【能登はやさしや… 一匹文士伊神権太がゆく(2018年9月)】

昭和30年9月30日
 けもの道あるかもしれぬ紅葉谷
 =伊神舞子の〈きょうの俳句 minuetto-mi〉から

 日曜日。大型の台風24号が沖縄、奄美、鹿児島、宮崎を経て接近し、きょうの午後8時ごろ紀伊半島の田辺市に上陸。尾張名古屋、松本、甲信越と日本列島を串刺しにでもするように北東方向に縦断、岩手・三陸海岸から太平洋に抜けて北海道沖へ……と向かった。
 名古屋港では高潮の時間帯と接近したこともあり、59年前の伊勢湾台風の恐怖が甦り防潮扉を閉鎖するなど厳戒態勢をとったが、幸い台風24号が接近したのが満潮時刻の後だったことや伊勢湾台風と比べると風が強くなかったこともあって、大事には至らなかった。

 ともあれ、このところの日本列島は台風という自然の前に、ただひれ伏し見守るだけの日々だった。昔も今も台風に勝てる人間なぞというものはいないのである。ただ黙って通過するのに耐えるだけ、それが人間というものなのだ。幸い、新聞、ラジオ、テレビの警戒予報に守られたこともあってか、大型台風がここ尾張名古屋を直撃した割には被害は最小限に抑えられた。そんな気がする。よかった。
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 台風24号が日本列島に接近し縦断したこの日、私は、ある1編の小説原稿の推敲を重ね、ひと段落したところで藤沢清造の私小説「根津権現裏(抄)」を読んでいた。
 読んでいるうち、小説のなかの次のような一節が頭に浮かんだ。

――【「そいつあ騒ぎだなあ。だが君も利口じやないなあ。」】
 根津権現裏(抄)のなかで小説の中の私(藤沢)が石崎にこう、切り出したように私(伊神権太)はそのようにきょうの台風24号に言ってやりたい、と。
 でも台風はその作品の中で石崎がこたえたようにきっと、こう答えるに違いない。
【「さうよ。利口じゃないさ。」
石崎(台風)は忌々しさうではあつたが、一応は私の言つた言葉を肯定したかと思ふと、直ぐ其の後へ「だが莫迦にはまた、莫迦なだけでは分らない意気があらあなあ。」と言ふのだ。】
 と同じように、そう言うに決まっていることも、よく分かるのだ。
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 沖縄県の翁長雄志知事の死去に伴う知事選が30日投開票され、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設に反対する前衆院議員玉城デニー氏(58)が、移設を推進する安倍政権が支援した前宜野湾市長佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦=ら3氏を破り、初当選した。

 先日のセ・リーグ広島3連覇に続き、西武が10年ぶりにパ・リーグを制覇。辻監督が2年目でチームを頂点に導いた。
 29日にスペイン北部サンセバスチャンで開かれた第66回サンセバスチャン国際映画祭の授賞式で日本の奥山大史(ひろし)さん、22歳が「僕はイエス様が嫌い」で映画祭史上最年少で最優秀新人監督賞を受賞した。

9月29日
 日曜日。大型で非常に強い台風24号が近づいている。この日は沖縄を暴風域に巻き込み、南西諸島近海を北寄りに進み、九州南部に迫った。

 日本中央競馬会(JRA)の武豊騎手(49)が29日、前人未到のJRA通算4000勝を達成。たいしたものだ。
 勾留中に大阪府警富田林署から逃走した樋田淳也容疑者(30)が29日午後6時半ごろ、山口県周南市の道の駅「ソレーネ周南」で菓子パンや缶コーヒーなどの食料品計5点(計1053円)を万引きしたところを警備員に見つかり、山口県警署員に窃盗容疑で現行犯逮捕された。
 逃走から48日ぶりで指紋も本人と一致、逮捕された時はウインドブレーカーにスニーカー姿。所持金は数百円だったという。現場の防犯カメラによると、1人で自転車で来店した、とみられている。
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 加能作次郎、藤沢清造、戸部新十郎。いずれも能登に限りないほどにゆかりがある作家の作品が掲載された〈石川近代文学全集5〉を開き、まずは藤沢清造の〈根津権現裏(抄)〉を読み始める。

 ここに、そのごくごく一端を紹介しておきたい。
……それは、明日をも問わず、今日も今から――かう言つてゐる今から始まるのだ。始めなければならぬのだと思うと、私は期せずして、現在自分が勤めてゐる、ある青年雑誌の訪問を思ひだしてきた。さうだ。未来と言ふものは、過去を絶して現在を考へられないように、現在を外にしては一歩も始めらるべきものではないと言ふ。此の分り切った論理の上に立たせられた私は、其の時また当然に、自分の現在やつてゐる訪問記者と言ふ職業を思ひだしてきた。……
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 インドネシア・スラウェシ島で28日に発生したマグニチュード7・5の地震と津波で国家防災庁は29日、死者が384人に上った、と発表。
 福島第1原発の汚染水を浄化したはずの処理水の8割で排水基準値を超えていたことが判明し、東電は再浄化を検討するという。

9月28日
 台風24号は沖縄の南の太平洋上を西北西に。こんご進路を北東に変え勢力を保ったまま、あす沖縄・奄美に。30日には西日本にかなり近づくとみられている。

 死者58人、行方不明5人を出した木曽・御嶽山の噴火からきのうで4年。麓の長野県王滝村では追悼式が催され、遺族らが山に向かい祈りを捧げた。夜は木曽町で慰霊式があり、ろうそくに明かりをともして犠牲者を悼んだ。
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 26、27日と金沢へ。
 犀川河畔の茶屋はやはり、情緒たっぷりだった。〈みかんの花咲く丘〉の作詞者で今は亡き加藤省吾さんの言ではないけれど、街全体から音が聴こえてくる。そんな感じがした。(省吾さんの場合、からだからいつも音楽が流れていた)
 
 音が聴こえてくる茶屋街
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 いまは現役退役組ばかりだが(1人だけ監査役)、かつては世界や国内各地を舞台に、なかには司法、皇室担当記者、特派員として。事件事故はじめ、地方の話題・スポーツ芸術文化(文学含む)・国際情勢・経済問題などを追っかけ勇名を馳せた昭和43年新聞社入社の同期の桜ばかりで懐かしく、楽しく充実したひとときとなった。
 70歳を過ぎた今は皆、一見、私も含め枯れ葉部隊の如き存在にこそ見えたが。そこがまた、どっこい。予想とはかけ離れるほどの大人の人間に脱皮。ひと皮もふた皮も剥がれて、ある面で静かに鎮座し全てを受け入れるかのような、自然体の、年相応の妖しさをたたえる人物にまで育ち、だれもが荒ら波を乗り越え、生きて、きょうこの街に胸弾ませてやって来た。

 ふつう「半世紀」ぶりの同期会と聞けば、「うっそー」「ほんとかいな」と信じられず、首をひねって当然なのだろうが(事実、先輩たちの中には〈メダカの学校〉という名前で毎年開いている仲睦まじい同期会も現存している。これはお手本的存在である)。わが同期は違う。いい意味で半分、きちがい集団なのである(きちがい集団=それほど無鉄砲で魅力ある、どこまでも突き進むという意なので誤解なきよう)。
 はな、私たち43年入社組の同期会は、どちらかと言うと手に負えないほどの暴れん坊記者もいて本当に現役時代の同期会は、不思議なことに一度としてなかったのである。それだけ、脇目も振らないで働きに働いた。というわけで、26日夜は、かつての精鋭記者を中心に7人が犀川河畔の料理茶屋に集合、取材の過程で取材戦地に若くして散った亡き同期7人に心からの黙とうを捧げ、料理を前に歓談に入った。
 最後は明かりが消されたなか、この街では知られた【にし料理茶屋】女将の山崎優子(櫂Kai)さんの吹く篠笛で締めくくられたが、私自身「笛の調べは文学に共通するもの」と信じて笛歴十数年になるだけに、久しぶりに情緒ある笛の音を味わい、嬉しく思った。

 優子さんも一緒に。半世紀の風雪を超えて実現した有志による同期会。(残念ながら病など都合で来れなかった人もいた)
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 このあとは当然のように二次会へ。金沢勤務が長かったカメちゃんらがよく行くという片町の「くらぶ雪」へ。五木寛之作詞の〈金沢望郷歌〉はじめ〈みちづれ〉〈君こそわが命〉などを思い思いにうたい皆、古傷をなめ、かつ癒やしながら旧交を温めての楽しいひとときが延々と続き、深夜遅く香林坊のホテルに落ち着いた。

 27日は入社間もなく販売店実習でお世話になったお店の娘さん、ちい~ちゃん運転の車で市内、武蔵町の能登印刷本社へ。能登龍市会長にそれこそ、30年ぶりに再会した。拙著〈泣かんとこ 風記者ごん!〉=これはベストセラーになった=出版時のお礼を申し上げ、私の近著〈ピース・イズ・ラブ―君がいるから(人間社)〉を贈呈させていただいたが、能登会長からは私が一番読みたかった七尾出身の私小説作家藤沢清造(故人)の〈根津権現裏(抄)〉など4編が収録された石川近代文学全集5(石川近代文学館発行、能登印刷・出版部発売)をプレゼントされてしまい、ハタと感激したのである。
 
 能登会長から戴いた石川近代文学全集5と、ありし日の藤沢清造
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 能登会長は現在、77歳。貴重な本を次々と世に出されており、生涯現役のお手本でも。私、伊神権太はこの日、大先輩に強烈な刺激を受けたのである。いついつまでも活躍されることを念じて座を辞した。
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 きのう27日付中日新聞朝刊にプロ野球中日ドラゴンズの浅尾拓也投手(33)が26日、ナゴヤドームで引退の記者会見をした、との記事。そうかと思い「半分」あきらめていたら、今度はあの岩瀬仁紀投手(43)と荒木雅博内野手(41)も今季限りで現役を引退するという。なんだかドラの全盛期を築いた花形選手3人が一瞬にしてドラから消えてしまう、光りが消えるようで寂しい。
 その岩瀬投手がきょう28日夜の阪神戦(ナゴヤドーム)に登板し、前人未到の通算1000試合登板を達成。4―3の9回から登板し1㌄を無失点で投げきり、通算407セーブと大記録に花を添えた。「まさか、ここまで来るとは」。岩瀬の目から涙が落ちた。

 将棋の第59期王位戦七番勝負(新聞三社連合主催)の第7局が26、27の両日、東京・千代田区の都市センターで行われ、挑戦者の豊島将之棋聖(28)が菅井竜也王位(26)に127手で勝ち、4勝3敗で初の王位を獲得。豊島新王位は愛知県一宮市出身で兵庫県尼崎市在住。この日のタイトル奪取でただ1人の棋聖、王位の2冠となった。
 
 本日はここいらで。

9月25日
 大相撲の元横綱貴乃花親方が都内で記者会見。「日本相撲協会に年寄の引退届けを提出した」と述べ、協会に退職の届け出をしたことを明かした。貴乃花親方は弟子の幕内貴ノ岩に対する元横綱日馬富士の傷害事件を巡り、内閣府へ出した告発状の内容について協会役員から事実無根と認めるよう言われたことを挙げ「真実を曲げることはできない」とも語った。
 これに対して協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)は「提出されたのは引退届で親方が辞める場合に必要な協会の退職届ではなかったため受理していない」とした。
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 火曜日。
 あすから新聞社在職時代の同期の集まりで少し家をあけることもあって、相変わらず慌ただしい1日に。
 
 午前中をかけ、長谷川園子さんの力作「原爆と原発どっちも同じ」をもう一度しっかり読み直し、東京の「脱原発社会をめざす文学者の会」事務局の担当者あてにデータで出稿。やれやれと思ったところで、こんどは尾張芸術文化懇話会主催による中村敦夫さんの朗読劇「線量計が鳴る―元・原発技術者のモノローグ」開演(12月22日午後1時半、愛知県江南市の永正寺)を前にめぼしい方々への実行委員就任のお願い、これとは別に熱意あふれる方の発想で誕生した「こうなん文芸村(仮題)」のこんごなどを巡って一部関係者と電話でやり取りをした。
 ほかに、私が現在、一番執着する【能登はやさしや】をテーマとした作家同士のスケールの大きい文壇対談話(リレーエッセイ、往復書簡でもよい)実現への土ならしをどうしたら良いのか、を巡っての関係者との話し合いなどに追われた。あすからは金沢に行くのでせっかくなら過去お世話になった能登印刷出版の会長にもお会いしてお知恵を拝借してこようかーとも思っている。
 こんなわけで、きょうもアッという間に時は流れ、暮れていった。

 そんななか、夜に入り私あてに突然「ガミ(神)ちゃん、すごく残念です」と送られてきたショートメールといえば。一宮支局時代に支局員ともども大変、世話になった居酒屋〈つわの〉の女将さんからのものだった。中には、こうあった。
「ごぶさたしています。ガミちゃんに何も告げず、お店をやめました。実は主人が体調を崩し、それで両立は難しくてやむをえなく決心しました。おせわになりながらすみませんでした。すごく残念です。25年3カ月やりました。自分自身には悔いは無いですが、お客さまから電話くださるのが辛いです」
 私は半分、ア然としながらも次のように返信させて頂いた。
「私もことしはじめに右肺の3分の1を切除する大手術に遭遇しました。あのとき。妻らが献身奉公してくれ、おかげで回復しました。つわのさん。またどこかで、きっと新たな道が開ける気がします。そう信じています」
 なんだか、チョット寂しい話になってしまいましたが。ここはお許しを。
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 新潮社が25日、性的少数者(LGBT)を「生産性がない」と否定する自民党・杉田水脈衆院議員の寄稿を掲載し、最新10月号でも擁護する特集を組んだ月刊誌「新潮45」を休刊にする、と発表。「部数低迷に直面し、試行錯誤の過程で編集上の無理が生じた。このような事態を招き、お詫びします」との謝罪も。情けないとは、このことだ。

9月24日
 名月を一気呑みしてほろ苦し
 =〈伊神舞子きょうの俳句 minuetto-mi〉から

 旧暦の8月15日に当たる24日夜。ここ尾張名古屋の夜空にも雲の切れ間を縫うかの如く「中秋の名月」が浮かんだ。
 
 わが相棒は午後、ひとり江南市民文化会館へ。
〈特撰東西落語名人会 桂文珍・三遊亭円楽〉を鑑賞するためで、帰ってきたときは「おふたりと握手できたよ。あなたには悪かったけれど、最高の席だったわ」と、さも満足そう。当初は私とふたりで出かけるつもりだったらしく、舞は鑑賞券二人分を購入して楽しみにしていたのだが…。
 なにしろ、私の方が現在、執筆推敲を進めている小説【パリ発 ビンラディン、あなたは今どこに(仮題)】はじめ、私も所属する〈脱原発社会をめざす文学者の会〉のOFF誌2号出稿作品「原爆と原発どっちも同じ」(長谷川園子さん作)のチェックと校正に追われ、結局のところは舞の方で気を遣ってくれ、1人で鑑賞とあいなったのである。
「あれほど楽しみにしていたのに。ホントに申し訳ないことをしてしまった」と内心思ってはいたのだが。嬉しそうな顔を前に無罪放免された気がした。

 夜。ひと段落したところで金沢のちぃ~ちゃんに電話。26、27日と新聞社に在任当時の同期会が金沢であるので「久しぶりに会えれば」と思ってかけたが出ない。デ、あきらめたら、しばらくして電話が入り、お会いすることとなった。
 彼女は入社まもなくあった販売店実習でお世話になったお店のお嬢さん。いつまでたっても可愛い高校生のイメージしかないが、声も(受話機を通して伝わってくる)しぐさも何ひとつ変わってはいなかった。「いがみさん。どうせ、グデングデンになるに決まってんだから。よし(会いに)行くからネ」とは男勝りのちぃ~ちゃん姫。
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 タイガー・ウッズ(42)が米ツアー選手権(アトランタのイーストレークGC、パー70)でツアー5季ぶりの優勝を飾り、ツアー80勝目を獲得。それこそ、花も嵐も乗り越えて栄光から挫折、そして復活のドラマが感動を誘った。フェアウエイを歩くタイガーを夥しい数のファンがタイガーコールを連呼して追う姿は異様ですらあった。
 宮城県名取市で頭のてっぺんから顔面にかけ、槍のような棒が刺さったままの海鳥たち。一体全体だれが、こんな悪さを。許せない、とはこのことだ。

9月23日
 日曜日。昼と夜の長さがほぼ同じ、きょうは秋分、彼岸の中日である。暑さがおさまり、これからは日一日と秋色に染まってゆく。
 新美南吉の童話「ごんぎつね」の里、愛知県半田市の矢勝川沿いでは真っ赤な彼岸花が咲き誇るなか、花嫁行列があった。

〈名月や池をめぐりて夜もすがら〉(芭蕉)
〈名月を取ってくれろと泣く子かな〉(一茶)
 夜遅く。わが家のベランダに出て望み見る月ときたら、それは美しかった。この地上に良いことが舞ってきそうな、そんなまんまるのお月さまだ。あすは十五夜。
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 名古屋の愛知芸術文化センター12階アートスペースEF室で中部ペンクラブの公開シンポジウム【「中部ペン」25号を読み文学を語る】があり、出向いた。シンポは中日新聞の〈中部の文芸〉評者で同人誌「北斗」主宰竹中忍さんの司会で朝岡明美、寺田繁、中島公男、山名恭子、松嶋節の5氏をパネラーに第31回中部ペンクラブ賞受賞作=誰かが誰かのS(弥栄菫)=はじめ25号に収録された短編・掌編小説や詩、エッセイ、短歌と俳句などにつきそれぞれのジャンルごとにパネラーが論考を加える方法で進んだ。
「〈誰かが誰かのS〉は織田作之助の〈夫婦善哉〉を連想させた」(竹中氏)「短編の〈秘蔵っ子〉は、江戸時代の暮らしが現代にもつながる、そうしたことを思わせるものだった」(山名氏)「私はまずタイトルから内容を想像する。作者のセンスとか目論見を見破ってやろうと」(松嶋氏)「これは書評ではない。宇佐美宏子へのファンレターである。―とあるが、ラブレターそのものだ」(中島氏)など。討論が進むに従い、会場は熱をおびていった。
 「物書きは自分を語らないのではつまらない」「小説は奇抜と言われるかも知れないが、現に300字小説が中日新聞サンデー版で存在し続いている」などの声も飛び出し有意義なひとときは、またたくまに過ぎていった。

 マイクを手に「私はタイトルを見るのが好きです」と話す松嶋節さん。右端が司会者の竹中忍さん
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 終わったあとは、有志で反省会を兼ね近くのNHK地下のラウンジへ。ここで乾杯し食事をしながら懇談し帰ったが、このところ続く一連のあわただしさにはチョッピリ疲れた気がせぬでもない。現役時代のあの馬車馬のような体力は一体どこへ行ったのだろう。いやいや、まだまだ。地球を揺るがす大事件があれば、真っ先に現場へ突っこんでゆく自信はある。

 帰る途中、名鉄名古屋駅の菓子売り場でたまたま目に入ったのがお月見だんご。半ば本能的に買い求め、自宅に持ち帰ると、相棒の舞はさっそく日本酒を横に並べて大喜び。案の定「これでススキがあればいいのにな」ときた。
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 大相撲秋場所千秋楽は横綱白鵬が横綱鶴竜を送り出しで15戦全勝とし、自身の最多記録を更新する14度目の全勝優勝。進退をかけ土俵に上がった横綱稀勢の里は大関豪栄道に突き落とされ10勝5敗で場所を終えた。殊勲、敢闘、技能の三賞は初めて該当者がいなかった。 
 宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が国際宇宙ステーションに物資を運ぶ「こうのとり」7号機を23日未明、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Bロケットで打ち上げ、「こうのとり」は予定の軌道に投入され、打ち上げは成功した。

9月22日
 大相撲秋場所14日目。横綱白鵬が大関豪栄道に上手投げで勝ち14戦全勝で千秋楽を待たず5場所ぶり41回目の優勝を決め、前人未到の幕の内1000勝の偉業も達成した。プロ野球ではロッテの福浦和也内野手(42)が本拠地マリンスタジオでの西武戦で史上52人目の通算2000本安打。地元・千葉にとけ込んだプロ野球選手がファンを喜ばせた(試合は5―3で西武に負けた)。
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 昼間。〈脱原発社会をめざす文学者の会〉の会員仲間で江南市に住む長谷川園子さん宅へ。
 彼女が書いた【原爆と原発どっちも同じ】の原稿の読みあわせをするためだったが、来月には88歳になるソノコさん(私はいつも、こう呼んでいる)を目の前に、毎度ながらその気迫と若さには圧倒された。
 この小説は①名古屋城炎上②命びろい③川が燃えた④原爆が落とされた⑤日本には危険すぎる、の5章からなるが、実際に当時14歳の軍国少女だったソノコさんが米爆撃機B29に至近距離から狙われ逃げる壮絶極まる場面など実体験に基づいたリアルな内容には、思わず言葉をのみこんだのである。
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 朝刊の中日春秋で珍しく端唄〈梅は咲いたか〉の下り(一節)、♪舟から上がって土手八丁……が出てきたかと思えば、夕刊では女性カメラマン3人トリオが井上陽水の「夢の中へ」など【私の元気が出る曲】の写真と文による紹介記事―と、思いがけずホッとする紙面。ユーモアに満ち、かつシャープな切り口が、わが身にそよかぜをもたらしてくれた。
 ここで私、伊神権太から1曲。
♪だふした拍子か あなたといふひと 憎うて憎うて たまらないほど好きなのよ。 
 さてさて。どれだけの人がこの唄を知っているのかな。

9月21日
 天皇、皇后両陛下が羽田発の特別機で空路、愛媛県入り。日帰りで陸上自衛隊のヘリを乗り継いで西日本豪雨の被災地(愛媛県西予市と広島県呉市)へ。
 現地では被災者1人ひとりに「落ち着かれましたか」「からだをお大事に」「元気でいらしてください」などと声をかけられた。ご訪問は被災地に勇気と希望を与えたに違いない。ある女性が「とても、ありがたくって。がんばろう、という気持ちになっちゃいます」と話していたが、わかる気がする。
 両陛下の行動を見ていると、いつのときも、やさしさと温かさ、慈愛に満ちている。こんな皇室が続くなら、国民皆がどこまでもついてゆくに違いない。
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 きょうは私自身が会員でもある〈脱原発社会をめざす文学者の会〉の「OFF」誌掲載原稿の件で東京在住、三重県松阪市出身作家の村上政彦さんと電話でいろいろ話したほか、別のあることで東京在住編集者にも電話。
 能登や大垣などの知人、友人にもその他の件で電話をしたりメールを送るなど、目まぐるしい1日に。半分、自分が自分で自らを忙しくしている気がしないでもない。
 ほかに新聞テレビ、他メディアのチェックなどにも追われ、気がついたら深夜。なんだか一人芝居を演じている錯覚さえ覚えた。「ほおっておいても良いものを」ともう1人の自分。
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 性的少数者(LGBT)を生産性がない、と表現した自民党、杉田水脈衆院議員の寄稿を掲載した月刊誌「新潮45」が、さらに18日発売の10月号で寄稿を擁護する特別企画を掲載した件で「なぜあれほどまでに低劣な差別に加担するのか」(作家・平野啓一郎さん)といった声が相次ぎ、社会問題化。
 こうした声に対して新潮社の佐藤隆信社長が21日、「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現が見受けられた」と内容に問題があったことを認める談話を発表した。この件は表現の自由に甘えたおごりの暴走といっていい。誰かに乗せられた紙面展開は醜く、かつ甘い。こんなことでは、とても正義のペンは奮えまい。
 
 一方、政府はといえば。この日開かれた閣議で文部科学省幹部が絡む贈収賄事件を受け戸谷一夫事務次官(61)と高橋道和初等中等教育局長(57)の辞職を了承。林芳正文科相は贈賄罪で元コンサルタント会社役員、谷口浩司被告(47)から飲食の接待を受けていたとして戸谷、高橋両氏と義本博司高等教育局長(56)の3氏を減給の懲戒処分とした。
 厚遇が半ば常態化し、ホイホイした気分で銀座のクラブで5万、10万円の接待を受けていた、だなんて。国民の感覚とはかけ離れた行為で、開いた口が塞がらない、とはこのことか。許されることではなく、ここは他人事の如き顔をしている林文科相自身も何らかの処分を自らに課して当然ではないのか。
 トップとしての責任は負うべきだ。

 長野県木曽町が2014年9月の御嶽山噴火を受け、火口から半径1㌔で立ち入りを禁じてきた黒沢口登山道の規制の1部を26日に解除する、と発表。27日で噴火から4年になるのを前に遺族らが噴火後初めて山頂まで登れるようになる。

9月20日
 急に寒くなってきた。
 先日までのあの暑さ、猛暑が、とても信じられない。夕方には、私自身、初めて赤いガウンを身にまとったが、そこに知人からメールが入り返信する。

 午後10時過ぎ。いつもなら午前1時過ぎまで自室で俳句の句作に打ち込んでいるはずの相棒が珍しく「もう寝るから」と言って2階寝室へ、と先に上がっていった。しばらくたったあと、上に行き毛布を1枚だけかぶせ、私は階下自室へ。デスクの前に座ってこうして、ひとりキーを打つ。
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 自民党総裁選の投開票が午後、党本部で行われ、安倍晋三首相(63)が国会議員票で石破茂元幹事長(61)に大差をつけ、トータル553票(国会議員票329、党員票224)対254票(73、181)で連続3選が決まった。任期は2021年9月までの3年間。
 安倍首相が「全体で7割近い得票は私にとって大きな力です」と言えば、石破氏は「自民党は決して一色ではない。それが示せました」と。首相は10月はじめに内閣改造・党役員人事を行う方針だが、政権の骨格は維持するものとみられる。また首相の通算在職日数は来年、2019年11月に歴代トップの桂太郎と並び、最長政権となる。
 このうえは、被災地の1日も早い復興をはじめ、全世代型の保障を柱とする充実した社会福祉、さらには財政再建、人口減少時代への根本的対処、対米ロ北朝鮮などとの外交、その他諸懸案に至るまで。〈にっぽん丸〉の道行きを誤ることなきよう。真実公正、かつ何よりも温かみと優しさに主眼をおいたハッと思わせる嘘偽りのない舵取りをお願いしたい。

 ここで安倍さんには「これまでは、チョット首をかしげざるを得なかった」「森友加計問題は納得いく説明にはなってはいない」とテレビで話していたある女性の苦言を、そのまま与えておこう。「とにかく、謙虚になってほしい」。
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 きょうは午前中、いっそ行くのはよそうと思いながらも自らを叱咤激励して社交ダンスのレッスンに。1級のワルツ、タンゴを繰り返し学び、帰宅してからは以前、ほぼ書き上げてはあるものの、まだ世には出していない書き下ろし小説【ビンラディン あなたは今どこ】(仮題)を読み返し、推敲に推敲を重ねた。
 この小説はパリを旅する元新聞記者の男の前に、あのニューヨークで起きた米同時多発テロの首謀者とされているウサマ・ビンラディンの霊が何度も立ち現れるといった展開である。たまたま、ことしが日仏友好160周年ということもあって推敲を始めた次第だ。
 何らかの形で発表できれば、と思ってはいるのだが。さて、どうなるか。
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「その伝え方、信頼されていますか」をメインテーマとしたマスコミ倫理懇談会の第62回全国大会が20日、札幌市のホテルで始まった。21日まで。
 20日付中日(東京)新聞夕刊によれば、先に女子の合格を抑制する不正が発覚した東京医科大学で前学長の辞任に伴う学長選挙が実施され、次期学長に病態生理学分野の林由紀子主任教授が選出されたという。
 ガス機器製造大手のパロマ(名古屋市)は20日、小林弘明社長(50)が会長に就き、後任の社長に中島真也副社長(52)が昇任するトップ人事を固めた。来年1月1日付。

9月19日
 札幌の歓楽街ススキノにネオンの夜が戻ってきた。北海道電力苫東厚真発電所の1号機が19日午前9時に再稼働したためで、北海道の街に明かりが戻った。

 午前4時過ぎ。仙台市宮城野区の仙台東署東仙台交番で清野裕彰巡査長(33)が「現金を拾った」と交番を訪ねてきた男に刃物で刺され、搬送先の病院で死亡。男は交番にいた別の男性巡査部長(47)に刃物などを手に向かってきたため巡査部長は拳銃3発を発射、うち1発があたり男も病院に搬送され死亡が確認された。現場はJR東北線東仙台駅から北西に200㍍離れた住宅地で道路を挟んだ向かいには市立東仙台中学校がある。
 その後の調べで、男は大学生で相沢悠太容疑者(21)。事件発生当時、相沢容疑者は凶器とみられる刃渡り20㌢の包丁1本とモデルガンのようなものを所持し身につけていたウエストポーチにはさみ、カッターナイフ、ドライバーが入っていた。自宅は交番の南東約650㍍地点にあるという。
 一体全体、清野巡査長と相沢容疑者の間で何があったのか。面識があったのかどうかも含め、そこを知りたい。2人とも死亡してしまった今となっては難しいかもしれない。それにしても。最近の日本は血なまぐさい、それも単純過ぎる殺しがめだつ。短絡的な事件が増えてきている。ということはニンゲンの精神構造そのものが単純化してきているのか。それこそ、由々しき事態だ。
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 この日、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が平壌で2日目の首脳会談を行い、合意文書「九月平壌共同宣言」に署名した。合意文書の署名内容は以下のとおり。
「北朝鮮は東倉里(トンチャンリ)のミサイルエンジン実験場とミサイル発射台を永久廃棄」「北朝鮮は米国が相応の措置を取れば、寧辺(ニョンビョン)の核施設廃棄など追加措置を取る用意がある」「金正恩朝鮮労働党委員長は早い時期にソウルを訪問する」「南北は軍事共同委員会を稼働させ武力衝突防止のため協議する」「南北は2032年の夏季五輪の共催誘致に向け協力し実現させる」
 どれも歓迎していい内容ばかりだ。それだけに、私は実現したらホントにいいなと思う。と同時に、トランプ大統領の米国も含め朝鮮戦争の終戦宣言まで一気に加速すれば、それこそ〈平和な時代実現への礎〉になること間違いなし―との確信を得た。 中間選挙が迫ったトランプ米大統領は、さてどう出るのか。こんごの動き。それこそ、人間の叡智と勇断を見守りたい。
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 夜。NHK総合で「探検バクモン 徳川美術館家宝に探る 尾張徳川家生き残り術」をじっくり見る。歴代の尾張徳川家の存在があればこそ、いまの繁栄した【尾張名古屋】が永々としてあるのだな、とつくづく感じ入った。
 天下に誇る尾張徳川家はたいしたものである。そういえば、私がかつて小牧通信局在任当時に始まった小牧と北海道八雲との小学生交流も確か、尾張徳川家の橋渡しで実現した、と記憶している。

9月18日
 朝。ニュースによれば、忍者の里で知られる三重県伊賀地方は霧に包まれ、幻想的な世界に。夜。東京の広い範囲で大気の不安定から土砂降りの雨に。東京駅前など都内の広い範囲の各所に想像もしなかった水たまりが出来、戸田市では道路が冠水したという。

 三重県鳥羽市立「海の博物館」館長で海女文化の国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界無形文化遺産登録を目指して力を尽くした、あの石原義剛(いしはら・よしかた)さんが17日、多臓器不全のため亡くなられた。81歳だった。

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領がこの日、妻の金正淑(キム・ジョンスク)さんを伴い、ソウル郊外の軍用空港を専用機で出発。午前9時50分(日本時間)ごろ、平壌(ピョンヤン)国際空港に到着。空港には金正恩朝鮮労働党委員長が妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏とともに出迎えた。
 文大統領の訪朝は、3回目の首脳会談に望むためだが、韓国現職大統領のこうした訪朝は2007年10月、当時の盧武鉉(のむひょん)大統領いらい約11年ぶりとなる。
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 北海道のドラゴンズファンから「9月5日から7日まで停電でしたが、芋掘り選別に行っていました。」のメール。「停電に断水、大変でしたね。心よりお見舞い申し上げます。ドラにはファンのためにもこうした時にこそ、勝ち続けてほしい。なんとしてもクライマックスシリーズには出てほしいですね」と返信する。
 進退を懸けて秋場所の土俵に上がり続ける横綱稀勢の里。きょうは相手の遠藤と立ち合いの呼吸が合わず4度目に初めて立ったが、立ち上がるや、すぐさま左を差し右で抱え十分の形で一気に寄り切り、昨年春場所いらいの勝ち越しを決め、両国国技館の館内はむろん、日本中がホッとした空気に包まれた。
 限りなき能登ファンの私としては相手が能登半島穴水出身の遠藤で今場所はまだ1勝だけ、と不調が続くだけに、正直取り組む前から「相手が遠藤でなければよいのに」と思って観戦、嬉しさと悲しさが半々の微妙な気持ちにとらわれた。
 ともあれ、ふたりとも残る土俵を全力で務めてほしい。ただ、それだけである。
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 トランプ米政権が17日(日本時間18日)、年2000億㌦(22兆円)相当の中国からの輸入品に対して制裁関税の第3弾を24日に発動する、と表明。今回は家具やハンドバッグなど消費者向け品目が多く、年内は10%の関税を上乗せし、来年は関税を25%に引き上げるという。これに対して中国も報復の構えで、両国の貿易戦争を巡る対立はさらに深刻化の一途を辿りそうだ。
 かと思えば、米宇宙ベンチャー「スペースX」が同じ17日に開発中の大型ロケット「BFR」で月の周囲を飛行する月旅行を、日本の前沢友作氏(42)と初めて契約した、と発表。飛行は2023年を予定しており、米国人以外が月へ行くのは初めて。前沢氏はインターネット通販ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイ社長。最近では「プロ野球の球団を持ちたい」と語り、話題となった人物でもある。

9月17日
 敬老の日。
 脱原発などを呼びかける「さようなら原発全国集会」がこの日、東京・渋谷の代々木公園であった。約8000人が参加。
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 今夜、たまたま目にしたNHK総合のファミリーヒストリー「デヴィ夫人・壮絶 スカルノ大統領と恋に」。78歳のデヴィ夫人が少女のころから自らの道を努力で切り開いて歩んできた、波乱万丈そのものの人生には感慨を新たにした。
 と同時に他の女性とて映像にこそ流されなくとも人相応に大変な人生を歩んできたに違いない、とも思った。特に現在98歳のわが母のそれとなると、きらびやかさこそないが、さぞや厳しい人生だったに違いないと思った。このことは戦中戦後を逞しく歩んできたであろう、日本の全ての女性にあてはまると言っていいだろう。
 空襲や原爆投下、地震や風水害など思いがけない災害、さらには大病…を乗り超えて。戦中、戦後の荒ら波をくぐり抜けてきた皆さんお一人ひとりが、決して他には負けない人生を送ってこられたに違いない。きょうは敬老の日。こうした方々の歩いてきたそれぞれのイバラの道には、心から敬意と感謝の気持ちを評したい。

 次いで舞が珍しくかじりつくようにしてテレビ画面に食い入って見ているので、「何事か」とつい一緒に見たのがCBCの橋田寿賀子ドラマ〈渡る世間は鬼ばかり〉だった。こちらの方は、今の時代が抱える問題をしっかり捉え、他人事ではない内容が胸をそのつど、締め付けた。おそらく皆さんも自分の現在置かれている立場と重ね合わせながら見たに違いない。
 引き続きCBCテレビの〈NEWS23〉で見たのは、総裁選を前にしての【安倍氏×石破氏】の論戦。私は、この2人を見ながら森友加計問題はじめ、憲法改正、経済再生、生涯福祉、外交問題など。項目をたて名もなき有権者に率直な質問をしてもらい、答えてもらう方法を取れば良かったのに、とつくづく思ったのである。

9月16日
 女優の樹木希林(きき・きりん)さん(本名・内田啓子=うちだ・けいこ)が15日未明、都内渋谷区の自宅で家族が見守るなか、亡くなった。75歳だった。5年前に全身のがんを明かし先月13日には左大腿部を骨折して入院中だった。
 個性豊かな女優で、ドラマ「寺内貫太郎一家」「時間ですよ」、最近では映画「万引き家族」など是枝裕和監督作品、CMへの出演などでも知られた。どんな役柄もこなし、見る人をうならせる名演だっただけに、悲しみが広がっている。夫はロックミュージシャンの内田裕也さん(78)、長女内田也哉子さん(42)の夫は俳優の本木雅弘さん(52)。
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 午後。久しぶりにふたりで和田にある私の父の墓へ。墓周辺の草取りをしたあと、紫のりんどうに白いトルコキキョウ、ピンクのカーネーション、赤いガーベラなどの花々を供えて手を合わせ、続いて畑〈エデンの東〉へと向かう。
 〈エデンの東〉に着くや案の定、激しかった夏を象徴するかの如く一面茫々となってしまった雑草畑を目の前に、戦後の焼け跡にでも立ったような、そんな異様な感情に押しつぶされた。この夏は豪雨に猛暑、台風と足が遠のいてはいたが。これほどまでに草、草、草で埋め尽くされてしまっていたとは。
 それでも、私と舞は自らを奮い立たせ、何かに挑戦でもするように草の除去を始めた。大きな草を(引く、というよりも)両手で渾身の力で1本1本抜きながら、内心で「これも自然界のひとつの反乱、戦争なのかも知れないな」と思う。あまり無理すると、そろって病み上がりの体をコテンパンに破壊されかねない、と判断。「無理はよそうよ」と途中で止めたが、これだけの【敵兵草】を除去するとなると大変だ。
 駆逐するまでには、しばらくはかかりそうだ。冬に向かい、これからは伸びないだろうから、のんびりと除去していくほかあるまい。
 
 眼の前に立ち塞がった茫々たる草の壁と「秋空の下、何思う」父が眠る墓
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 でも西日本豪雨や北海道地震のような突然の襲撃に遭われて被災された方々に比べたら、どうってことはない。俺たちの場合はまだまだ贅沢なんだよ、と。そう自分たちに言い聞かせた。畑地を残してくれた親を恨めしくも思うが、ここは「いやいや、ありがたいことだ」と自戒した。
 あんなにきつい作業をしたのに。夕食を囲むと、そこには秋の味覚といっていい栗ご飯が置かれていた。今はもう秋。あきなのだ、と私。外ではタンゴが首をかしげ私たちを見ていた。
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 16日、ベルリンで行われた男子マラソンでリオデジャネイロ五輪の覇者エリウド・キプチョゲ(ケニア、33歳)が従来の記録を一気に1分18秒も縮めて2時間1分39秒の驚異的な世界新記録をマークして2連覇。キプチョゲは、マラソン出場11戦10勝と世界屈指の強さを誇っている。
 東京・両国国技館での大相撲秋場所。横綱白鵬は無傷の8連勝で横綱通算最多勝利数を800勝とした。2位は北の湖の670勝。ことしのノーベル文学賞の代わりに設けられた「ニューアカデミー文学賞」について最終候補の1人に選ばれていた村上春樹氏がノミネートの辞退を申し出。

9月15日
 沖縄出身歌手、安室奈美恵さん(40)が宜野湾市の沖縄コンベンションセンターで最後のステージに。
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 土曜日。1日じゅう、冷たい小雨が降り続いた。
 秋なのに。早く秋空を見たいのは、私だけでもなかろうに。大坂の岸和田では舞の大好きな〈だんじり祭り〉が開幕。米南東部沿岸に14日午後(日本時間15日)、ハリケーン・フローレンスが上陸、100万人以上に避難命令が出たかと思えば、台風22号が15日、フィリピン北部のルソン島に上陸、こちらも100万人に避難命令が出され、厳戒態勢が取られたという。

 北海道では3連休初日のこの日、先の地震で大きな被害が出た厚真町など被災地に大勢のボランティアが駆け付け、家の後片付けなどを手伝った。パリでは、日仏友好160年記念事業として江戸時代の絵師、伊藤若冲の最高傑作「動植綵絵(どうしょくさいえ)」を紹介する展覧会が市内の美術館で始まった(10月14日まで)。
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 古刹かな問わず語りの秋遍路
 =〈伊神舞子のきょうの俳句 minuetto-mi〉から
「私 17から21日まで四国遍路です。その後連絡頂きたいわ よろしくお願いします」とは、金沢在住の女性からのショートメール。期せずして、相棒の〈きょうの俳句〉も秋遍路に関する作品だった。なんとも不思議では、ある。
 
 それはそうと、きょうはわが家の庭先にしばしば顔を見せる半野良猫集団のなかでも、いっちば~ん、ちぃっちゃい黒猫の写真撮影に成功。舞の提言で名前を〈タンゴ〉と命名した。ちいさい、ちいさいとは思っていたが、結構大きくなっており、安心した。共に仲良くこの世を歩いていこう。

 私をのぞき見る〈タンゴ〉ちゃん
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 海を漂うプラスチックごみが集まる「太平洋ごみベルト」は、米西海岸とハワイの間にある。日本の面積の約四倍という海域に、その量、推計七万九千㌧とも。よくもそんなに捨てたものだが…。
 その海域で今秋、オランダのNPOが漂流プラごみの回収実験に挑むそうな。開発した全長六百㍍の回収装置に動力源はなく、海流や風を利用して海面を浮遊しながらごみを集める仕掛けという。
 NPO「オーシャン・クリーンアップ」は五年前、当時十八歳だったボイヤン・スラット氏が立ち上げた。五年間でごみベルトのプラごみ半減を目指す。数えきれぬ悪夢を回収し、海を救えるか。(15日付中日夕刊1面夕歩道から)

9月14日
 北海道地震の影響で運休していたJR北海道がこの日、全路線で特急を再開。台風21号に伴う高潮によって浸水した関西空港も第1ターミナルビル南側エリアとA滑走路の運用を再開した。

 17日の敬老の日を前に厚生労働省が14日、100歳以上となる全国の高齢者は6万9785人に上り、48年連続で増加したと発表。このうち国内最高齢は福岡市東区の老人ホームで暮らす115歳の田中カ子(かね)さん。まんじゅうなど甘い物に目がなく、しっかり食べるカ子さんは、お母さんと慕われ「まだまだ勉強の身。長寿で世界一を目指す」と話している。
 
 日仏国交樹立160年を記念し日本文化の紹介イベント「ジャポニスム2018」にわくパリ。13日夜(日本時間14日未明)には、フランスに滞在中の皇太子さまも出席され、エッフェル塔のライトアップ点灯式があった。エッフェル塔を正面に望む劇場ロビーで皇太子さまが点灯ボタンを押されると、雅楽の調べが流れ塔を昇る赤い日の出や富士山など日本を印象づける映像が次々と投影され、パリは感動の渦に。
 エッフェル塔はかつて息子がパリに在任中、舞と一緒にセーヌ川から見た強烈な印象があるだけに、ニュース報道を前に〈自由、平等、博愛〉の国の存在の重さには、あらためて感じ入った。
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 これでもか。これでもか、と。
 豪雨に猛暑、台風に地震と大荒れだった夏が過ぎ、季節は秋に入っている。ほんとに。本当に。ことしの夏は何かに祟られでもしたように、私たちニンゲンの住むこの星は、自然界に痛めつけられどおしだった。

 そんな折も折、あの京都在住の型破り、破天荒作家・石田天祐=いしだてんゆう=さん(日本ペンクラブ会員、日本文藝家協会会員。ギルガメシュ大統領)から「平成30年7月5日、75歳の誕生日を迎えた。/生前葬のつもりです。あっという間の短い人生でした。やりたいことはやり尽くし、やりたくないことはやらず、自由気ままに生きてきました。自ら悔いることも、恥じることもありません」と、大著がいきなり、届いた。第1の遺書「モロクの戦記」に次ぐ第2の遺書だという。
 本はいったい何事か、とおもうほどのドデカイ本でクロネコヤマトの宅急便でわが家に突如、届いた時には、それこそびっくり仰天。腰が折れそうなほどに驚いたのである。いかにも天祐さんらしい。本の説明書きには、天祐さんならでは、の詩【「高貴」高齢者(狂詩) 石田天祐】も添えられていた。
 デ、本の名は。「隠し文・妻の恋文・夢の咲耶姫(さくやひめ)」(石田天祐著、ギルガメシュ出版)で、あの広辞苑を思い出させるほどでA5判、1290頁(ちなみに広辞苑は2988頁)もある。一瞬、能登半島は七尾のニッポンイチ大きい、デカ山が頭に浮かぶほどの大作ときた。これからゆっくり読ませていただこう。

 不意を打つかの如く、わが家に届いた石田天祐さん著の「隠し文・妻の恋文・夢の咲耶姫」(右端)と同封の説明書に掲載されていた石田さんならでは、の豪快詩「高貴」高齢者
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 13日(日本時間14日)、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大学でユニークな科学研究などに贈られる「イグ・ノーベル賞」の授賞式が行われ、座った姿勢での大腸内視鏡検査を自ら試し苦痛が少ないことを実証した長野県の昭和伊南総合病院の堀内朗内科診療部長兼消化器病センター長(57)が「医学教育賞」を受けた。人々に夢と希望を与える快挙である。 
 天皇、皇后両陛下が空路、先の西日本豪雨の被災地・岡山県倉敷市に入られ、真備地区で被災者を励まされた。20日投開票の自民党総裁選に立候補した安倍晋三首相(総裁)と石破茂元幹事長による日本記者クラブ主催の討論会が14日、都内で。石破氏はなぜ、もっと強く踏み込まないのか。
 岐阜市の「豚コレラ」感染問題で岐阜県は14日、養豚場の北西7㌔にある市内の水路で死んでいた野生イノシシ1頭の遺伝子検査を実施したところ、豚コレラの陽性反応が出た、と発表。

9月13日
 中日ドラゴンズの松坂投手が38歳の誕生日のこの日、12年ぶりに甲子園で先発し5回1失点で6勝目。チームは阪神に6―2で快勝して5位に浮上した。

 北の大地を揺るがせた地震から1週間。厚真町など北海道の各地で黙とうが行われた。翁長雄志知事の死去に伴う沖縄県知事選が13日告示され米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設是非を争点に、いずれも無所属新人の前宜野湾市長佐喜真淳氏(54)=自民、公明、維新、希望推薦。移設に賛成=と、元衆院議員の玉城デニー氏(58)=翁長知事の遺志を継ぎ、移設に反対=ら4氏が立候補を届け出た。 
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 午前中のいっとき。少し疲れはしているものの、自らを奮い立たせて社交ダンスへと出向いた。ルンバ、ワルツ、タンゴの順で何度も繰り返す。くりかえし挑むうち、どれも〈波〉を乗り越えるように心を込め全身で踊る。この大切さを改めて強く感じた。とはいっても、これがなかなか大変だ。

 石川県白山市を拠点に活躍する歌手寒雲さんから私(伊神権太)あてに来月21日に加賀市文化会館で行われる【台湾まつりin加賀市2018(午後2時開演)】の案内状が舞い込んだ。封を切ると「酷かった今年の夏にやっと解放されたと思いきや次々と恐ろしい台風が……皆様のご無事とご健勝を心よりお祈りしております。」の自筆の手紙が入っており、懐かしく感じた。
 寒雲さんといえば、台北出身のシンガーで1992年に日本でデビュー。いらい日本各地でコンサートやディナーライブを開催。台湾のトップオーケストラ「台北市立国楽団」や「台湾室内交響楽団」、台湾口笛第一人者などのコンサートを実現させ、さらには〈オンリー・ユー〉を歌ったザ・プラターズとの共演など日・台文化交流に尽くし、昨年は小松市初の国際交流賞と第40回石川テレビ賞にも輝いている。
 最近では年賀状での往信ぐらいではあるが彼女とは、ある日あるとき何かの縁で知り合って以来の付き合いで、コンサートなど何かがあるつど毎回こうして連絡をくださる大切な方でもある。であるからこそ、今回、加賀市でのコンサートも大成功に終わることを心から望みたい。
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 テニスの全米オープン女子シングルスで、日本選手として男女を通じ初の四大大会制覇を果たした大坂なおみ(20)=日清食品=が13日早朝、日本に凱旋帰国。横浜市内で記者会見を開いた。
 本日付の毎日新聞夕刊に『▲寄稿 佐藤守男(元自衛隊情報幹部)国民のため情報活用を 大韓航空機撃墜事件=1983年(昭和58年)9月1日に南サハリン西方海域上空で発生したソ連機によるニューヨーク発アンカレジ経由ソウル便「大韓航空機007便」撃墜事件=35年に寄せて』の捨てがたき記事。私自身、撃墜事件発生直後に現場上空を取材記者として飛んでいるだけに、当時の模様が頭をかけ巡った。
 特に事件発生十年後の1993年6月になって国際民間航空機関(ICAO)が航路逸脱を大韓機の操縦ミスと指摘し、ソ連機が米軍スパイ機と誤認したとの最終報告書にまとめた、との内容には関心を覚えた。
 ただ、あのとき大韓機の「コクピット内で何が行われていたか」。この点については今も謎だが「実は計器飛行を過信し過ぎた機長らが麻雀をしているうちに航路をはずれてしまい、敵の航路に入ってしまった」ことが当時、実しやかに囁かれていたことも私の取材メモとして付け加えておこう。
 いずれにせよ、事件発生当時、真実は全て闇に葬りさられた。事実は小説よりも奇なり、とはこのことか。

9月12日
 秋雨前線とやらで小雨が降り続き、すっきりしない1日。北海道地震は発生からあすで1週間。道全域ではきょう現在、今も1630人が避難生活を過ごしている。断水も500戸以上で続いており、余震も相変わらず頻発、まさに傷だらけの北海道の惨状がそこにはある。
       
 ロシアのプーチン大統領が極東ウラジオストクの東方経済フォーラムの席上、日本の安倍晋三首相に対して「一切の前提条件なしで年内に平和条約を締結しよう」と思い切った提案。日ロ両政府は歯舞(はぼまい)色丹(しこたん)国後(くなしり)択捉(えとろふ)の北方四島の帰属問題を解決した後に平和条約を結ぶ方針の下、交渉を続けてきているだけに、プーチン氏の思い切った発言が波紋を呼んでいる。
 プーチン氏は、まず平和条約ありきの姿勢で長年の懸案である両国の平和条約が成立すれば、他の問題も円満解決が図られるのでは、といった彼ならでは、の革新的な提言といっていい。さて日本側はどう出るのか。ちなみに日本の菅義偉官房長官は「北方四島の帰属問題を解決し平和条約を締結する方針に変わりはない」と述べている。
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 早朝の午前5時過ぎに相棒が「ねえ、ねえ。起きて。起きてったら」と起こすので半分寝たまま「なんだよ」と起きると、電話機のある1階リビングまで腕ごと運ばれた。「電話が鳴ったままなりやまないのよ」と言うので、そこで目覚め、あれやこれやといじくってみるが一向に鳴り止まない。
 「科学者の母なんだろ。おまえの得意の分野じゃないか」と言うと「直らないから頼んでるじゃないの」ときた。そこで解体新書よろしく電話機能の説明書を手にアアダコウダといじくっているうち、急に鳴り止んだ。どうして止んだのか、は今もって分からない。
 でも、電話機にふれているうち急に泣き止んだのである。これで良し、と再び寝る。いやはや、予期せぬことが起きるものだ。

 夜。昨夜のうちに既に出稿済みのテーマエッセイを書き改めて再度、提稿しておきました、と「熱砂」同人山の杜伊吹さんからのメール。真剣勝負で画面に再び向き合い、原稿を編集し直して出稿。なんとかNHK総合テレビの【歴史秘話ヒストリア 橋本左内と由利公正】に間に合い、見ることができた。
 それにしても、ナンダカンダとあわただしい。

 きょう1日。ほかにも沢山いろいろあったが、キリがないので本日はここまでに。
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 本日付中日新聞夕刊によれば、2013年10月に中国広東省の広州空港でスーツケースに入った覚醒剤3・3㌔を運ぼうとして拘束、起訴された愛知県の元稲沢市儀、桜木琢磨被告(75)について中国では75歳以上には原則的に死刑を適用しないという中国刑法の規定に基づき、死刑が回避される見通しになった、という。被告は今月11日に75歳になった。

9月11日
 日本人24人を含む3000人もの人々が犠牲になった米同時多発テロから17年になる11日、ニューヨークの世界貿易センタービル跡地などで追悼式典があった。北海道の道北、稚内で最低気温が平年より10・4度も低い氷点下0・9度まで下がったこの日、日本では東日本大震災から7年半の日を迎えた。
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 津波で大きな被害を受けた福島県いわき市の薄磯地区の慰霊碑前ではこの日、地元僧侶たちが法要を開いた。薄磯地区といえば、震災後に私自身なんども訪れた塩屋埼灯台直下の、彼の地でもある。

 ♪つよくなろうと つぶやいた/そんな自分が 可愛くて/涙ぬぐった その指を……(星野哲郎作詞、船村徹作曲の〈塩屋崎〉から)
 歌姫美空ひばりさんをしのんだ【永遠のひばり像】が海沿いに立ち、彼女の声が風にのって耳に迫りくる。その姿は、今では被災者たちにとって復興を願うかけがえのない魂の場所にもなっているのである。
 新聞によれば、この薄磯地区では慰霊碑が完成した2017年3月以降、月命日のつど法要を開催し犠牲者を偲んできており、津波で亡くなった120人の名前とともに「大きな地震が来たらすぐに避難する」との教訓も刻まれているという。
 そして。いまひとつ。福島第2原発事故の被災地では、放射性物質トリチウムを含んだ水を希釈して海洋に放出する案が浮上している。だが、しかし。風評被害を心配する地元漁民らはこれに反発、こんごどうなるのか。厳しい選択を迫られている。
 
 サンダース米大統領報道官は10日の記者会見でトランプ米大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長から2度目の米朝首脳会談を要請する内容の書簡を受け取ったことを明らかにした。 
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 午前中、1カ月にほぼ一度して頂いている歯の掃除と治療を兼ねて近くの歯医者さんへ。「この調子でがんばってください。よく磨かれていましたよ。この調子で」と歯科衛生士さんに言われ、少し照れくさいやら、嬉しい気持ちに。
 帰宅して久しぶりに横笛を手に〈平城山〉を手始めに、〈さくら〉〈よさこい節〉〈おやめなさいよ 無駄なこと〉〈風の盆恋歌〉の順で音譜を見ながらオタマジャクシを探るようにふいていったが、ブランクがあったわりには出来はまずまず。我ながら安心した。

 夜に入り、「熱砂」同人の山の杜伊吹さん(岐阜県各務原市在住)から届いたテーマエッセイ=テーマは〈泳ぐ〉=の編集作業を行い、サーバーに出稿。〈泳ぐ〉表現をほとんど用いることなく、「刹那的かんづめ」の題で書きこなした彼女のセンスと筆力には感心した。
 きのう公開した牧すすむさんの「住人たち」同様、出色の出来だけに、読者のみなさんにはこちらの作品にもぜひ、目を通していただきたく思う。

 きょう、わが家のポストに投函されていた書簡の中に【故 大森一人「お別れの会」のご案内】が入っていた。見ると『大森石油株式会社会長大森一人 儀 かねて病気療養中のところ七月三十一日七十九歳をもって死去いたしました ここに生前のご厚誼を深謝し謹んでご通知申し上げます』とあるではないか。
 文面は、さらに『なお密葬の儀は八月三日近親者にて相済ませました つきましては故大森一人「お別れの会」を左記の通り執り行います ご多用とは存じますがご臨席賜りますようご案内申し上げます』と続いていた。
 私は文面に目を走らせながら、一宮支局時代に「しきょくちょう」とよく声をかけてくださり、支局内はむろん、近くの喫茶でも早朝に何度となく語り合った、あの真摯な風貌を思い出し、思わず「なんでなの」とつぶやいてしまっていた。大森さんには、ほかに人の道のあるべき姿なども教えて頂いた。名実ともに郷土・一宮を代表するお方だっただけに、惜しまれる。というよりも、寂しい。いや、残念である。
 合掌―― 
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 米大リーグ機構は10日、3日から9日までを対象とした週間最優秀選手(MVP)を発表。ア・リーグはエンゼルスの大谷翔平が選ばれた。投打で活躍した4月に続いて2度目の受賞。大谷は10日、アナハイムでのレンジャーズ戦に「5番・指名打者」で先発出場し四回に二塁打、七回には左前適時打を放って8試合連続安打、6試合連続の長打となった。
 日本舞踊家で人間国宝の花柳寿南海(はなやぎ・としなみ=本名柴崎照子、しばざきてるこ)さんが11日、老衰のため死去。東京都出身。93歳だった。

 野田聖子総務相が11日の記者会見でふるさと納税制度を抜本的に見直す方針を正式表明。返礼品は地場産品に限り、調達費を寄付額の30%以下にするよう法制化するという。それはそれで分かるが、この際、各自治体の事情もしっかり把握すべきだと思う。

9月10日
 月曜日。朝から、ずっと雨降りだ。
 
 最大震度7を観測した北海道地震で道は10日、死者が41人になり安否不明者はいなくなったと発表。道内では電力の供給不足を補うため節電の取り組みが本格化、官公庁や公共交通機関は照明の減灯や運行本数の削減などを始めた。北海道電力では地震発生前の需要ピーク時の電力供給力に追いついていないとして計画停電も検討しているという。
 大相撲秋場所2日目。横綱稀勢の里は小結貴景勝を逆転の突き落としで仕留めて初日から2連勝。
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 夕食をしながら相棒の舞とNHKEテレで〈俳句甲子園2018〉を見る。僕だけ、私だけ、の高校生ならではの新鮮な17音を目の前に俳句が日本文学にとっていかに大切な存在か、を思い知る。
 と同時に高校生の俳句に立ち向かう熱心な姿に、どこかホッとしたものを感じた。舞は相変わらず少女そのままに、はたちになる前からのあの得意のポーズ、頬杖をつきながらの、満足そうなテレビ観戦で少しばかり若返ったようにも見えた。
「100歳の大年寄りになっても、そのポーズでいるといい。おまえには、それが一番お似合いだよ」と私。もちろん万にひとつ生きていたら、の話しではあるのだが。

 「熱砂」同人の牧すすむさんから届いたテーマエッセイ=テーマは〈泳ぐ〉で、作品名は「住人たち」=を昨夜からけさにかけ編集して出稿、午後には公開となった。なかなか味わい深い牧さんならでは、の筆だけに読者の皆さまにはぜひ、読んでほしく思う。
 アレヤコレヤと追われていたせいか、昼食後はバタンキュー。すっかり寝込んでしまい、起きたときは既に夜だった。というわけで、きょうは入浴もパス、夕刊をむさぼり読む。

 毎日新聞で連載が始まった又吉直樹の夕刊小説「人間」。連日注目してはいるのだが。イマイチ物足りない出来だ。中日夕刊連載小説の桜木紫乃の「緋の河」に比べると、だいぶ劣る(もちろん、今現在の評価ではあるが)。「緋の河」に比べ、迫りくるものがない。
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 自民党は10日午前、先に総裁選に立候補した安倍晋三首相(現党総裁)と石破茂元幹事長が所見を発表する演説会と共同記者会見を党本部で行った。石破所見に安倍転覆を期待しつつ。でも、やっぱり無理かもしれない。ノラリクラリ、では。こちらも迫りくるものが足りない。もっと激しくあらねば。徹底抗戦の姿勢にも欠ける。
 東京地検立川支部は10日、神奈川県座間市のアパートで昨年10月、男女9人の切断死体が見つかった事件で無職白石隆浩容疑者(27)を強盗強制性交殺人と強盗殺人、死体遺棄・損壊の罪で一括起訴した。
 自民党総裁選に立候補した安倍晋三首相はこの日、石破茂元幹事長と党本部で所見発表演説会と共同記者会見に臨んだあと、ロシア極東のウラジオストクを訪れ、プーチン大統領と首脳会談。来年6月に大阪で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合でプーチン氏が訪日し、日ロ首脳会談を行うことで合意した。

9月9日
 重陽の膳蒔絵の椀も添え
 九月九日ドクターヘリの回施す
 =伊神舞子〈きょうの俳句minuetto-mi〉から
 
 東京・両国国技館での大相撲秋場所初日。連続8場所休場が続いた横綱稀勢の里は、勢を押し出して勝ち、日本じゅうがホッと。能登出身で当代人気ナンバーワンの遠藤は逸ノ城に負け、黒星スタートに。

 名古屋でウエブ文学同人誌「熱砂」の例会。帰宅後は欠席した全員の一人ひとりに、きょうの結果をメール送信。いまは既に深夜である。
 というわけで、本欄にはこれから立ち向かうわけではあるが、やはり少し疲れた。でも「熱砂」の同人一人ひとりが精鋭で、すばらしき仲間たちばかりだけに、欠席者にも丁寧に公平に連絡するのが主宰としての私の基本姿勢、義務なのである。

 その例会だが、きょうはなかなか中身の濃い話し合いとなった。なかでも脳梗塞と闘う平子純さんの場合。娘さんが付き添っての出席(これまで同伴してくださっていた奥さまが骨折で松葉杖生活のため)で、それだけ真剣味が伝わる内容に。ほかにご主人の転勤で岡崎に引っ越してまもない若手の黒宮涼さんも加わり、それぞれがめざす文学感、姿勢について大いに語り合い、とても有意義なひとときとなった。
 具体的には、平子さんが俳句(自由律含む、俳号は風狂子)や詩画へのあくなき挑戦について。20代の黒宮さんもチャレンジ精神を失うことなく、こんごも詩作も含めて積極的な創作活動に努めたいと語り、私も〈真のやさしさ〉とは何か―についてこの先は自らの作品世界を通じて徹底分析、かつ模索していきたいなど話した。
 また次回例会は12月2日午後2時から。同じ名古屋市の中村生涯学習センター内、喫茶「まつぽっくり」で開くことに(同人の都合など場合によっては変更もありえる)。29回目のテーマエッセイのテーマは、28回目の〈泳ぐ〉の全作品公開後に決定し、あらためて決めることなども確認しあった。
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 テニスの四大大会最終戦、全米オープン女子シングルス決勝が8日、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われ日本の大坂なおみ(20)=日清食品=が元世界ランク1位のセリーナ・ウィリアムズ(36)=米国=を6―2、 6―4のストレート勝ちで初優勝。日本人がテニスの四大大会で優勝するのは、これが初めて。
 試合は、試合中にコーチから助言があったとの審判の判定にセリーナがラケットをたたきつけて壊し警告を与えられるなど大荒れの展開になり、観客のブーイングのなか進んだが、冷静な大坂がセットカウント2―0で優勝した。
 大坂は身長1・8㍍。時速200㌔の高速サーブが持ち味。ハイチ出身の父と日本人の母との間で大阪市で生まれ3歳からアメリカで育った。試合後、大坂は「セリーナさんは幼いころから四大大会の決勝で対戦したいと夢見ていた選手だけに嬉しかった」と語り、「母はこれまで私のためにたくさんの犠牲を払ってくれた。試合はあまり見に来ないのですが、きょうは来てくれて本当に嬉しかった」と感謝の気持ちを述べた。

 北朝鮮が建国70年の記念パレード。ことしのパレードでの弾道ミサイル登場はなく、国際社会に対する非核化実現へのメッセージだ、とする見方が多い。岐阜市の養豚場で約80頭の豚が家畜伝染病の「豚コレラ」にかかり、県は610頭を殺処分。国内での豚コレラ感染は1992年に熊本県で確認されて以来、26年ぶり。

9月8日
 二十四節気に言う白露である。草木に降りた露が白く見え、秋の気配が濃くなってきた、と言いたいところだが。季節はまだまだ不安定な気がする。早朝の気温は確かに下がってきたようではあるが。
 午後10時半すぎ。急に強い雨が降り出した。夜風を入れるためなのだろう、舞の手で少しだけ開け放たれていた窓を閉める。

――北海道で最大震度7を記録した地震で、道は八日、大規模な土砂崩れがあった厚真町で安否不明だった十九人のうち十人が新たに捜索現場から見つかり、死者が十九人、心肺停止は十一人となったと発表した。発生から三日目となったが、同町では依然九人が安否不明。災害現場で生存率が下がる目安とされる「発生後七十二時間」が九日未明に迫り、自衛隊や消防、警察などは捜索に全力を挙げた。
 以上は本日付中日新聞夕刊1面の前文(総合リード)である。見出しには「死者19人 なお不明9人」「迫る72時間 雨の捜索 北海道地震 停電ほぼ解消」『「祈るしか」「奇跡を」』とあり、現場で固唾をのんで捜索を見守る人々の悲痛な表情が手に取るようでもある。
 夜に入り、道は道内の死者は35人、心肺停止が2人、安否不明は厚真町の3人になった、と発表。また北海道電力によると、一時295万戸に上った道内の停電は8日夜現在で1000戸以下に減少、99%超が復旧したが、厚真町などでなお断水が続いている。
 一方、新千歳空港では8日朝、国際線の運航が再開し前日に始まった国内線と合わせ今後徐々に通常運航に近づく見通しだという。
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 土曜日。とはいえ、あすの私たちウエブ文学同人誌「熱砂」の例会を前に、きのう、きょうと同人各位に連絡する一方、例会資料の作成などにも時間を取られ、結局のところ、時間はアッという間に過ぎ去っていった。
 合間に気晴らしになれば、と食事を兼ねてマイカーで少しだけ外へ。五条川周辺を走りながらハンドルを手に、ふと突如として地震に見舞われた北海道の人々のことを、いろいろ考えてみる。電気も。水道も。食料も。何もかもがなくなってしまったなかで、どうやって過ごしておいでだろうか。かといって、今の自然の猛威を思うとき、同じ不幸がわが身を襲ったとしても何ら不思議でない。
 となると、私たち人間は互いに助け合って生きていくほかない気がする。

 北海道といえば、忘れもしない。
 昭和58年9月1日に稚内沖オホーツクの海に269人が乗ったカムチャッカからサハリンに向かう途中の大韓航空機007便がソ連戦闘機八機に次々と狙われ、ミサイル発射によって撃墜された、あの大韓機撃墜事件のときの家族の涙は今も私の脳裏のなかにこびりついている。
 空飛ぶ事件記者だった私はその日、航空部員やカメラマンと共に本社機「はやたか二世」で名空港を出発。札幌の丘珠空港経由で269人が一瞬にして冷たい海に消えたと見られる最果てのオホーツクから宗谷岬前方に広がる宗谷海峡、サハリン(旧樺太)西方、モネロン(海馬)島の浮かぶ日本海を飛んだ。
 あの日。行く手をすっぽりとガスがおおう中、墜落機を捜し海面をはうように飛行していると「国籍不明機(ソ連機)が近づいている。危険だから引き返せ」と稚内レーダーサイトが何度も何度も叫んでいた、あのときのことは今も忘れない。その後遺族に同行し海上からの慰霊祭に臨んたときのあの嗚咽と涙は今も頭に染み付いて忘れられない。そして人間の愚かさを痛切に感じもしたのである。
 確か「オホーツクも、宗谷海峡も。そしてモネロン島周辺の日本海も、物こそ言わないが、みな泣いている。遺族、いや海にのまれた家族の悲しみは、この最果ての海の深さより、さらに深いに違いない。遺族の気持ちは、一体、どうなるのだろう。――とそう書いて記事を送ったと記憶している。
 それも遠い昔の話しではある。

 それに比べれば、今回の北海道地震の相手はちいさな人間とは違い、果てしなく大きく、かつ目に見えない自然である。この不幸をどう考えたら良いのか。人間同士の愚かな戦いとは訳が違う。私はここまで考え、ハタと立ち止まるのである。
 だったら、自然は私たちに何を言わんとしているのか。人が人を殺してしまう。愚かなニンゲンたちと比べたらこの無情な自然を部分的には許せる気がするのは、私たちニンゲンもまた自然界の一員だからなのか。
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 米大リーグ。エンゼルスの大谷翔平が7日、シカゴで行われたホワイトソックス戦の3回に19号3ランを放ち、メジャー1年目の日本選手の最多本塁打記録を塗り替えた。逆境にありながら、たいした男である。
 
 台風21号で浸水などの被害に遭った関西空港で8日、全日空の上海便が離陸。閉鎖から4日ぶりに国際線の運航が再開した。
 岐阜県郡上市で繰り広げられていた国の重要無形民俗文化財「郡上おどり」が8日夜、閉幕。名古屋では名古屋城内では初めてとなる野外オペラ「トスカ」の上演がライトアップされた名古屋城天守閣を背に開演した。

 ネパールの首都カトマンズ近郊で8日、乗客乗員7人が乗ったヘリコプターが墜落。日本人男性ひとりを含む6人が死亡、重傷の女性ひとりが救助されたという。

9月7日
 北海道で最大震度7の地震が発生してから丸1日がたった。

 道内では地震発生に伴う土砂崩れに吉野地区や富里地区など全域が沈んだ厚真町を中心に道警と消防、自衛隊員が夜を徹しての懸命の救助作業にあたっている。その後被害者もふえつづけ今夜現在、死者18人、心肺停止2人、安否不明19人、けが人は300人近くに及び、約1万3000人が避難所に身を寄せているという。

 主な人的被害状況を伝える中日新聞朝刊(8日付1面)
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 一方、道内全域に及んだ停電は過半数が復旧したものの、146万戸は依然停電したままで、断水も各地で続いている。また震度7の地震発生後、7日午前11時までに震度1以上の余震が100回発生。震度4も2回あった。
〈ああ無情〉とは、このことか。自然の酷さはとどまるところを知らない。
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 金曜日。きょうは訳あって、求めに応じて新聞社在勤当時の後輩社友らお三方(さんかた)と江南市内でお会いした。月に4回発行しているフリーペーパー、週刊の生活情報誌(28万部発行)の〈こらむ〉欄に来年から執筆してほしい―とのことで、荷が少し重い感じがしないでもないが、せっかくなのでお受けすることにした。
 私は三氏を前に永々と生き続ける【真実、公正、進歩的】といった新聞社の社是を思い起こし、同時に私自身が現役時代に自らの胸にいつも言い聞かせていた、故加藤巳一郎会長の言葉「広く聴き、深く考え、強く闘う」をなぜか、つぶやいてしまい、地域社会の羅針盤といってもいい紙面づくりのお役にたてたら、それほど嬉しくかつ幸せなことない、とも思った。
 だから、このうえは少しでも読者にさわやかで分かりやすい記事を提供していかなければ。そのためにも絶えず怠りなき努力を、と自身に言い聞かせたのである。
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 大リーグ・エンゼルスの大谷翔平選手をまたしても襲いきた右肘靭帯損傷に伴う靭帯再建話。「せっかく頑張っているのに」と、なんだか可哀想な気がしてしまう。
 ああ、人生とは。誰とて、浮いたり沈んだり。楽しいこともあれば苦しいこともあるのだ。ここで、どどいつを一首。【ボウフラが人を刺すよな蚊になるまでは泥水のみのみ浮き沈み】か。

 台風21号の影響で4日から閉鎖が続いていた関西空港で7日、格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションの新潟便が乗客100人を乗せ離陸し、運航が再開した。この日は浸水を免れた第二ターミナルビルとB滑走路で国内線計19便が離着陸。運営会社の関西エアポートは国際線も8日から一部運航する、と発表した。
 また北海道地震による停電や天井、壁部分などがはがれる被害が出て6日は全便が欠航していた新千歳空港でも7日午前、運航が再開された。皇太子さまが日仏友好160周年でフランスを初めて公式訪問されるため7日、羽田発の政府専用機で出発された。

 女子テニスの大坂なおみ(20)=日清食品=が6日、ニューヨークで行われている全米オープンのシングルス準決勝で昨年準優勝のマディソン・キーズ(米国)を6―2、6―4で下し、四大大会で日本女子初の決勝進出を果たした。
 自民党総裁選が7日告示され、連続三選を目指す現職の安倍晋三首相(63)と、石破茂元幹事長(61)が立候補を届け出て、両氏の一騎打ちとなった。3年前の前回は無投票で、選挙戦は2012年いらい6年ぶり。北海道での地震を受け、両陣営は選挙活動を9日まで自粛するという。投開票は20日。

9月6日
 北海道で起きた大きな地震を報じる6日付夕刊
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 震度6強。いや厚真町では7を観測。午前3時8分ごろ、北海道で大きな地震が起きた。

 それも徳島に上陸後、神戸に再上陸。関西全域を直撃し関西空港など各地に打撃を与え近畿、東海、北陸地方にも多大な被害を与えて、そのまま日本海沿いに北上した「非常に強い」台風21号が残した爪痕を追うように、だ。
 一体全体、なんたることなのか。
        ★        ★

 震源は北海道の胆振(いぶり)地方中東部で震源の深さは37㌔。地震の規模はマグニチュード(M)6・7と推定され、安平町で震度6強、千歳市で6弱、札幌市で5強を観測。厚真町やむかわ町などでは土砂崩れや家屋倒壊などの被害が至るところで起き、きょうの夕方現在、むかわ町の80代男性や厚真町の80代女性など計5人が亡くなり、4人が心肺停止に。
 厚真町では土砂崩れに巻き込まれるなどで、なお28人が安否不明となっており道内のけが人は300人以上、6000人以上が避難し建物は全壊28棟、半壊20棟に及び、一時は道内全ての明かりが消え、停電は295万戸に及んだという。

――北海道で発生した震度6強の地震。大規模な土砂災害が起きた厚真町の上空を六日午前に本社ヘリで飛ぶと、見渡す限り一帯の山肌が大きくえぐれ、崩れた土砂や木々が麓の民家を無残にのみ込んでいた。……
 上記は本日付中日夕刊1面の記者による上空ルポの書き出しである。記事には「土砂崩れ 民家のむ 厚真町」の見出しが躍り、ほかに『北海道 震度六強 2人死亡32人不明』の活字が躍り『全295万戸停電』『泊原発が一時外部電源喪失』の見出しが追い打ちをかけている。
 このうち大規模な停電は、厚真町にある北海道電の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所の使用不可能によるものだという。政府や北海道電によると、全域停電は苫東厚真の停止により道内の電力需給バランスが一気に崩れ、電力供給の周波数を一定に保てなかったためだとされているが、ここにきて風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーの実現化が現実の問題となって浮上してきた。

 ここで私、伊神権太はこうした災害が起きるたびにつくづく思う。
「自然にとっては、列車も、車も…全てが、おもちゃみたいな存在なのかもしれないナ」と。あ~あ。今は一刻も早い復旧作業により、元のライフラインに戻り、これまでどおりの生活が戻るのを待つほかない。 
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 先日の猛烈な雨で倒壊したわが家の屋根に取り付けられていたCSアンテナ。午後、市内の業者の方に来ていただき、あれやこれやと調べて頂き、結局のところはわが家の場合、スターキャット(ケーブルネットワーク)の光ハイブリッドに入っているので「もはやCSアンテナは無用の長物なので、なくてもいいですよ」ということで撤去して頂いた。
 ただ、当初はこの倒壊アンテナを撤去してしまって良いものかどうか。それが素人の私には分からず、最初のうちは業者さんとの間でチンプンカン極まるやり取りが続いた。さいごは勤務中のところを舞、息子の順に電話して業者さんにそれぞれ話しをして頂いたうえ、ケーブルネットワークさんにも電話で確かめ、CSアンテナはもはや無用の長物と結論づけ撤去とあいなったのである。
 この間、スカパーがどうの、チューナがどうの、NTTの光回線は。BSは? インターネット回線は? と比較的こうしたややこやしいことに強い舞がいないこともあり、私ひとりで七転八倒。CSアンテナが外されたスッキリした空を見つめたときにはヤレヤレで一件落着にホッとした。
 それにしてもメカに弱い自分をあらためて思い知った。これではダメだな、と内心つくづく思いもした。

 撤去とあいなったCSアンテナとお世話になった電気業者さん
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 テニスの4大大会。全米オープン第10日が5日、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われ、シングルス準々決勝で女子の大坂なおみと男子の錦織圭(いずれも日清食品)が勝ち、いずれも準決勝に。日本勢のアベック4強は4大大会で初めて。
 大リーグのエンゼルスが5日、投打の「二刀流」に挑む大谷翔平(24)が遠征先のアーリントンで精密検査を受けた結果、右肘靭帯に新たな損傷が判明し、医師に投手復帰まで1年以上かかるとされる肘の靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)を勧められている、と発表。その大谷だが、レンジャーズ戦に「3番・指名打者」で先発出場し新たな逆境をはねのけるかの如く17、18号を放ち4打数4安打3打点、4得点、1四球だった。たいしたものだ。
 こんな按配なので、何と言ってよいのか。「大谷、がんばれ」とも安易には言えない。大相撲で8場所連続球場中の東横綱稀勢の里(32)の師匠田子の浦親方が6日、稀勢の里の秋場所(9日初日・両国国技館)出場を明言。
 いろいろある。世の中、いろんなことが起きる。

9月5日
 大リーグ、エンゼルスの大谷がアーリントンでのレンジャーズ戦に「2番・指名打者」でフル出場し六回に左投手マイナーから右翼に16号ソロを放ち、4打数1安打1打点、1得点で2三振だった。メジャー1年目の日本選手の本塁打数では2003年の松井秀喜(ヤンキース)に並ぶ2位。1位は2006年の城島健司(マリナーズ)の18本塁打。大谷の左腕からの本塁打はメジャー初。

 台風21号の影響で連絡橋が通行出来ず、推定最大約8000人が孤立した関西空港。ここで利用客らを神戸空港へ輸送する高速船の臨時運行が5日早朝から始まった。午前8時過ぎからは緊急車両として連絡橋を通行するバス輸送も開始。
 一方、台風21号の突風などによる死傷者は一夜明けたこの日も新たに判明。台風による死者は大阪、愛知、三重、滋賀の4府県で計11人に。また、関西電力によると、福井、三重、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山の2府6県で大規模な停電が発生、最も多かったのは4日午後9時の時点で計170万戸。5日午前9時までの延べ停電戸数は218万戸で、阪神大震災の260万戸に次ぐ規模だったという。

 被害の実態は、ほかにも時間がたつに従い各地で傷口を広げて拡大。
 愛知県一宮市の光明寺公園球技場ではスタンドの屋根の一部だったステンレス製の板が300~350平方㍍にわたってはがれて吹き飛ばされ、犬山市の国宝犬山城麓の三光稲荷神社では高さ、幅ともに5㍍余りの木製の鳥居が倒れ、さらに滋賀県彦根市の国宝・彦根城でも天守二階部分のしっくいがはがれ、土壁がむきだしとなった。
 リンゴやモモなど果物の生産が盛んな岐阜県高山市では、リンゴやナシの多くが落下した果樹園も。同じ岐阜県揖斐川町の新宮神社では樹齢千年以上で高さ30㍍余もある県天然記念物「伊野一本杉」が倒れるなど各地で強風が猛威を見せつけ、爪痕を残した。なんとも悲しかったのは、岐阜県本巣市根尾村に1500年の風雪を刻んで立ち続け、私自身かつて取材で何度も訪れたことがあるあの国の天然記念物「淡墨桜(うすずみざくら)」の枝4本が折れてしまったことか。
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 ここでわが家の被害は、といえば。
 妻の指摘で昨夜、判明した2階寝室の換気扇の蓋の脱落だけと思いきや、きょうの午後になり、散歩中の知人の指摘で2階瓦部分に取り付けて張られていたCSアンテナが倒壊していることが判明。たまたま、お隣さんの屋根瓦に乗って同じ倒伏アンテナを修理中だった電気工事屋さんがいたので「早い修復」をお願いしはしたものの、台風通過後のこの種の事故は各地で多発し修復は順番待ちになっているのが現状です―とのこと。
 そこを何とか、とお願いはしているものの、今現在では一体いつになるかは皆目検討がつかない状態が続いている。やれやれ、あ~あ、とため息も出ようというものだ。
 自然はこわい。魔物である。
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 中日新聞の本日付〈中部けいざい〉面によれば、名鉄が駅併設の商業施設「ニュープラット」を江南駅に今月20日に、10月5日には常滑駅にそれぞれオープンするという。このうち江南駅では西口に2階建てと平屋の2棟で開業。延べ床面積830平方㍍で、焼き肉や焼き鳥、串カツなど飲食店5店舗とコンビニが入るという。11月ごろには保育施設も開園するという。

 人形浄瑠璃文楽三味線の人間国宝として知られる鶴沢寛治(つるざわ・かんじ、本名白井康夫=しらい・やすお)さんが5日、死去。京都市出身。89歳だった。

9月4日
 厚生労働省が4日、東電福島第一原発事故後の収束作業などに従事した50代の男性について発症した肺がんの原因は放射線の被ばくとして労災認定した、と発表。経団連の中西宏明会長が採用活動の指針を2021年に卒業する学生から廃止する考えを示した。
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 非常に強い勢力のままの台風の上陸は、死者・行方不明者48人を出した1993年の台風13号いらい、25年ぶりだという。それでもきょうの被害が少しは抑えられたのは、「何よりも身の安全を図ってください」「不要不急以外の外出はしないでください」「危険な行動はやめてください」など。注意を喚起し続けたラジオやテレビなど各メディアによるところが多いのではないか。
 それに、これは〝神がかり的〟といえなくもないが、たまたま台風襲来直前にあった富山の【風の盆】の存在。越中おわら八尾(富山市八尾町)の人々による一糸乱れぬ【風の盆】の向かい来る風たちそのものを全身で切る踊りに、〈かぜたち〉が少し遠慮して退散してくれたように思えなくもない。

 強い勢力の台風21号は4日正午ごろ徳島に上陸、その後神戸市付近に再上陸、夜には日本海に抜けた。近畿、関西地方を直撃する形となり大阪、滋賀、三重、愛知で計10人の尊い命が奪われ、ケガ人となると600人以上に及んでいるという(5日朝現在)。
 また関西国際空港では強風で流された航空機用のジェット燃料タンカーが空港連絡橋に衝突し橋の1部が破損したばかりか、関西空港駅はじめ第1、第2ターミナルビル、滑走路などが高潮で浸水、4日夜の段階で利用客ら約5000人が取り残される事態となっている。
 このほか家屋の半壊や倒壊、トラックや乗用車の横転、ビルのガラスや屋根瓦などの破損、樹木、電信柱の倒壊と被害は多大にのぼり、停電や断水が続出。鉄道も空の便も各地でほぼ全線ストップの状態が続いたのである。

 というわけで、ここ尾張名古屋とて同じで雨、風は相当なもので暴風域は関西を中心とした近畿、和歌山地方から、次第に三重全域をはじめとした東海、北陸に及び、夜には日本海に抜け北上、輪島沖から佐渡島、秋田を経て青森から北海道に達した。

 せっかくなので「最大風速44㍍以上の非常に強い勢力」のまま上陸した今回21号台風の瞬間最大風速や被災現場など、その一部の実像を以下、写真グラフとして記憶に留めておきたい(いずれも、NHK総合ニュース画面などから収録)
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 午後3時ごろ、息子が逆さまになった傘を手にし、ずぶ濡れとなって名古屋の会社から帰宅。日中から窓や瓦、道路、家々をたたく雨、風は相当なものとなった。昼前、舞が突然戸外に出ていったので心配した私もあとをついていくと、ナント今にも折れそうな庭の木をテープで固定しようとしているではないか。
 私はあわてて「だめじゃないか」と大声で叱りつけ助太刀をしたが、こうした時の彼女はいきなり行動に出るので少し怖い。以前、わが家自慢でもあったレインボーツリーの木がどさりと音をたてて倒れたときもそうだったが、何よりも身の安全を第一にしてほしいのだが。無鉄砲な性格は変えられそうにもない。昔からなので仕方ないか。

 それでも夜に入り、一段落したところで半のら猫族の代表でもある〝猫パンちゃん〟がゆったりとした面持ちで縁側に座り、室内に向かって両手をそろえて何か言いたげな姿にはどこか、ホッとしたものを感じたのである。
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 テニスの4大大会最終戦、全米オープン第8日が3日、ニューヨークのビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで男女シングルス4回戦が行われ、男子は第21シードの錦織圭(日清食品)、女子は第20シードの大坂なおみ(日清食品)がともに勝って5日(日本時間6日)の準々決勝に進んだ。4大大会のシングルスで日本勢が男女そろって8強入りするのは1995年ウィンブルドン選手権の松岡修造と伊達公子いらい、23年ぶり2度目である。
 カナダで開かれていた第42回モントリオール世界映画祭で3日夜(日本時間4日)、木村大作監督の映画「散り椿」(葉室麟さんの小説が原作)が最高賞に次ぐ審査員特別グランプリを受賞。中田秀夫監督の「終わった人」(内館牧子さんの小説が原作)に出演した、私の大好きな舘ひろしさん(68)が最優秀男優賞を受けた。「散り椿」は主演の岡田准一さん(37)が藩を追放されながらも不正に立ち向かう侍を演じた。
 また舘さんは定年を迎えた元エリートサラリーマンを演じたが都内で開かれた記者会見で「私が信じていないのは自分の芝居。野球で言えば、ボールが来てバットを出したらホームランになってしまった」と笑わせた。いかにも舘さんらしいナ、と思った。なかなかいい。

9月3日
 富山県射水市の新湊漁港で富山湾の秋の味覚ベニズワイガニの初競りがあった。
 西日本豪雨の被災地、岡山、広島、愛媛各県の小中学校で3日、2学期の始業式。このうち岡山県倉敷市真備町では校内に避難所が残る学校や、地区外の学校の教室を間借りして新学期を迎えるところもあった。

 台風21号はこの日も沖縄・南大東島の東の海上を北上、4日昼にも紀伊半島から四国に接近し上陸する恐れが出てきた。非常に強い勢力を保ったまま上陸すれば、1993年の台風13号いらい25年ぶりになるという。
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 月曜日。午前中、歯医者さん、町内の信頼に足る町医者さんの順で診療を終えた舞は、その足で近くのスーパー・バローへ買い物に。いったん帰ったと思ったら、今度は月曜休みのはずのお店へと出かけた。台風21号のあすの接近と通過を前に店の備えをしっかりしてくるためで、私は私で彼女の指示通り、お茶などを買いだめするため少し遠いピアゴまで車で出かけた。
 買いながら、台風と豪雨の直撃で木曽川が氾濫した時の普通ではない、断末魔の苦しみがふと頭をかすめた。実際、ここ尾張地方は昭和34年9月26日の伊勢湾台風以降は一部地域を除いて比較的大災害と名のつく被災も少ない。それだけに、油断は大敵。万一、巨大台風に襲撃されようものなら木曽川の堤防決壊など大水害が起きても決して不思議ではなく、いざその時の備えが出来ているか―となると、甚だ不安である。
 ましてや木曽、長良、揖斐の木曽三川が同時に決壊でもしようものなら、この地方の全域が水没して逃げ場を失うことは火を見るよりも明らかだ、といっていい。なんだか、へんな被害妄想にとらわれてしまったが、だから日頃から出来る範囲の備えをしておくことは当然だといえよう。
 そして。この地方には【岐阜は名古屋の植民地】という差別表現にも似た言葉があるほどで、もし木曽三川の堤防が決壊したとしても氾濫した水は名古屋、すなわち尾張の方ではなくて岐阜の方に流れるようになっている―ということまでが実しやかに語られ、本気で信じられているのである。そんなはずはなく、どこも危険だ。
 いずれにせよ、今は全ての地域で台風の被害が最小限に食い止められるよう願うほかない。それこそ、神さまに無事安泰を祈る。それしかない。
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 中日新聞の本日付夕刊軟派(社会面)トップに『三重大大学院で忍者・忍者学を学ぶ大阪府出身の男性(43)が、三重県伊賀市の農村に移り住み「忍者生活」始めた。』とのニュース。記事は「戦国時代の忍者さながらに、早朝から農作業、午後は武芸の鍛錬と質素な日々。」とあり、なかなか興味深い。
 アニメ「サザエさん」で磯野フネ役の声を46年間、務めた声優の麻生美代子さん(あそう・みよこ=本名左近允美代=さこんじょう・みよ)が8月25日に老衰のため死去。東京都出身。92歳だった。

 深夜遅く。今宵かぎりの〈越中おわら風の盆〉にあくまでこだわり、2018年の町流しを繰り返し動画でみる。目前に迫りくる台風21号を退散してくれよ、と祈りつつ――

9月2日
 夜。前日につづいて今度は【おわら風の盆2017年諏訪町深夜の町流し】を動画で見る。見ながら今は亡き高橋治さんの「風の恋盆歌」の名シーンを思い浮かべてみる。

 非常に強い勢力の台風21号(チェ―ビ―)は日本の南の海上である南大東島の東を暴風域を伴って北北西に。西日本から東海地方に接近してきている。この先、どんな進路を取るのか。だれもが固唾をのんで、その行方を見守っている。台風が私たち人間と話しが出来たらな、とつい思ってしまう。
 それに科学者の母でもある相棒(舞)は台風が近づくつど「あのエネルギーを電力にかえられないのかしら。今の科学者たちは一体全体、何をしているのよ。人間のためになることをしてくれなくっちゃあ」とつぶやく。そんな時、私は言う。
「まだ人間の能力が自然に勝てないのだから。そりゃ、無理だって」と。
 でも、内心ではこう思う。「このエネルギーをそっくり電力に変えてしまうことは出来ないものか」。「第一、風力発電があるじゃないか」と。ニンゲンたちは何をしているんだよ、と。ひとつ事故でも起こそうものなら、人間社会を地獄に落としてしまう原子力発電所だって必要なくなるのに。それこそが科学の叡智ではないのかと。
     
 昨日は二百十日。そしてきょうは9月最初の日曜日。北海道沖の低水温でことしはサンマが大豊漁だという。
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 そういえば、きょうは、かつて愛知医大を巡る3億円強奪事件の舞台となり、サツ回りの記者として足しげく通ったことがある名古屋市西区のホテルナゴヤキャッスルで、わが母校滝学園高校の同窓会総会と懇親会の日だ。
 案内状によれば、ことしは昭和63年卒業生が幹事学年とかで「青春回帰~ふたたび笑顔で~」をスローガンに準備が進んだ、とのこと。ちょっと覗いてみたい気持ちがしないでもなく迷いはしたが、遠慮することに。
 それでも少し時間があったので代わりに大先輩で私の社交ダンス仲間でもあった大森正視さんに声をかけ、江南市内の滝学園近く喫茶店でミニミニ同窓会と洒落込んでアアダコウダと懇談して楽しくなごやかなひとときを過ごした。
 大森さんは既に85歳を超えておいでだが、博識でいつもいろんなことを教えてくださるので急にお会いしたくなり、電話したところ「ことしは訳あって僕も行かないので。そりゃあ良いですね」ということで、しばしのデートとあいなった。
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 ジャカルタで行われていた第18回アジア大会の閉会式が2日、ブンカルノ競技場であった。大会最優秀選手(MVP)には出場選手最多となる金6、銀2の計8個のメダルを獲得した競泳女子の池江璃花子さん(18)=ルネサンス=が選ばれた。女子選手の選出は史上初めて。
 日本は中国の132個に次ぐ金メダル75個を獲得。47個だった前回の韓国・仁川大会から大幅増だった。次回大会は2022年に中国・杭州で開かれ、2026年には、いよいよ愛知県と名古屋市共催で行われる。
   
 夜。NHKスペシャル「未解決事件」第7弾▼警察庁長官狙撃事件「わたしが真犯人だ」を見る。誤った捜査。罪深さを思う。捜査は時に信じられないポカをする。かわいそうなのは被害者であり、かつまた一線で足を棒とする捜査員たちである。この世は矛盾に満ちている。

9月1日
 風おさめならすやおわら風の盆
 =伊神舞子〈きょうの俳句minuetto-mi〉から

 哀調をおびた胡弓と三味の調べ。そして胸をしめつけるような声。
 編みがさをかぶった踊り手が坂の町を一歩、また一歩と進んでいく。台風の季節に風を鎮め、五穀豊穣を祈って300年以上続く【おわら風の盆】。越中八尾(富山市八尾)では、心と体を震え立たせる、その風の盆がきょうから始まった。
 ことしは、なぜか時折、視界を一陣の黒っぽい風がふきぬけてゆく。妄想ならよいのだが。そして。そんな異物を払いさる透明な純な〈白いかぜ〉が、三味や胡弓、女や男たちの踊り手たちの足音とともに見えない魔物たちを払い、消し去ってゆく。
 そんな気がしてならない。風の盆が台風を追い払う。
 
 夜遅く。私は、動画で昨年の【おわら風の盆〈2017年鏡町の前夜祭〉】の映像を見ながら、両手でなんども〝しな〟を作って真似てみる。そのうち手の〝しな〟で作った波で風を押し返すような、そんな感覚に陥りもした。もう何年も。いや十数年前に久しぶりに八尾の地を訪れていらい、私の足はあの日以降、途絶えたままだ。ことしは、ことしこそは―と思いつつ行けないでいる。来年こそは、とまた思う。
       
 9月。9月だ、なんて。なんだか嘘のようだ。麻原彰晃らオウム真理教死刑囚全員の死刑執行に対する因果応報なのか(多くの人間のなかにはそういう人もいる)。この国の至るところ、全国で自然界が荒れ果てている。豪雨と猛暑で心身とも傷めつけられた分、この7、8月がとてつもなく長く感じられたのは私だけか。それとも、いよいよ自然界とニンゲンたちとの戦い、死闘が始まったのか。
 否、おそらく他の日本人とて同じではあるまいか。
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 午前中、愛知県江南市の福祉センターで一宮友歩会の会長寺澤英和さんらにお会いする。寺澤さんの名刺には【明日死ぬと思って生きなさい 永遠に生きると思って学びない(マハトマ・ガンジー)】の文字が。そこに、ある覚悟と決意の如きものを感じた。
 10月6日に江南女子短大で「信長の話をしてほしい」とのことで、その打ち合わせで出向いた。私が最近、小説「信長残照伝」を書き下ろしたこともあり=この信長残照伝は今春、上梓した「ピース・イズ・ラブ 君がいるから」(人間社)のなかに〈わたしはお類、吉乃と申します〉の副題付きで収録=、かつてこの地を飛び歩いていた吉法師、すなわち信長について話をさせていただくことになった。
 信長について話す。ということは当然、彼が愛してやまなかった、現代社会を先取りした生駒家の吉乃(彼女は現在の江南市小折に生まれ、育った)との世紀のロマンスを話すことになる。それだけに、郷土への理解と関心を深めてもらえるだけでも有り難いことで感謝しなければ、と心底思う。

 午後。能登は七尾の友だち宅に「雨は大丈夫でしたか」と電話。
 美人でいつまでもかわいらしく、着物姿が天下一品の奥さまがたまたま出られ、ついつい長話しに。「こちとら、(田鶴浜や中島の)熊木川はチョクチョクと。よく氾濫しますが。今回は和倉も一部でだいぶ水に浸かったみたいやて…。七尾のまちんなかも少し、どうやろ。ほんながかいね」の弁。それでも、話すほどに被害はニュースで伝えられるほど酷くはなかったようでホッとした。

 デ、ここで話は急転回。
 七尾出身の私小説作家藤澤清造(故人)を愛してやまない苦役作家西村賢太さん=私は最近、彼のことを一方的にこう呼ぶことにしている=が「奥さんとこに泊まられたことがあるみたい。先日、ご主人がそうおっしゃっておいでた」などと話し「【雨滴は続く】=文學界で連載中=を読むかぎり、学歴コンプレックスの塊のような、中学を出ただけの彼(か)の作家ほど純情可憐な男はいない。若い記者をある面、『ただ職務遂行の為にやってきたこの普遍的人種の新聞記者に、それは到底伝わるものとも思えない。』といった表現で、血祭りにあげており私は記者の先輩として気に入った」なぞとも付け加えた。

 写真は地元新聞の記者に触れた部分(文學界7月号「雨滴は続く」の1場面。)
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 奥さんはハアッ、エェッ? ああ、いがみさん、と。何を言っているのか。わからないというそぶりだったが天下の作家の存在だけは知っているようで受話器の向こうで「はぁ、えぇ。うんうん」といった感じで、うなづいておいでだった。
 私はかまわず「僕が七尾で新聞社の支局長をしていたころ、まだ若かった彼、北町貫多(当時はこうとは言わず、ただ小説家をめざす、少し痩せた純粋でおくびょうそうな、目をキラキラさせた一途な若者だった)が私に会いたい、というので雨の日に寺の軒下のようなところで雨に打たれて、それこそ雨滴が続くなかで半分びしょ濡れになって一度だけ、お会いした気がする。あのとき、私は偉そうに何よりも分かりやすく書くのが文学だよ、と言った気がする。彼は覚えていないだろうが」と続けた。

 ただ私、一匹文士(いっぴきぶんし)の言いたいことは貫多が藤澤清造をいつまでも慕うように俺、すなわち〝いがみの権太〟とて家族もろともお世話になった能登を永遠に、こよなく愛している、ということだ。いつの日にか、貫多と文学コラボでも実現できたら、と本気で願っている。
 往復書簡でもいい。♪能登はやさしや土までも、の何たるかをふたりで丁丁発止で話し合ってみたい。ふたりなら、できるはずだ。それはそうと。みなさん。この夏はみんな、大丈夫やったかいね。

 本日のところは、ここらで。