詩「~ 夢 ~」

若い頃 あぐらをかいた 自分の膝に
指でなぞった 〈夢〉という字
あれから いつも 一緒だった
ボクの膝の指文字クン

あの夢はもう近い? それともまだ遠い?
エッ 〈道半ば〉 って?
ハハハ まぁ そんなとこか

じゃあ また頑張って歩こうや 道連れの人生
ヨロシク ずっと ずーっと よろしくね
ボクの膝の 指文字クン
                (完)

詩「階 段」    

ワァー! 高いナァ この階段は
目をこらしても 先は見えない
いったい何処まであるんだろう

とにかく一段上(のぼ)ってみよう
ン.大丈夫だ もう一段
力まかせに もう一段
勇気を出して あと一段

気が付けば エッ.こんな所まで
振り向く下に広がる 美しい景色
なんて気持ちがいいんだろう
おや? 誰かが上って来るよ
足音が聞こえる いくつも聞こえる
ガンバレ! ガンバレ! ほら もう少しだょ

さあ 私もそろそろ出発だ
ヨイショで一段 もう一段
手すりにとまって また一段
見上げる先は まだまだ遠いけど
次の景色が 待っててくれる
先の誰かが 待っててくれる

かけ声掛けて もう一段
元気元気で あと一段
上って行こう 笑いながら
上って行こう 楽しい楽しい人生の階段  
                (完)

詩「母」

仕事帰りに母を訪ねた
すっかり白くなった髪
小さくなった背中
でも優しい笑顔は変わらない

  倖せな時間に包まれた私

帰りしな母の手をそっと握って
「風邪をひかないでネ」と言ったら
「お前こそ気ィつけてナ」
そう言って握り返した手はとても温かだった。

  母は私のふるさと

見送りながら微笑む母の目の中に
私の全てが息づいていた

詩「 約束」

〝指切りげんまん ウソついたら針千本の~ます〟
 子供の頃 よく口にしたっけな
 でも 守れなかった約束なんて山程ある
〝針千本の~ます〟 か……

 考えてみれば 夢とか希望  それも約束のうち
 自分が自分と交わす約束なんだね
 幼い頃のあのかわいい夢も
 大人になって見る夢 そして希望も全部ぜ~んぶ約束
 だ

 指を切るのは痛いし 針千本は飲みたくない
 ましてげんまん 拳の1万回なんてとんでもない話し
 となれば 自分との約束だってしっかり守らなきゃ~
 いくつになっても夢は持てるし 希望だって
 そう 希望は人生の道灯りさ

〝指切りげんまん ウソついたら針千本の~ます〟
 まだまだやれそうな気がするな ハハハ

                弦洲
        ☆        ☆

【同時掲載】詩人牧すすむ=琴伝流大正琴大師範、弦洲会会主=自筆による詩「約束」(記念誌『三十回~そして未来へ~弦洲』の~詩のページ~から)
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詩「ある日の日記」「ある日の日記 パートⅡ」

   ある日の日記

帰宅した夫に嬉しい報告
「今日ネ、お店の人にすっごく若く見られちゃったの。フフフ」
ルンルン気分の私に
「ふーん、そう」愛想も何も無いひとこと
然も顔はテレビに向いたまま
気まずい沈黙……。と、その時
「ヘーッ、ママすごいじゃない!」
背後から重い空気を割って入った娘のことば
「だって ママのこと若くてきれいな人ねって
みんな言ってるよ。ホントよ」
思わず口元が緩んだ私にすかさず第二の矢
「私ネ、あそこのお店で可愛いワンピ見付けた
の。きっと似合うと思うんだ。だってママの
娘だもん」
ムムッ! 敵はそう来たか
中学生になった娘
彼女は早くもリッパな〝オバさん予備軍〟である

   ある日の日記 パートⅡ

マニキュアを塗りながら 夫との会話を思い
出していた
それは居間でテレビを観ていた時のこと
画面の中では数頭のライオンが獲物に襲い掛
かるシーン
弱肉強食の切ない自然界の摂理だ

その時 夫が私に言った
「あれは全部メスなんだよ、メスが狩りをする
んだ」
更に続けて
「俺もお前に狩られたんだよナ」
すぐさま私も反論
「私はあなたの毒牙に掛かったのよね」

少し濃いめのピンクにしたマニキュアは も
う乾いたようだ
両手の指をライオンのかぎ爪のように曲げて
顔の前にかざし
鏡に向かって〝ガオーッ〟と吼えてみた
そしてひとりで笑い転げた
ある日の午後