「ニッポンのなれの果てで正義を叫ぶ!」 山の杜伊吹

 世の中腑に落ちない事ばかりの矛盾だらけで、じれたり怒ったり腐ったり諦めたりアキれたりの繰り返しであるが、私たち日本人はいつから声を無くしてしまったのだろうかと思う。
 大地震がおきて極限状態下においても礼儀正しくふるまう日本人が世界中に賞賛されたのは記憶に新しい出来事であるが、地震の前からお金がなかったくせに、なにもかも地震のせいにして財源がないだので鳴り物入りのまにふぇすとやらなんやらが馬にニンジンの如くぶらぶらと目の前にぶら下がり、まだいたいけな心を持っていた多くの日本人が真に受けて民主党に政権を託してみたら、高速道路は高いままだし油代も安くなるんじゃないかと期待だけ持たせ値上がり放題の打つ手なし、子どもたちにバラ色の未来が待ち受けているかの如く喧伝されて何も知らない親たちはだまされ清き一票を入れ、年金も約束された老後、無駄な公共事業はきちんと選別されて今年の三月の工事ラッシュの大渋滞もきっとなくなるんじゃないかと多くの日本人は思っていたんじゃないのか。
 福島の子どもたちが老人ががれきに埋もれ、生人もかの地に戻れず屍も探しに行けぬ程うさぎおいしふるさとが汚染されてしまったというのに、もう原発を再稼働させようとしている。
 太宰が芥川が川端が三島が生きていたら、彼らの筆はどんな声を発したろう。アァ岩手の澄みきった空気と端麗な水と秀麗な地が産んだ詩人、宮沢賢治は何と言ったろう。
 固定資産税に自動車税にナントカ税・・・消費税もあがるって?
 でも日本人はじれじれとねじれ国会を見つめるだけで立ち上がって拳を突き上げたり叫んだりしないのだ。
 そんなことをするとあの人は左だとか右だとか偏っているとか変人だとか思われたり言われたりするのを恐れているのだ。そして誰かがなんとかしてくれないかと思っているのだ。
 誰も助けてはくれないのだ。これは突出した才能を認めず、個性をつぶす教育を施してきた結果なんだよ。今、社会で力を発揮すべき第二次ベビーブーマーたちは、結婚も出来ないんだよ。自分の配偶者も見つけられないのに、社会を変える力があると思うかい。男の精子は泳がないし女は金しか信じない。その下のゆとり世代の多くは血の汗も涙も知らない。ちょっと頭のいい奴は、みんな日本を捨てて海外さ。
 日本人は低賃金で真面目に働くようにハメられてしまったんだね。大事な仕事もボランティアという便利な言葉で、タダ働きさせてて平気なんだよ。
 早朝から深夜まで毎日働き、休日出勤の代休なし、タイムカードは押させてくれず残業カットでも文句も言えない日本人に、どうしてしたたかな諸外国とやり合って尖閣諸島を守れるっていうのさ。
 でも職場でも地域でも、わがままな奴程、得をするっていうかあいつウルサいから言う事聞いとけみたいな風潮もずっと続いているよね。やり合ったり議論し合ったりする気力もないんだ。そんなのメンドくさいって思うようしつけられてる。大人しくて弱い人間が損をして、ずるい奴が甘い汁を吸って生きている、日本ってもともとそんな国だったのか、先生と呼ばれる人たちにお聞きしたい。 
 団塊の世代の大人たちも悪いよね。常識だとか地位とか金には細かいのに、情に乏しくて、好き勝手に生きて、子どもに迷惑かけてる人のなんと多い事か。
 お人好し日本人はいま試されている。裏切った政治家を赦すか。親を許すか。去勢されて羽を切られ声を失った我々は、マグマのように行き場のない怒りをためてるんだ。