【生きてゆく人間花たち/2013年10月の唄】

平成二十五年十月三十一日
 ♪われ移民さくらさくらとうたえどもはなびらあびる夢にとどかず 尾山峯雄(ブラジル・サンパウロ)=第10回みなとみらい海外日系文芸祭一般の部大賞・衆議院議長賞
 ♪かき氷帰宅部二三人して帰る 齊藤昴希(埼玉県立桶川西高校二年)=同学生の部・大賞参議院議長賞
 
 相棒が東京・永田町の憲政記念館であった海外日系文芸祭の授賞式に出る、というのできのう、きょうと東京に行ってきた。かつて、港の町づくり、いわゆるマリンシティ―運動に力を注いでいた七尾青年会議所とともに新聞社で国内外に公募した「海の詩(うた)大賞」の式典などには主催者側として何度も出たことはあるが、身内の受賞でこうした会に付き添いで出るのは初めてだった。行ってよかった。

 アメリカなど世界各地から訪れ授賞式の壇上に上がった人々

 こども発表会で「私の夢」について語った日系ブラジル人の少年少女=いずれも憲政記念館で

 式では大賞とまではいかなかったが短歌・一般の部で【♪晴れ渡るこの大空にたとうればセザンヌのりんご置いてみようか 伊神舞子(日本)】で入選した妻が、ブラジル、カナダ、フランス、アメリカ…など遠い異国から授賞式に訪れた日系人とともに名前を読み上げられステージに登壇する一幕も。なんだか、こちらまでが晴れやかな気持ちとなった。

 この日は、引き続きブラジルの子どもたちが「私の夢」と題した作文を朗読する在日日系人こども発表会、さらには同時進行で都内で三日間にわたって行われてきた第54回海外日系人大会の締めくくりとして▽私たち日系社会は日本との連携を深め、ともに成長が持続するよう努めます▽日本文化の普及に、日本政府の一層の努力を期待します▽2020年東京オリンピック・パラリンピック開催を支援します―など、8項目に及ぶ大会宣言が採択される模様も、この目で見させて頂いた。

 行って良かった、という理由には今ふたつがある。
 東京で働く長男夫妻が永田町内でも国会議事堂を眼下とする超一流の高層ホテル23階の一室を確保してくれており、一緒に食事がてら久しぶりに歓談できたこと。それも、こちらで支払うつもりでいた料金まで食事代こみで全て支払い済みで、これには妻も驚くやら、感激するやら。これだけのお金があれば、ちょっとした海外旅行にも行けるほどの高さには驚いた。でも、永田町一円が一望でき、部屋も広くすべてが完備しており、快適さは抜群。それ以上の料金でも決しておかしくはない。
 「日ごろ無駄遣いは極力避け、節約を心がけてつましくしているのに。こんなに景気よくパアーッと払われてしまったのでは、これだけあれば、旅にだってあちこち行けるのに。本だって買えるのに…。もったいない」とナンダカ、おしくて複雑な気がした。とはいえ、舞があんなに喜んでいるのだから。ここは素直に〝ふたりの快挙〟に甘えることにした。ありがとう!

 大勢でにぎわう神田神保町の古本屋街

 もう一つは。「せっかくなので行ってみたい」と誘われるまま、山手線で神田まで出てここから歩いて〝世界一の本の町〟とされる、神田神保町の古書店街へ。ちょうど古本まつりたけなわのすずらん通りを、そぞろ歩きしたことか。私は三省堂古書館に入り、私の処女作〈泣かんとこ風記者ごん!(能登出版)〉と妻の俳句叢書〈ひとりあやとり(近代文藝社)〉を探してみたがないので調べてもらうと、〈風記者…〉はどこにもなく〈ひとりあやとり〉が全国の書店で1冊だけ、札幌市内のお店にある事実を知った。へぇ~、札幌にあるのか、と思うととても嬉しくなったのである。
 古本屋でコチョコチョやっている私にしびれを切らしたのか。「もうッ。私はこの古書店街の通りをただ、フラフラと歩いてみたかっただけなのに。何もあれやこれや調べるなんて言ってないわよ」と彼女。それでも私は古書店とはいえ、なぜか2冊しかなかった星新一のショートショート集のうちの1冊〈気まぐれ指数〉を手に入れた。若いころ、彼のショートショートに魅力を感じていたので、あらためて読み返し今後に生かしたいと思うからである。

 帰りの新幹線。昨日は半分見えた富士山が、きょうはただの一度も姿を見せてくれなかった。私に対して僻んでいるのか。それとも挑んできているのか。それは、やがてわかる。
        ×        ×

 プロ野球日本シリーズ第5戦が今夜、東京ドームで行われ、楽天が4―2で巨人を破り3勝2敗となり王手をかけた。第6戦は明後日の2日に仙台のKスタ宮城で開かれる。わが家では東日本大震災の被災から立ち直りつつある東北に元気になってもらうためにも、東北楽天イーグルスに日本一の覇者になってほしい、と思っている。
 星野仙一監督自らも今夜の勝利監督インタビューで「東北の皆さんに希望と勇気を与えるためにも東北の皆さん、仙台の皆さんの前で宙に舞いたい」と話していた。こんどは無敵のマー君(田中将大投手)が投げるに違いないが、巨人強力打線がこの〝不沈空母〟を打ちのめすことが出来るかどうか、にかかっている。好試合に期待したい。

【きょうの一文・ことば】神様がいなくなった。「職業野球」が一年で最も熱く燃える季節に「打撃の神様」の川上哲治さんが亡くなった▼「打撃の神様」「赤バット」「弾丸ライナー」「哲のカーテン」。これほど名文句に恵まれた野球人はいない。王貞治さんが「記録」、長嶋茂雄さんが「記憶」に残る選手なら川上さんは「言葉」に残る野球人だ▼……
=31日付東京新聞朝刊1面コラム〈筆洗〉から
        ◇        ◇
 伊神権太の連作長編小説「マンサニージョの恋」(クリックしたら、見られます)=全国書店とアマゾンで発売中
 
マンサニージョの恋
・幻冬舎ホームページ
・amazon

        ◇        ◇
【新聞テレビから】
☆『Rソックス8度目V 大リーグワールドシリーズ 「雑草」上原世界一の抑え』『38歳 変化球と制球に磨き』、『地道な輝き灯台守60年 あす(灯台)記念日 南知多の大岩さん 「夢ある建物」生活の一部』、『イノシシ歩行者襲う 松本城付近で、6人けが』(31日付、中日夕刊)
☆『川上哲治氏死去 打撃の神様 巨人V9監督 93歳』『組織力 名将の信念』『貫いた勝利の哲学 川上哲治さん死去 赤バット フォークの神様と名勝負 元中日・杉浦さん』、『藤田画伯ゆかり仏・ランス市 名古屋と美術館提携 所蔵品相互貸し出し』、『夫婦「3乳児捨てた」 遺棄容疑逮捕 2人保護1人不明 東京・大田』(31日付、中日朝刊)

十月三十日
 きょうは午後から、相棒の用心棒として東京へ出かけるので。

 というのは、伊神舞子の短歌が第10回海外日系文化祭「みなとみらい文芸祭」=海外日系新聞放送協会、海外日系人協会、海外日系文芸祭実行委員会主催。JICA横浜国際センター、国際俳句交流協会、日本歌人クラブ、中部日本歌人会など後援=の短歌部門/一般の部で入賞したため、その授賞式に付き添うためである。
 彼女の場合。これまでも長谷川等伯賞(短歌)や伊藤園の〝おーいお茶新俳句大賞〟、ほかに各種俳句、短歌大会での入選歴は数え知れない。が、なぜか授賞式には一度も出ていない。今回も最初は行く気がなかったようだが、この文芸祭が日本と海外の両方から作品を募集するなどチョット変わった催しであるばかりか、10回を節目に最後の海外日系文芸祭になると知り、急に「行く」と言い出した。

 思えば、かつてNHKから松山の俳句大会にテレビ出演の依頼をされながら私の仕事の関係もあり、行くことを断念するなど、せっかくのチャンスを摘み取ってしまった苦い経験がある。だから、今回はその罪滅ぼしもあって出かけることにした。大会の模様は追って本欄で紹介させて頂く。

【きょうの一文・ことば】「……作家は80歳を過ぎると新しいことを書けないというが、私は90歳を過ぎても新しい研究を続けていく」=30日付毎日朝刊【「90歳過ぎても研究」 碧南・無我苑名誉村長 梅原さん講演】のなかで碧南市哲学たいけん村無我苑名誉村長の梅原猛さん(88歳)

【新聞テレビから】
☆『新春へ福運ぶ馬 愛知・高浜』、『おいしい納税 1億円突破 新米と交換人気=一万円の納税に対し二十㌔の新米を送る特典が人気を呼んでいる=』、『イオン発災害情報 FM38社と協定へ 店舗を開放全国に放送』、『大手3銀行一斉検査へ 金融庁が来月5日 暴力団排除に重点』、『恐喝メール高3自殺 金要求の容疑者逮捕 (名古屋市)守山区』(30日付、中日朝刊)
☆『天安門車炎上 「ウイグル族テロ」断定 中国公安 各地で摘発』、『〈MAINICHI 芸術食堂〉「歌は人を幸せにする」 劇団四季「サウンド・オブ・ミュージック」』(30日付、毎日朝刊)

十月二十九日
 私たちのウエブ文学同人誌「熱砂」紙面で続けてきた同人たちのテーマエッセイ集が十四回目=今回のテーマは「東京五輪」=の歴史を刻み、本日、そのトップバッターとして私、伊神権太と真伏善人の作品二作が公開された。
 公開されたテーマエッセイ二作の副題は【幸せへの軌跡(伊神)】と【東京五輪VS名古屋八輪そして(真伏)】。なかでも真伏の作品は、題からして面白い。今後、年内に順次、他同人の意欲作もアップ、一人でも多くの読者に読んで頂けたら、と思っている。
 「熱砂」の同人たちは、それぞれの仕事に追われたり、家族の介護や目の手術、自らの病克服…と大変だが、みな〝文学の虫〟である。それだけに、ここは書き上がった作品から随時、各自のペースに合わせ年内を目標に、ゆっくりと公開していけたらと思っている。
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 今夜の東京ドームの日本シリーズ第三戦。全員安打(13安打)の猛攻をした楽天が巨人を5―1で破り2勝1敗と面白くなってきた。星野仙一監督の「13安打にしては得点が少ない。きょうは小爆発、あした大爆発しますから」の言やよし、である。ここまできたら、ぜひ日本一になってほしい。

【きょうの一文・ことば】「われわれの給与は業界の常識から設定されており、突出して高くはない。(無給期間を除いた)残り(期間の報酬)の金額が過大ということはない」=29日付中日朝刊『みずほ銀頭取処分「半返し」甘すぎ それでも報酬5800万円 商店主あきれ顔』の記事の中で。佐藤康博頭取の話
 
【新聞テレビから】
☆『石牟礼さん「胎児性患者に会ってください」 皇后さま 水俣の約束』、『ウイグル族関与か 天安門前突入 計画的犯行の可能性』、『中電4・95%値上げ申請 4月から 企業向けは8・44%』(29日付、中日夕刊)
☆『〈チェック〉雅子さま回復近い? 1日から泊まりがけ公務 周囲の人に気遣い 4年半ぶりに登壇』(29日付、毎日夕刊)
☆『錦秋台風に負けず 御在所岳』、『秘密保護法案 学者265人が反対声明 「憲法の原理侵害」』、『みずほOBら54人処分 頭取「辞任せず」 暴力団融資』、『天安門前車突入5人死亡 日本人ら38人負傷』(29日付、中日朝刊)
☆『第三者委「隠避ない」根拠不十分 組員融資実態闇に みずほ改善計画54人処分』(29日付、毎日朝刊)

十月二十八日
 【神さま、仏さま、田中マーさま】の楽天・マー君(田中将大投手、24歳)が今シーズン、日本プロ野球界の投手部門では最高の栄誉である沢村賞に2年ぶりに輝いた。マー君は今シーズン開幕21連勝、レギュラーシーズンでも24勝1セーブの好成績をおさめた。大相撲九州場所の番付発表があり、エジプト出身の大砂嵐の新入幕(西前頭15枚目)が決まった
 阪神阪急ホテルズの出崎弘社長が今夜、偽装メニューを認め来月一日付での引責辞任を、暴力団関係者に融資していた「みずほ銀行」も「基本動作を怠っていた」(佐藤頭取)として役員報酬の半額カットなどを公表した。
 一方、海外では毛沢東の肖像画が掲げられた中国天安門広場付近で車が炎上、五人が死亡、三十代の日本人男性一人を含む三十八人がケガをしたという。テロではないか、などいろいろ取り沙汰されている。いろんなニュースが日々、津波のように人間社会に押し寄せている。

 伊豆大島の被災地では死者、行方不明者合わせて四十二人のうち三十三人の死亡が確認され、九人の行方がまだ分かっていない。
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 きょうは、ひげそりの電池を換えたついでにミニ柱時計の電池も交換。これだけのことがブキッチョというか、これまで任せどうしだったため、なかなか出来ない。電池を換えたはいいが、柱時計を壁にかけようとする度に床に落下、何度もやり直してやっと成功した。
 それにしても、ひげそりのここ2年ほどの電池交換で気づいたことがある。私が愛用しているそれは1カ月たつとパタリと動かなくなる。精密というか、気味が悪くなるほどだ。人間の寿命もふと、こんなものだ―と思ったりして。かといって、〇〇歳になったらパタンキューと全ての人の心臓が止まってしまう、なぞ有り得ないことだ。
 人工時計との違いは、ここらあたりにある。人間の場合、100歳以上で亡くなる方もいれば、若くして消えてゆく人もいる。ひげそりの寿命のようなわけには、いかない。なんだか、取り留めのないことを書いてしまった。

【きょうの一文・ことば】「ロウイング イズ ミュージック」という言葉が、漕艇界にある。「音楽を奏でるようにこぐ」。チャポンと音をさせては勝てない。水を切るようにさっとこぐのが美しく、速い。……=28日付中日夕刊『〈列島フォトリレー2013 それぞれの富士〉①米田富士(愛宕山) 風切る舟影 水面に映え(写真と文・太田朗子)』より

【新聞テレビから】
☆『原発最大の課題 〝核のゴミ〟どうする 地下処分場の安全性 14年ぶり白紙から検証』(28日夜、NHK総合ニュース)
☆『東海ひんやり 11月上、中旬並みの気温』、『岩谷時子さん死去 97歳作詞家「君といつまでも」』、『米安全保障局 大統領への報告否定 独・メルケル首相盗聴疑惑』、『脱走馬と衝突 弾みで対向車にぶつかり 軽運転の男性死亡 笠松競馬場近く』『場外逃走は今年4回目 過去30年脱走なし 名古屋競馬場』(28日付、中日夕刊)
☆『みずほ銀報告書 自行融資の意識希薄 第三者委 対暴力団甘さ批判』(28日付、毎日夕刊)
☆『合掌造り「結」新調 白川郷・旧寺口家』、『幸せ流された 伊豆大島死者32人 評判のおしどり夫婦』、『海女文化調査協力へ 「サミット」閉幕 三重県知事合意』、『記者拘束 中国紙1面で謝罪 「虚偽」供述受け幕引き図る』、『メルケル氏盗聴10年超す 独で報道 米大統領は承知か』、『川崎市長に福田氏 自公民推薦候補を破る』『宮城知事に村井氏3選』『神戸市長は久元氏 5600票の僅差で初当選』、『伊勢市長に鈴木氏再選』(28日付、中日朝刊)
☆『両陛下が水俣初訪問 患者と懇談「お気持ち察する』『患者「水俣病、終わっていない」』(28日付、毎日朝刊)

十月二十七日
 負けない投手・マーくんは負けなかった。
 今夜、仙台のKスタであった日本シリーズ第2戦。楽天期待の先発マーくん、即ち田中将大投手はセ・リーグの覇者巨人を相手に12個の三振と127球で2―1で完投勝利した。よかった。東日本大震災に遭って打ちひしがれていた被災者にとっては、これほどまでに勇気と希望を与えてくれる話は、ほかにない。星野仙一率いる楽天には、この調子で日本一になってほしい。
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 実家の庭の柿は、さすがに年季が入っていて違う。母に言われるまま30個ほどを挟でまるごと切って持ち帰った。午後、近くの本屋さんへ。アリス・マンローの短編集「イラクサ」を購入、読みたく思っていた1冊が、やっと手に入った。

 輪島で海女さんのサミットが開かれ、中日新聞志摩通信部の記者が本日付で報道している紙面を見て、昭和40年代後半に同じ志摩通信部記者だった私としてはとても懐かしかった。と同時に地方記者として半島を駆けずりまわっていたあの日々が思い出される。志摩は今も昔も圧倒的に現役海女さんが多い海女大国だが、意外や知る人は少ない。

 そういえば、こんなハプニングがあった。
 熊野灘に浮かぶ和具大島での海女さんの祭り、〝潮かけ祭り〟のさなかに、それこそ当時の私と同じ年ごろの〝ピチピチ海女さん〟数人に囲まれ、カメラバッグを取り上げられたと思ったら、舟の上から着の身着のまま「そーら」と大海原に投げ込まれていた。信じられないと思われるか知れないが、本当にあった話である。
 みな馴染みの海女さんばかりで、まぶしいほどの若さと美しさで、一線記者としては、ずぶ濡れが快感でもあり勲章でもあった。なぜか、海にほおり込まれた私自身、笑っており舟に助けあげてくれた海女さんたちも全員、愉快に笑みをたたえていた。私はあの時、標的とされ、祭りのクライマックスの餌食とされたのである。

 当時、二十代だった私は志摩半島でも安乗から先、浜島も含め波切、船越、越賀、和具…から御座岬まで奥志摩の海でかづいていた(海に潜っていた)、海女さんたちの日常を中心に【海女その世界】という意欲的な企画記事を二十回ほど紙面で連載したことがある。かつては手漕ぎ舟で済州島まで行ったという驚きの史実に始まり、海女さんが海から上がったら当たる火場のこと、浜でのけいこ海女の実際、舟人(ふなど)や徒人(かちど)海女の取材を舟に乗せてもらい、〈ヒューヒュル〉と海面を這って伝わってくる磯笛を耳にしながら徹底取材したものである。
 当然、海女さんたちとは気さくな仲となり、海をステージに忘れられない日々が繰り返され、そして過ぎていった。海女について書き始めると、いや、語り始めてもおそらく延々と続くので今日の所は、ここらでやめておこう。ただ志摩の海女さんの場合、その多少に拘わらず昔も今も日常生活の中でアワビやサザエなどを獲り続けて生きてきていることだけは、確かだ。この地域の海女さんたちは決して観光海女ではないことを付け加えておきたい。

 志摩の海女さんに関して言わせてもらえば、私は、かつて一番深い現場取材をさせて頂いた自負と思い入れからも、彼女たち一人ひとりが国の宝だと思っている。いつか、その物語も書かなければ。(むろん、能登在任時に舳倉島の海女さんも島に渡って取材した。舳倉の海女さんたちも逞しい女性ばかりで貴重な存在である。ほかに鳥羽、東北など全国各地に点在する海女さんにもエールを送りたい)

【きょうの一文・ことば】とりあえず、ホッとしています。きょうの下手な試合。野球の神さまは、よく最後まで辛抱してくれていた=Kスタ宮城での日本シリーズ第2戦で巨人に勝利した後の楽天・星野監督の勝利監督インタビューに対する談話で。楽天監督・星野仙一さん
 
【新聞テレビから】
☆『〈秘密保護法案 民主主義が危ない〉米国にはダダ漏れなのに ジャーナリスト、IWJ代表 岩上安身さん/基地抗議の運動にまで網 琉球朝日放送キャスター三上智恵さん』(27日号、しんぶん赤旗日曜版)
☆『〈世界と日本大図解シリーズ №1118回〉宮沢賢治の世界』(27日付、中日サンデー版)
☆『日韓〝あまちゃん〟大集合 〈輪島で「サミット」〉 稚貝放流など60人交流』『塚本・三重大教授 歴史知り、誇り持って』、『ブラック企業被害見逃すな 中部7県電話相談1日125件 国や弁護士 対策に本腰』『過酷労働の果て解雇 ブラック企業経験名古屋の男性 心労で病 会社に憤り』、『「花ぬすびと」ヒットの歌手 明日香さん死去 がんと闘いながら音楽活動』(27日付、中日朝刊)
☆『原発30㌔圏136市町村 避難計画7割未策定 本紙調査 具体策で迷い』『圏外で独自計画 21市町村 避難受け入れ想定』、『日大ボート部員自殺 合宿所内 いじめ疑い調査』(27日付、毎日朝刊)

十月二十六日
 柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺   子 規
 柿熟れて遠近の友来るもよし   野風呂

 台風27号も八丈島の南海上をほぼ北東へ通過し、今夜には日本の東で温帯低気圧に。島民の大半が避難していた伊豆大島での被災も避けられ、秋もいよいよ深まってきた。

 日本シリーズ第一戦は仙台のKスタ宮城で今夜行われたが、初戦は2―0で巨人が楽天を制した。わが家は中日と楽天ファンだけに、あす以降の試合をなんとか頑張って頂き、楽天に日本一になってほしい。その方が、東日本大震災の被災から立ち上がろうとする人々により多くの勇気と希望を与えるのではないか、と思う。
 あすは、いよいよ舞(妻)の大好きな常勝投手、マー君(楽天)が投げるだけに、期待したい。

 きょうは、ほぼ一日、執筆に専念した。

【きょうの一文・ことば】「権威を相手に勇気を持って書いてきた。それを誇りに思う」「作家に引退はない」=26日付中日夕刊『〈偲ぶ〉「白い巨塔」「大地の子」などを執筆した山崎豊子さん 細部まで取材重ね』、故山崎さんの生前の言葉

【新聞テレビから】
☆『ケネディ元大統領暗殺来月で50年 直前乗った車3100万円 米で競売 犯人の指輪1050万円』、『町おこしのエンジンに 「新城ラリー」10年目が開幕』(26日付、中日夕刊)
☆『2段階で津波注意報 岩手―千葉 システム改善初適用 東北で震度4』、『緊迫の一夜 息潜め 台風27号 列島の南通過 伊豆大島 風雨弱まり住民安堵』『激しい雨、尾鷲233ミリ 夜には温帯低気圧に』(26日付、毎日夕刊)
☆『秘密保護法案国会に提出 第三者チェックなし/市民や記者も対象/永久に非公開可能 【論説委員桐山桂一 国民に情報閉ざすな】』、『伊豆大島全域避難勧告 「台風早く通り過ぎて」住民ら祈り不安な一夜』、『東浦町 人口水増し有罪判決=懲役四月、執行猶予二年= 名地裁 前副町長(荻須英夫) 主犯と認定』(26日付、中日朝刊)
☆『グランプリに「(少女3人の青春物語、ルーカス・ムーディソン監督、スウェーデンの)ウィ・アー・ザ・ベスト!」 東京国際映画祭』、『みのもんたさん「朝ズバッ!」降板』、『竹島で韓国訓練に官房長官「遺憾」』(26日付、毎日朝刊)

十月二十五日
 台風27号と28号が近づいてきている。でも、今日はとても嬉しい日だ。日本文学者、万葉文学者でもある中西進さんが日本文学・比較文学に尽くした、として2013年度の文化勲章に輝いたからである。心から、おめでとうございます。
 一匹文士である私が日々、文章を磨いているデスクの傍らには中西さん著の1冊の本【美しい日本語の風景(淡交社)】が置かれている。毎日一度は頁を開き、より美しく分かりやすい表現方法を学んでいるが、日本人がはぐくんできた歴史や美意識が描かれた、私にとって大切な教本である。

 そして。中西さんは十五年ほど前、この私を作家の太田治子さんと共に日本ペンクラブ会員(小説家・n)に推挙してくださった。中西さんは私の小説〈あたい〉=「一宮銀ながし」(風涛社)所蔵=を読み「ぜひ、作家として入ってほしい」と声をかけてくださり、詩人の最匠展子さん(日本ペンクラブ名誉会員、日本現代詩歌文学館賞)と連名による推挙で入会が実現したいきさつがある。
 言わば私にとっては数少ない恩師でもある。このうえは門下の一人として、より内容の深い私ならでは、の史実に基づいた抒情性豊かな作品を生み続けていかなければ、と誓った次第である。
 おからだを大切に今後もご活躍ください。
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 夜。日本ペンクラブからのメールマガジンによる号外。それによると、日本ペンクラブは本日、「特定秘密保護法案の閣議決定に強く抗議する」声明を出し、吉岡忍専務理事らが記者会見を行った。得体の知れない秘密保護法案によって、報道の自由が束縛されることは断じてあってはならない。私自身、かつて1人の新聞記者として権力の汚辱を暴くのに命をかけてきただけに、抗議声明は当然のことだ。
 国家機密の保護は国を守るどころか、国を滅ぼす。なぜ、もっと自由奔放な政治が出来ないのか。報道の自由を束縛するものでないとはしているが、保護法の存在自体が国の隠しごとを認めることだ。

【きょうの一文・ことば】今後も、この国に生まれて良かったと思える人物像を演じられるよう、人生を愛する心、感動する心を養い続けたいと思います。=25日付中日夕刊、2013年度の文化勲章 高倉健さんの喜びの声

【新聞テレビから】
☆『文化勲章 高倉健氏ら 計5人 日本文学の中西(進)氏も』、『秘密保護法案を閣議決定 機密漏えい罰則強化 「知る権利」侵害の恐れ』、『台風27号 伊豆大島で避難勧告 2地区、土砂災害に警戒』『あす朝 東海に最接近』、『米、世界の指導者35人盗聴 英紙報道 政府高官が番号提供』『英もイタリア盗聴 伊週刊誌報道』(25日付、中日夕刊)
☆『米不信 募らす欧州 独首相の携帯盗聴疑惑 EU首脳会議で討議へ』、『記者拘束 中国各紙も当局批判 記者協会「公正な処分を」』、『〈プロ野球ドラフト会議〉強竜復活託した 1位 聖隷クリストファー高 鈴木翔太投手 エース候補けがも力に』『№1左腕東北へ 大エース超えたい 楽天1位 松井裕樹 投手』、『連合ベア要求決定 春闘方針 5年ぶり、1%以上』(25日付、中日朝刊)

十月二十四日
 きょうのマスコミ各社―プロ野球の新人選手選択(ドラフト)会議の生中継やら報道やらで大忙しである。ちなみに昨夏の甲子園で22奪三振を記録した松井裕樹投手(神奈川。桐光学園高)は、楽天が指名権を得た。

 台風のダブル接近に日本中が脅えるなか、いやはや、この世の中アレヤコレヤと起きる。
 その最たるものが阪急阪神ホテルズのメニュー偽装問題である。表示とは産地の異なる豚肉を納品していた業者が4カ月にわたり、ホテル側から求められた食材の「規格書」の提出を拒んでいたことが分かった―との某氏の夕刊報道には唖然としてしまった。それにしても、阪急阪神ホテルズは提出を拒まれたままで、よくそのまま放置していたものだ。暗黙の了解をしていたのではないのか。
 一方で、三重県警はきょう四日市市の米国販売「三瀧商事」が過去最大の約4386トンに上るコメの産地偽装をしたとして、市内の本社を日本農林規格法(虚偽表示)と米トレーサビリティー法違反の疑いで家宅捜索、偽装ばやりである。

 この社会、やらなきゃ損損、バレなきゃあイイよ―といったあくどい商売が横行している。要するに、バレなきゃ何をやってもいい、という考えでナンダカ、人間そのものの存在が劣化してきたような、そんな気がする。
        ×        ×

 きょうも週に一度の社交ダンスのレッスンに。
 なぜだか、私の顔を見てみなさんが盛んに「ゴンタさんの血液型は?」としつこく聞いてくるので、こうした場合は恥ずかしさも手伝って答えない方がよい、と判断。あてた一人だけに内緒で「その通りです」とメモを手渡した。どうして私の血液型が話題になったのか、が分からない。

 いずれにせよ、ジルバ、ルンバ、タンゴ、ワルツ…と、踊っていて結構楽しい。ただ【リンク】をするときの足の運び方と女性の抱え方(お盆を持つようにして歩くのだってサ)など、まだまだぎこちない。〝ワルツはブンチャッ、チャッと踊るのよ〟〝ご一緒にという気持ちが大切です〟とは先生の言。
 帰り際に受講生仲間のヒデアキさんから「ハイ、ゴンタさん」と手渡された〈江南ダンスクラブ(T典子 ステップ言葉集)〉には、度胆を抜かされた。聴けば、ヒデアキさん。とても几帳面な性格であるばかりか、いつもアピタの屋上でシャドウのステップを踏んでおいでだ、とか。
 そうか。負けてはおられない。でも、ヒデアキさんって。とても好い人である。なぜだか、彼に対して尊崇、いや尊敬の念がわいてきた。すごいお方である。
 
【きょうの一文・ことば】「源内は高松藩を辞した際、他家への仕官は許されないという条件を付けられた。自身の組織への恨みつらみを重ね合わせて書いた」=24日付中日夕刊〈文化〉面『新設・野村胡堂文学賞 小中陽太郎氏「翔べよ源内」に』の記事中、小中さん

【新聞テレビから】
☆『東海 台風27号厳戒 土のう販売3倍 一時在庫切れ』『大雨200ミリの予想』『少しでも危険なら 「空振り恐れず避難を」 防災相呼び掛け』、『三瀧商事を家宅捜索 三重県警 コメ虚偽表示の疑い』、『米の通信傍受疑惑続々と 独首相の携帯も盗聴? オバマ氏に直接説明要求』『米側は否定』、『無人機攻撃中止米大統領に要求 パキスタン首相』(24日付、中日夕刊)
☆『豚肉産地再確認せず 阪急阪神ホテルズ 「旧知の業者」4カ月』『虚偽認識し放置 キャビアも』(24日付、毎日夕刊)
☆『「藤原の効果」 27、28号 読めぬ動き 台風同士接近 長雨、急変も』、『〈あまちゃんの未来 海女サミットinわじま〉 ㊥伊勢志摩 恵み残す知恵と自負』、『〈ふくしま作業員日誌〉ハッピーさん「つぶやき」が本に 状況何も変わらない』、『女子児童にペンチ見せ 「次に宿題忘れたら歯を抜く」 兵庫、男性教諭を戒告』(24日付、中日朝刊)
☆『事務局長 停職3か月 統一球問題 NPB理事会で了承』、『名峰 光で表現 三重・なばなの里』(24日付、毎日朝刊)

十月二十三日
 台風27、28号のダブル接近もあり、午後から降り出した雨のなか、大きな傘をさして横笛の個人レッスンを受けに名古屋へ。私の好きな【風の盆恋歌】をふいたが、お師匠さんの前だと、照れくさくて、どうしてもうまくいかない。
 でも、家でただひとり吹くときは、最近では透明感も出て、自分でもほれぼれするほどにふけることもあるのに…。あぁ~。やはり笛はただ1人で、感情を込めてふくものだと思いつつ、音がでればそれでよしとしなければ、と自身に言いきかせ稽古に励んだ。
 それにしても、お師匠さんのふく笛は、音の撓いかたからして違う。周りの空気までが微妙に震動し、聴いている私までが全身の魂がしびれて融かされてしまいそうだ。抒情があって、儚さ、哀しさ、そして。そこはかとなく、大人の色けも出ている。
 これぞ、人の道の哀歓を奏でる、とでもいうものかしら。なんとか近づきたい。
        ×        ×

 朝の食卓に形の好い色艶もいい、トンガリ帽子の柿が出ていた。
「これは?」と聞くと「うちの庭でなったのよ」の返事。「柿八年って、言うけど。よく言ったものね」と続けるので「何が」とまたまたバカな質問をすると「こちらに引っ越すと同時に私たちが植えた柿の木じゃない」ときた。
 あっ、そうか。

【きょうの一文・ことば】(空を眺めることを忘れた現代人に)「雲を見上げる楽しみを感じてほしい」「私たちは海底に住むカニのようなもの」=23日付中日夕刊『〈列島パレット〉大気の芸術 天の贈り物』の記事中、雲の観察が趣味の村井昭夫さん

【新聞テレビから】
☆『伊豆大島 高齢者ら55人 島外避難 第1陣出発へ 不明1人無事判明』『台風27号西進 大東島接近へ』、『飯島耕一さん死去 83歳 詩人、「他人の空」』、『お歳暮商戦勝ち抜け 名古屋三越』(23日付、中日夕刊)
☆『教諭 小4に土下座させる 豊橋「廊下走った罰」』(23日付、毎日夕刊)
☆『連城さん死去 家族が創作の原点 母を介護 描写に深まり』『同郷思いやりある〝兄〟 奥田瑛二さん』、『27、28号迷走の恐れも』、『「和食」無形文化遺産に ユネスコ、12月正式登録』、『奨励会・都成(竜馬)三段初の快挙 プロ棋士破り新人王』、『(フジテレビ系バラエティー番組「笑っていいとも!)来春の終了発表 終わっていいとも! 31年感謝の輪』(23日付、中日朝刊)
☆『23年越しの受賞 ミャンマーのアウンサンスーチーさんが、自宅軟禁で1990年に授賞式を欠席したサハロフ賞を受賞した。』(23日付、毎日朝刊)

十月二十二日
 作家の連城三紀彦さんが亡くなった。

 抒情性豊かな作風。一人ひとりを気遣うやさしさ…。ご自身からマザコンを自認されていた母思いは、知る人ぞ知る。私の大好きな作家だった。それだけに、寂しく、惜しくて、残念だ。彼には十八年ほど前、新聞社の大津支局長時代に滋賀県読書連絡協議会の文学散歩でバス三、四台で名古屋を訪れた際、東別院で記念講演をしていただき大変、お世話になった。
 あの日、バスの一台が途中でパンクし名古屋到着が大幅に遅れてしまったが、連城さんはわざわざ東別院の入り口まで出迎えて待っていてくださった。それどころか、講演が終わりお礼を支払おうとすると「このお金は読連協でお役にたててください」とそっくり辞退された。夕刊・目耳録で、この話を【優しさとは】の題で紹介させて頂いたことがある。
 名古屋にとって、いや日本の文壇にとっても貴重な存在を失くした。 ―おやすらかに

 きょうは妻の定期検診に付き添って江南厚生病院へ。
 血液検査も問題なくホッとして帰宅し、携帯をチェックすると、ピースボートでお世話になった八重ちゃんと祥ちゃんの両姉さんから相次いで電話が入っていた。お詫びのメールをしたが、妻に「それでは駄目よ。ちゃんと電話しなきゃあ」と叱られ、遅がけになり恐る恐る電話すると「ゴンタさん。いま二人で名古屋駅近くの居酒屋で手羽先食べてる。ちょっと声が聴きたかっただけなの。きょうは早く休んで明日はふたりでお伊勢さんに行ってきま~す」と相変わらずの溌剌さでホッとした。
 それにしても、何度も電話を頂いてしまい申し訳ありません。不出来で至らない弟です。これからもよろしくお願いいたします。

【きょうの一文・ことば】「プロの仕事に必要なのは、『これは売れるのだろうか』と思案するよりも、『これを見てもらうんだ』という武骨な勇気」=22日付中日夕刊〈スポーツが呼んでいる 中日・落合GM 映画論に見る野球観 菊島大〉

【新聞テレビから】
☆『連城三紀彦さん死去 作家「恋文」「戻り川心中」 65歳』『芝居愛し謙虚な人柄 シャイで母親思い 仏教にあこがれた』、『ノーベル賞・マンローの魅力 シャイな「短編の達人」 佐藤アヤ子』、『日本も「核不使用」参加 3度見送りから転換 国連委共同声明』『核不使用声明「日本やっと動いた 被爆者ら評価と批判』『〈解説〉被爆国として遅すぎた』、『盗聴疑惑 米大統領、仏に弁明』、『ロマのキャンプで発見 「金髪の天使」照会殺到』(22日付、中日夕刊)
☆『「核不使用」125カ国賛同 国連声明 日本初署名 史上最多』(22日付、毎日夕刊)
☆『〈特報〉反省なき自民 特定秘密保護法案 提出資格ない 「沖縄返還密約」情報入手し有罪――西山太吉元記者 取材の自由に「配慮」…「抽象的言葉 助けにならぬ」』、『〈この人〉ネパールの一言語ネワール語保存に活動 高岡秀暢さん』、『〈文化〉200年前に484日間漂流、米大陸に上陸 船頭小栗重吉知って 地元の愛知 展示や記念祭企画 尊い生ききった精神力』『中部ペンクラブ三田村博史会長 小説「漂い果てつ」出版 想像絶する世界 心の中を描く』(22日付、中日朝刊)
☆『連城三紀彦さん死去 作家「戻り川心中」「恋文」 65歳』(22日付、毎日朝刊)

十月二十一日
 楽天がきょう、仙台のKスタ球場であったパ・リーグのCSファイナルステージでロッテを8―5で破り、球団創設7年目で初の日本シリーズへの出場を決めた。「きょうは、スタンドとグラウンドが一体となっていた。ありがとう」と星野監督。「巨人なんか、大嫌い。コテッパンにやっつけてほしい」とは、マー君が大好きなわが家の女性陣―
 中日本紙夕刊文化面の【文化面の余白 取材ノートから 文と写真 三品信】がなかなかいい。記者が書く裏話は、実はホントの話だからだ。きょうは「思い出せない そばの味」の見出しで庄野潤三さん(作家)を扱っていた。今後の筆に期待したい。

 月曜日。天気もよく、久しぶりの布団と洗濯物干し。
 ちいさな体の割りには、どこにあんな腕力があるのか。すごい力持ちの誰かサンはいいが、「あと、みんな部屋に入れておいてよね」のひと言が非力な私にとっては、結構な負担で大仕事となった。3人分の敷き布団と洗濯物をベランダから次々と室内に入れ、ましてや寝室に敷き直す、だなんて。やはり、こうした力仕事は大の苦手だ。

 という、舞は午後からどこかへ蒸発。
 かと思ったら市役所(地域情報センター)であったNPO・ボランティア講座「そうだ! 交流からはじめよう」なる市地域協働課提唱の会議に出席してきたという。へえぇ~、と思いその意欲やよしだ、と自身に言い聞かせる。記者夫人当時の舞だったら、とても想像もつかない〝大事件〟である。
 余裕が出てきたからなのか。それとも先日、突然の急襲に遭って虫たちにやられていた顔面が元通りに治ったからか。その辺はよく分からない。でも、前向きで積極的なことは、毎月自ら営むボランティアのリサイクルショップ「ミヌエット」を開放して行っている〝ちいさな音楽会〟同様、立派な社会貢献だと思う。

 で、その会議とやらの趣旨は、と聞くと。「江南をより良くしたいと思う人が知り合って、何か一緒にできることを見つけてみようという交流会です」という。この日は熱心な市民ばかり約四十人が集まりグループごとに分かれて午後一時から三時間たっぷり話し合ったという。日ごろ大変、お世話になっている画廊音楽喫茶「音彩(ねいろ)」のご主人、後藤さんも出席されていた、とのこと。江南の未来が楽しみになってきた。
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 一方の私はといえば。「熱砂」のテーマエッセイで次に公開予定である「東京五輪」(四百字詰め四枚)を一応、書き上げた。今月末の提稿締切を同人各位に連絡した手前もあり私自身がまず書かねば、と自らを奮い立たせこちらを優先させた。まだ締切までは当分日にちもあるので、しばらく寝かせたうえであらためて提稿し、公開しようと思っている。

 新作小説「カトマンズの恋」の方は、さっそく世界の各地から「読みました」「翻訳家を紹介したい」「作家を知っているだけに、読んでいて不思議な気がしました」などのメールが入り、まずまずの反響である。この作品を世界に対してウエブ以外にどう発信してゆくか。慌てないで今後心当たりに一つひとつあたっていくつもりだ。
 執筆途中の小説も三、四あるのでこの際、一気に書き上げなければ、とも思っている。ただ慌てることだけは止め、傍らでいつも私を見守ってくれている長女猫、こすも・ここを見習って、あくまでマイペースでいきたい。
 時間は十分ある。要は伊神権太ならでは、の小説世界を一作ずつ着実に生み出していけばそれでよい。ただ、それだけのことである。相手はあくまで無頼派である私自身である。私を応援し共鳴してくださる読者が一人でも増えたら、それでよい。

【きょうの一文・ことば】「国のために死んでいった歴史的事実は出来るだけ長く歴史にとどめておきたい」=21日夜、NHK総合、ニュースウオッチ9。戦没学徒追悼会で元学徒。この日は昭和18年10月の学徒出陣壮行会から丸70年になる

【新聞テレビから】
☆『〈スケートアメリカ〉真央初戦V 五輪へ好発進 初の全GP制覇』、『石川(遼)、米ツアー2位』、『天野祐吉さん死去 コラムニスト 広告批評の先駆け 80歳』、『オーストラリア山火事350棟被害 (ニューサウスウェールズ)洲が非常事態宣言』(21日付、中日夕刊)
☆『〈社説〉戦争放棄という明察 坂口安吾と憲法9条』『学徒出陣70年「最後の早慶戦」 出場した元中日・加藤さん 焼けたバット 悔しさ胸に』『戦争とは、みじめなもの 壮行会参加長久手の松浦さん』、『「地中海を墓場にしない」 難民船沈没続出 欧州に難題 首脳会議24日から 移民への反感壁に』、『大気汚染余波 北京国際マラソン マスク姿も』『グラミー賞歌手=パティ・オースティンさん(63歳)=ぜんそく発作 公演取りやめ』(21日付、中日朝刊)
☆『レッドソックス劇的V 頂上決戦へ 上原全開MVP 田沢攻めて美酒』、『〈フィギュアGP スケートアメリカ〉町田(樹、たつき。関大)成長の頂 自己ベストでGP2勝目 「さなぎからチョウへ」』(21日付、毎日朝刊)

十月二十日
 日曜日。雨、雨、雨の一日だった。
 午後。舞と私の母を実家に訪ねたが、おいしいお稲荷を、わざわざこしらえて待っていてくれた。最近、私は93歳の高齢で何かにつけあまり量を食べれなくなっている母にコンビニのお稲荷をよく手にして届けたものだが、きょうは母に一本取られた。母手づくりの少し大きめのお稲荷さんの方が正直、100倍おいしかったのである。

 これから、コンビニのお稲荷さんは持っていっていいものかどうか。考えてしまう。そう言えば、舞に指摘され初めて思い出したが「きょうは〝和田〟の秋祭り」だった。少年のころ、母のつくるお稲荷さんがとても待ち遠しかったことを思い出した。今は父も亡くなり、みな別々に暮らしているので秋祭りにそろって集まることもなくなったので、うっかりしていた。幸い妹の息子さんがお子さんを連れて来てくれており、そのせいで祭りの雰囲気も少しだけあって母も嬉しそうだった。

 日ごろの何でもない生活だが、こうしたことこそ大切だ、とあらためて思う。

 きょうは私の大好きな浅田真央ちゃんがフィギュアスケートグランプリシリーズ世界一決定戦2013第1戦・アメリカ大会(米国ミシガン州デトロイト)で、ショートプログラムで七年ぶりにショパンの「ノクターン」に挑戦、73・18という圧倒的な高得点で1位発進してくれたことが何より嬉しい。
 この調子で、ソチ五輪で金メダルを取ってほしい。

【きょうの一文・ことば】「…一九三七年四月二十六日、スペイン・バスク地方の古都ゲルニカは(人類史上初の)無差別空爆を受けました。スペイン共和国政府と内戦中のフランコ軍を支援するナチス・ドイツによるものです。スペイン出身のピカソは、そのニュースを家とアトリエのあるパリで知ります。新聞は二紙読んでいたそうです。……記録によれば、ピカソがゲルニカの最初のデッサンを表したのは五月一日。彼はもともと非政治的な人間だったといわれますが、一本のニュースが彼の心に火を付けたといえます。大作ゲルニカは、その月にパリで始まった万国博のスペイン共和国館を飾りました。今は世界の宝です。……」=20日付中日新聞朝刊〈社説〉一つの記事の発信から―週のはじめに考える

【新聞テレビから】
☆『ソロモン流 必見! 600宿制覇! 女子旅の達人…』(20日夜、テレビ愛知)
☆『皇后さま79歳に 「被災者寄り添い続ける」 「五日市憲法」に感銘』、『みずほ銀から2億円詐取 融資名目、資金繰り偽装 大阪府警、容疑者逮捕』、『酔わせてカードイタダキ! タイの繁華街旅行者にわな 日本人6万3千円被害』(20日付、中日朝刊)
☆『米政府機関閉鎖解除2日目 日常生活徐々に にぎわう動物園、タラバガニ漁再開……』、『シェアハウス協「新法を」 「脱法」と一律規制で危機感』(20日付、毎日朝刊) 

十月十九日
 土曜日。
 本日付中日新聞の夕刊。富士山が世界遺産登録をされてから初めての雪化粧を本社機「おおたか二世」からの見事な写真を添え、報道していた。新雪をかぶった、その雄々しい姿になんだか心が晴れ晴れとしたのは私だけでもなかろう。甲府地方気象台によると、初の雪化粧は平年より19日遅く、昨年より37日遅い。1894年の観測開始以来では8番目に遅い記録だという。

 報道によれば、北海道で水曜日に初雪が降る、など今週の冷え込みはことし一番だったとか。きょうも寒暖差は多いところで11・5度にまで達したそうだ。こうして秋が深まり、やがて冬がやってくる。
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 写真は正しい呼吸に挑む女性たち。左端が山本さん

 舞のリサイクルショップ「ミヌエット」で彼女の友だちでもあるフォークダンス講師山本洋子さん(名古屋市西区)を招いて、ちょっと変わったリクリエーションダンスを学ぶ会が開かれた。リクリエーションの基本ともいえるステップの踏み方に始まり、呼吸の正しい仕方、正しい歩き方などを学んだ参加者は皆、満足そう。
 女性ならでは、の催しには皆さんチョッピリ美しくなったようで満足そうだった。「ミヌエット」でのこうしたボランティア協力による〝ちいさな、ちいさなチャレンジ〟は、すっかり定着。私の目から見てもなかなかよいことである。
 
【きょうの一文・ことば】「学者が研究室に閉じこもる時代は終わった。顔を見たら秀吉と呼んで!」=第59回名古屋まつりの郷土英傑行列で豊臣秀吉役に選ばれた名古屋市立大学医学部教授、鈴木貞夫さん(52歳)
 
【新聞テレビから】
☆『世界遺産初の雪化粧 富士山 平年より19日遅く』、『無人機で市民450人犠牲 国連調査 米に情報公開要請』、『伊豆大島、避難勧告へ 降雨予想 2次災害防止に全力 不明22人に』『伊豆大島 自衛官志願の捜索 いとこの家が全壊「島の力に」』、『英傑総出陣じゃ 名古屋まつり』、『米西海岸沖 5・5㍍巨大深海魚を発見 リュウグウノツカイ?』(19日付、中日夕刊)
☆『いわきの鮮魚、店頭に 試験操業』、『サザエさん像 課税一転免除 東京都通知、商店街「ほっ』(19日付、毎日夕刊)
☆『「平和憲法踏みにじる」 秘密保護法案 学者24人反対声明』、『海津波 今度は山津波 母は宮城で被災 子は大島で不明』、『台風27号似た進路 26号並み勢力』、『名張事件「無実、真実を知って」 奥西死刑囚 支援者ら緊急集会』『「最高裁決定認めがたい」日弁連声明』、『旧満州引き揚げ 苦労した父 思い出詰まる通帳 返還 67年ぶり、一宮の娘へ』『各地の税関 なお26万人分眠る』(19日付、中日朝刊)
☆『東京五輪「新国立」最大3000億円 想定の2倍超 規模見直しへ』(19日付、毎日朝刊)

十月十八日
 私の新作小説 「カトマンズの恋」の最終章(10)。きょうのうちに何とか完結させたかったが、いろいろ調べものをしたりするうち、なかなか筆が進まず、今夜のうちの出稿には少し無理がある。また、どうしても時系列や登場人物の名前の誤記もあるので、一度公開した文を何度も読み返して途中で修正したりもしている。
 そんな理由もあって、最終章はあすの未明から午前中に公開できたら、と思う。調べれば調べるほどに、いろいろ興味ある資料や新たな話(事実)が出てくることもあり、ここは無理しないでひと呼吸といきたい。

 東京電力福島第一原発事故のため漁を自粛していた福島県南部、いわき地区の漁協が沖合での試験操業を始めたとのニュースに接し、とても嬉しく思う。フラダンスでも知られるいわき市には2011年3月11日に東日本大震災が発生してまもなく一人で現地入りし、瓦礫の山と化した無残な漁協周辺を見て歩いた。それだけに、心から「よかったな」と思う。

 ある漁師がテレビニュースで「荒波にもまれても漁業の根性を見せるのがワシらいわきの漁民だ」と話しているのを見て思わず、ウンそうだ―とうなづいていた。私がいわき市を訪れたその日、美空ひばりさんの歌謡曲「みだれ髪」の舞台・塩屋埼灯台だけが悲劇の舞台を眼下にポツンと立っていた。被災者たちのこれまでの苦労を思うとき、私はどうしても立ち止まってしまわざるを得ないのである。
 いわきの漁民の皆さんとその家族に拍手を送りたい。「よくぞここまでたどり着きましたネ」と。

【きょうの一文・ことば】(名張の毒ぶどう酒再審請求棄却に関連して)「疑わしきは被告人の利益に」の原則は、再審請求でも適用される。再審を認めなかった今回の最高裁決定は、「疑わしきは被告の不利益に」という正反対の結論を出したといえる。=18日付朝日朝刊、冤罪事件に詳しい元裁判官の秋山賢三弁護士の話

【新聞テレビから】
☆『〈吉田拓郎ヨーコソ〉小田和正とTV初対談』(18日夜、NHKBSプレミアム)
☆『いわき沖で試験操業 原発事故後初 漁再開へ前進』、『福島第1 観測用井戸40万ベクレル タンク付近最高値検出』(18日付、中日夕刊)
☆『名張毒ぶどう酒再審認めず 奥西死刑囚側8次請求へ 「最高裁、結論ありき」』『自白の足かせ覆せず』『87歳遠のく「無罪」 名張事件奥西死刑囚 病床顔こわばらせ 弁護団「信じられない」』『地元住民「当然の結果」』『「兄の命持たぬ」死刑囚の妹』、『伊豆大島 死者22人に 依然27人不明 捜索続く』『特別警報の対応を検証』(18日付、中日朝刊)

十月十七日
 今回の台風26号の襲来により、土石流による大被害を蒙った伊豆大島では泥土のなか、行方不明になった人々の捜索が夜を徹して続いている。

 三重県名張市で1961年に起きた名張毒ぶどう酒事件で最高裁第1小法廷(桜井龍子裁判長)は、再審請求を退けた名高裁の差し戻し異議審決定(2012年5月)を支持し、奥西勝死刑囚側の特別抗告を棄却する決定を16日付で出した。これにより、2002年4月の申し立てから約11年半を経て、再審が開かれないことが確定した。
 プロ野球CS(クライマックス)シリーズのファイナルステージは巨人が前田健太投手を打ち崩して広島に勝ち3勝、無敵のマーくん(田中将大投手)が先発した楽天もロッテを破り、マーくん完封で初戦を勝ち2勝と、日本シリーズはセパ両リーグの覇者同士の争いになりそうだ。それでも、広島を応援する舞は、ちょっと不服そう。でも、あすから連勝すればまだ日本シリーズには出ることが出来る。広島の奮起に期待したい。
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 「カトマンズの恋」を9までナントカ書き上げ、完結への見通しがたち、ホッとしている。ひと口に執筆といっても、現場を訪れただけでは得られない、それ以上の知識も必要だけに、ここまで書き進めるには、あれやこれやと調べるなど、結構苦労した。でも、ここまできたら、あとはリズムと感覚、筆力で一気に書き進めたく思う。というわけで、このところは電話も極力、自分からはかけることのないよう自らに言い聞かせ執筆に専念してきた。電話をすると、想念が途中でポツリと消えてしまうばかりか余分の枝葉に惑わされるからだ。余計な雑念も頭から全て外したかった。冷たい人だと思われる方がいたかもしれない。でも、そうではない。
 
 それでも心ある人たちから届いた必要最低限のメール連絡は嬉しい限りだった。まずは、あの作家小中陽太郎さん。
 私からの送信メール『私が主宰するウエブ文学同人誌「熱砂」で「カトマンズの恋」の連載を始めました。読んで頂けましたら、とても嬉しいです』に対して、さっそく昨夕『ご健筆感服、こちら昨日、胡堂賞受賞、なごやの祝賀会は、2/22』の連絡。小中さん、心からおめでとう! と叫びたい気持ちをおさえ『胡堂賞、おめでとうございます。ますますご活躍ください』と返信。
 もう一人は、はるばるネパールのカトマンズから。
 カトマンズ在住時にお世話になったシャヒ和子さんからで『今ネパールは一年で一番大きな祭りの時期です。日本のお正月のようと考えていただければ分かるかと思いますが、家族親戚が集まって楽しむときです。……これからより一層の小説家としてのご活躍、心からお祈り申し上げます シャヒ』というもので、こちらも『ご家族おそろいで。さぞかし賑やかなことでしょうね。「カトマンズの恋」読んで頂けましたら、とても嬉しいです』などと返信させて頂いた。

 さて、そんな私にきょうNPO日本自費出版ネットワーク(代表理事・中山千夏さん)から1枚の表彰状が届いた。私がかつて出版した記者ルポルタージュ「町の扉 一匹記者現場を生きる」(わくうら印刷)に対するもので、第16回日本自費出版文化賞の入選表彰状だった。大賞こそ逸したが、少なくとも入賞という栄誉を与えられたのだから、ここはすなおに感謝しておきたい。
 これまで表彰状の類といえば、学生時代のオールミッション大学柔道の優秀選手賞とか珠算の個人総合優勝、社会に出てからは数知れない特ダネ賞、ほかに可児の花フェスタ実行委員会からの思いがけない特別感謝状、小牧市善意銀行や社会福祉協議会からの感謝状など…といった類が多かっただけに、なんだか場違いのような不思議な気がしている。

【きょうの一文・ことば】人の命を何と思っているのか=名張毒ぶどう酒事件の奥西勝死刑囚による第7次再審請求に対する特別抗告棄却決定を受け、弁護団長の発言

【新聞テレビから】
☆『名張毒ぶどう酒 再審棄却』『最高裁「自白に信用性」7次請求、11年で確定』『病床 届かぬ願い 名張事件 奥西死刑囚』『声失い管から栄養 87歳 再審の扉重く』『早々の「門前払い」弁護団混乱』、『伊豆大島 死者18人に 76歳女性死亡確認 勧告なし 町長謝罪』『捜索阻む泥、倒木 「生きていて」祈る住民』(17日付、中日夕刊)
☆『名張毒ぶどう酒再審認めず 第7次請求 最高裁決定』(17日付、毎日夕刊)
☆『伊豆大島死者17人に 台風で土砂崩れ不明40人超 70代女性救助活動』『〈核心〉火山島もろい地盤襲う 伊豆大島大規模土砂崩れ 過疎、高齢化…防災対策後回し』、『遷御の内宮実りささげる 伊勢神宮で神嘗祭』、『秘密保護法案 取材は罰則から除外 政府 公明と修正基本合意』、『米財政問題上院で合意 上院上げ2月まで デフォルト回避へ前進』(17日付、中日朝刊)
☆『死者17人不明43人に 町、避難勧告出さず 伊豆大島土石流 幅950㍍長さ1200㍍ 町長と副町長 出張で不在』(17日付、毎日朝刊)

十月十六日
 大型で強い台風26号は十六日、広い範囲を風速二五㍍以上の暴風域に巻き込み、伊豆諸島付近から関東、東北の太平洋沿岸の海上を北上した。東京都・伊豆大島(大島町)では記録的大雨となり、土砂崩れによる住宅倒壊が多数発生、十三人が死亡した。町は約五十人と連絡が取れないとしている。……
―以上が本日付の中日新聞夕刊E版の一面トップ記事のリード(前文)である。

 台風26号は右記のように、またまた日本に多大な被害と爪痕を残して北上していった。自然の前に私たち人間はただ、ひれ伏し立ち尽くすしかないのか。科学の力でなんとか台風の力を弱めたり、進行方向を変えたりは出来ないものなのか。

【きょうの一文・ことば】
「…誰が(首脳陣を)やっても、自分で考え、一生懸命に準備して野球しなければいけない」=16日付中日朝刊〈強竜再生〉谷繁竜汗臭く、の記事の中で谷繁新監督

【新聞テレビから】
☆『伊豆大島13人死亡 台風26号 50人連絡取れず 土砂崩れ、30棟全壊』、『オスプレイ滋賀に 日米共同訓練に初参加』『「オスプレイいらない」 滋賀で訓練 荒天の下、市民ら抗議』(16日付、中日夕刊)
☆『北京日報社長と本紙訪中団会談 交流発展を確認』、『元気な石巻 発信 フリーマガジン来年2月創刊 石巻日日新聞と中広が業務提携』、『浜島辰雄さん死去 愛知用水を提唱、97歳』、『やなせたかしさん死去 「アンパンマン」生みの親 94歳』、『旧富山村 「ミニ村」発2人の門出 16年ぶり結婚式、住民「久々に明かり見えた」』、『「来年2月に党改革」 社民・吉田新党首に聞く』、『「菓子に毒」脅迫文 「黒子のバスケ」関連商品』(16日付、中日朝刊)
☆『フィリピンM7・1の地震 93人死亡』(16日付、毎日朝刊)

十月十五日
 休刊日で朝刊はない。
 なかなかペンが思うように進まない。
 そこへきて妻ともどもそろって目が痛い、頭が痛い。もう齢か、と思ってしまう。書くというのは、本当に体力がいる。きょうのところは、早く寝た方がいい気がする。

 台風26号が近づいている。あすの朝には、ここ東海地方を通り越し北上しているはずだが…。人間、自然現象にはなされるがままだ。

【きょうの一文・ことば】…私が気づいたのは、銃の信奉者は、いわゆる「男らしい」人たちではなく、自分の非力さを認めたくない、臆病で弱い人たちではないかということでした。=15日付中日夕刊文化欄・往復書簡小手鞠るいさんヘ〈銃信奉 男らしさでなく臆病〉梯久美子ヨリ

【新聞テレビから】
☆『大型台風東海に接近 26号 未明から朝、大雨警戒』、『谷繁竜 巻き返しへ始動 秋季練習訪問 落合GMも』、『米債務問題 上院、合意へ最終調整 2月まで引き上げ案』、『ロシア暴動1600人拘束 外国人労働者排斥訴える』(15日付、中日夕刊)
☆『甘いよ でかいよ 石巻・復興特区カキ初出荷』、『寄稿 小竹由美子(翻訳者) 日常に容赦ない眼差し ノーベル文学賞にアリス・マンロー氏』(15日付、毎日夕刊)

十月十四日
 ここ二、三日の間に急に少し寒くなってきたと感じるのは私だけか。
 私は性懲りもなく、きょうも一日中、小説「カトマンズの恋」の続きを書きつづけた。名もなき一匹文士として。文学とは、こういうものだ。
 いまは逆境を乗り越えカトマンズで逞しく生きる日本人女性、そして周りの人々の崇高な人間愛、人間の魂というか、尊厳といったようなものを一作家として世界の文学界に発信できたら、それでよい。完結まであとわずか。まだまだ眠れぬ日は続く。

 隣では相棒の長女猫、こすも・ここが私に寄り添うように丸くなって寝ている。彼女にとっては、小説が書き上がろうが何しょうが、だ。人間社会のことなぞ、これっぽっちも関係ない。でも、よくよく考えたら所詮、この世のもの全てが、そうに違いない。こうして、この世で生きていること自体が不可思議なことなのだ。

【きょうの一文・ことば】「白井オーナー以外だったら(GMは)やってないと思う。(収入は)半分から3分の1になるね。片手間でやれる仕事じゃないでしょ。みんな、オレは高い金で来たと思ってんだろうけど…。1月まで残っている(講演などの)予定以外は断っている」=14日付中日スポーツ朝刊1面で中日ドラゴンズ初のゼネラルマネジャー(GM)に就任した落合博満元監督の話
【新聞テレビから】
☆『冬の衣替え立山初冠雪』、『自由の女神「再会」 米政府閉鎖 NY洲負担で』、『「再稼働反対」4万人デモ 国会議事堂周辺、市民訴え』『原発事故備え屋内退避訓練 新潟・長岡』、『〈核心〉仏流「風刺」笑えぬ世界 福島やゆ、イスラムとも摩擦 情報化で即拡散国内向け通らず』『「謝罪はしない」 創刊100年仏週刊紙オロ編集長に聞く 無礼と皮肉、武器■原発危険報じてきた』(14日付、中日朝刊)
☆『コスモスの迷路 日進 50万本見ごろ』、『前園真聖容疑者 運転手殴り逮捕 元サッカー代表』、『〈パレット〉夢の中の僕(中村文則)』(14日付、毎日朝刊)

十月十三日
 このところは私たちのウエブ文学同人誌である本紙「熱砂」別稿・伊神権太作品集で随時連載中の「カトマンズの恋」執筆でほぼ連日、自室に閉じこもって神経をすり減らす毎日が続いている。
 主人公の一人であるネパール人男性、「ラル」の表記が書き進めるうち、どうしたわけか、「ラリ」になってしまっていたり、「マリーゴールド」が「マーガレット」、「ラジャ」が「ラシャ」に、それと土地名、地名、その他表記に少しずつ誤記があったり…冷や汗ものだ(誤記の個所については、そのつど差し替え修正している)。
 自分では何度も読み返してはいるのだが。どうしても気付かないで思い込んでしまっていることは多々ある。新聞記者時代がそうだった。時間に追われて書くうち、自分では正しいつもりでいるところを校閲記者や整理記者、デスクに間違いを指摘され直したことが再三あった。

 というわけで、今回は遠くカトマンズで私の連載を読んでチェックし応援してくださっている知人からのパソコンによる心からの指摘で、彼女には本当に助けられている。彼女たち、カトマンズ在住日本人の期待に応えるためにも、あと少し、なんとか無事にこの小説を完結させたく思っている。
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 やはり、相棒の私が執筆三昧であてにならないからか。このところ電車に乗っての独り旅を楽しんでいる妻が、きょうは何を思ってか。突然、朝から「豊川稲荷」へ行く、と言いだして出かけた。
 そう言えば、これまでに行っていてもよさそうなのに。私も豊川稲荷へは、まだ行ってはいない。私の留守中、虫たちの襲撃に遭遇し、腫れて痛々しかった顔の膨らみもかなり治まり、元のかわいい美しい顔が戻ってきたからか、楽しそうに出かけていった。私たち小市民にとっては、こうした風景こそがちいさな幸せというものかも知れない。

 そして。帰宅した妻が手にしていたものは。7日付と少し古くはあったが、世にも楽しく初めて見る、地域社会に根差した【いなりん新聞(発行所は豊橋市の新愛知新聞社)】なるものだった。

【きょうの一文・ことば】〈全国に元気を〉 まちを愛し人を愛し 豊川いなり寿司で 日本をもりあげよう!=7日付いなりん新聞朝刊1面より

【新聞テレビから】
☆『日韓あまちゃん集合 韓国(済州島)で海女祭り』、『奇跡の33人 天と地の人生 チリ落盤事故3年 ■家新築、幸せ■酒浸りの日々』、『やはり「百薬の長」でした 少量の飲酒で老化など抑制 動物で広島大実証』、『首相 靖国参拝見送りか 中韓と関係改善へ布石』(13日付、中日朝刊)
☆『「鹿の角きり」迫力に歓声 奈良』、『(降圧剤)バルサルタン 滋賀医大もデータ不正 15%不一致 学内調査指摘へ』(13日付、毎日朝刊)

十月十二日
 私たちのウエブ文学同人誌「熱砂」の本欄作品集で随時連載が始まった「カトマンズの恋」―。物語を進めるためにも、きのう、きょうとヒンドゥー教を調べ、自分なりにある程度、咀嚼するのにかなりの時間を要した。結構、執筆するまでに手間取った。
 やはり、小説を書くということは体力勝負である。

 そして。ひとくちにヒンドゥー教と言ったところで、全てを理解するのは至難の業であることも改めて思い知った。ただヒンドゥー教の場合、キリスト教やイスラム教のように特定の人物が広めたわけでもなく、普通の庶民生活のなかから自然発生的に生まれ出てきた、いわゆる草の根の多神教である点が面白い。

 こんご調べれば調べるほど、迷路に深入りするのは間違いないが、これを機に少しでもヒンドゥー教なるものを学び取れたら、と思っている。

【きょうの一文・ことば】「このままでは駄目だから現場を何とかしろ、ということ。球団への最後のご奉公と思ってやる」「優勝を狙わなかったら野球選手なんてやっちゃいけない」=12日付中日朝刊、『オレ流バックアップ 中日・落合GM 就任会見』で落合博満新ゼネラルマネジャー(GM)

【新聞テレビから】
☆『〈原発被災者の思い重ね〉足尾鉱毒事件 100年前の葬列あす再現 正造の闘いつなぐ』『故郷追われた姿描く 民衆題材 映画(「鉱毒に追われて」)が完成』、『「風立ちぬ」で注目の菓子「シベリア」 夫婦で30年懐かしい味』『「名古屋で唯一」製造 「売れすぎても困るよ」』(12日付、中日夕刊)
☆『米に「緊急行動」要請 債務上限問題 G20共同声明』『世界経済に波及懸念』(12日付、毎日夕刊)
☆『平和賞に化学兵器禁止機関 ノーベル賞 シリアで廃棄作業』『不屈の努力励まされる OPCW(化学兵器禁止機関)事務局長』(12日付、中日朝刊)
☆『ノーベル賞 化学兵器廃棄に平和賞 OPCW 80カ国査察評価』『全廃に手が届く OPCW議長』『国際機運を後押し』(12日付、毎日朝刊)

十月十一日
 けさの毎日新聞朝刊2社面の■東日本大震災 死亡が判明した方、には正直、東日本大震災はまだまだ、とても終わってはいないのだな―との思いを強くした。それによると、死者は岩手、宮城、福島の三県で1万5883人、行方不明2652人。そして避難者は28万6006人(復興庁・9月12日現在)となっていた。

 新聞テレビの報道によると、EU(欧州連合)の欧州議会が十日、顕著な人権活動を行った個人らをたたえる今年のサハロフ賞に、女子教育の権利を訴え昨年十月、イスラム過激派「パキスタンのタリバン運動」に銃撃されたパキスタンのマララ・ユスフザイさん(十六歳)を選んだという。賞金五万ユーロ―(約六百六十万円)が贈られる。

【きょうの一文・ことば】▼安倍晋三首相は、水俣条約を採択する会議に向けて、わが国は水銀による被害を克服したと言った。しかし、水俣病は今も多くの人を苦しめ続けている。被害の全貌すら分かっていない▼…=11日付中日朝刊、〈中日春秋〉より

【新聞テレビから】
☆『米債務打開案結論出ず 大統領と共和党 協議継続』、『医院全焼10人死亡 高齢の入院患者ら 未明福岡の整形外科 防火扉閉じず煙広がる』(11日付、中日夕刊)
☆『核不使用声明 日本が署名へ 国連総会委』、『帰らぬ魂安らかに 福島で洋上供養』(11日付、毎日夕刊)
☆『中国、米介入をけん制 東アジアサミット 南シナ海問題めぐり』(11日付、中日朝刊)
☆『ユニクロ売上高1兆円超 世界4位に アジア事業好調 8月期』(11日付、毎日朝刊)

十月十日
 スウェーデンアカデミーは今夜、ことしのノーベル文学賞をカナダの女性作家で現代短編小説の名手、アリス・マンロ―さん(82歳)に授与する、と発表した。同アカデミーはマンローさんの作品について「明瞭な心理描写を特徴とする、見事に調和のとれたストーリーの展開を高く評価した」などとしている。代表作は「イラクサ」(2001年)、「木星の月」(1982年)など。
 私に言わせれば、さもありなん…である。おめでとう! マンローさん。さっそく彼女の作品を原語で読んでみなければ。

 今回も日本のマスコミはM氏なる人物が選ばれるのでは、と戦々恐々としていた。が、彼の作品と私、伊神権太の作品を自然体で単純に二度、三度と読み比べてほしい。
 たとえ小説とは言え、きっちりとした取材に裏打ちされたものでなければならない。ことしのM氏の作品、私も参考に買って読ませて頂いた。もちろん、筋立てやリストの曲で主人公が巡礼の旅をするところなぞ、なかなか秀でたテクニックもあるにはある。
 でも、文学に何より大切な天性の抒情性と心理描写、そしてその土地の匂いという点で今一つ物足りなかったばかりか、私に言わせれば主題の一つといってもいい「名古屋」が十分に書き切れていない。取材がおろそかである。本人は大真面目でも、訳知らずの大手出版社の商業ベースに乗せられ、確かに驚異的なベストセラーにはなったものの(本当であれば、の話だが。どこかにカラクリがある。真相が隠されている気がしないでもない)、名古屋弁でいう〝いいころ加減〟の作品であった。
 これを機に、同じ小説を書く名もなき一匹文士として、M氏のさらなる努力と精進、栄光を望んでおく。いまの文章では止まった感じがする。もっと瑞々しさがほしい。このままだと、M氏は書けなくなるかも知れない。敢えて、そう警告しておこう。

 新聞テレビ各社は【秋なのにこの暑さ 季節外れはなぜ】などといって騒いでいる。町では、ホットよりもアイスコーヒーが、温かいそばよりも冷たいそばが人気だという。どこかでは、ソメイヨシノの桜の花が咲いてしまったという。

 きょうは昼間、社交ダンスを再開、ひさしぶりに〝魅惑のワルツ〟を踊った。カトマンズから帰り、初めて横笛も吹き始めた。あとは1日中、書き続けた(今は日にちをまたぎ11日午前2時40分である)。 

【きょうの一文・ことば】「ゼロで抑えれば、負けることはない。そういう野球になると思う。(落合博満GMとは)八年間一緒にやってきたので、僕の考え方も分かっていると思っているし、落合さんの考え方も分かっている」=10日付中日夕刊『守り勝つ竜 再び 谷繁新監督が会見』から。谷繁新監督

【新聞テレビから】
☆『水銀地球規模で規制 「水俣条約」を採択 熊本で国連会議』、『名古屋30.9度 真夏日88日目、最多更新』、『雨上がり屋台輝く 秋の高山祭最終日 「金鳳台」が復活』(10日付、中日夕刊)
☆『佐渡のトキ 中国の空へ』、『三鷹・高3殺害 被害者の部屋で待ち伏せ 容疑者帰宅直後を狙う? 昼からクローゼットに』(10日付、毎日夕刊)
☆『湖底にインカの遺物 動物の石像など2000点』、『白血病闘病 善意が後押し 報道後、一宮の女性へ630万円 米に適合者か「できることやる』(10日付、中日朝刊)
☆『TPP 「自由化率 今後上がる」 西川氏 重要5項目譲歩示唆』、『首相「水銀被害を克服」 「水俣会議」メッセージ 患者ら反発』、『「侍ジャパン」小久保監督就任 「守りの野球を磨く」』「(10日付、毎日朝刊)

十月九日
 何という季節なのだろう。
 十月というのに、日本では新潟県糸魚川市で35・1度と十月史上初の猛暑日に。この日は台風24号の能登半島沖での温帯低気圧化が影響してか、全国140地点での30度超え、さらには58地点で十月の最高気温を記録するなど、とんでもない一日となった。
 やはり、地球は壊れ始めているのか。
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 わが家の猫ちゃん二人、長女こすも・ここと次女シロちゃんが、このところ、私に対してどこかよそよそしい。しばらく海外に姿を消していたばかりか、やっと帰ったと思っても、なかなか相手にしてもらえないから、か。
 でも、おまえたちのことはいつだって愛しているのだから、と言い聞かせてもどこか白けている。そのうち機嫌を直してくれるだろう。おまえたちが我が輩を愛する気持ちより、私が二人を思う気持ちの方が強いのだから。

 正直、このところはカトマンズから帰国後、体調不良のままガン検診を受けに出向いたり(社を退社後、ここ2年ほど、ずっと検診なるもの受けていなかったので周りに勧められるまま江南厚生病院へ)、なかなか咳が止まらずのども痛いままなので、きょうはとうとう近くの内科医を訪ね注射をしてもらい、抗生物質の薬までもらってきた。

 夜。息子が遅くなるので夕飯はいらない、と言うことなので舞と平和堂の回転ずしへ。帰ったら、こすもも、シロも気を取り直してか私たちにからだを摺り寄せてきた。

【きょうの一文・ことば】「指先のしびれ。小さい時から健康な体を知らないまま、ここまできてしまった。……私たちの失敗を失敗に終わらせるのではなく、世界のみなさま、どうか教訓として役立ててほしいです。」=9日夜、『〈NHK総合、ニュースウオッチ9〉水俣の悲劇繰り返さないために・水俣病患者の苦しみ差別 国との闘い』の記事中、語り部の緒方正実さん。

【新聞テレビから】
☆『汚染水浴び6人被ばくか 福島第1 誤って配管外す 淡水化装置から数十トン』、『広い範囲で強風に警戒 台風24号、温帯低気圧に』、『震災伝えたい 原爆ドームのように』『解体待って 南三陸の防災庁舎』『年内撤去予定 語り部 保存訴え』、『東京の高3女子刺殺 容疑者「交際めぐり恨み」 数日前に凶器買う』『4日前 学校が警察に相談』(9日付、中日夕刊)
☆『FRB議長にイエレン氏 あす未明指名 女性で初めて』、『マララ勇気くれた 襲撃事件から1年 ノーベル平和賞期待過熱 地元住民 タリバン報復恐れ沈黙』(9日付、毎日夕刊)
☆『中日新設GMに落合氏 谷繁捕手が兼任監督』、『ノーベル賞 ヒッグス粒子予言の2氏 物理学賞 質量の起源解明』『日本の技術が貢献 名大など16機関参加』『神の粒子 実験誇り ノーベル物理学賞 参加の名大歓喜「必ずある 信じていた」』、『みずほ当時の頭取把握 暴力団融資 現・前頭取も知る立場』(9日付、中日朝刊)
☆『「大人の学力」日本トップ OECD調査 読解と数的思考』(9日付、毎日朝刊)

十月八日
 寒露。すっかり秋めいてきたが、台風24号が接近。今夜からあすにかけては、九州から山陰を経て日本海へと抜ける、そんな気配である。いずれにせよ、被害が最小限に留まるよう祈るばかりだ。

 先にパ・リーグ優勝を決めた楽天が本拠Kスタでオリックスと今シーズンの最終戦を戦い7―3で勝った。この日は予想通りマー君(田中将大投手)が登板、連続勝ち星を24まで上げた。昨シーズンからだと通算28連勝と驚異的な記録である。
 
 止まらない咳を押さえながら執筆の合間に文學界十一月号をペラペラッとめくり短編名作選のところで目がとまった。作品は太宰治の「皮膚と心」でなかなかに読ませた。私の場合、器量(いや、かわいさかも)では悪くはない妻がこのところは大切な顔面を虫たちに急襲され、いつもに比べたら少し変形しているだけに(だいぶ良くなってはきているが、それでもかわいそうだ)、妻の顔を思い身につまされて読んだ。
 やはり、太宰は人の心理状況に敏感な作家だ。ヒトがナント言おうと私の文学もそうありたい、と思っている。出来たら、上回る小説を、と真剣に思っている。で、「皮膚と心」のなかで感銘したほんの1小節を以下に記録にとどめて置く。
―…女つて、こんなものです。言へない秘密を持って居ります。だつて、それは女の「生れつき」ですもの。泥沼を、きっと一つづつ持って居ります。それは、はっきり言へるのです。だって、女には、一日一日が全部ですもの。男とちがふ。死後も考へない。思索も、無い。一刻一刻の、美しさの完成だけを願って居ります。生活を、生活の感触を、溺愛いたします。女が、お茶碗や、きれいな柄の着物を愛するのは、それだけが、ほんたうの生き甲斐だからでございます。刻々の動きが、それがそのまま生きてゐることの目的なのです。……

 ただこの下りは、妻に言わせれば、女心の分からない作家が男の勝手な推理で書きなぐっただけのこと、と一蹴されるかもしれない。

【きょうの一文、ことば】「アジア侵略や慰安婦をめぐる歴史問題で反省がなく、福島第一原発の汚染水漏れ対応でも信用できないという見方の表れ」=8日付中日朝刊、『安倍首相好感度3% 韓国調査 正恩氏6%を下回る 6カ国外国首脳』の記事中、韓国ギャラップ社の分析から

【新聞テレビから】
☆『千葉大生殺害 裁判員裁判の死刑破棄 東京高裁 無期懲役判決 「被害者1人、計画性ない」』、『伊勢エビ、輪島塗お重78万円 おせちにもアベノミクス 価格抑えめと二極化』、『名古屋の80歳茶人=表千家の宮下紹晶さん=が趣向 生前茶葬 感謝の心 茶巾で作った経帷子まとい(料亭「志ら玉」で)』『関心が高まる「終活」一般的にはこれから』(8日付、中日夕刊)
☆『エジプト 衝突死者54人に モルシ派 抗議デモ継続』、『中韓蜜月を再確認 首脳会談 北の核解決へ協調』(8日付、中日朝刊)

十月七日
 カトマンズからは帰ったものの、小説の筋立てや執筆、資料再点検などに時間を割き、なかなか本来のペースには戻らない。おまけに体調も良くならず、苦しい日々が続いている。苦しいといえば、私の留守中に虫軍団に顔面を急襲された妻のその後も心配だが、舞は堂々としたもので臆する様子はなく、少しずつよくなってきているようだ。
 いつも思うが、舞はたいしたものだ。いつだって私一人がうろたえ大騒ぎをしているだけで、何が起きてもデンとしているところは天性のものなのだろう。むしろ、虫たちに栄養分を与えてやった、とでも思っているのか。でも、もうそんなに若くはないのだし。無理やメチャはしてほしくない。

 というわけで、このまま二人枕を並べて討ち死にするには、チト早すぎる。何事も焦らず慌てず、マイペースでいこう。もう一線は卒業したのだから、いつまでも現役のつもりで時間と睨めっこしていたのでは始まらない。自分を消すことも必要だが、時には自分を捨てなければ―とも自身に言い聞かせてはいるのだが…。

 消すということは、いったん消すだけで再び現れ出るということ。捨てる。となると……。なかなか思い通りにはいかないものだ。でも、何につけ一つずつ未練を断ち切って捨てていかねば、と思う。

 いずれにせよ、ここ当面は本紙「熱砂」での連載を始めた小説【カトマンズの恋(仮題)】を完成させる。これに尽きる。

【きょうの一文・ことば】「奈津恵はいつまでも私どもの心のなかで生きている」=横浜線事故の告別式で男性(74歳)を助けようとして電車にはねられ死亡した会社員村田奈津恵さんの告別式会場で。父恵弘さんの言葉

【新聞テレビから】
☆『〈クローズアップ現代〉競馬〝世界一〟決定戦 勝負分けた舞台裏』(7日夜、NHK総合)
☆『在特会街宣は人種差別 ヘイトスピーチ(憎悪表現)禁止と賠償命令 京都地裁』、『横浜戦事故 村田さん告別式 すてきな女性、安らかに』(7日付、中日夕刊)
☆『槍の下 紅葉一気 北ア』、『名古屋30.3度 真夏日87日 記録更新』『岐阜29・9度 各地暑い1日』(7日付、中日朝刊)

十月六日
 伊勢神宮の内宮と外宮で、社殿と神宝を二十年ごとに一新する式年遷宮が昨夜営まれた外宮での遷御の儀ですべてを無事、滞りなく終えた。八年がかりで準備が進んだ六十二回目の遷宮はこれで終わり引き続き伊勢神宮の内外にある伊雑宮など十四の別宮の遷宮へと移ってゆく。私の取材経験では、この別宮の遷宮取材も結構、中身が濃かった記憶がある。

 カトマンズから帰国後、体調が優れず、たまたま床に臥しているところへ、満九十三歳の母が心配してタクシーで、わが家へ。「心配など、しないでよ」と言ったところでいうことを聞くはずもない。それより私の留守中、庭の雑草取りをしていて虫の大軍に急襲された妻が顔面から首にかけ〝満面創痍〟になっているのに。こちらの方こそ、心配してほしい。「大変だったね。でも、だんだんとよくなっていくから」とは、妻に向かって母の言。
 母は強し、か。母の「たったひと言」で妻の顔が、元通りに戻っていく気がした。

【きょうの一文・ことば】「被災者の方々に温かい応援をいただいた。生きる力、あきらめない心を教えていただいた」=6日付中日朝刊〈俺たちのヒーローに歓声 (ドラゴンズの)山崎選手引退〉記事中、引退セレモニーでの山崎選手の言葉

【新聞テレビから】
☆『〈サンデースポーツ〉▽星野仙一監督生出演! 優勝秘話』(6日夜、NHK総合)
☆『世界体操 17歳白井が「金」』『男子床運動 日本勢最年少』、『元小結高見盛きょう断髪式』(6日付、中日朝刊)
☆『リンゴ病で流・死産49人 11年全国調査 胎児感染の7割』、『CBCで放送中断トラブル』(6日付、毎日朝刊)

十月五日
 しばらく俗世から姿を消していたわが身。
 何よりも伊勢神宮の式年遷宮のクライマックス、ご遷御の儀が二日の内宮、そして本日外宮の順で滞りなく進行したことが喜ばしい。

 一匹文士、伊神権太の文をきょうから、またこの世にゆるりゆるりと送り続けたい。
 新たな小説をどこまで書きつないでゆけるか、は自らへの新たな挑戦でもある。若き日々に愛した柔よく剛を制す、の〈柔(やわら)の道〉の精神とも言える【人に勝つより自分に勝て】を自らに言い聞かせつつ、ペンを進めたい。併せてこれから書き進める小説が、これまた講道館柔道でよく言われる【精力善用自他共栄】になるのなら、願ってもない。

 留守中、一番悲しかったのは、かわいい妻が庭の雑草取りをしていて得体の知れない何匹もの虫たちに顔面を急襲され、顔の右半分が首筋までまるで〝お岩さん〟のように、黒ずんでしまっていたことだ。痛みはなんとか取れ、医師によれば、日にち薬で黒にえた部分も自然治癒してゆくとのことだが、なんともかわいそうでならない。人が好いからか。彼女は、よく虫に刺される。
 例の調子で「大丈夫、大丈夫だから。ほっとけば治る」「治るから」と平然としている妻の笑顔を見るにつけ私は大切な顔面だけに、かわいそうでたまらない。同時に、そのたくましさには内心、感謝してもいる。早くよくなるように、と神さまに祈っている。

 それでは、お約束どおり新しい小説をきょうから少しずつ随時、連載してゆこう(別稿【カトマンズの恋】を参照してください)。

【留守中の、このほか主な出来事】作家山崎豊子さんの死、楽天のパ・リーグ初優勝