エッセイ「イギリスとユーゴスラビアの花」
新生「熱砂」の公開に美しいお花を添えましょう。
イギリスとユーゴスラビア、二つの原産国のお花とその小さな花物語です。
ピンクのバラはイングリッシュローズのヘリテージ。
儚げな色合いにふさわしい甘い優しい香りがします。葉の緑もつやつやでとても綺麗です。
ヘリテージとは「遺産」という意味です。イギリスの育種家によって作出されたバラですが、後世に残したいと、この名がつけられたのでしょうか。
花が開くにつれパールを混ぜたように色合いが変化し、はらはらと散り急ぎます。その美しさにうっとり見とれてしまいます。
きょうは猛暑の中、二番花が咲いてくれました。私の喜びです。
うす紫色のお花はベルフラワー。キキョウ科カンパニュラ属で和名は「乙女ギキョウ」だそうです。約一センチのお花をびっしり咲かせます。この鉢とのコラボ、気に入っています。
原産地は東ヨーロッパのユーゴスラビア。ユーゴスラビアといえば、もう二十年くらい前のことですが、わが娘がクラシックバレエを習っていた教室に、政変で命からがら逃げてきたという、奥様は日本人のバレエダンサー夫妻が教えに来られるようになりました。バレリーナの奥様は生活を支えるためにガソリンスタンドでも働き、やがて独立して教室を始められたと聞きました。
娘は途中からオーストラリアの小学校へ行きましたので、お世話になったのは短い期間でしたが、ベルフラワーからそんなことをフッと思い出したりして。今は緑の葉を鉢いっぱいに茂らせて、静かにお花の季節を待っているようです。この優しい色合いと可憐な花姿、大好きです。
旧ユーゴスラビアは、現在はボスニア・ヘルツェゴビナという国なのですね。