙戦艦ヤマト(昭和54年)】 南知多・豊浜地区 年に一度あすから展示会 「鯛まつり」使用 明治―昭和世相映す』、『3大学不認可問題 田中文科相が謝罪』、『弁論部熱き気風集約 東海中・高OBら歴史を一冊に 66年続く全国大会の歩みも』(9日付、中日夕刊)
☆『万里の長城遭難 旅行社立ち入り検査 観光庁 安全対策問題視』、『FC岐阜 一転赤字に 今年度見通し 広告料に来年度計上分』、『スズキが申告漏れ 国税指摘 2年で12億2000万円』

平成二十四年十一月八日
 ひょんなきっかけで大阪人の心のシンボル「通天閣」。いつまでも変わらない大切なものがある、を歌い文句とする浪速文化の誇りでもある「通天閣」と昔から大阪を訪れるつど決まって顔をだす、どこか不思議な魅力がある「道頓堀」に行ってきた。

 写真は、100周年を迎えた大阪のシンボル「通天閣」
 

 大阪へは、先の地球一周の船旅で大変、お世話になった〝生涯の友〟に会いに行くためだった。時間があったので初代が誕生して百周年になるという「通天閣」界隈を歩き、「あんたも今日から大阪人!! 通天閣でっせ」と書かれた通天閣入場券を手に、高さ九十一メートルある頂上、黄金の展望台・ビリケン神殿まで徒歩とエレベーターで登頂してみた。エレベーターのアナウンスが「さあ~、いにしえの大阪へ。何がつまっているか分かりません…」と意味深なのでつい興味を引かれ速度がゆったりだけに、結構高く感じられた。

 ―大阪の心、浪速文化の誇り「通天閣」。「キタ」「ミナミ」に並ぶ、この「ど・ミナミ」である新世界も時代とともにその町を形成する店や客層も変化しながら歩んでいます。ただ、新世界は今も、そしてこれからも決して変わることのない「大阪の昔の風情」「ノスタルジーな懐かしさ」「浪速独特の明るさ」が残り続けています。……(入場券に書かれた文言の1部)
 そう、その言葉通り。界隈は歩けば歩くほどに、至るところ神秘の空間に入っていくようで、庶民の息遣いと年代が感じられた。私は登頂時に通天閣の守り神として長年親しまれてきた幸運の神様「ビリケンさん」とやらの足の裏をなでて、私の家族と船友一家の幸せを心から願ったが、館内の新世界100周年記念「キン肉マンミュージアム」には、つい見惚れてしまった。

 一帯のジャンジャン横丁もぶらり散策したが途中、立呑処「福政」に寄って、そこで働くアヤちゃん(綾子さん)マナミ(愛美)ちゃんらと雑談しながら、少しだけビールを飲み、時間をつぶした。

 「福政」店内で。アヤちゃんと一緒に。カメラマンはマナミちゃん
 

 大阪を歩いた印象は、『新・世界の中心で愛を叫ぶ!』とか『恋に、恋して「恋してジャンジャン」』、『今、甦る大正ロマン! 100年前の新世界へ』、『日本一の安値に挑戦!! きてやこうて屋 ディスカショップ』、さらには『明るく暮らす おいしく食べる 楽しく生きる』といった〈言葉の持つ力〉か。ジャンジャン横丁の場合、現在の写真と初代通天閣が写った昭和十三年の写真などが対比し展示されており、ここら辺りにも大阪びとの〝ど根性〟が感じられた。

 こんな看板も。鶴田浩二には、思わず引き込まれた
 
 

 今ひとつ心に残ったのは、通天閣の下で〈大阪から世界へ 元気と希望、 そしてラッキーをお届けします〉を合言葉に演奏していた若者たちの姿だった。【ぼくたちのファンになってください!!】と演奏しながら、新鮮野菜まで売りながら、訴える日本の若者たち。すなわち〝通天交響楽団〟の団員である。ついでながら「通天閣」は、天に通じるように、との願いを込め百年前に名付けられたという。
        ×        ×

 この後は、他県から出向いてくださった〝命の船友〟と道頓堀・戎橋横のカニ道楽で再会のひとときを楽しく歓談して過ごした。地球一周時の船内での思い出、そしてその後の近況など話は尽きることなく、お互いにいろいろありはしたが「乗って本当に良かったネ」ということに。

 帰り際、これまで知らないでいた道頓堀・戎橋近くに掲げられた〝グリコのジャンボ看板〟の存在を教えられ、記念に撮影。帰りには【恋の御堂筋】をふたりでそぞろ歩き、夜の都心の一隅で持参したハモニカで〈夕焼け小焼け〉〈ふるさと〉〈みかんの花咲く丘〉をふいてみたが、友人は笑いながら聞いてくださった。というわけで、帰宅は午前さま。三時近い今、八日の出来事をこうして振り返って書いている。
 これも一匹文士・伊神権太としての務め、その時々の世の中のありよう、人びとの粋な気持ちを生きている限り、私、権太ならではの筆致で活写していきたいからだ。少しだけ、疲れた。でも、帰りがけに船友からお土産にいただいた蟹ずし、妻の舞がとても喜んでくれた。

 今や、道頓堀名物のひとつにまで育った「グリコ」のジャンボ看板
 

 大阪という街が、また一段と好きになった。

【新聞テレビから】
☆『3大学、一転認可』『文科相表明 来春開学 岡崎女子など』、『「共に国を前進」 オバマ大統領 勝利宣言』、『〈海外だより〉食糧費寄付募る 9歳ブログ アフリカ支援 マーサ・ペインさん』(8日付、中日朝刊)
☆『グアテマラ M7・4地震 建物倒壊 48人死亡、155人けが』(8日付、中日夕刊)

平成二十四年十一月七日
 立冬。

♯立冬や柚子熟れてゐる百姓家(樂天)
♪菊刈りてそのよきを挿す今朝の冬(虚吼)
 〈今朝の冬〉は立冬の日の朝のことで、朝から冷気の中に焚火の煙が立ち昇るなどにも冬立つ朝の感じはあらう。冬立つ。冬に入る。冬来る。=新歳時記「花鳥諷詠」より
 いよいよ冬の到来か。きょうは一日中、寒かった。
 これからは、まだまだ寒くなってゆく。

 大接戦が予想された米大統領選も終わってみれば、各州で幅広い支持を得たオバマ氏が再選された。勝利宣言は相変わらず、心に響いてくる内容で「この国の未来を一緒につかめると信じています」「アメリカ合衆国の最高の時代は、まだまだこれからやってくる」などの語句に新たな時代にかける新鮮なスピリットのようなものを感じた。
 敗北を認めたロムニー氏も「オバマ氏に電話して祝福した。指導者は国民のために働き、国民も立ち上がらなければなりません」と、なかなか潔いあいさつだった。
 日本の一部メディアのなかには、大統領選の結果を振り返って「アメリカはリーダーを国民全体で育てている」と斬新な捉え方をする女性記者までいて、印象深かった。アメリカの場合、国民の大統領を選ぶ目にも、それぞれに強い意志と主張があり、まだまだ日本より上手な感じがしたのである。

【新聞テレビから】
☆『「静岡維新の会」設立へ』『維新 中部初の地方組織』、『日中、尖閣で応酬 首相、国際法順守を訴え ASEM(アジア欧州会議)』、『暴行2米兵 起訴』『強姦致傷罪 裁判員裁判で審理』(7日付、中日朝刊)
☆『美代子被告ら8人逮捕状 尼崎連続変死 岡山の死体遺棄容疑』、『安部公房幻の短編』『終戦翌年、引き揚げ船で執筆』『生命への肯定つづる「天使」』、『東京五輪支持率66・75% 招致委調査前回並み』(7日付、毎日朝刊)
☆『オバマ米大統領再選』『景気・雇用政策に信任』『共和・ロムニー氏破る』、『東電女性殺害事件 マイナリさん再審無罪』『高裁判決、確定 逮捕から15年半』、『ダル WBC不参加 来季への調整優先』『侍ジャパン 打撃 軸の投手…山本監督「困った」』、『3大学 不認可してない 衆院委 文科相「世間は誤解」』(7日付、中日夕刊)
☆『尼崎連続変死 美代子被告ら逮捕 ドラム缶死体遺棄容疑』(7日付、毎日夕刊)

平成二十四年十一月六日
 夜。
 名古屋は伏見の「大甚」という大衆酒場。名古屋びとがごった返す、ここで飲んでいて、つい先ほど帰宅した。学生時代の友と以前から約束していたためで、途中から【感動のそばに、いつも】の名刺を手にしたJTBプラネットの若者二人も加わり、楽しい酒となった。
 帰って読んだ夕刊1面。〈海岸線ものがたり 能登はやさしや2〉に見たものは、「大漁の夢 やぐら再び」の活字が躍る石川県穴水町七尾湾浅瀬に組まれた「ボラ待ちやぐら」だった。あの懐かしいボラ待ちやぐらで記事にもあった通り「忠助の網には木の葉もボラになって入る」とうらやましがられるほど、たくさんのボラを捕ってほしい。
 かつて、やぐらを見慣れたニンゲンの一人として心から、そう願っている。ちなみに、ボラは【出世魚】である。お忘れなく。

 月日のたつのは早い。日本海では、この日越前ガニ(ズワイガニ)漁が始まり福井県内の各漁港から漁船が次々と出漁、各市場とも初セリで活気づいた。またアメリカでは、注目の大統領選の投票が始まり、朝から(日本時間では今夜から)、ニューヨーク州など東部各州での投票が始まった。結果は即日開票され、順調なら米時間の深夜(日本時間は、あす七日昼過ぎ)にも大勢が判明する。

 大垣から全国俳句大会入選句集(大垣市、市教育委員会、「大垣」全国俳句大会実行委員会)と同大会特選の賞状が届いた。特選に選ばれながら、先日大垣であった授賞式には彼女の都合がつかず、参加できなかったためである。
 賞状は次のようなものだった。
 
     賞状
 特選
        伊神舞子さま
   ソーダ水愛と恋とは似て非なり
 
  あなたは奥の細道むすびの地
 「大垣」芭蕉蛤塚忌全国俳句大会
 において頭書のとおり優秀な
 成績をおさめられました
 よってここにこれを賞します
   平成二十四年十月二十一日
 「大垣」全国俳句大会
    実行委員長 子安一徳

        ×        ×
 (きょう、帰ったらまたも喪中はがきが届いていた。ヤナゲンの浅野さんからだった。)浅野千恵子さん! 年末年始のご挨拶欠礼の件、承りました。ご長男の浅野弘嗣さんの逝去、まだ五十四歳とお若いのに。残念です。お安らかに。ご愁傷さまです。弘嗣さまには、大垣在任中、感動ビデオ大賞創設に当たって随分とお世話になり、ありがとうございました。
 なんだか、悲しくなってくる。

 でも、きょうは学生時代の友で、中国・吉林師範大学博達学院での日本語教師の大役を無事果たして帰国まもない川口譲=敬称略=と久しぶりに、しこたま飲み、満足している。そこで彼に教えていただいたのが若者グループ〈いきものがかり〉の歌である。彼はこの夏、大役を終えたが、別れの時に学生たちが〝川口先生が大好きだったから〟と、この〈いきものがかり〉の歌を合唱して送り出してくれたそうだ。とてもいい話である。

【新聞テレビから】
☆『名古屋中心部に活断層か 名大などグループ「2本が南北10キロ」』、『東日本大震災 亡くなった方々 5日判明分』『犠牲者58人を追加 岩手県警』(6日付、中日朝刊)
☆『田中文科相 3大学 新基準で判断 適合なら来春開学も 近く審議会立ち上げ』、『米大統領選投票へ 両候補最後の訴え 経済手腕を強調 激戦3州で遊説』、『V奪回へ若竜育って 沖縄秋季キャンプ始まる』(6日付、中日夕刊)

平成二十四年十一月五日
 新聞を読んでいて見つけた明るい話題から。
 私が日本中のテレビコマーシャルのなかで一番いい、飛び切り上等だーと、常々評価している大垣共立銀行のコマーシャル「あなたも私もOK、OK」に関連した話題が、今日付の中日新聞〈通風筒〉に掲載されていた。
 「◇…大垣共立銀行のテレビCMオーディションを兼ねたダンスコンテストが四日、岐阜県大垣市で開かれ、東海三県から高校生以下の四十チームが出場した。◇…「あなたも私もOK、OK」というオリジナル曲に合わせて踊るCMが放映されてきたが、初めて出演者を一般に募った。格好いい踊りのクール部門と、かわいいキュート部門でそれぞれのグランプリを選んだ。◇…」というものだが、新年のCM出演が、どんなものになるのか。今から楽しみだ。
 ただ本音を言わせてもらうなら。これまでのこどもたちの、あの天使の翼のような、あどけない表情の、CMがとってもステキなだけに、これを超えるとなるとチョッピリ心配でもある。いずれにせよ、楽しみだ。

 中日新聞を何げなく開いていたら、【木下志津男氏(きのした・しずお=中日新聞社友)】の訃報が視界に飛び込んできた。「2日、心不全のため死去、79歳。名古屋市西区出身。」とあり、「1973年のドバイ日航機ハイジャック事件で機内に乗り合わせ、解放後に体験を記事にした」とあった。木下さんといえば、私が小牧通信局長時代の航空部長で随分とお世話になった。悲報に接した今は、言葉もない。お安らかに。 合掌― 

 本日付毎日新聞の〈余録〉に、こんな下りがあった。
―……▲チュニジアの「ジャスミン革命」は2010年12月、無許可で野菜の路上販売をしていて摘発された20代の男性が抗議の焼身自殺をしたことが発端と言われている。男性の全財産を没収して顔を引っぱたいたのが女性の警察官だった▲アラブ世界でチュニジアは女性の社会進出が進んでいて女性も男性と同じ仕事に就ける。だが男性にとって女性に顔をたたかれるのは相当な屈辱で、心に深い傷を負った男性が思い余って取った行動が焼身自殺だった(重信メイ『アラブの春』の正体)▲……
 へえぇ~というのが、実感である。いい面でも、悪い面でも女は怖いな、と直感的に思った。でも、殴られて焼身自殺したので「ジャスミン革命」は、起きたのである。アラブの春、の引き金は、やはり革新的な女性と男性の両方にあったのである。

 夜。メーテルの報道ステーション。工藤さん(元プロ野球投手)解説による「巨人日本一勝利の裏側」を見ていたら、工藤さん曰く「日本ハム打線に対する徹底した〝インコース攻め〟で巨人に一日の長があった」と。なるほど、よく分かった。さすがは、往年の名投手、工藤さんならでは、の明解な分析である。
 石川県警金沢東署がきょう、先に金沢市の「アパホテル金沢駅前」で清掃会社従業員の前多外志子さん(63)=石川県能美市=がシンドラーエレベータ社製のエレベーターに挟まれ死亡した事故で東京都江東区の同社本社を業務上過失致死容疑で家宅捜索した。

 きょうは、舞のお父さん、私の父の墓の順で花を供え線香をたてお参りをしてきた。引き続き、彼女が以前から行きたがっていた〝桜小町〟とかいう、パスタの店に行き、フリードリンクとやらで、昼食をしてきた。これまでは、食わず嫌いのパスタだったが和風バスタということで案外おいしかった。

【新聞テレビから】
☆『密着・原発作業員は今 廃炉の現場で何が』(5日、NHK〈クローズアップ現代〉)
☆『万里の長城 2邦人死亡』『大雪で遭難、1人不明 新華社など報道』、『内閣支持17%最低に』『石原新党評価割れる 全国世論調査』、『日本の 縁 ぐるっと走破 448日間で海岸線1万7000キロ 名古屋の64歳主婦 被災地での出会い力に』(5日付、中日朝刊)
☆『「活断層ある」「地滑り否定できず」 大飯断層 判断割れ 7日に再議論へ』、『オバマ氏が優勢 米大統領選あす投票』(5日付、毎日朝刊)
☆『万里の長城 3邦人死亡 現地情報 標高1000メートル、腰まで雪』、『〈海岸線ものがたり〉石川県七尾市 能登はやさしや1 イルカ 湾内の新家族』、『シンドラー本社捜索 業過致死容疑で石川県警』(5日付、中日夕刊)

平成二十四年十一月四日
 けさになり、初めて気が付いた。
 わが家の次女猫シロちゃん(17歳)に、鈴と黄色いリボンの首輪が復活した。首に出来ていた湿疹がほぼ治り、自らの手でこすったりすることがなくなったため、昨夜からけさの間に、舞が新しくつけた。鈴は以前からのものだが、首輪は湿疹が再発しないよう、これまでの皮バンドではなく、幸せの象徴でもある〝黄色いリボン〟を使用したという。

 幸せの黄色いリボンと鈴を首に、すこしだけすまし顔の次女猫シロちゃん
 

 けさ、シロちゃんがいやにすました顔でいるので、何かが替わっていると、よくよく顔を覗いて見たところ、新しい装いに変身していた。彼女の場合、毎朝、決まって六時ごろになると、舞を起こしに二階寝室の枕元までやってくる。そして舞が外出先から帰宅すると決まって玄関先まで出迎える。そうした点では賢い猫ちゃんである。
 従来なら、起こしに来たり、迎えに出たりする時は、いつも首の鈴がチリン、チリンと鳴るので、これがシグナルにもなっていた。しかし、このところは首輪をはずしていたので当然ながら、鈴も鳴らない。だから少しばかり寂しく感じていた。
 それだけに、わが家にとってはシロちゃんの首輪復活は、大変な朗報である。そんなことを知ってか知らないでか、きょうのシロちゃんったら、一日中すまし顔で驚いた。

 そのシロちゃんを足元に、テーブルで食事をしていたら「あのねえ」といつもの調子で誰かさん。
 「何?」と聞くと、もういちど「あの、ねえ~」と舞のいつもの癖である。
 ここで「なんだよ」と初めて真剣に耳を傾ける。
 「アメリカでね。テレビというテレビがあんまり大統領選のことばっかりで…。それもオバマ、ロムニー両陣営の中傷合戦がテレビで放映されるので、五つか六つの女の子が、とうとう泣きだしちゃったのだって、よ」
 そういえば、そんな記事をチラリとななめ読みした覚えがある。
 「デ、どうしたの」と私。
 「テレビ局が、その女の子に〝大統領選挙の放送ばかりでゴメンナサイ〟って。謝ったそうよ。ラジオで聞いた」ときた。
 
 私はフーン、ととぼけながらも、その女の子はデカしたな、と思った。
 と、同時に「俺がもしテレビ局のトップなら、大統領選を全然報道しないわけにもいかない。だから、毎日十分だけにする、とか何らかの方法を考えるのだが。政局のニュースも、ある程度はやむをえない。けれど、やっぱり将来を担うこどもたちには、音楽とか、童謡とか、美しい風景とか、そういったものの方がイイに決まっている」と思った次第。舞は良いニュースを俺に教えてくれた。
 
【新聞テレビから】
☆『原発30キロ圏対象拡大の83市町村 避難先見通し3割無し』、『NYハリケーンの爪痕 ガソリン10倍に急騰 物流寸断 略奪も』『NYマラソン中止』、『維新「東海全区で擁立」 衆院選 松井幹事長(松井一郎大阪府知事)が意向』、『真央 逆転V』、『荘川から福島へ苗100本 復興の希望 桜でつなぐ』(4日付、中日朝刊)
☆『東電、福島に復興本社』『4000人体制 現地に賠償権限』、『豊川の佐野さん 自作の歌が日本ハム・稲葉選手登場曲に 「私もあきらめない」=「歩き続けよう」を歌う佐野有美さん』、『〈今週の本棚〉赤猫異聞 罪人解き放ちの中にみる「礼」 著者浅田 次郎さん』(4日付、毎日朝刊)
☆『宮城県漁協会長 菊地伸悦さん 浜の漁場の一元管理を守りたい』『復興めざす漁業者たち 宮城 「特区」に6・5億 ムリ押し知事に批判』(4日号、しんぶん赤旗 日曜版)

平成二十四年十一月三日
 文化の日。
 はたちの舞が一人、着のみ着のままで私のもとに来た。近鉄電車に乗って志摩半島の阿児町鵜方の志摩通信部に飛び込んできた。
 昭和四十七年。忘れもしない。その日だ。

 それから丸四十年たったこの日。
 私は、大学時代の1年先輩の柔道部主将・森川利政さんら懐かしい方々にお会いした。森川先輩が昭和四十二年に大学を卒業されて以来なので45年ぶりの再会である。同時に「お互い、そういう齢になったのだ」と思うと、無性に叫びたくなった。
 『オレは、まだ若い。20代なのだ!』と。
 そうだ。気も、心も、私は永遠に20代なのである。

 卒業生も加わり大勢でにぎわう、わが母校=南山大キャンパスで
 

 鬼頭勝義さま(48年度・23期卒業生)から案内をいただいてから、行くか行くまいか。随分、迷った。今は顔を出して、つくづく「良かった」と思っている。
 在学時代は高校時代同様、柔道部に在籍、勉強よりも練習に明け暮れの日々だった。在学中、実力で講道館柔道三段を取得、63キロ級でユニバーシアードの候補選手に選ばれ、オールミッションでも優秀選手に選ばれながら社会に出て以降というもの、母校の柔道部にはずっと失礼のし通しだった。それだけに〈何をいまさら。返って失礼に当たるのでは〉と一度は躊躇したが、「もう新聞社も離れ、フリーの身なのだから。逃げないで前向きに」と自身を鼓舞して出かけた。

 出かけたまでは、良かった。案の定はぐれてしまった(言い訳めくが学生時代はバスで通っていた。だからバスで行けば、通いなれた目印の坂道はすぐ見つかったはずなのだが……)。地下鉄鶴舞線の杁中駅で降りたあと、大学にたどり着くまでに周辺の高級住宅街を上ったり、下りたり。あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、さまよったあげく、やっと体育センターB2Fの柔道場に辿り着いた時には開始時間(午前十一時)を大幅に遅れてしまい、OB会総会が終わったあと。かろうじて記念撮影だけには間に合った。
 記念撮影のあと長年の非礼を森川先輩にお詫びすると、「オウッ、伊神。元気でいたか。【久しぶり】だな。ちょっと学内を案内してやる」とおっしゃるのでついて行くと、キャンパス内は学園祭のさなかだった(引き続き、四日はホームカミングデー)。未来を担う多くの優秀な学生が行き来しており、懐かしいキャンパスは一新していた。まるで浦島太郎のような気分に包まれ、【久しぶり】にも、こんなに【時を経た久しぶり】があるんだ、と不思議な気持ちにかられた。

 キャンパスを行きかう学生たち、大学祭の真っ只中だった
 

 私たちの学生時代は今のキャンパス(当時、新キャンパスと呼んでいた)に移ったばかりのころで、在学中の四年間は、仮設の飯場に畳をそのつど敷いて練習したものである。その仮設建物は当然のことながら、跡形もなく消えていた。

 森川先輩に誘われるまま、先輩の車に乗せられ喫茶店へ。ここで、あれやこれやと互いに〝来し道〟について語り合った。
 「俺はな、二度大病になったが、いまではスッカリよくなった。会社の方は、おかげさまで常務まで行き、今は監査役で月に一度顔を出しているよ」と話す先輩。
 彼は「平成五年ごろ、ある日突然、原因不明の右の顔面神経に襲われ、来る日も来る日も検査の明け暮れだったが、知らぬ間によくなった。今から思えば、当時は社内的にも重責にありアレもコレも、と神経の休む暇がなかった。だから、ああいう奇病に襲われた。そして十六年には、胃ガンが見つかり胃の大半を切除、こちらも今では奇跡的に完全回復した。一時は見るも無残なほどに痩せ細ったが、体重も元に戻った。おかげで四人の孫に囲まれ読書三昧と温泉漬けの日々だ」ともつけ加えた。

 先輩は、さらにアメリカで起業し大活躍のHさん、ペルーに行ってしまい最近日本に帰ってきたというTさん、東北の会津で高校の校長をやり退職したYさん、行方知れずになったままの同期の桜など、私が知る一年上の先輩たちの近況についても話してくださった。別れ際、私は失礼とは思いつつ「これ、俺が書いたから」と自著二冊を手渡すと「オウ―、そうか。さっそく読ませてもらおう」と話してくれ、嬉しく思った。

 先輩は、いつまでも優しい先輩だった。〈人間の尊厳〉を建学の精神とするわが誇り高き大学の校訓をあらためて噛みしめ、よいひとときを過ごせた。行って良かったと思い、車で送って頂いた名鉄西春駅で犬山線に乗った。

 夜。巨人が本拠地の東京ドームで日本ハムを4―3で破り、3年ぶり22回目の日本一に輝いた。最高殊勲選手は内海投手だった。原監督は「みんな、どんな場面もチーム最優先で戦ってくれた。未来永劫、歴史に残る選手たちだ。ファンの皆さん! 本当にありがとうございました。ファイターズも素晴らしいチームでした」とあくまで、さわやかだ。きょうは、ほかにJリーグで鹿島アントラーズが2―1で清水エスパルスを破り、2年連続5回目の優勝を果たした。

【新聞テレビから】
☆『発見! 幻の巨大船 モンゴル軍襲来の真実▽なぜ4400隻の大船団が日本を襲ったのか▽神風の正体とは』(3日、NHKスペシャル)
☆『ドナルド・キーンの東京下町日記 バラ園のある街 美しい日本の暮らし』、『大飯原発 活断層の可能性指摘 規制委「必要なら再調査」』、『真央スマイル 反日溶かす 日中のファン一体感』、『岡崎女子大の新設不認可「理不尽」訴訟も検討 学校法人側』、『高木監督 悔しさ忘れられぬ 白井オーナーに今季報告』(3日付、中日朝刊)
☆『新設不認可 3大学「理不尽」 岡崎女子大 準備に2億7000万円』『文科省幹部「驚いた」』、『秋の叙勲3940人 女優佐久間良子さん(73)=旭日小綬章 役を愛し演じる』、『マニフェスト大賞 川勝(平太)静岡知事ら』(3日付、毎日朝刊)
☆『武功夜話物語 その119(須賀弘之)』(3日付、尾北ホームニュース)

平成二十四年十一月二日
 新聞報道によれば、自民党の安倍晋三総裁の〝殺害予告メール〟が十月初旬から四十二通送られてきたという。

 警視庁は一日、一部脅迫メールの送信元を特定した、として偽計業務妨害容疑で二十代の男性と家族を事情聴取したが、いずれも「身に覚えがない」と関与を否定。男性が「一カ月ぐらい前にネット上でゲーム制作用のソフトをダウンロードした」と説明し脅迫メールにも「他人のパソコンを踏み台にしている」と遠隔操作の可能性に触れる文言があることから、何者かが外部から操作した可能性があるーとみて押収パソコンの解析を進めているそうだ。

 「殺す」などと言うメールは許されるものでない。たとえ遊び半分にしてもぶっそう極まる。犯人は一体、どういう気持ちでいるのか。荒んだ社会を象徴している。

 暗いニュースが多いなか明るい話題といえば、在任時も含め十年ほど家族で過ごした隣町、愛知県一宮市に新しい玄関口として「尾張一宮駅前ビル」(・i―ビル)が誕生し、昨日オープンしたことだ。新ビルは七階建て、外装の模様は〈繊維の都市〉ならでは、で繊維の網目をデザイン化するという洒落た装いだ。

 夕方、わが朋友でもある週刊新潮カメラマンの南慎二さんからメールが入る。
 「本日、日本写真家協会会報誌で知りました。トルコで共に旅をした良き仲間の小栗義幸さんが9月7日にご逝去されていました。肺がんだったとの事でした。合掌」という内容。〝小栗さん〟と言えば、航空機や秘蔵写真館、旅の写真家で知られる、あのオグリさんである。私は「ありがとうございます。【原稿より健康】です。南さんも無理しないでください。 合掌」と返信した。頭をかすめたのは、ただ「若くて速すぎる死が惜しい」のひと言。
 いまさら、どうするわけにもいかず、この世の無情が染みる。

【新聞テレビから】
☆『ハリケーン オバマ氏の対応評価 世論調査で77% 選挙活動を再開』、『40歳ゴリラ「ネネ」出産 東山動物園 国内最高齢更新』、『大飯きょう断層調査 規制委 活断層なら停止、廃炉も』、『初日大入り 一宮新駅ビル開業』、『金沢の死亡事故エレベーター 06年事故機と同型』、『猛打復活G王手 先発全員安打10点 巨人10―2日本ハム』、『(中日)山崎が現役続行 入院の母に「ユニホーム姿」を』(2日付、中日朝刊)
☆『スカイツリー 電波障害対策100億円 NHK・民放 アンテナ交換など』、『〈時代を駆ける〉小学校で見た光る石 加藤泰浩=太平洋の海底にレアアースがあることを発見した。』、『秋の褒章712人・24団体 歌手=紫綬 由紀さおりさん(65)ら』(2日付、毎日朝刊)
☆『闇市や食糧難 風刺交え 10代の「手塚漫画」発見』『「ヒゲオヤジ」すでに登場 戦後の解放感 未発表作19ページ』、『田中文科相 3大学 設置認めず』『岡崎女子大など 審議会答申覆す』、『〈大波小波〉惨劇への固執=半ば作品公募誌めく性格ゆえか、『文芸思潮』という雑誌はあまり目立つ存在ではないが、前号の「ナチス・ポーランド侵攻」につづき、第47号では「アウシュビッツ(強制収容所)」を特集。多くの証拠写真とともに人間の狂気の集団的惨劇を問いつめている。硬派なのだ。』(2日付、中日夕刊)
☆『〈米大統領選挙〉NY市長 オバマ氏支持 気候変動対策を評価』(2日付、毎日夕刊)

平成二十四年十一月一日
 十一月がやってきた。二〇一三年用の年賀はがきの販売も始まった。

 アメリカではハリケーン崩れの温帯低気圧「サンディ」の上陸で、ニューヨークなど被災各州で六百万世帯が停電、七十二人が死亡(AP通信)。地下鉄などにも甚大な被害を及ぼし、復旧のめどがたっていない。被災対応の是非が大統領選の行方までを握る。
 日本では尼崎の行方不明事件の主犯とみられる女の顔写真がまったくの別人と分かり、新聞・テレビ各社はおわびの報道に追われ、政界はときたら、野田総理が第181回国会で参院議員抜きでの所信表明をやってのけ、〈あす〉への責任やらを訴えた。対する野党の安倍自民党総裁も「近いうち解散は、どうなったのか」といつまでも実のない質問に明け暮れている。
 世の中、完璧なんてないのだ。〝秋のかぜ〟を見ろ、と言いたい。
 私は、そんな肌に、こ寒い〝かぜ〟が好きだ。

 きょう11月1日は、源氏物語千年紀委員会の提案がきっかけとなり、ことし三月、超党派の議員連盟の法案提出により実現した最初の〈古典の日〉である。なんでも1008年=寛弘5年=のこの日に源氏物語をめぐる記述が「紫式部日記」に初めて出てくる。だから、それにちなんで法律で定めたそうだ。古典の日、と聞いただけで、古典文学を読みたくなる、ただそれだけでも、なかなかいい。
 朝日の天声人語にも書かれていた。〈ひとり、燈のもとに文をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰むわざなる(徒然草)〉か、か。

 さて船旅でかじった社交ダンス。このまま止めるのは、惜しい。
 デ、近くの福祉センターや公民館など数カ所に出かけ、どうするかを考えてきたが、きょう、ある教室に出向き入会金を払い、イチから学ぶことで私なりの方向づけが決まった。
 親切な〝ヤマモトさん〟なる女性のアドバイスで、民間のダンス教室を訪ねたところ、一つひとつ基礎から教えていただけそうなので、その場で入会金をお支払いした。今後は都合がつけば、週一回のレッスンを続けよう。これとて自身への投資にほかならない。

 きょうは、ワルツとルンバの足を何回も繰り返し教えていただいた。久しぶりのステップだけに、全身が沸き立ってくるのが、よく分かった。今日もナンダカンダ、に追われる一日が過ぎ、これでは古典を一人静かに読んでいる暇など、とてもない。

【新聞テレビから】
☆『福島第1 「高線量下で作業 違法』元作業員、労基署に訴え 元請けの処罰など要請』、『エレベーター開扉後に上昇 女性清掃員挟まれ死亡 金沢のホテル』『シンドラー社 自主点検へ』、『第三極結集 先見えず 「減税」国政政党化』『日本維新連携「もう無理」 一部議員心は「石原新党」』、『ハム延長サヨナラ 日本シリーズ第4戦 伏兵飯山が決勝打(1―0で日本ハムが巨人を破り2勝2敗に)』(1日付、中日朝刊)
☆『首相「解散より経済」 衆院代表質問 安倍氏の追及かわす』、『パナソニック 7650億円赤字予想 3月期 3事業損失処理へ』(1日付、毎日朝刊)
☆『茶わん蒸しで会いましょう=ギンナンの産地、愛知県稲沢市で〝祖父江ぎんなん〟の出荷が最盛期を迎えている』(1日付、朝日朝刊)
☆『開放感 一宮の「新顔」駅ビル開業』、『〈訃報〉「オバQ」主題歌 石川進さん 79歳』(1日付、中日夕刊)
☆『昆虫で積乱雲発生予測 気象庁取り組み「ゲリラ豪雨対策に」』、『濃厚 秋の香 可児・バラ見ごろ』(1日付、毎日夕刊)