詩「パパの国」
パパの国
(一)
パパの匂を お土産に
今日も港に 船が着く
もしも私が 男の子なら
きっとなるでしょ マドロスに
ママが夢見た 遠い国
外国航路の あの船で
行ってみたいな パパの国
(二)
青い瞳と ブロンドは
顔も知らない パパゆずり
白いカーゴの 船長さんの
オイル焼けした 横顔が
どこか空似と ドラが鳴る
沈む夕日に 手を振れば
岬灯台 灯が点る
(三)
もしも私が 男の子なら
きっとなるでしょ マドロスに
ママが夢見た 遠い国
外国航路の あの船で
行ってみたいな パパの国
パパの国
詩「母さんのふるさと」
ナツメロを見つけました 古いテープの中に
ヘルスセンターの舞台で唄っていた
かわいい女の子のために作った歌だ
まだ覚えていたメロディーが
私の唇を動かす
(一)
母さんのふるさとは
段々畑の 山の村
リンゴの木 地蔵さん 峠に続く細い道
教えてもらった 草笛を
そっと鳴らして 背伸びすりゃ
子供の頃の母さんが
歩いて来るよな 気がするの
(二)
母さんのふるさとは
汽笛が聞こえる 山の村
茜雲 丸木橋 一番星が写る川
かわいい野菊の 花添えて
そっと浮かべた 笹舟は
おさげの頃の 母さんが
流した小舟に 逢うかしら
昭和が元気だった頃の歌
こんな光景はもう無いだろうか
いや あってほしい
日本のどこかにあってほしい
こっそりと昭和が生きていてほしい
私のために あの子のために (了)
詩「表彰状」
表彰状
あなたは多忙な主婦業の傍ら
日々よく精進を重ねられ
立派に目標を達成されました
その功績を讃え記念品を贈り
ここに表彰します
これは私から私への表彰状です
エッ、授与式の日取り?
分かりません
目標?
言えません
記念品?
秘密に決まっているでしょう
というわけで 私への表彰状は
今日も鏡台の引き出しの中で
静かに眠っております ハイ
詩「青春」
机に置かれた 一通の手紙
バースデーカードだと すぐにわかる
クラスメートのA子からだ
「なんだあいつ 何にも言わなくて」
つい今し方 学校で別れたばかりの
彼女の明るい声が 耳をよぎる
“お誕生日おめでとう、部活ガンバッテね! ”
キュンと胸が高鳴った
「あら、キミもなかなかモテるんだ」
いつの間にか後ろから覗きこんでいた母に
いたずらっぽく笑われて
思わずカードを閉じていた ボク
あのカード あのときめき あの少年の日々
片付け物の中で見つけた 一枚の卒業写真
セピア色の青春は
小さく 小さく
今もボクの心に 息づいていた
詩「初夏」
日除け代わりにと窓際に植えたゴーヤの苗
初夏の日を溢れるほどに浴びて
日々成長していく姿に目を見張る
それぞれに少しずつの違いはあるけれど
苗達はみんな元気いっぱいに育っている
風に戯れる若葉の揺らぎを見ていたら
ふと孫達の顔が重なって思わず口元がゆるんだ
苗達と同じように 少しずつの違いはあるけれど
みんな素直に そして元気に育っていてくれる
ゴーヤの根元にしゃがんで
外れたつるをそっとネットに戻してやる
かわいい孫達の小さな手を取るような そんな仕草で
いつの日か 大きな 大きな
はじけるほどに大きな夢の実を結べと
心にそう願いながら