詩「再会」

やわらかい春空の真昼
要塞のような堤防を上がります
見下ろすと誰もいない広いグラウンド
及び腰で下り 縁を歩きます
花の終わったタンポポが
風の立つのを待っています
シジミチョウが忙しそうに飛びまわります
音のないグラウンド
風はそよともせず
河原を隠す木々と薮
踏み跡を小股で下ります
すると
ホホウ ホウケチョ
ケケケ ケーチョケチョ
姿を見せずにウグイスが
あいさつのシャワーを浴びせてきます
立ち止まり
ほおう ほほほ
ほおう ほうほおう
あごを上げて返します
これくらいにして
足を前に進めたいのです
どうしても
この先へ行きたいのです
拳のような
じゃがいものような
石たちがぎっしりと
ひしめき合って
重なり合って
おしゃべりもせずにいます
白い河原に立ちたいのです
ほら
前が開けて清々しい空気
ぼくの四肢をつかんで離しません
まあ まあ
少しばかり上流の方へ行かせてください
久しぶりに逢いに来たんですから
季節が巡っても
ぼくの気持は変わっていないんです
ああ
あそこです
川床の見える流れの向こう側
中州の端で幹を傾けている一本の木
這うような姿勢で
想っていたとおり若草色を輝かせています
なんと明るく力強い
そして
なんと まあ美しいのでしょう
心が洗われます
心が震えます
どんなに暑くても寒くても
そして
どんな大雨や増水に打たれても
どんな日照り干ばつにさらされても
じっと耐えて
何事もなかったように生きているのです
黙って平気でいることに尊敬を覚えます
そして羨望と嫉妬をも覚えます
ああ 
この淡い春空の下