詩「愛はどこに」
町工場の煙突で
黒い煙が上がる
空はとぐろを巻いて
腹を空かせた野良犬が
それをジッと見上げている
菜の花の
蜜を吸う蝶は捕われて
ピンを突かれ
標本と化し
舞うことはない
森林伐採のなか
間断なく電動ノコが唸る
雛鳥が鳴く巣を載せたまま
大樹は崩れ
親鳥は去っていく
重油に澱んだ海
紺色のさざ波は消えていた
重く真っ黒な海が一面に
海鳥はドロドロに黒くなり
為す術もなく佇んでいる
人類愛の狎れの果てに
私たちは人間の壁を築いて
大きな愛を捨てている
本当の獣は誰だ
地球は人類のものではない
すべての生命に生きる理由がある