詩「静寂の調べ」

時は黄昏
陽で大地が赤く染まると
ゆるやかな風に乗り
それは流れていく

憂うるような鳴き声
たくさんの家畜たちは
畜舎へ姿を消し
深緑なす丘と
葉々も散り肌色の樹が
寂しげに立っている

静寂に染み入るように
羊飼いの笛の音は
しなやかに流れていく

ギリシャの神パンは
河辺で溜息をつき
葦の葉を揺らして
悲しい調べを奏でた

白い衣をまとう
老いた旅人がひとり
杖を手に
夜を訪ねていく
 
彼は立ち止まり
灰色の瞳を閉じて
笛の音に耳を澄ませる
眠りを誘う調べに
やがて旅人は去っていく

陽は沈み闇が訪れても
羊飼いの笛は鎮魂の調べを捧げている