詩「穴の開いた荷物」

人はいつも理想を抱える
しかしそれは
ありえなくて
とても厄介な荷物なのだが
抱えなくてはいられない
だから心に飢餓が忍び込む

透明なコップに水を汲む
白い器に飯を盛る
獲れた青魚の腹に包丁が入る
屠殺した豚を解体する

水を飲む
白飯を食う
魚の刺身で舌鼓を打つ
煮込んだ豚汁を啜る

井戸につるべを落とし
地下水を汲み上げても
底穴の開いた桶だから
水が漏れ舌打ちをする

満たしてはまた満たされず
また満たそうとする
その桶と同じ
何かが欠けている

それでも人は
どこかで下手な絵を描いて
自分で路線を引いて継ぎ伸ばし
一生懸命水を汲む
一生懸命飯を食う
一生懸命仕事する
一生懸命生きていく

たぶん人の心には穴がある
埋めてはいけない大事な穴がある