詩「悪夢からの待避」
午前二時三十四分
断末魔の叫びで
強打され覚醒する
闇に閉ざされた窓の向こうで
蒼い街灯がこちらを覗いている
置き上がって
風に舞う白いカーテンを
意味もなく眺めている
午前二時四十七分
脳と化した戦慄の世界を
布団に置き去り
パジャマを脱いで
下着姿でうずくまり
窓の外で好奇を誘う月を見上げる
そこは闇が支配する
透明な静けさが不気味に揺れる
午前三時十三分
台所の電気冷蔵庫はそこにいる
それは生命の糧を保ってくれる砦
閉ざされた極寒の世界
二十四時間無休業
フロンガスは凝縮機で液体に
そして蒸発機でフロンは気化し冷却する
深夜の極寒世界へ急接近
午前三時十八分
電気冷蔵庫の扉にもたれ
鈍く優しい振動が全身に響く
低周波の律動した雑音が耳に子守唄を
身体が虚脱し脳が麻痺していく
いつしか機械と自己は同化して
あたらしい生命は闇の中で固定され
どんどん巨大化していく