黒宮涼の「目」で見、「心」に感じた詩2編

「台風の後」

道端に小さなサンダルがおちている
フェンスの向こうにあるマンションの一階
暴走した風にあおられて
きっとそこから飛ばされたもの
「すみません。このサンダルお宅のですか」
そんなこと言う勇気はなくて
わたしは通り過ぎる
帰り道 同じ場所を通ると
サンダルが綺麗に揃えられて置いてあった
誰がやったかわかるはずもない
持ち主よ 早く取りに来い

「おばあちゃん」

一瞬 両目を見開く
また瞼を固く閉じる
掴んだ手をぎゅっと握ってくる
ねぇ あなたは今 何を思っているの
目は 見えているの
耳は 聞こえているの
想う心は どこにあるのか
それは わたしたちには一生わからない
あなたは わかっているのかもしれないけれど