「大正琴と共に」 牧すすむ
「ハーイ、皆さん、ストップ、ストップですよ」
教室に鳴り響く合奏の音に私の声が割って入る。楽器は大正琴だ。
「皆さんは自分の琴の音の狂いに気が付きませんか? 調弦をもう一度やり直して下さい」
私の声に生徒達はそれぞれ調弦機を手に弦を弾く。
ギターやバイオリン等の弦楽器は使う前や時間の経過、温度や湿度の様子を見て時々調弦し直すことが必要であり、大正琴も弦楽器なので例外ではない。
昔は音叉(おんさ)という、U字型の磁石に柄を付けたような形の物を何かに打ち当て、その振動で発する音に合わせたり、調子笛という小指サイズの笛を吹いて合わせていた。でも今は針の動きで合わせられるチューナーに変わり、初心者でも簡単に調弦が出来るようになった。更に携帯にその機能を持たせた物まであり手軽さは格別。便利さにただ感謝である。
「では合わせてみましょうね」
調弦をし終えた琴を一斉に鳴らしお互いの音を聞き合う。今度はOKだ。さっきとは全く違う澄んだ音色が辺りを包み、本来の魅力を取り戻した大正琴達が美しいハーモニーを奏で始め私の心をどこまでも続く夢の世界へと誘って行く。
大正琴の指導を始めて早や四十五年余り。数えきれない程の生徒達に出会った。その中で楽器は音色だという基本を教え続けてきた。おかげで他所(よそ)様からも「貴方の会の演奏は音が綺麗でステキですね」とお褒めの言葉を頂いている。それは私にとって最高の宝物である。
元々、若い頃クラシックギターを弾いていた私は、その当時に培った弦の音色が今も耳の奥に染み付いている。楽器が変わってもこの耳が求めるものは同じでありこれこそが私の音楽の源なのだと改めて思ったりもする。
人に教えるだけでなく、その信念を持って私自身も国の内外を問わず数々の舞台でソロ演奏や息子との二人弾きを続けてきた。広いホールの隅々にまで自分の指から流れ出す大正琴の音が響き渡り、その瞬間に呼吸が止まったかのように静まり返る客席との攻防が、私の心を熱く燃えさせてくれる。正に戦いだ。
それはそれとして、幸せなことに教室でも音色についての質問は多く有り生徒達にも私の思いは確かに伝わっている。真似しようとひた向きに努力する姿勢は眩しい程に私を照らしてくれる。
「頑張ってね」と心の中でエールの声を掛ける毎日に笑顔は絶えることがない。
ここで大正琴について少し説明をさせて頂くことにしよう。この楽器はその名の通り大正元年に名古屋の大須で産声を上げた。つまり今年で百十四歳になります。森田吾郎という人が海外で目にした様々な楽器や音楽は凡そ日本とは掛け離れたものだった。誰もが気軽に楽器を手にし、国中に歌や踊りが溢れていた。日本での芸事習い事と言えば上流階級の人達のするものと限られ、庶民には高嶺の花でしかなかった。
帰国後すぐ彼は日本の文化の遅れを取り戻そうとアイデアを凝らし、小型の和琴である一弦琴にタイプライターのキーを組み合わせた楽器、つまり大正琴を完成させたのです。そしてそれを世に出すと、安価な上に誰でも簡単に弾くことが出来、軽くて持ち運びも楽とのことで一大ブームを巻き起こし、庶民の娯楽に不可欠な逸品となりました。
その人気ぶりは国内だけに留まらずアジア各国にも盛んに輸出され、名前こそ違うけれどその名残を留める楽器に出会う度に思わず見入ってしまうのです。
そんな大正琴故に、携わる者としてこの楽器の全てを愛しみ一人でも多くの人達に親しんでもらい、掛け替えの無い日本発祥の音楽文化を後世に繋ぎたいとの思いで日々生徒達と共に精進を重ねている私です。
楽器の音は、歌は、全てが音色。この先も大好きな大正琴と共にどこまでも音色にこだわり続けていきたいと心から願う毎日です。(完)
「二元論~裏が表で表が裏で」 伊吹
クルマが壊れた。とうとう。水漏れのチューブを直し、ワイパーのゴムを取り換え、バックライトを交換し、車検も自分で自動車検査場行って、書類を提出して、国土交通省のお役人の前で、排気ガスやブレーキやヘッドライトの検査などをクリアして通した。ユーザー車検ってやつだ。
費用はクルマ屋さんの見積もりの10分の1ほどで済んだ。夫婦で歓喜して喜び「車検通っておめでとう」たまにはいいよね、と鰻を食べて祝った。
そのわずか1カ月後、7万円の純正バッテリーが換えてわずか1年半でおじゃん。挙句の果てに、高速のトンネルの中でクルマが止まるという不測の事態に見舞われ、レッカー移動(人生で初めてレッカー車に乗った)、その会社が悪徳レッカーだったりと踏んだり蹴ったりの最悪のパターン。
故障は、頭脳部分のコンピューターで、50万を超える見積もりが出て、愛車とさようなら、突然のお別れ。古いクルマを大事に、節約して乗ることに大きな価値を見出していたのだが、それが良かったか悪かったか。
それから約2カ月、クルマなしの生活に耐え、やっとこさ来てくれたクルマを森蔵(モリゾー)と名付けた。※名前の由来は割愛させていただく
中古の森蔵よ。よくぞ来てくれたありがとうね、と気持ちを伝えたところ、森蔵は「走りは俺に任せろ。お前は正しい運転をするだけでいい」と言った。
中学生の娘は、森蔵はなんか弟感あるんだよねーと、気にいったようす。でも車内が新車のような匂いがして乗り物酔いしそうだから、お母さんが大好きなたこ焼きを車内で食べてあの匂いを消してほしいという。よしきた、車内でたこ焼きを食べるぞ。
ところが、来たばかりのクルマの中でたこ焼きを食べると匂いが付くから食べてほしくないと主人がいう。食べるか、食べざるべきか。どっちでもいい。どちらも正解、両方に価値がある。
知覚過敏の主人と息子の歯ブラシは「やわらかめ」、スッキリきれいにしっかり磨きたい私の歯ブラシは「かため」、その中間の磨き心地がいい娘の歯ブラシは「ふつう」。そのどのこだわりにも価値がある。
右と左、大きい小さい、好きと嫌い。
私はこっちの方がいいと思うんだけどな、と内心思っても、クライアントのいうようにハイハイ作ります。
結果的に、どっちが良かったかなんて、わからない。わからなくていい。変なこだわりは、さっさと捨てる。
S極N極、どちらかに寄ると、偏った人になる。生きづらくなる。だからできれば中間にいたい。SにもNにも両方同等の価値があるから、寄りたきゃ依ればいい。それはそれでポリシーのある生き方でかっこいいといえる。それがこだわり。
いい、悪い、善と悪。みんなで寄ってたかって叩くワイドショー、年数経ってみれば、悪人が善人だったり。信用していた人が信じられないくらいトホホな奴だったりする。
一見良いと思えることも、前述のクルマの件みたく後でアレレということにもなりまして。
―もっと早くクルマを手放すタイミングはあった。車検の前に買取業者で見積もりとったら、40万で買い取ると言われたっけな。でも頭脳が壊れたらゼロ査定になった。後のまつりだね―
あなたと結婚していいこともあったな。寝るときも淋しい夜は一日もなくなったし、かわいい息子と娘を授かった。でもそれと同等か、それ以上の苦しみも味わったな。
不肖の父とは今も音信不通だけど、おかげで父はいないものとしてたくましく育ち、血のつながりのない父親のような方たちに、かわいがってもらえている。そして、冷たい両親のおかげで、期待をしない、甘えない、あきらめることを身をもって学んだな。
白と黒は陰と陽の両面あって、その境界線はぼやけているんだね。それを理解すると、すべての人、モノ、出来事に価値があると気付く。
ああ、今朝も起きたら、森蔵が家のガレージにいてくれる。今日も森蔵に乗れる。うれしいたのしい。自由に動く手足がある。顔を触ると、いつも通りつるつるしていて健康だ。本当にありがたいね。すべてにありがとう。(了)
一匹文士、伊神権太がゆく人生そぞろ歩き(2026年2月~)
2026年2月9日
第51回衆院選が8日、投開票され、自民党が公示前勢力を大きく上回り、単独で絶対安定多数の261議席を超え、定数の3分の2に当たる310議席を確保。高市早苗首相は同夜、「公約を確実に実現していく」と述べた。立憲民主党と公明党による新党「中道改革連合」は小選挙区の大部分で議席に届かず、元立民は公示前勢力を100議席以上減らした。参政党は公示前を上回る議席を確保し、チームみらいは衆院で初の議席を得た。
いやはや、世の中、何が起こるか知れたものではないというが、このことを言うのか。
きょうの偽りのない紙面は次のとおりである(中日、毎日新聞朝刊)

独断専行を排してこそ 与党圧勝、首相続投へ(中日新聞社説)

そして。朝刊各紙に続いて出た9日付の日本経済新聞夕刊見出しとなると、だ。【高市自民316 戦後最多 中道惨敗49、維新は36 第2次内閣中旬に】【中道両代表、辞任不可避 野田・斉藤氏が引責】と、見出しという見出しが雄叫びをあげたのである。実際、リード部分(前文)は次のとおりである。
――第51回衆院選は9日午前、465の全議席が確定した。自民党が316議席を確保し、単独で定数の3分の2を上回った。ひとつの政党が獲得した議席数としては戦後最多になった。立憲民主党と公明党が結成した中道改革連合は49議席に減らして惨敗した。
ここに記録として9日付の日経本紙夕刊の写真も残しておこう。

自民党過去の獲得議席(NHK画面から)

2026年2月8日
衆院選の開票日当日。
朝。起きると、空は雪景色だった。まっしろに輝く華麗な外の風景を目の前に、なぜだろう。かつて共に過ごした家族の一員だった、あのシロちゃん(オーロラレインボー)の笑顔が目の前に大きく迫り、そして浮かんだ。「ヨシッ、シロちゃん。きょうも一緒に聴くぞ」。
そう遺影に向かって呼びかけた私は。これまた今や、この世の人ではない、たつ江(俳人であり詩人、歌人でもあった妻伊神舞子)の遺影にも向かい「それじゃあ。一緒に聴こう。シロちゃんも一緒。ここにいるからね」と言い、スマホを手に、ユーチューブで🎵エーデルワイス🎵みかんの花咲く丘🎵能登の明かり、の順に聴き入ったのである。
2026年2月7日
きょうは7日。土曜日である。日本初の女性内閣誕生となった高市政権の命運がかかった衆院選は、いよいよ、あす投開票される。どんな結果になるのか。多くの国民が注視しているに違いない。
話は変わるが。私が「脱原発社会をめざす文学者の会」幹事会の要請を受け、過去5年近くの長きにわたって月イチで執筆を続けてきた文士刮目(ぶんしかつもく)=アドレスはhttps://dgp-bungaku.com=がきのう、6日公開分で終わった。執筆にあたってお世話になった関係者の皆さまには心から感謝し、お礼を申し上げたい。最後の一文は、私が尊敬する三鬼陽之助さんの言葉「あなたのところは、大丈夫か」で締めさせて頂いた。
この間、私は従来どおり毎週一回、金曜日の社交ダンスのレッスンをこれまで欠かさず続けてきたが、この社交ダンスは亡き妻たつ江(伊神舞子)が亡くなる前に「社交ダンスだけは健康のために続けてよね」と私に託された約束でもあった。それだけに、私はこの先もずっと続けたく思っている。
というわけで、昨日も午後、レッスン会場である一宮のスポーツ文化会館へ。若先生の指導の下、社交ダンス仲間のトウニーやおトキさん、悦ちゃん、ヨシコ姉さんらとのレッスンに励んできた次第である。きのうもジルバを最初に次いでタンゴ、ワルツ、ルンバの順に挑んだのである。舞が私の踊る姿を見たなら、なんていうだろう。えぇ~、信じられない。ほんとうなの! と言って目を輝かすに違いない。
悦ちゃんと組んで踊るブロンズ級【シークレット・ガーデンの〝Anticipation〟】。そしてルンバ。その姿を目の前に「えっ」と感嘆の声を上げたあと「ウソ。本当なの」と目を輝かすに違いない。私にとっては宝物(今もだが)だった舞。たつ江は、もはや、この世にはいないのである。あのどこまでも可愛いくて日々、リサイクルショップの仕事に挑みながら、大好きなフォークダンスと俳句、短歌に打ち込んでいた舞、たつ江はもはや、この世にはいない。でも、私の心のなかでは永遠に私と一緒に生きていてくれるのである。
(2月6日)
金曜日。本日付の中日夕刊は、【エンゲル係数 44年ぶり高水準 25年食品高騰響き28.6% 物価高家計の重荷鮮明】【聖火がやってきた ビッグエア日本好発進 ミラノコルティナ五輪】【米ロ核軍縮半年順守へ 新START失効 交渉調整 米報道】といったところか。
中でも少し驚いたのは、【「高市政権支持」 トランプ氏表明 選挙中に異例後押し】との日経紙の夕刊報道。そして。その記事は次のようなものである。
【ワシントントン=共同】トランプ米大統領は5日、自身の交流サイト(SNS)で、衆院選に関し、高市早苗首相(自民党総裁)と自民、日本維新の会の連立政権を「完全かつ全面的に支持する」と表明した。米大統領が日本の選挙戦期間中に特定の立場を示すのは異例。3月19日に高市氏をホワイトハウスに招き、日米首脳会談を開催する予定であることも明らかにした、としている。
(2月5日)
本州有数の寒冷地として知られる岐阜県高山市荘川町六厩で4日朝、大気中の水蒸気が結晶になって輝く「ダイヤモンドダスト」が姿を見せた。――とは、本日5日付中日新聞1面の記事である。見出しには【川面に宝石 高山・氷点下18.5度】とあり、写真付きである。
こんな記事を読んでいると、やはり、この世は不思議で面白い。と、思うのである。
ほかには【米ロ新STARTきょう失効 戦略核増強の恐れ】(中日)が気になる記事である。次のような内容である。
――核戦争の回避に向けて、世界の核兵器の9割近くを保有する米国とロシアが結ぶ核軍縮合意「新戦略兵器削減条約(新START)が5日、失効する。戦略核弾頭や大陸間弾道弾ミサイル(ICBM)の数を制限してきた唯一の歯止めがなくなり、核軍拡競争の加速が懸念される。
西濃運輸の年間レンタルボックス代11万8800円也を銀行に出向いて払い込む。現役時代に大垣から大津に転勤する際に西濃運輸さんのレンタルボックスに預けた各種資料や書物類がその後30年にわたってそのままになっており、毎年確定申告に合わせレンタル料を払い込んでいるものだが、そろそろ江南の自宅に搬送してもらわなければ、と思いつつもそのままになっている、というわけだ。
一度どんなものを預けたままにしてあるのか。見にいかなければ、と思いつつもそのままの状態が続いている。もしかして。かつての貴重な取材資料など金銀財宝級の秘物があるかもしれない。なのに、である。私は30年近くの長きにわたって西濃運輸さんのレンタルボックスに預けたままなのである。人が聞いたら笑うかもしれない。そろそろ撤去して江南のわが家に運ばなければ、とは思っている。
昼、小牧時代の友人、小畠辰彦さんが来訪。近くの中華料理屋さんで食事をしながら。雑談する。
2026年2月4日
中日新聞本紙の本日付の通風筒は「◇…三重県四日市市の海山道(みやまど)神社で3日、神社がまつるキツネの婚礼を再現した厄よけ神事「狐の嫁入り道中」があった。厄年の男女がキツネの面や尾を着けて新郎新婦役を演じ、大勢の参拝客がほほえましく見守った……」というもので地域社会の伝統行事がよくわかる内容。この日は第2社会面でも【幸せ振りまく福の神 大須観音「節分会」にぎわう】の記事で、節分ならでは、の紙面展開が目立った。
ほかには【大雪各地で被害相次ぐ 除雪中の事故か 山形で2人死亡】【新潟で建物倒壊 男性2人が死亡】と相変わらず、ひどくて深刻な東北地方の積雪が報じられている。雪の報道はNHKでも同じで、このところは連日「雪かきなどに注意するように」と報じられている。一体全体、この雪の被害はいつになったら雪は収まるのか。気がかりなところである。
大雪による被害そして死者 気になる報道が続く(NHK画面から)


(2月3日)
青森は大変な積雪のようで、なんだか雪の少ない平和な国尾張に、こうして住む私たちの存在そのものが申し訳ない気がしてしまう。雪国の雪が少しでも少なくなることをただ、祈るのみである。
それとは別に、だ。1億9000万円もの現ナマを香港へ運ぶ途中に羽田空港駐車場で襲われた男性4人のうちのひとり、30代の男性が昨年、東京都中央区で9500万円相当の外貨を盗まれていたことがその後、わかったーとは本日付の中日新聞朝刊。【昨年も9500万円盗難 羽田空港で襲われた男性】の見出しが躍り、この世の中、このところの事件は判然としない内容が多すぎることが気がかりである。香港での盗難事件もあわせ正直言って犯罪集団が一体全体、なぜ、どう暗黒社会を動き、得体の知れない事件が次から次に重ねられていくか-が私には分からない。
朝刊はほかに、愛知県豊田市のアパートで会社員小川晃子さん(42)の遺体が見つかった殺人・放火事件で、殺人の疑いで31日に逮捕された交際相手の北島卓容疑者(45)に触れ【逮捕時、女性宅の鍵持たず 豊田殺害 容疑の交際相手、送検】の見出し。
きょうは昼、平和堂内の食堂できしめん定食をたべたが、なかなかおいしかった。続いて帰る途中、コンビニのファミリーマートに寄ってノート2冊と恵方巻きを買って帰る。夕方、岐阜の知人(ダンス仲間)から私のスマホのラインに飛び込んだ映像は、ネコちゃんが【福は内】と叫びながら豆まきをしている微笑ましいもの。妹はじめ、親しい友人にもラインやインターネットで送ったが、さっそく「かわいらしい豆まきだわね」とは、わが妹からの返信であった。
本日3日付夕刊は、中日が【東京転入超過6.5万人 25年40道府県は流出】【豊臣兄弟が招く福 千葉・成田山新勝寺】、日経が【米、インド間税18%に下げ 両首脳 電話協議で合意 ロシア原油購入停止受け】。
(2月2日)
けさは、2階のトイレから出る際、水を流したところ、水が詰まってあふれ出てしまい、雑巾を総動員してふくなど大変なる失敗、失態を冒した。水の流し方が悪かったのである。こんなわけで、新聞を読むことに始まり、能登の明かりをスマホで聞くまでの一連の動きが台無しになってしまった。こんな時、舞とシロちゃんがいたなら、「ホラホラ。また何をしちゃったのよ」とふたりそろって飛んできてくれ、テキパキと全てをアッという間に正常に戻してくれるのだが……。
この失態も、私がそれだけ〝おじいちゃん〟になってしまった証拠なのか。それでも舞が生前「そういう時にはこれでしっかり押すのよ。そしたら、治って元に戻るから」の言葉を思い出し、下のトイレの片隅に置いてあった柄杓のようなものを探し出し、物は試しでそれで力いっぱい押すと、トイレの水はなんと。音をたてて流れ、これまでとは信じられないような快適な音をたて流れていったのである。
まさに「やれやれ」とは、このことか。わが妻たつ江と愛猫シロがいたなら。ふたりでナンダナンダと(半分、興味本位で)走って飛んできてくれ。アッというまに助けてくれるのに、とつくづく思い、わが家にとっては、まさに宝も同然であった〝ふたりの存在〟の大きさをあらためて思い知ったのである。やれやれ、とはこのことか。
午後。名鉄布袋駅近くのスーパー、マックスバリューへ。買い物をする前に、たまたま最近、布袋駅構内で開店した食堂「お多福」なるお店に初めて入った。ここで親子丼を食べたが、これがメチャ美味しかった。それこそ、久しぶりの親子丼であった。
帰宅後。いつもの五郎油さんから灯油を配達してもらう。56リットルで7280円也だった。
2026年2月1日
早いものだ。もう1カ月が過ぎ去った。
昨夜は遅くまでかかり、私たちのウエブ文学同人誌「熱砂」のテーマエッセイ(今回のテーマは<こだわり>)を執筆。深夜から未明にかけ、締め切りにぎりぎり、滑り込みセーフで書き上げた。執筆するには大変な体力も必要だけに、やれやれではある。でも、このテーマエッセイ。読者の間の評判も良いだけに、今後も「熱砂」が存続する限り、続けていきたく思っている。みなさん、ぜひお読みくださいね。
けさの新聞見出しは【国防の島連呼なし ―割れる民意 衆院選2.8― 【台湾有事】苦悩する与那国】【日英鉱物供給網で連携 首脳会談サイバー協力新枠組み】【パリ五輪でも被害多発 アスリート中傷 冬季7団体対策】(いずれも中日朝刊)……といったところか。
テーマエッセイ第四十二回「こだわり」が公開
テーマエッセイ第四十二回「こだわり」が四作品公開されました。
「シール箱の中」黒宮涼/「あぁ~能登半島」伊神権太/「二元論~裏が表で表が裏で」伊吹/「大正琴と共に」牧すすむ
それぞれに「こだわり」ぬいた作品を、ぜひお楽しみください。
(編集委員 黒宮涼)
「あぁ~能登半島」 伊神権太
何にこだわっているのか? こう問われたら。私の場合、何だろう。こだわりと言えるかどうか。少し違うかもしれないが、だ。私がこれまでにしてきた趣味もこだわりのひとつかもしれない。社交ダンスにハモニカ、横笛の演奏、端唄、小唄そして都々逸の吟詠、朗詠など数限りない。ほかに小学生の頃に漫画の〝いがぐりくん〟に憧れ、中学の頃からずっと大学時代まで続けた柔道一直線にも、こだわったといえば、こだわり続けたか。おかげで大学在学中に講道館柔道三段を取得。オールミッション柔道大会では優秀選手賞にも輝いた。
では、今現在の私のなかでの本物のこだわりとは、何だろうか。やはり、一歩進んだ「執着」となれば能登半島への熱き思いにほかならない。そして。なぜ? と問われれば、だ。2年前にその能登半島で大きな地震が起き、これに追い討ちをかけて能登豪雨水害までが発生。私たち家族が大好きだった能登半島の至る所で多くの人々が家族の命を奪われ、家屋が全壊や半壊。それどころか、津波がおき、和倉温泉や千枚田が壊滅状態になるまでに被災。朝市で知られた輪島が焼失、海女さんらの大切な漁場だった海の海底が4㍍も隆起、さらには液状化現象など……自然をはじめ家屋が、人々の心という心までが傷ついたからである。
私は、かつて新聞記者として家族もろとも5人、それに飼い猫のてまり(てまりに関わる小説「てまり」は日本ペンクラブの電子文藝館=https://bungeikan.japanpen.or.jp=でも収録)。そしてうさぎの〝ドラえもん〟も加えれば7人家族で、かの地・能登半島に7年間、住んでいたのである。だから。「能登半島のことはもう忘れなさい」と言われたところで忘れるわけにはいかない。忘れられないのだ。事実、石川国体では、当時七尾高校生だった長男がボートの部に出場、新聞にまで掲載された話も今となっては家族の貴重な思い出である。
そして。このこだわりを増幅させるものといえば、だ。それまでの勤務地・空港担当記者として全国各地の事件、災害現場を飛んで回った空飛ぶ記者(小牧通信局)から能登半島・七尾支局長に転任するに当たり「能登七尾・和倉温泉の三尺玉花火が台船提供者の非協力で危機に陥っている。なんとか君の突破力で三尺玉花火を再生してほしい。これは社長(加藤巳一郎さん)命令だ」との社命を受け、決死の覚悟をして乗り込んだ。そんな思いが今も脳裏に強い映像となって焼き付いて離れないからである。
転任に当たって妻たつ江(伊神舞子)が私の代筆として新任地・七尾で書いた挨拶状は以下のような内容だった。
――秋立つ夏の日。私たちは半島の土を踏みしめました。小牧在任中は、多くの皆さまに助けられ感謝感激です。/汽車の窓に広がる鉄のようなさめた深緑。車に向かい手をふる能登の子ら。透き透る日本海……能登の初印象は、清れつさと優しさ。そして美しさ。今は家族五人の胸が大きく高鳴ってもいます。/私にとっての七尾行。社に入り、それは七度目の新天地です。小牧では〝空飛ぶ記者〟として七年いました。ことしの和倉温泉中日花火大会はくしくも七回目、すべて七づくしのスタートとなりました。/これからは能登の人たちはじめ、この土地の自然、風土、文化をこよなく愛し、がんばります。まずは着任のごあいさつまで。
早いもので、あれから40年近い。今は亡き妻は七尾在任時には北陸本社の田村代表から社始まって以来初の「内助の功」賞まで受け、涙にくれもした。私は、その後、大垣、大津、一宮、名古屋本社特報・サンデー版デスク長……と各地を転々と流れ流れて。定年後はドラゴンズ公式ファンクラブの1スタッフとして、同僚らと中日スポーツ紙面にファンのコーナー・ファンクラブ通信の欄を手がけ幸い、このコーナーは存続。今に至るのである。
こだわりといって良いのか。能登半島地震が起きて一年後。私は友人の牧すすむさん=琴伝流大正琴弦洲会会主で大師範。作曲家で詩人。「熱砂」同人=と能登半島地震復興応援歌【能登の明かり(岡ゆう子さん歌、安本和秋さん編曲)】をつくった。というわけで、今は少しでも多くの人々にこの歌を歌って頂けたらと日々願っている。これも、こだわりのひとつ、だといえよう。(完)