詩5編/ガチョウの母さん、俺たちギャング団、ボオイ君がんばる、アニマルタウン、象のポオさん

詩「ガチョウの母さん」

いっぱいの
洗濯を取り込んで
ひと息しようと坐り込んだ
ガチョウの母さん
「アー!大変 買い出しだわ…」
買い物カゴを引っ下げて
慌てて家を飛び出した

「母さん! 母さん! 忘れもの」
あとから子供が追い駆けて
大きな財布を手渡した
「ありがとね おやつはドーナツだね」
曲がりくねった道を抜けて
ふうふう言ってスーパーの前
降りたシャッターに「本日休業」
それで母さん周りをキョロキョロ
停車中のバスは隣の町行き
猛ダッシュで乗車口に滑り込みセーフ
フーフーと息切れガチョウの母さん
終着駅の田舎の町をコトコト歩く

ふと見上げれば大きなビルが
「アニマルスーパー本日オープン!」
思わずにっこりガチョウの母さん
自動ドアに胸を張ってドウドウの入場
初売りバーゲンと欲張った食料品は山盛り
さあレジで精算おわって後は支払い
「アーレー」財布をあけたら中は空っぽ
「銀行へ行くのを忘れていたっけ……」
外から車の中で様子を見ていた父さんニコニコ

「母さんおかえり ドーナツは…」
「もちろんだよ あとでいっぱいお食べ」
「帰るの遅かったね どうしたの」
ガチョウの母さん嬉しそうに
「父さんと一緒に車でドライブだよ」

詩「俺たちギャング団」

誰が言ったか知らないが
町いちばんの悪党で
命知らずの五人組
それが俺たち
ブルドッグのギャング団
今夜も町で大暴れ

作戦会議は地下室だ
古いテーブルに地図をひろげて
今夜の盗みはどこにする
あたま寄せ合い標的探しだ

ニンマリ笑ったブルドッグのボス
大きな倉庫に太い手を置いて
今夜はここだと声をひそめる
ゆらゆらと
五匹の影が壁に揺れる
ボスのくわえた大きな葉巻
フウとひと息に煙も躍る

夜の波止場は音もなく
忍び足で五匹のギャング
マシンガンを両手に構え
倉庫の扉を撃ち抜けば
ダッダッダッダッダッダッダ―
そこにあるのは
山と積まれたドッグフード
「フフフフッ、こいつはいただきだな」
すると突いた穴から砂がザラザラザラと
「しっ…しまった―― だまされた!」

パッと明るくなった倉庫の中で
ズラリと囲んだ黒ヒョウの警官たち
手に手にピストルを構えている
「お前たちもここまでだ…」
とうとうブルドッグのギャング団
悪さもおしまいとなりました

詩「ボオイ君がんばる」

ママからもらった
バナナが三本
お猿のボオイ君は
のんきにお散歩
一本目をムシャムシャ
おいしいなあ

オヤと見上げれば
大きな樹で
キリンのおじさん食事中
背が高すぎて顔は見えない
ひらめいたボオイ君
「キリンのおじさん、バナナをあげる」
よいこらせと樹をのぼる
「バナナを食べてよ おいしいよ」
まだ届かない
よいこらせと樹をのぼる
まだ届かない
よいこらせと樹をのぼる
まだ届かない
よいこらせと樹をのぼる
まだ届かない
よいこらせと樹をのぼる
おや…いつの間にかテッペンだ

ボオイ君は二本目のバナナを差し出した
それに気づいたキリンのおじさん
ニッコリ笑ってバナナをモグモグ
「やったーばんざーい」
喜んだ拍子に足を取られて
キリンさんの首をコロコロコロコロ
コロコロ転がって
ドスンと落ちたらキリンさんの背中
お尻を後向きにまたがった
キリンのおじさんがふり向いて
「バナナのお返しに運んであげよう」
三本目のバナナでボオイ君は
高みの見物だったとさ

詩「アニマルタウン」

真っ赤な太陽とふんわり白い雲
緑の山に囲まれたのどかなはずの
町じゅうが仰天する大騒ぎになった

「どうした!どうした!」
いろんな動物達がいっせいに集まり出した

ペリカン駅の広場にある
パンダ銀行に強盗が入った
強盗犯はキツネとタヌキの二人組
ピストルを振り回し「金を出せ!」

窓口では眼を丸くしたフラミンゴ嬢
そこに飛び出すペンギンの支配人
「キツネ様、タヌキ様、どうか冷静に…」
「何をとぼけた事を!」
二人は眼を釣上げピストルを突き出した
事件に巻き込まれた動物客たちは
恐怖の中で立ちすくんでいた

それを見ていた小さな子ネコ
すばやくお巡りさんに電話した
あっという間に駆けつけた
ゴリラの警官たちが
でっかいパトカーから
銀行を囲んで
どっしりと構えている
それとも知らずに
札束を担いだキツネとタヌキ
銀行出て来た二人は大慌て
「これはしまった!」
「それー」と頭に木の葉を乗っけて
煙を上げると
ドロンと消えた

そして意外
あとに残った札束のふくろから
飛んで出たのは
寝ぼけ面したモグラの泥棒
ゴリラの警官に尋ねられ
「あぁー金庫の中で居眠りしてしまったよ」
それでみんなが大笑い
そのままパトカーで連行された

時計台のゾウが三時の鐘を打ち
フクロウの町長が見上げたのは
交番所の掲示板
指名手配はキツネとタヌキ
写真の中の二人がニヤリと笑った

アニマルタウンの日は暮れて
赤い空にカラスが飛んで
どこかでライオンの父さんが
家路を急いで
大きなくしゃみをひとつ
町じゅうに響かせていた

詩「象のポオさん」

今日も天気は上機嫌
誰もいない町はずれ
カランカランと鐘が鳴る

金ピカ衣装を身にまとい
鐘を鳴らす長い鼻
荷車をガラガラ運んでは
象のポオさんやって来た

鐘の音は町をこだまして
駆ける靴音も朗らかに
子供がワイワイ集まった

象のポオさんニコニコ笑顔で
「さあさ 坊ちゃん 嬢ちゃん
 みんないらっしゃい!
今日はみんなにプレゼントだ
魔法の風せんをあげようね」

象のポオさんどっしり坐って
手にはカラフルな風せんの花束
つぎからつぎへと子供に手渡した
大喜びの子供たちは
赤 青 黄色の魔法の風せんに
夢をいっぱい描いていた

「ありがとう!」嬉しい声が響いていた
象のポオさんも笑顔で店じまい
荷車のレバー引いたらオヤ不思議
たちまち荷車はでっかい気球船
やがてポオさん乗せて空を飛ぶ

小さくなった町なみで
カラフル夢の風せん
青い空にユラユラ揺れている
象のポオさんニコニコと
明日はどこまで行くのかな