2016/01/02
昭和のころ。かつて、あの岐阜県庁汚職や長良川決壊豪雨取材に明け暮れていたころ、若き新聞記者だった私を、桜のお宿「住吉屋」などで幾度となく励ましてくださったのが、今は亡き作家、宇野千代さんだった。彼女が樹齢1500年の根尾の淡墨桜(うすずみざくら)を前に「この桜はネ。齢を取ればとるほど若く美しくなっていくの。老いるほど輝くの。雨にうたれてもジッと耐えている、ちいさな花びらを見るにつけ愛おしくって」と話してくださった言葉は今も頭を離れない。
その千代さんが書き続けたのが【生きていく私】。そして。その強い意志にそって書き続けているのが私、伊神権太の【生きてゆく人間花たち】なのである。そこには生と死、愛、喜び、悲しみ、苦しみの世界が広がる。人間たちは所詮だれもが悲しい涙の道を歩いて逝く〈いきもの〉なのか。いやいや、そうではない。生きとし生きるもの全てが希望に向かって困難を乗り越え歩いてゆくのである。(伊神権太、2016年1月1日記)