「日本のおもてなし」 黒宮 涼

 滝川クリステルさんの招致プレゼン。「おもてなし」と彼女の言葉がニュースで流されていた。
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 2020年に東京五輪が決定したことは、正直に言って驚いた。何となく、無理だと思っていたから。というより、自分には関係ないことだと思っていたからだ。しかし、今回のエッセイのテーマが東京五輪である。関係ないと言っている場合ではなかった。
 しばらく書き物から離れていたせいもあってか、困ったことに何も頭に浮かばなかった。とりあえず五輪の知識が圧倒的に足りないと自分でも思う。前回の東京五輪でさえ、みんながテレビを購入するきっかけとなった、という学校の授業で習う程度の知識しかないのだから。

 最近の若い者は。と言われてしまうのも仕方がないことと思う。先日、友人と食事をしている時に流行語大賞の話になった。「今でしょ」か「倍返しだ」になりそうだと話していたときに、ふと私が「おもてなし」を思い出し、話してみた。

 「知らない? お、も、て、な、し」わざわざジェスチャーまでつけて説明してみた。返ってきたのは「わかんない」だった。「東京五輪が日本に決まったことは?」と聞いてみると、「それは知ってる」と返ってきた。友人はあまりテレビを見ないので、ネットのニュースで見たのだそうだ。現代人だな、と私は思った。
 テレビで「おもてなし」を聞いて以来、私の頭の中にそれはあった。和食屋さんに行くと「おもてなし」という言葉がメニューに書いてあることに気付いた。別の和食屋さんに行っても、「おもてなし」の文字が。ニュースを見なければ気付かなかった。日本には「おもてなし」の精神が根付いている。街に出れば色々な場所で「おもてなし」をしてくれている。何だか嬉しくなった。そして日本に生まれてよかったと思った。

 日本は平和で、安全な国だと言われているのは、「おもてなし」という和の心があるからだ。それは失くしてはいけないものだと思う。

 今回のエッセイを書くにあたって招致プレゼンをネットで調べて、幾つか視聴した。どれも素晴らしいプレゼンで、日本の熱意が伝わってくるものだった。様々な問題を抱える日本だが、これからどう変わっていくのか見物だ。
 オリンピックのイメージは、世界を繋ぐ。一つにするものだ。メダルを競うのではなく、世界中の人たちが一つになるお祭りだと思う。
 七年後、誰も嫌な思いのしない世界中のみんなが楽しいと思える東京オリンピックにしてほしいと思う。興味のない人間にもどきどきと感動を与えてくれることを期待している。
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 「おもてなし」に気付かせてくれた滝川クリステルさんに感謝を。
                                           (了)