生きてゆく人間花たち/八月の唄

平成二十五年八月三十一日
 伊神権太の連作長編小説「マンサニージョの恋」(クリックしたら、見られます)=全国書店とアマゾンで発売中
 
マンサニージョの恋
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 あすは二百十日、防災の日。大正12年の9月1日。関東大震災が起きた。

 地震は、もちろん怖い。
 でも、この日がくると、震災とは別に思い出す。
 それは、大韓航空機007便の旧ソ連機による撃墜事件。そして〝かぜ〟を切る踊りで台風を退散させる、越中おわら風の盆のことである。
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 大韓機撃墜事件。
 「269人乗り 大韓航空機 サハリン強制着陸 ソ連領空侵犯? 全員無事 日本人 天白の女性ら27人」(1983年9月1日付中日夕刊本紙1面)
 私がこの〝第一報〟を知ったのは夕刊で事件が上記のように報道された、その日の午前中だった。空港担当記者として。昭和58年9月1日午前11時ごろ、名古屋空港内の日航名空港支店のテレビを通して、だった。この日は、たまたま東海地方の書道家一行が中国民航機で上海に飛び立つ、というのでその取材に訪れていた時である。
 5番スポットでのセレモニーでは宝塚出身の青年座看板女優、三谷侑未さんから一行の団長に花束が渡され、そこには中日旅行会生みの親の一人と言ってもいい、ありし日の遠藤さんのお姿もあった。
 この大事件は、その後、テレビニュースを注意していてもクルクル変わり、謎が謎を呼んだが結局は夜に入り、ソ連のミサイルに領空侵犯の大韓機が撃ち落とされたらしい、との断片的な報道が流れ始め、深夜遅く「オイ、いがみ。北海道に行ってくれ」との電話が当時の滝社会部長から入った。
 やがて「アメリカのシュルツ国務長官が、大韓航空機の007便はソ連の戦闘戦がミサイルを発射し、撃墜された。丸腰の民間機を撃ち落とすなど極めて非人道的である」と発表するなど。テレビ画面から新しいニュースが次々と飛び込み、私はそのつど、新しく飛び込んでくる情報に翻弄された。

 翌早朝、私は本社の双発取材ジェット機「はやたか二世」で名空港を出発。機長は中本浩氏、写真部のカメラマンは岡崎正義さん、他に内藤整備士という陣容である。
 「中日さん、国籍不明機(ソ連機)が近づいている。危険だから引き返せ! 危ない 危ない、ソ連機が近づいている」「撃ち落とされてしまう」「引き返せ、引き返せ」。
 その日、日本人記者として初めてオホーツクの海に分け入り、モネロン島周辺の上空を大韓機の残骸と遺体を求めて海面をはうように飛行する本社機に対し、稚内レーダーサイトが叫ぶようにして何度も何度も警告してきた、あの日の恐怖取材を忘れることは、これからも永遠にないだろう。
 私は、確かあのとき何ひとつ痕跡を残さない鮫肌状の海を眼下に「オホーツクも、宗谷海峡も、そしてモネロン島周辺の日本海も。物こそ言わないが、みな泣いている。遺族、いや海にのまれた家族の悲しみは、この最果ての海の深さより、さらに深いに違いない。遺族の気持ちは、一体、どうなるのか。」
 「北の海は物言わず、泣いていた。無防備の民間機を撃ち落とす、など人道的にも許されない。海はやはり、泣いていた―」といったような内容の上空からのルポを送った記憶がある。この衝撃的ともいえる上空ルポは、中日・東京新聞はむろん、友好社である北海道新聞にも【はやたか二世にて 伊神孝信記者】の署名入りで大々的に報じられたのである。

 一方で台風がくると、決まって思い出す富山は越中八尾。胡弓が、心までをも撓わせる哀愁の音を奏でて町を流す〝おわら風の盆〟についても、能登時代に何度か八尾を訪れたことがあるだけに、格別かつ忘れられない話がある。あまり軽くなってもいけないので、きょうのところは控えさせていただく。安易な言葉がちまたに逃げ出さないためにも…

【きょうの一文・ことば】……▼101歳の医師日野原重明さん。全国の小学校を訪ねる「いのちの授業」が10年を迎えた。「命とは、きみたちが使える時間のことなんだよ」。多くの「使える時間」が、古今の戦争で断ち切られた。=31日付朝日朝刊、天声人語から

【新聞テレビから】
☆『〈NHKスペシャル〉メガクエイク=巨大地震=最新作! 首都壊滅90年目の警告』、『SONGS ベンチャーズ▽エレキの意味をチャー激白▽女子高生』(31日夜、NHK総合)
☆『対シリア 米大統領限定攻撃を検討 化学兵器使用の証拠公表』『国連調査団シリア出国』、『三重の中3強殺 帰宅中突然襲われる? 遺体争った形跡なし』、『トウカイテイオー急死 2冠 無敗で父子制覇』(31日付、中日夕刊)
☆『TPP 日本、合意項目覆せず ブルネイ会合終了 妥結優先米国ペース』、『中電、給与引き下げへ 労組に提示 料金値上げ視野』、『中3殺害面識ない人物か 三重 財布の現金なくなる 強盗殺人で捜査』(31日付、中日朝刊)
☆『英議会「イラク戦争の教訓に学べ」 「シリア介入 与党も30議員造反」』『仏大統領は積極姿勢』、『被災者雇用38%のみ 厚労省 復興予算流用を調査』『被災地以外では2・3%』(31日付、朝日朝刊)

八月三十日
 近くのスーパーに行って、生まれて初めて自分の手でお豆腐を買った。少年のころ、買い物に行かされた時などにかっていてよさそうなものなのだが。これが豆腐に限っては、なぜかなかった。こどもの持ち運びには、壊れやすかったからなのか。

 午前中、思い出したように実家に電話し「どこかに、食事にでもいこうか」と満93歳の母を誘うと「おかあちゃん、きょうは動きたくない。それより、豆腐を買ってきてよ」のお達し。というわけで買いに出向いた。出かけるに当たっては相棒に「どんな豆腐がよいか」と助けを求めたが、〝もめん〟とか、〝ぬの〟とか、いやはや豆腐ひとつを取っても、あれほど種類があったとは。とにかく驚いた。

 どうせなので、ついでに梅干し1パックも購入し持参すると、母は「ありがとう。梅干し、なくなりかけていたから助かる」と嬉しそうで午前中、電話を一本してよかったナと、つくづく思った次第。母は「せっかくだから、たかのぶ。腰をさすってくれないか」と言うので、ハイハイと腰もさすってやった。帰ると、いっとき凄まじい勢いで雨が天から落ちてきた。でも、すぐに止んだ。

 きょうは合間を見て能登半島・七尾の旧知の友に先日、珠洲の特別純米酒・純粋無垢「宗玄」と羽咋の純米酒「遊穂」を送っていただいたお礼の電話をしたが、たまたま「明日、うちの息子が結婚式をあげる」との朗報に接し、なんだかこちらまでがジーンときてしまった。心から、おめでとうございます。
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 私、いまは人呼んで、天下にただ一人の一匹(いっぴき)文士。
 素浪人の身ではあるが、相変わらず連日あちこちから電話がかかったり、便りやメールが届いたり、果ては文芸同人誌「北斗」の創刊第600號記念號や作家三田村博史さんの小栗重吉〝漂流譚〟「漂い果てつ」(風媒社)など各方面からの書籍が届いたり…、で、結構いそがしい。
 でも、何より大切なのは書き続ける、それも新しい形の小説を。これに尽きる。

【きょうの一文・ことば】「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」=30日付毎日朝刊〈現代への警句㊥ 関東大震災90年〉の記事中で。関東大震災の時代を生きた地球物理学者の寺田寅彦の著作から引用

【新聞テレビから】
☆『英、シリア攻撃断念 政府道義を下院否決 与党大量造反』『米、単独介入辞さず』、『コストコ大盛況 早朝すでに大行列 常滑にオープン 入店2時間待ち』、『春日井の女性09年から不明 殺人容疑浜松の男逮捕 春日井署4年近く捜査せず 供述通り遺体発見』『家族が捜索願「家出人」で対応』(30日付、中日夕刊)
☆『〈アートあいちトリエンナーレ〉ビートたけしさん大須演芸場に 「におい 36年前と同じ』『出品作の装飾 原画手がける』、『講談社側に賠償命令 黒川博行さん グリコ犯扱い 東京地検』(30日付、毎日夕刊)
☆『風を切るリニア 体感505㌔ JR東海 営業車両で走行試験』、『中3女子殺される? 25日夜から不明 空き地に遺体 三重・朝日町 花火見物後連絡絶える』(30日付、中日朝刊)
☆『書記官が泥酔し裁判資料を紛失 名地裁』(30日付、毎日朝刊)
☆『(ドラゴンズ)11年ぶり神宮3連勝 真骨頂〝乱戦〟に遊ゴロで決着 井端で』(30日付、中日スポーツ)

八月二十九日
 昨夜遅く名古屋から帰って以降は、少し寝ただけ。未明に再び起きて執筆を続け、朝になったので半分からだが眠った状態で江南市内の社交ダンスレッスン場へ。どんなにハードでもいったん飛ばすとズルズルベッタンで休んでしまいかねない。そう自身を鼓舞して励んだ。まさに継続は力なり、である。

 「ゴンタさん。5分遅れたわよ。この5分が大きいのだから」と先生に叱られながら、それでもジルバ、タンゴ、ルンバ、ブルースとナントカ、ひと通りこなした。きょうのレッスンはこれまでのオーソドックスなジルバの途中に【クィッククィック】のステップが加わるものだったが、これがなかなかスムースにいかない。
 【クィッククィックは、〝後ろ、前〟よ】の言葉に〝後ろ〟と〝前〟を繰り返すうち、そこそこ、ステップが踏めるようになった。帰宅後は昨夜、平和と愛を旗印に一人芝居の演劇活動を、ただひたすらに続ける日本の女優・片山美穂さんと約束した件もこなしてしまおう、と思ったが気が付いたら、私はソファにからだを預けたまま〈夢んなか〉だった。

 現役時代に比べたら、書くことだって読むことだって、時間は十分あるのだが。どうも長く続いたやくざな仕事柄からか、毎日が夜、昼、朝のない生活の延長で時間に無頓着な癖はそのままだ。ただ私は最近、街なかをどこへ行くのか、おそらくあてもないまま右往左往している似た年恰好の男たちを目の前にふと、こんなことを思う。
 「この人たちは、居場所をどうしてよいのか分からないまま、さまよっているだけじゃないのか。こんなにまで哀れな姿をさらしてまで、生きていく必要があるのだろうか。そろそろ我が輩も年貢のおさめどきじゃないか。ジタバタするのは、よそう」と。

 でも、思う。
 私の確たる文学だけは、いい面でも悪い面でもこの世に残しておく使命があるのだ、と。私でしか書けない大切なものが、まだまだ多くあるのだから、と。きっと、いつの日にか、世のため人のためになる。考えてみれば、赤ん坊から百歳以上の老人まで。早かれ遅かれ、この世からはみ~んな消えていく。みな同じ運命共同体で、それぞれの一瞬を生きているのだ、と。
 だったら貪欲に今を大切にやるべきことをきっちりやらなければ。そうした面でも、もはや後がない、酷使したってかまわない。

 なぜ、こんなにシミッタレタ話になってしまったのか。
 それは、けさのレッスンの合間に仲間から出た話が、知人が相次いで亡くなったとか、突然、脳内出血などで倒れ入院したとか、年老いた妻が家で転んで足の骨を折ったとか。そんな不景気な話ばかりだったから。だから、のような気がしてならない。下ばかりを向くのではなく、上を向いて歩いていこう。

【きょうの一文・ことば】「日本の柔道は一番強く、美しいというのを見せたかった」=29日付中日夕刊〈『新鋭21歳大野「金」 世界柔道 日本男子3日連続V』『攻撃貫きオール一本 男子73㌔級』『40年ぶり軽量3階級制覇』〉の記事中、大野の言葉

【新聞テレビから】
☆『〈クローズアップ現代〉〝アラブの春〟の混迷 緊迫する中東情勢』(29日夜、NHK総合)『〈世界遺産〉「ニッポンの里山」能登絶景棚田 富士山・湧水と茶草場』(29日夜、NHKBSプレミアム)
☆『シリア攻撃 英首相、週明け以降判断 野党抵抗で方針転換 国連調査報告後に』『安保理協議は物別れ 中ロ、軍事決議案に反対』、『継続は信頼なり 被災地へボランティアバス 名古屋発あす100便 きめ細かな支援「心待ち」』『震災2年半後 福井沖で発見 漂流戦気仙沼へ』(29日付、中日夕刊)
☆『「夢」実現へ 格差解消を オバマ大統領が演説 キング牧師大行進50年』、『大韓機撃墜事件から30年 遺族風化を懸念』『息子失った陶芸家「作品で語り継ぐ」』『大学生、証言を本に「悲しみ残して」』、『永六輔さんラジオ番組終了 「誰かとどこかで」 最長1万2629回』、『宇連ダム貯水率3・6%節水25%に強化 東三河カラカラ 入浴サービス休止、農作物に影響』(29日付、毎日夕刊)
☆『48歳マサに祝砲5発 プロ最年長先発勝利 更新 セ最年長安打・打点』、『(将棋の)羽生(善治)王位 防衛タイトル通算85期』、『国税調査官を逮捕 OBと脱税協力の疑い 大阪地検』(29日付、中日朝刊)
☆『(【I Have a Dream】の)キング牧師大行進(から)50年 ケネディ大統領「よくやった」 当初は反対 終了後は評価』、『海面水温過去最高 今月中旬 日本の5海域で』『サンマ漁獲量減少』『今は豊漁でも… 東海地方 冬季の水揚げ懸念』、『日本の人口26万人減 4年連続 増加は8都県のみ 3月末時点』(29日付、毎日朝刊)

八月二十八日
 夜。秋の気配をからだに受けつつ、愛用のハモニカと横笛を手に家を出た。

 名古屋市内の千種駅近く居酒屋「ぼん」へ。先に小牧市内のまなび創造館あさひホールで一人芝居「雛」を熱演し、家族の幸せを一瞬にして破壊する戦争の惨たらしさを告発、平和の尊さを訴えた女優片山美穂さん(チーム・クレセント主宰)=小牧市出身。東京都大田区在住=、そして昔の演劇少年そのままで今はいったん舞台から離れている演劇の虫、小畠辰彦さん=名古屋市在住=と一献。互いに演劇文化や、あるべき文学への思いの丈を語り合った。
 「結局のところ、人間って。好きなことしかしていけない、と思う。伊神さんだって、これからは好きな小説しか書いちゃいけない。だから、私は舞台に出演しているのよ」と話す美穂さん。かつて、劇団「小牧はらから」を主宰した小畠さんも演劇への情熱を熱っぽく語るなか、私も自らの文学論に加え、ちまたで安易に表現されがちな【平和】って一体何なのか、について持論を展開。楽しく有意義なひとときは疾風の如く過ぎ去った。

 こうしている間にも世界ではシリア情勢が緊迫の度を増し、化学兵器疑惑を巡り米軍の軍事介入が懸念され、ミサイル発射に伴う一触即発の危機にさらされている。エジプトも前大統領派のムスリム同胞団と軍事政権の対立が半ば内戦状態化、尖閣諸島問題に至っては中国海監による日本の領海侵犯が再三…と醜い争いは絶えることがない。

 やはり【平和】は絵空事なのか、と思うと虚しくさえ思う。
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 なんだか、おかしな話になってしまった。だが、人間が人間である証明は、互いの利害を乗り超え、争いのない、互いに相手を少しでも理解し合って、仲のいい社会を創造する。これに尽きる。

 ただ、こんなことを思っていると、あの太宰治が「めくら草紙」の冒頭に書き出した以下の文がボクの脳天に降ってわいてくるのである。
―なんにも書くな。なんにも読むな。なんにも思うな。ただ、生きて在れ!

 わかってはいるが、私はそれでも書き続ける。文の相手は太宰でもそこいらの作家たちでもなく、私自身なのである。
 
【きょうの一文・ことば】「全部が全部、抑えられるわけではない。やられたときこそ次が大事。不安を持ち越さず、しっかりと自分を持ってマウンドに立つ」=28日付中日朝刊【〈球心〉岩瀬9年連続30S 心静かに記録更新 乱戦3人ピシャリ】の記事の中で。中日ドラゴンズの岩瀬投手

【新聞テレビから】
☆『福島第1原発 汚染水漏れ「レベル3」 国際評価2段階上げ』、『藤沢嵐子さん死去 「タンゴの女王」』、『暑さやはり湿度のせい 東海地方最近過ごしやすく 不快指数 暑くて汗が出る→やや暑いに』『熱中症まだ注意必要』(28日付、中日夕刊)
☆『児童運転車2020年発売 日産、米で試作車公開』『海老沼V2 世界柔道』(28日付、毎日夕刊)
☆『「29日にもシリア攻撃」 欧米、反体制派と会合 米など報道』、『再打ち上げ30日以降に イプシロン 地上側に原因か』、『中川の女性遺棄 傷害致死は処分保留 名古屋地検 起訴見送りへ』『黙秘続き死因も不明』(28日付、中日朝刊)
☆『「那智黒」広辞苑が誤記 三重・熊野産→和歌山・那智地方産』、『名鉄・金山駅ホームから転落 女性救助さらに2人』、『学力テスト 上位・下位県固定化 秋田・福井〈独自テスト奏功〉 沖縄・大阪〈生活習慣に問題〉 岐阜・愛知〈中学数学で上位〉【解説】課題すでに明確解決に取り組め』(28日付、毎日朝刊)

八月二十七日
 愛用のくひな笛(水鶏笛)とスリランカからの思いがけないメール、芥川竜之介の小説「河童」について。

 くひな笛は、かつて私が新聞社の支局長時代に有志読書グループの女性たちに誘われ、三重県伊賀上野市までバス一台を貸し切っての文学散歩に同行した際、俳人松尾芭蕉の生家で購入した陶笛である。奥の細道を旅する芭蕉が頭陀袋に入れていつも持ち歩いた、そのくひな笛を私は大津支局在任中、肌身離さず時には琵琶湖畔にまで出向き、円形の小孔に口元をそえ、空と湖上に向かって、よくふいたものである。
 ♪ホー、ホー、ホー…と、か細く湖面をわたる鶏が鳴くような笛の音に哀愁を感じ、寂しさを紛らした日々がついきのうのようでもある。早いもので、あれから二十年近い。先日、室内の一角に置かれていた、このくひな笛をあらためて手にしたのをきっかけに、これからは旅に出るつど、この笛を持参しようと自身に言い聞かせた。

 二番目の話は、昨年体験した第76回ピースボートによる102日間地球一周船旅の際、立ち寄ったスリランカ(コロンボ)のヤソーダラ孤児院で通訳をしてくださったダハナーヤカさんから思いがけず、二日前私あてに国際メールが届いた件である。「Korekaramo Yoroshiku Onegaitashimasu Y.M.W.Dahanayaka」といった簡単な内容だったが、とても嬉しかった。

 そして今ひとつ。それはひょんなことから本日、芥川竜之介の小説「河童」に再会したことだ。たまたま、妻が「友だちに借りた」と手にしていた岩波文庫の本を目にしたところ、芥川竜之介とあるので「見せて」と言って頁をめくると何と、若き日々に何度も繰り返し読んだ、あの「河童」ではないか。
 というわけで、特別の許しを得てこの文庫本を読み、久しぶりにこの物語に出会い、ひとときを過ごしたのである。私は学生時代に二、三度読んだ記憶があるが河童の恋愛物語など―その内容は何度読み返しても面白い。私のこれからの創作手法にも大いに生かさなければ、と思ったことである。
 芥川は「河童」の中で〝河童の恋愛〟につき「趣を異にしています」と言ってはいるものの「雌の河童はこれぞという雄の河童を見つけるが早いか、雄の河童を捉えるのに如何なる手段も顧みません。一番正直な雌の河童は遮二無二雄の河童を追いかけるのです。……いや、そればかりではありません。若い雌の河童は勿論、その河童の両親や兄弟まで一しょになって追いかけるのです。……」といったところなど核心を突いており、ニンゲン社会をつい連想してしまう。

【きょうの一文・ことば】▼…谷川さん(民俗学者で24日に92歳で逝去した谷川健一さん)は「地名を守る会」をつくり、「地名が消えるのは、村の過去を知っていた古老が死ぬのとほとんどおなじような悲劇…つまり幾千年以来の…歴史はそこで終止符を打つ」と訴え続けた=27日付中日朝刊〈中日春秋〉から

【新聞テレビから】
☆『(新型の固体燃料ロケット)イプシロン 打ち上げ中断』、『20歳高藤(直寿、東海大)初出場で金 世界柔道 男子60㌔級日本勢16年ぶり』『浅見「銀」V3逃す 女子48㌔級』、『同時に80試料捜査迅速化 DNA自動鑑定 愛知でも 新たに6県警配備へ』(27日付、中日夕刊)
☆『北東アジアで危険起きぬ 正恩氏、挑発自制伝える 中国に配慮』、『シリア 米、化学兵器使用と断定 政権の責任追及 軍事介入本格調整』(27日付、毎日夕刊)
☆『消費増税「点検」スタート 7氏が賛否表明 〈格差が拡大〉〈若者に目を〉〈段階的に〉』『「吉田の火祭り」 富士山夏の終わり』、『土橋正幸さん=元東映、現日本ハム=死去 162勝投手、2球団で監督 77歳』『強気テンポいい投球 江戸っ子 解説も人気』、『ルナ(ドラゴンズ)帰国し治療へ 今季中の復帰なくなる』(27日付、中日朝刊)
☆『バルサルタン使用中止 徳洲会グループ「患者に不信感」』『臨床研究の点検を要請 国が医療機関に』、『シリア 国連毒ガス調査開始 出発時に銃撃 安全懸念』、『「ゲン」閲覧制限撤回 松江市教委「混乱おわび」』(27日付、毎日朝刊)

八月二十六日
 きょうは、月曜日。前日に続いて休みの妻の舞が独り、ぶらり旅に出た。

 【昼過ぎ】いっときJR飯田線の女(ひと)となって、どこかは知らないが堪能しているようだ。国の内外に拘わらず、若い頃から、一緒に旅に出るといつも、スタコラサッサといった具合に、どこかに消え去り私を慌てさせる相棒。その舞が「ひとりで飯田線に乗ってきたい」というので朝早く、名鉄江南駅まで車で送りはしたが。
 実際、舞には行く先々で知らぬ間に雲隠れしてしまう少女時代のような探検癖があり、前科が前科だけに、無事に帰って来るものかどうか。少し心配しながら私は私のことを行い、こうして時は音もなく進んでいる。午後六時を過ぎた。「互いに勝手に生きよう」「ボーボワールとサルトルでいこう」との約束で、ここまで人生街道の綱渡りをしてきたのだから、いまさら男に引っかかって綱から落ちることもなかろう。
 万一、落ちたら落ちたで、それはそれで舞が得意とする俳句と短歌の作句づくりの栄養源にでもなってくれたらそれでいい、と率直に思う。それよりも途中、山奥で雨にでも打たれていないか。その方が心配だ。へんな獣道に分け入って行方不明にならなきゃいいが。

 【午後八時過ぎ】。
 舞は目を輝かせて無事、ご帰還。雨も降らなかったという。なんでも鳳来寺山の本堂と東照宮辺りまで本長篠駅から行きづりの観光客とタクシーで一緒に行き、1425段にも及ぶ石段をただ、ひたすらに下りて来たのだそうだ。帰宅するまでに口にしたのは、アンパン二個だけ。なんだか疲れに行ったようなものだと思いきや「結構、面白かったよ。楽しかった」と。
 これを機会に、これからはどんどん、健康と体調、自分の時間の許す限り、どこにでも独り旅に出かけたらよい。次はどこへ行きたい、と言い出すのか。日本の片隅から世界の果てまで、行きたいところがあれば、どこにだって行けばいい。ただ自らの体力と相談しながらの、条件付きではあるが。
 もしかしたら、宮沢賢治の銀河鉄道に乗りたい、と言い出したらどうしよう。そのときは、そのときだ。私が乗せてやる。
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 島根での豪雨に続き、熊本、大分など九州北部で断続的に激しい雨が降る一日となった。JR三江線の被害が多く復旧のめどが立たない島根県江津市では、平年の八月雨量の3・3倍にも当たる474ミリが一度に降った、という。きょうの東海地方は最高気温が24~27、28度で、これまでの猛暑が信じられないほどしのぎやすくなった。
 あらためて私たち人間、いや生きものという生きものが自然になされるがままであることを実感する。

【きょうの一文・ことば】いつも私たちを助けてくれていた新潮社の安部さんの担当編集者、新田敞さんが、真知夫人にお通夜と告別式の参列許可をとってくれていましたが、私はどちらにも出ませんでした。だから私の胸の中には、「生きている」安部公房しかいないのです。もし葬儀に出席してきちんとお別れしていたら、20年も彼を引きずることはなかったのかもしれませんね。=婦人公論9/7〈衝撃秘話〉山口果林「今明かす、安部公房との禁断の日々」から
「ボクは一日も(プロ野球を)楽しんだことなんてない。ヤクルトの元監督・野村さんに言われた【脇役の超一流になれ!】を胸に19年間、脇役に徹してきました。ただの野球好きですよ」=26日あった引退の記者会見でヤクルト宮本慎也内野手(42)。宮本選手は堅守で3度の日本一に貢献。アテネ、北京両五輪の日本代表主将も務め、2006年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本の初優勝に貢献。遊撃手と三塁手でゴールデングラブ賞を受賞。昨年5月には41歳5カ月の最年長で2000安打を達成した。

【新聞テレビから】
☆『内海桂子さん80年前の奉公先で 下町人情恩返し「毒演会」 東京で来月、そば店企画「地域の絆を再び」』、『日本郵便が高齢者支援 安否確認や買い物代行 6道県10月開始』(26日付、中日夕刊)
☆『真夏のオーロラ カナダ=白夜を終えた北極圏周辺でオーロラが見え始めた。カナダ北部のイエローナイフでは23日、森や湖の頭上で緑やピンクの光のカーテンが真夏の夜空を彩った。』、『日本一楽しい図書室 石巻・被災小学校に壁画』(26日付、毎日夕刊)
☆『川面照らす灯籠1万個 永平寺』、『シリア 国連きょうから現地調査 化学兵器疑惑 政権側と合意』(26日付、中日朝刊)
☆『ヤクルト宮本が引退へ』、『村田デビュー戦 TKO勝利=ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級で日本選手として48年ぶり2人目の金メダリストになった村田諒太(27、三迫)が東京・有明コロシアムでプロデビューを果たした』(26日付、毎日朝刊)

八月二十五日
 昨夜来の雨が午後遅くに止んだ。やはり雨は降らない方が、何かとよい。それに日曜ということもあって、相棒との買い出し日だけに降らない方がよいに決まっている。
 家を車で一緒に出たころは、かなりの降りだった。でも、帰ったら判でも押すように止んだ。「雨」は欲しくもない時に降り、降ってもいい時には逆に晴れる。皮肉なもので世の中そんなものだ。
 舞は何を思ってか、大型ショッピングセンター内で店を開いていた関の研ぎ師から、新しい包丁一本を吟味の末、買った。いつも勝手な私を、本気で殺す気なのかも…。でも、意外や好きな料理に一段と磨きをかけたい、ただそれだけのような気もする。
 とにかく彼女は料理が好きであり、またつくる料理は天下一品である。

 私にとってのメモ帳。いわば文章の鍛錬場だが、ふっと思いついた時にさぁっとメモしておかないと、【いい文】は、知らない間に目の前から消え去ってしまう。誰が読んだり聞いたりしたところで、リズムと余韻があり、かつ人間に共通した素直で感覚的な文はいい。が、そうした名文にかぎって、メモっておかなければ浮かんだ瞬間にどこか遠い知らない国に飛んでいくかの如く消え去ってしまうのだ。

 デ、今日起きると同時にメモったホンの一端、ひとかけらをここに記しておくと。
―時々、テマリの夢を見る。テマリを見ると、決まって傍らに居るココのことを思う。テマリが交通事故で亡くなり、早いものでもう二十年近い。
 【ココへの遺言】そのうち急に俺の心臓が止まるからサ。ココだけには、わが家のこと、そして私のことを告げておきたい。……ネコものがたりでも書いてみようか。

【きょうの一文・ことば】「男性は現実には半沢(直樹)のようにはできないと諦めている。今の時代、半沢に感情移入できるのは忠誠心をあまり感じない女性の方。女性はいつか『倍返し』してやると思いながら共感して見ているのでは」=25日付毎日朝刊『〈クローズアップ2013〉「半沢直樹」視聴率急上昇 分かりやすいヒーローに共感』の記事中

【新聞テレビから】
☆『キング牧師に新たな夢誓う 米、演説から50年』、『ジャンプGP白馬大会 41歳葛西が最年長勝利 4年ぶり2勝目』、『リニア誘致西の陣 三重・奈良逃げ切りへ 京都逆転へ参戦 経済効果双方PR』(25日付、中日朝刊)

八月二十四日
 第149回直木賞受賞作の「ホテルローヤル」(桜木紫乃)を読み終える。
 シャッターチャンス、本日開店、えっち屋、バブルバス、せんせぇ、星を見ていた ギフトと短編7本のホロリとくる内容はむろん、表現力の豊かさも大変、参考になった。おそらく文章そのものに対する弛まぬ修錬があればこそ、に違いない。

 ウエブ文学同人誌「熱砂」の俊英全員に対して、ここ二、三日の間にメール、または電話で残暑見舞いを兼ね「健筆待つ」旨、連絡する。猛暑にゲリラ豪雨狂騒の夏だけに、皆さんそれぞれの生活や仕事に大変であることは十分承知のうえで、である。やがて「天高く馬肥ゆる」秋がやってくるはずだ。

 今日も日本列島の島根県では江津、浜田両市を中心に記録的な豪雨となり土砂災害や浸水、河川の氾濫などで多くの人々が苦しめられている。ある有能女性弁護士から頂いた残暑見舞いには、こうあった。
―お元気ですか? 今年は本当に暑いですね。名古屋の夏は蒸し暑くて亜熱帯になってしまったようです。

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 久しぶりに、ささいなことから妻と口論に。早い話がこども同士のけんかみたいなもの。といっても、怒るとこわい。負けるが勝ちで、最後はいつものとおり「俺がみんな悪かった」と侘びを入れ、一件落着。なんだか猫も含め、みな妻の味方で私を蔑んだ目で見るので仕方がない。やっぱり、これから余分なことは言わないでおこう。

【きょうの一文・ことば】「人がお酒をのむのじゃなくて、お酒が人をのんでるのよ」=私との会話のさなかに妻。

【新聞テレビから】
☆『海女の勝負は50秒 三重【鳥羽・志摩】 海にはおかずがいっぱいだ 無形遺産に値する伝統漁 海女振興協議会会長石原義剛さん』(しんぶん赤旗日曜版 2013年8月25日号)
☆『〈大波小波〉大河内昭爾の情熱』、『式年遷宮「のんびり旅を」 近鉄観光列車で攻勢』『「しまかぜ」人気 伊勢市―賢島に「つどい」』、『14歳平野(歩夢)初出場V スノボW杯HP(ハーフパイプ)平岡が2位』、『島根で記録的豪雨 土砂崩れや浸水、1人不明 「特別警報」相当』『漢方薬の原料 ゴキブリ100万匹逃げた 中国飼育室壊される』(24日付、中日夕刊)
☆『熱く乱舞 どまつり開幕』、『岐阜で強風、落雷 美濃加茂 幼稚園屋根吹き飛ぶ 一時1万5000戸停電』、『新幹線運転中にメール、電話 JR東海、8人処分 業務携帯私的使用』、『復活オザワ 魔法のタクト SKF2年ぶり指揮』(24日付、中日朝刊)

八月二十三日
 処暑。二十四節気の中でも、暑さが峠を越え始めるころだという。
 とはいえ、なかなかどうして。きょうも相変わらずの暑さで、夕刊報道によれば、名古屋の最低気温は午前五時十七分の29・2度で、暑い夜明けが〝処暑〟を吹き飛ばす形となった。

 午後十時、ひと段落ついたところで『さて、NHKスペシャル「亡き人が現れた…」いま被災地で語られる不思議体験・涙の再会』を見ようとしたら、「今夜はBSプレミアムを見たいの。チャンネルをBSプレミアムにしてもいい」と妻。「分かった」と言って変えると、なんと番組は『岩合光昭のネコ歩き▽アンダルシア山村猫…』なるもので、猫好きな私たちにとっては、またとない番組だった。

 わが家の猫ちゃん、ふたりにもテレビの前に座らせ一緒に見たが、いやはや、猫のわが道を行く独特の世界には感服した。
 それにしても、岩合なる人物、どこでカメラマン(映像も含める)としての基本を修得したのか。ニンゲン、世界、ネコ…とこの世に存在するもの、みな同じであることを何げない映像で見事にとらえていた。

【きょうの一文・ことば】「丸太の中で竹ひごが通用した」=23日付朝日朝刊「天声人語」。日米通算4000本安打のイチローについて。高校時代の恩師、中村豪さんの率直な感想

【新聞テレビから】
☆『ゲンが開いたマンガの道 米人女性(レイナ・テルゲマイヤーさん)読んだ衝撃短編に ネットで和訳が話題 閲覧制限問題に一石』、『決死の収束指揮吉田元所長しのぶ 東電がお別れの会』(23日付、中日夕刊)
☆『「さりげなく」臨戦の美学 イチロー4000安打「悔しい思い8000回以上』『中京大・湯浅教授が分析 試合中のストレッチ衰えカバー』、『〈評伝〉迫力の〝怨歌〟夢ひらく 藤圭子さん転落死 70年代、若者共感』(23日付、中日朝刊)
☆『「国の安全損なわぬ」 米英の情報収集報道 英紙編集長語る』=CIA元職員が英紙ガーディアンを通じて暴露した米英政府の極秘電子情報収集に関連、英当局に内部文書のデータ破壊を強要された同紙、アラン・ラスブリッジャー編集長が朝日新聞の電話インタビューに国家機密を報じることの意義を語った。』(23日付、朝日朝刊)

八月二十二日
 お隣の岐阜市。きょうで十六日間連続の気温三十五度超えの猛暑日に。

 ニューヨークヤンキースのイチロー(愛知県豊山町出身、本名鈴木一朗)がヤンキースタジアムでのブルージェイズ戦1回の第1打席、1死1ボール1ストライクからR・A・ディッキー投手の投げたナックルボールを左前にはじき返し三遊間を抜き、日米通算4000本安打を放った。イチロー外野手は、この日「二番・右翼」で先発出場、4打数1安打で、チームも4―2で勝ち、4連勝。

 この日は一方で宇多田ヒカルさんの母親でも知られた、あの往年の昭和の歌姫・藤圭子さんが東京・西新宿の高層マンション13階知人男性の部屋のベランダから飛び降り自殺。夏の甲子園は初出場の前橋育英(群馬)が4―3で延岡(宮崎)を破り優勝した。

 人生いろいろ、ドラマもそれぞれ、思いもさまざまだ。
        ×        ×

 そして。私は、といえば。
 午前中の社交ダンスレッスンに続き、夕方からは一人、笛に添える指の位置に注意しつつ、日課である横笛ふきに専念した。

 このうち社交ダンスだが、だいぶ慣れてきはしたが、先生に言わせれば「まだまだ、みんなお遊戯の段階」なんだってサ。
 というわけで、ルンバのハンド・トゥー・ハンドで手を広げる場合「おヘソは下に。かかとはつける」と言われたって、そんなに簡単にはいかない。それから「ブルースにせよ何にしろ、スローはクィックのふたつ分、だから〝スローオ、クィッククィック〟で。ここで気をつけなければならない、のはスローにはスローオと【オ】をつけるのよ」とのこと。
 このほか、「タンゴやワルツを踊る時には【男性の両手は、お盆に乗ったお茶がこぼれないような。そんな感覚で、ね】とも。フムフム…と、なんとなく、その場は仰っている意味は分かる。でも…。まぁっ、いいか。とにかくならうより慣れろ、だと思って、きょうもまたしごかれてきた。
 それでも軽快な音楽に合わせてジルバやタンゴ、ルンバ、ブルースを一緒に踊っていると結構楽しい。そのうち道は開かれる、と気長に思っている。

 それにしても、この暑さはなんだ。ペアを組んだ相手女性のシャツがビショビショに濡れ、踊るご本人までが恐縮していた。暑くて熱い夏は、なおしばらくは続きそうだ。ニンゲンたちが、それぞれの意識と思いの中で、それなりに頑張っている姿が、けなげでもある。

【きょうの一文・ことば】チームメートやファンの方々が喜んでくれるのは全く想像していなかったので、半泣きしてしまった。自分以外の人たちが特別の瞬間をつくってくれる。記録は自分がつくるものでなく周りの人たちがつくってくれる=歴代1位4256安打のピート・ローズ、4191本を放ったタイ・カップに続き、4000本安打を達成したイチロー選手

【新聞テレビから】
☆『〈にっぽん紀行〉無人島子どもたちの大冒険! 忘れえぬ夏の記録』(22日夜、NHK総合)
☆『イチロー4000安打 史上3人目 日米22年で達成』『39歳 5000安打も「可能」 半泣きになった 「しんどくないことなんかない」』『新たなイチページ 努力の英雄 心打つ』『「どのチームにも渡さない」 イチ・メーター エイミー・フランツさん 4000に大興奮』、『藤圭子さん自殺か 都内マンションから転落』(22日付、中日夕刊)
☆『エジプト ムバラク氏軟禁へ リベラル派の反発懸念』、『ダイエーを子会社化 イオン』(22日付、毎日夕刊)
☆『シリア 「化学兵器で1300人死亡」 反体制派 医師、特徴認める』、『福島汚染水 海に流出基準の100倍 東電試算ストロンチウムなど』『レベル3に引き上げへ IAEA(国際原子力機関)、支援検討』(22日付、中日朝刊) 
☆『鮮やか1000株 各務原・オミナエシ』、『平均気温東西で史上1位 8月中旬数値でも炎暑』(22日付、毎日朝刊)

八月二十一日
 暑くて、暑くて。
 ホントに熱い日が続くなか、怖くて、怖くて、空恐ろしい、逃げ出したくなるほどに、どうしようもない夢に一晩中うなされた。取材のさなかだ。「何か」をどこまでも追い求めてゆく私。一方では、誰かに執拗に追いかけられている。でも、逃げようとしても逃げられない。万事休すだ、とあきらめたところで目が覚めた。
 とはいっても、新聞記者を退任後、この種の夢はずぅーと見続けている。全てが現役の記者時代に現場を歩き、ガイシャやホシの話を聞き、時にはマルボウから「おまえを殺してやる!」とタンカを切られて生きてきたことの証しに過ぎない。
 夢を見ながらふと、思う。
 本物の作家は新聞記者なのだ、と。第一、新聞記者ほど多くの読者を持ち、影響力のある壮大なドラマを描ける作家がほかにいるのだろうか、と。優秀な新聞記者こそ、どんな作家よりも文章がうまいのだ、とも。俺はその世界を一途に歩いてきたのだ、と。

 で、夢のなかの私自身はストーリーの展開がナントナク見えるので内心、それほどのことでもない、とクールさを装いつつあっさり片付くのでは、とタカをくくっている。だから、その反発が恐ろしい。けさ未明にも最後は私自身が大勢の善良な読者に囲まれ、言い訳に四苦八苦している姿を見ていたのだ。これでは、どちらが「悪」なのか。やはり、俺が一番の「悪」なのだと薄ぼんやりと自身に言い聞かせているさなか、目覚めた。
        ×        ×

 きょうは横笛の稽古日。お師匠さんから、これまで変形になっていた笛の持ち方を基本から是正され、納得。帰宅後、教えられた通りに笛を手に何度もふいてみると透明感があり、かつ竹笛を撓わせるような、枯れた素晴らしい音が出たので納得した。
 やはり師匠は違う、ポイントをつかんで教えてくださり、尊敬に値する。

 全柔連が新体制に。
 記者会見で新しく副会長に就任した山下康裕氏(ロス五輪金メダリスト)が「こどもたちが〝ボク、柔道しています〟と胸を張って言える、そんな柔道界にしたい」と抱負を語っていた姿が頼もしく、印象深かった。
 私自身、中、高、大学と、若き日のたゆまぬ柔道の練習には誇りを抱いている。それだけに、この言葉「僕、柔道をしています―と胸を張れるようにしたい」の決意表明は嬉しかった。まさに【精力善用 自他共栄】でなければ。私自身も、そのお手本を示して生きているつもりである。
 
 東京のこの夏のゲリラ豪雨。実に例年の3・5倍に達すると言う。

【きょうの一文・ことば】(筆談で)「(左手の中指を)骨折してすんません。あの時は、こんなにひどいとは思わなかった」「全て自分が悪いんです…。できる事をやるのが自分の力」「一から考えなおし。(でも、九月八日の「ドアラデー」までには)時間がない…」=21日付中日朝刊〈脱衣室〉 左手を骨折した中日のマスコットキャラクターが20日の広島戦を前に岐阜・長良川球場で開いた〝謝罪会見〟で=

【新聞テレビから】
☆『〈ニュースウオッチ9〉ユーザー2億人突破 あのLINEが新戦略』(21日夜、NHK総合)
☆『〈大波小波〉食と人とを愛した文人(文芸評論家の大河内昭爾が鬼籍に入った。享年八十五。下戸ながら食には一家言あり、話術にも長けた、交友範囲の広い文壇人として有名だった。…』、『福島汚染水漏れ レベル3に引き上げへ 規制委「重大汚染に相当」』『東電「依然漏えい」』、『イチロー王手 日米通算4000本安打へ 期待に沸き立つNY』、『米帰還兵の自殺深刻 昨年まで死者2.7万人以上「考えた」は30%』『メンタルヘルス相談利用に迷いも イラクから帰国 海兵隊員「常に衝動」』、『田んぼで泳ぐシャチ親子 港区に「アート」登場』(21日付、中日夕刊)
☆『景品水増し不正訴えた社員解雇 秋田書店「発送せず窃取」撤回求め提訴へ』『先輩から業務引き継ぎ 元社員経緯や手口証言』、『大阪府警調書改ざん 容疑者発見「通報者」→「署員に」』、『アフガン和平交渉頓挫 タリバン代表団撤収 米軍駐留に反発』(21日付、毎日夕刊)
☆『皇太子ご夫妻被災地を訪問 宮城』、『「50人に当たる」はウソ 読者プレゼント水増し 秋田書店に再発防止命令』、『松坂が自由契約に=米大リーグ、インディアンスが傘下のマイナー、3Aコロンバスの松坂大輔投手(32)との契約を解除』(21日付、中日朝刊)

八月二十日
 サンマ漁の季節が到来。主力の大型船団が北海道根室の花咲港を出港した。「とにかく獲る。サンマを。そして笑顔で帰ってきます」とは船団のある漁師の、頼もしい肉声である。

 北陸、東北地方そして青森も激しい雨に見舞われ、暫定政権側にムスリム同胞団最高幹部が拘束されたエジプトでは人間の価値が日に日に弱められ、この六日間だけで実に850人以上もが殺し、殺された。虐殺が常態化し、人間が人間ではなくなっている。
        ×        ×

 目を閉じて。

 音の世界だけに、しばし耳を澄ましていると私だけの世界に不思議なモノがみえ始め、聴こえてくる。その物体のない現実のモノをいかにからめとって物語化していくか、だ。
 やはり、書くに当たっては現場を見て、歩いて、聞く。そこからしか出発する糸口なぞ、見えてはこない。あとは抒情性と文から流れるリズムだが、これは持って生まれた感性と筆遣いを自らの過去と現在を武器に、「未来」に向かってさらに醸成し磨いてゆくほかない。
 そのためにも当然、メール、高齢化、老々介護社会…といった時代の変貌も映し絵に作品社会に反映させていかなければ。そんなことをふと思いつつ、筆を進めている。

 もちろん私、伊神権太の世界を築くのに今ひとつ忘れていけないモノがある。それこそが横笛やハーモニカ、サンポーニャだったり、端唄、小唄、都々逸…といった音曲の類である。これらも文学の根幹をなすものだ、といっていい。

【きょうの一文・ことば】「踊りは平和の象徴だよ。踊りがあるで、みんな和やかになる」。=20日付中日夕刊〈93歳平和だで踊れる どまつり最高齢「おかじい(岡田茂男さん)」 中国で戦場体験 戦争繰り返さぬ世を願い〉で「おかじい」

【新聞テレビから】
☆『〈報道ステーション〉操業ルールは後回し 日台漁業協定のひずみ』(20日夜、メ~テレ)
☆『〈ファンクラブ通信・通信員だより〉ドーム観戦復活=津市、片岡孝之さん』(20日付、中日スポーツ)
☆『テロの痛み分かるから ボストンへ千羽鶴 「9・11」遺族 十三回忌で訪米、追悼』、『同胞団トップを拘束 エジプト、モルシ派に打撃』『博物館丸ごと略奪 エジプト騒乱の中 「聖獣」トキのミイラなど』、『タンク汚染水漏れ300トン 福島第1 高濃度8000万ベクレル』(20日付、中日夕刊)
☆『〈チェック〉156センチ小兵の星 4強の花巻東 千葉(翔太、2番。3年)選手 内野5人シフト破り安打 腰落として四球を「量産」』(20日付、毎日夕刊)
☆『ダムカラカラ節水強化 豊川水系 20%制限に』『人工雨12年ぶり 東京都、装置あす稼働』、『キリスト教徒襲撃相次ぐ エジプト・イスラム急進派の標的 暫定政権側の陰謀説も』『トルコのドラマ放映中止 エジプト、政権批判に反発』『あすEU(欧州連合)緊急外相会合』、『客室乗務員全て正社員に 全日空契約採用を廃止 20年ぶり』『競争激化で人材確保』(20日付、中日朝刊)

八月十九日
 きのうの誰かサンの言ではないが思いがけず、心地よいかぜをフワリと頬に受け、この夏の暑さが少し治まってきた気がする。

 このところは、大学での特講(特別講義)後に学生から出されたリポートの採点を終え、小説執筆のための取材の旅にも出かけ、大嫌いな床屋さんにも行き、サングラスの入ったメガネを新調し、日本ペンクラブの年会費を払い込み、マイカーの古くなったタイヤ4本もそっくり替え、歯医者で歯の定期検診もして頂き、パソコンとつながるキャノンPIXUS印刷機のカートリッジ(キャノン純正インク入り)もカラー、モノクロともに入れ替え、ファックス用紙も補充して…、などなど。
 なんだか頭にひっかかっていた〝突っかい棒〟がやっと取れ、書くことに専念できる、とりあえずの態勢が一応整ったようで少し、スッキリしている(かといって、この〝突っかい棒〟なるもの、まだまだ私の中には山ほどあるにはあるのだが)。
 藤野可織さんの芥川賞受賞作「爪と目」も文藝春秋9月号で読ませて頂き、多くの読者から私あてに届く「マンサニージョの恋」に対する読後感や残暑見舞いなどに対しても出来うる限り返事を出させて頂くよう、日々務めている。

 こうして一日一日が過ぎ去っていく。一体、何が変わろうとしているのか。きのう鹿児島の桜島が爆破的噴火を起こし、町に大量の灰が降り注いだ。何かが変わり始める予兆なのかもしれない。
        ×        ×

 きょうは、ひょんなことから戦後1954年8月に発売され、その年に大ヒットした春日八郎の歌「お富さん」(作詞山崎正、作曲渡久地政信)の歌詞の意味をなぜか吟味してみたくなり、調べてみた。この歌詞、読めば読むほど時代を越え、味わい深い。
 何度も何度も読んで小声で歌ってみる。と、不思議な哀歓のようなものが、まるで写し絵のように私の心全体に浮き上がってくる。昭和の歌謡界で花開いた不朽と言ってよい名曲だからかもしれない。
 デ、ここに歌詞を記しておこう。

 ♪粋な黒塀 見越しの松に
  仇な姿の 洗い髪
  死んだ筈だよ お富さん
  生きていたとは お釈迦さまでも
  知らぬ仏の お富さん
  エーサオー 玄冶店(げんやだな)
 ♪過ぎた昔を 恨むじゃないが
  風も沁みるよ 傷の跡
  久しぶりだな お富さん
  今じゃ呼び名も 切られの与三(よさ)よ
  これで一分じゃ お富さん
  エーサオー すまされめえ
 ♪かけちゃいけない 他人の花に
  情かけたが 身のさだめ
  愚痴はよそうぜ お富さん
  せめて今夜は さしつさされつ
  飲んで明かそよ お富さん
  エーサオー 茶わん酒
 ♪逢えばなつかし 語るも夢さ
  誰が弾くやら 明烏(あけがらす)
  ついてくる気か お富さん
  命みじかく 渡る浮世は
  雨もつらいぜ お富さん
  エーサオー 地獄雨

 ちなみに【玄冶店】は広辞苑によれば、歌舞伎脚本「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」源氏名。ゆすりの場の俗称、とある。なんとなく分かる。

【きょうの一文・ことば】「これからも色んな子の支えになってあげてね。今までたくさん遊んでくれてありがとう」=19日付中日朝刊〈遺すために 16歳・余命告知からの87日間―下―〉の記事中で。余命告知を受け3月12日に亡くなった菊本大珠さんからチャイルド・ライフ・スペシャリストの佐々木美和さん(31歳)にあてた手紙

【新聞テレビから】
☆『〈NEWS23〉被災地の盆野球にプロOBが参加』(19日夜、CBCテレビ)
☆『大量の灰積もり清掃に追われる 桜島噴火』、『昆虫食20億人栄養 「食を救う」国連推奨 イナゴ、蜂の子も世界1900種、自然の恵み』、『知多署長 飲酒後に運転』『内部告発で発覚、更迭』、『京都・露店爆発 入院の小5男児死亡』(19日付、中日夕刊)
☆『桜島 噴煙5000㍍ 爆発的噴火 高さ過去最高に』『積雪?闇夜?戸惑う観光客』、『「テロ集団」同胞団弾圧 エジプト暫定政権対話拒否 ムバラク時代逆戻り』『同胞団支持者 肉親失い募る不信 「暴力決して使ってない」』、『「美香は胸に生きている」 山本さんしのぶ写真展 シリア取材銃撃死あす1年』(19日付、中日朝刊)

八月十八日
 まだまだ暑い。
 でも、ここにきて息子の言う通り「蝉の鳴く声がほとんど聞こえなくなり」代わって夜になると、秋の虫の声が大気を染みわたるように聞こえてきている。
 除湿も何もなく、ただ冷やすことだけに徹してきた二階寝室の旧式クーラー。この愛着あるオールドタイプの〝戦士の出番〟もあとわずかになりそうだ。これまでどこまでも生温かった風の色もここにきて少しずつ透明感を増し、時折涼しささえ感じさせてくれる。
 やがて秋空を赤トンボたちが群れを成して飛ぶ姿が見えるに違いない。

 午後、実家の母の元へ。
 お盆の間ずっと、仏壇脇の床の間前に飾られてきた盆提灯を妻と一緒に片づけた。毎年のことではあるが、これが結構難しい。ということで妻と一緒に盆提灯の組み立てを一つひとつ外してゆくという、難行苦行に挑んだのである。でも、母の満足そうな顔を前に「後片付けをして良かったな」と思う。
 それにしても、三本の提灯をすっかり解体するまでにはしばらくかかった。

【きょうの一文・ことば】どうして罪のない人の命を簡単に奪うのか。大人も子どもも関係なく巻き添えにする空襲に、戦争の理不尽さを強く感じます。=18日付中日朝刊尾張版〈戦争があった 尾張・知多の記録〉の中の【訪れて】古野南中3年菊入奨平君(15歳)

【新聞テレビから】
☆『〈NHKスペシャル〉急増! 新富裕層の実態▽移住する日本人富豪』(18日付、NHKテレビ)
☆『〈遺すために 16歳・余命告知からの87日間―中―〉前向く姿仲間に勇気 「最後まで楽しかった」(編集委員・安藤明夫)』、『衝突後10分でフェリー沈没 死者31人 不明171人 比セブ島』、『モルシ派組織の解散検討 エジプト 暫定政権が1004人逮捕』(18日付、中日朝刊)
☆『〈ふるさと―原発事故29カ月〉原子力機構職員 ヒマワリ除染信じて 「安全神話」伝えた償いに』、『関東大震災直後のパノラマ写真 復興記念館で展示 皇居前 避難30万人』

八月十七日
 ♪ざくろ裂け真紅の孤独こぼれ散る 最匠展子(さいしょうのぶこ)19歳の時の俳句

 深夜未明、東京から帰った。

 当たり前の町の風情。詩集【あの町で】の響きと人間の「生」があれほどまでに淡々とリズム感あふれて描かれた詩が一体、ほかにあるのだろうか。あったら教えてほしい…
 私が好きな詩集【あの町で】の作者でもある孤高の詩人左和伸介さんの二十三回忌の集まりに、東京在住の最匠展子さん=日本ペンクラブ名誉会員、日本詩歌文学館賞受賞詩人=から「イガミさん。ぜひ。来て」とのお誘いを受け上京していたからだ。(実は最匠さんご自身がご高齢ばかりか、病のただなかで猛暑は避けよう、との意見が浮上して一週間延長された)

 ところは、新宿の日本料理「なだ万賓館」。
 ここに、かつての左和さんを知る文学仲間らが亡き詩人の長女恭子さんを囲んで集ったのである。かといって、私だけが生前の左和さんを知らない。ただ、最匠さんに知らされて、その作品の数々から純で一徹なる詩人の姿勢と作風に打たれ、ある面での〝文学風情〟とでもいったものを学べたら、と出席させて頂いた。
 あいにく、この日は最匠さんと並び、いま一人の詩人長谷川龍生さん(大阪文学学校長)も出席予定だったがつい最近、病で倒れて入院され、回復間もない―ということで残念ながら出席は控えられた。

 若き日々の最匠展子さん(1987年5月、北上にて)と生前の左和伸介さん
 
 

 左和さんのご子息恭子さん(右)=「なだ万」にて
 

 席上、二十三回忌の呼びかけ人でもある最匠さんから出席者全員に粋な夏マフラーとともにかつてご自身が書かれた追悼文のコピーが手渡されたが、こまやかな配慮には、あらためて最匠さんの左和さんに対する思いの熱さ、そして優しさを感じたのである。
 ここにその一部を紹介しておきたい。
―あまりに衝撃が大きかったので、立ち直ることが出来ずどうしても左和さんの追悼文が書けなくて、私は慟哭と悲嘆の日々を送り、もう半年以上が経ってしまいました。それは私の心の中で、左和さんを死として葬ってしまっていないからなのです。
 …息をひきとるまでただの一度も、痛い、苦しい、つらいという言葉は吐かずただ周りの者への思い遣りに終始した、真に優しく強い人でした。その死にざまに、彼の詩人としての矜持と尊厳を、私は見たのです。医師も「こんなに我慢強い病人は見たことがない。まさに修行を積んだ高僧のようだ」と涙をうかべて驚いたほど、自己に対してはきびしい気丈な人でした。その気性が身体には勿論、裏目に出たと言えます。
 金子光晴や長谷川龍生の詩を愛し、その長谷川氏が、彼の絶筆となった作品「ひび割れた女」を、まさに日本のボードレールだ、と賞賛していますが、今後の詩業がたのしみな、成熟し充実しきった年代に入ったばかりの詩人だけに本当に無念のひと言です。
 …いつも寡黙な彼が口を開くとき、その一言一言には千金の重みがあり、的確かつ洞察にとんだ、愛情深い対象への把握があるのでした。詩人的魂だけを純粋培養するような生活をのぞみ、仙人のような暮らし方でした。その作品は、天与の瑞々しい叙情性と、それに一見相反するような論理的な構築性を併せ持ち、つねに新しい領域を切り拓いていく実存を、現代詩と小説とで表現した、惜しんでもあまりあるその人柄と才能を失ったことが、私はただただ残念でなりません。(「日本現代詩人会会報」一九九二年五月【含羞と矜持の詩人、左和伸介氏を悼む】から)

 そして、ついでながら私がかつて自著「一宮銀ながし」(風涛社、当時の筆名は伊神ごん太)の中で発表した【短編小説「熱波」】の最終章で左和さんに触れ、書かせて頂いた部分と左和さんの【あの町で】の1節も以下に記しておく。
―Sと左和さん、そして私。自己へのはげしい内省という共通の感性は、やはり家を越え、性を越え、国までも越え、産まれた日から人々が積み上げていく、人間社会に共通する「喪失」だったのかもしれない。それは、ゴッホがはかない絵に託し、くるおしく死んでいった道なき道と、何ら変わりない。(「熱波」から)
―おもての通りを土工が数人、連れだって通り過ぎた そのあとから 学生が一人 学生服を着ていたわけではないが 銀行員の前を歩いていた/ショッピングカーを引きずって主婦が通った 警察官が通った バスの運転士が歩いていた 竿竹屋が通り新聞配達が走りすぎ 年寄りが歩き 教師が鞄を下げて通っていった 押し売りも通った(「あの町で/おもての通りで」から) 
        ×        ×

 昨年の八月十七日、私はピースボートによる102日間地球一周の船旅から帰航し、横浜港に下船した。得難い体験をし多くの人々を知って終えた船旅は、これからも私自身、小説を書きながら生きていくに当たって強力なバネになることは間違いない。ここであらためて、お世話になった船友仲間全員とピースボート、ジャパングレースの皆さまに感謝しておきたい。ありがとう!

【きょうの一文・ことば】左和さんは50代で亡くなってしまい、世にも出ませんでした。でも、私の詩の中に彼の詩は生きています。人柄もすばらしかった。すなおさと優しさ、純粋さを忘れることはできません。=詩人仲間・左和さんの23回忌で。最匠展子さん

【新聞テレビから】
☆『フェリー沈没 26人死亡215人不明 比セブ島870人乗り、救助難航』、『「デモ1週間継続を」 エジプト モルシ派呼びかけ 死者700人超す』、『〈式年遷宮〉「エンヤー」外宮へ お白石持を再開』、『♪ひばりでございますヘイ♬ 「悲しき口笛」宣伝盤歌で自己紹介 金沢で発見』(17日付、中日夕刊)
☆『猛暑の京 夏を送る 五山の送り火』、(17日付、中日朝刊)
☆『東海地方の総合文芸雑誌 「中部ペン」創刊20年 年刊、毎号「座談会」を特集』(17日付、毎日朝刊)

八月十六日
 ちょうど一年前。私はピースボートのオーシャンドリーム号に乗船中、ウエブ文学同人誌「熱砂」の本欄で連日書き続けた【権太の地球一周船旅ストーリー〈海に抱かれて みんなラヴ〉】の締めくくりとして次のように書いた。

―十六日午前5時過ぎ。
 私はいま、オーシャンドリーム号の8階後部デッキの椅子にただ1人で座っている。時差も前日の15日24時で消えた。日本の海に向かってまず横笛をふく。〈風の恋盆歌〉〈越後獅子の唄〉〈さくら〉〈よさこい節〉を2度、3度とふいてみる。かぜに飛ばされそうな膝の楽譜をノートと肘で抑えながら、それでもふきつづける。
 横笛演奏をやめた私は、今度は携帯バッグからハーモニカを取り出す。
 そして。〈浜辺の歌〉を最初に〈この道〉〈うみはひろいな〉〈みかんの花咲く丘〉〈公園の手品師〉〈蛍の光〉〈仰げば尊し〉〈ふるさと〉〈夕焼け小焼け〉〈お富さん〉…などの唱歌や往年の流行歌を、まるで気でも狂ったように、次から次へとふき続けた。
 演奏を横目に早朝ウォーキングの人たちが『おはよう』といって通り過ぎていく。=原文通り(もし良ければ、「熱砂」の本欄・伊神権太作品集で私たちが乗船した昨年五月八日から下船する八月十七日までの第76回ピースボートの船内ドラマを読まれることも可能です。こんご世界一周の船旅を予定される人がおいででしたら、少しは参考になるかと思います)

 それにしても私は、帰航を翌日に控えたその日、なぜあれほどまでに横笛とハーモニカを早朝の海に向かってふき続けたのか。船上仲間との別れが、よほど辛くてせつなかったのか、それとも一人ひとりに対する思いが深かったからか。あの日々は、もう二度とは来ない。
        ×        ×

 プロ野球楽天のマーくん、田中将大投手は西武ドームでの西武戦に3―1で勝って勝利投手となり、昨年8月26日からの連勝を21に伸ばしプロ野球新記録を樹立した。ドラゴンズは東京ドームで巨人戦、6―4で勝った。やれやれ、である。

 金曜日。息子の誕生日。昼からは母と近くの大型店内の回転寿司でいっときを過ごした。帰りがけに誕生祝いに、とケーキのプレゼントまでされた。母は93歳、義母も92歳。ふたりともまだまだ意気軒昂で、どこからあれだけのエネルギーがあふれ出てくるのか。不思議だ。おそらく戦中、戦後の荒波を懸命に乗り越えてきたからにほかならない。まだまだ元気で100歳突破を、と願う。

【きょうの一文・ことば】「多くの人命が失われたことを非難する。当事者は即時に暴力を停止し、和解へと進むことが重要だ」=16日付中日夕刊〈「暴力 即時停止を」エジプト衝突で安保理 緊急会合〉の記事中、アルゼンチンのペルセバル国連大使

【新聞テレビから】
☆『実弾使用内務省が指示 エジプト死者638人に』、『中電系 大手初の電力越境 10月から 都48施設に供給』、『各駅停車「スローな旅」27,453㌔ 全線乗車 21年で終着 安城の33歳高校教諭 18日、教え子らに見守られ』(16日付、中日夕刊

☆『〈動乱エジプト〉キリスト教会36カ所に放火 強制排除後 軍支持層に反発か』『米が合同軍事演習中止 オバマ大統領 エジプト政府非難』『休暇ゴルフに批判』(16日付、毎日夕刊)
☆『97歳救いの灯守る 戦傷者引っ張り40年闘いなお 千種の女性=「全国戦災傷害者連絡会の会長杉山千佐子さん=追悼際に参列 「援護法の制定まで生きる」』(16日付、毎日朝刊)
☆『戦没者悼み精霊流し 名古屋』、『屋台爆発60人けが 花火大会14人重傷 京都・福知山』(16日付、毎日朝刊)

八月十五日
 終戦記念日。世界から戦争がなくなりますように。

 少し大げさだが、わが身に奇跡というか。それに近いことが起きた。
 きょうイオン扶桑店まで出かけ、先日注文し代金を支払い済みであるサングラスの入った、ちょっとハイカラな新しいメガネを受け取りに行ったら「高額購入者を対象とした抽選会をしています。ぜひ」とのこと。
 くじ運は良くないのでと、そのまま帰ろうとすると「そんなことおっしゃらないで」との女性スタッフの声に押され「そうですか」とやむなく長蛇の列に加わった。順番がきたのでクジを引いて開封すると、「当たり」とあるではないか。すぐに鐘がリン、リン、リーン…とけたたましく鳴らされ、恥ずかしいったら、ありゃしない。でも入る穴がない。
 結局、メガネの購入代がそっくりイオンカードとして戻ってきた。この世の中起こり得ないことが、たまには起こる。運はないもの、と思い込んでいたのに。信じられない。そういえば、私が大切にしていたメガネは昨年乗船したピースボートによる地球一周の途次、メキシコで紛失し、〝海の精〟にさらわれた。今回は、これに代わる品を求めたのだった。
 その私にとっての宝物が戻ってきた、と思えばよいか。
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 夜遅くの各局テレビニュース。エジプトでのモルシ前政権派と治安部隊の衝突はとうとうカイロばかりかアレクサンドリアからスエズと全土に拡大。双方の死者は525人、けが人も3700人以上に達し暫定政府は全土に非常事態宣言を発令したという。なんとか治まってほしい。このままだと、行き着くところまでいきかねない。内乱に発展する可能性は十分ある。ケリー米国務長官は双方とも自制するよう呼びかけているが同感だ。
 エジプトは昨年、ピースボートの地球一周の船旅で訪れたが、カイロでモスクなどを見学して回った際、雑談をした、あの茶目っけたっぷりな人懐こい方々が苦しんでいると思うと、胸が痛むばかりだ。それにアラブでは大切にされる、路上を闊歩していた猫ちゃんたちのことも気になる。でも、どうしようもないか。

 日本は相変わらず暑い一日となった。
 この夏、熱中症による死者は東京都内だけでも103人以上に達しているという。今夜、京都のドッコイヤ福知山花火大会会場でガスボンベが爆発し、58人が病院に運ばれ、うち2人は全身やけどの重体だという。

【きょうの一文・ことば】「あなたが見たことのない息子と一緒です。お酒も一緒に飲んで」「なんでお袋と俺を残して死んだ。一緒に酒を飲みたかった」=15日付毎日夕刊〈家族の絆確かめ 新婚の夫戦死 遺族代表追悼〉の中で。遺族代表の東京都練馬区、遠矢みち子さん(92)と一人息子の勝美さん(67)

【新聞テレビから】
☆『〈NHKスペシャル〉戦後68年〝ニッポンの平和〟を考える』(15日夜、NHK総合テレビ)
☆『エジプト死者278人に 治安部隊 モルシ派拠点を制圧』、『68回目終戦記念日 首相、アジア加害触れず 戦没者追悼式 遺族ら平和へ祈り』『村山氏以降、歴代首相が踏襲 「不戦の誓い」も触れず』『韓国大統領 日本に「歴史直視」要求 光復節演説「痛み配慮の姿勢を」』、『アニメ映画「風立ちぬ」 「喫煙場面多い」禁煙学会が批判 ネットでは賛否』(15日付、中日夕刊)
☆『戦況記す無傷の手紙 敵屍の浮かぶを押しのけて… 日中戦争出征 旧陸軍兵が残す 投函されず 検閲免れ遺族に』『父が死んだ戦争何だった 長男図書館通い関連書籍を読破』、『〈ふくしま作業員日誌〉44歳の男性 お盆ぐらい休ませて(聞き手・片山夏子)』(15日付、中日朝刊)

八月十四日
 真夏の夜の、とんだ戯言。お盆の大切なひととき、どうぞ無視してください。

 「幽霊」とは。金田一京助さんの新明解国語辞典によれば、〈①死者の霊が生前の姿になって現れたもの。②実在しないのに、実在する(した)かのように見せかけたもの。〉
 では、お化けは? 同じく新明解国語辞典によれば、「化け物」の意の口語的表現とある。で、「化け物」を引くと〈①動物などが人間の姿に化けた物。②正体の知れない物が、現実には有り得ない特異の姿になって現れる物。[正体が容易につかめないものや異能を持つ人の意にも用いられる]〉
 
 なぜ、こんな話になったのか。けさの朝日新聞天声人語に以下の下りがあったので。
――……▼ところで、幽霊とお化けは、似ているようで違うらしい。お化けはたいてい決まったところに現れて、誰彼なしにおどかす。片や幽霊は、うらむ相手を狙って出る。民俗学の柳田国男が「妖怪談義で述べている」▼さらに、幽霊は丑三つの鐘が鳴るような深夜に登場する。お化けは時刻にこだわらない。……▼……ちなみに柳田流に分類するなら、お岩はお化けではなく幽霊となる…(14日付天声人語)

 フムフム。でも、わかったようで分からない。
 お化けも幽霊も一緒じゃないのか、と抵抗しつつ傍らの相棒に聴くと「幽霊はうらみがある人のところに現れ、足がないの。お化けは、〝ろくろ首〟とか、ひとつ目小僧、からかさお化け…って、言うでしょ。ひょうきんで愛嬌があり、深刻な幽霊に比べたらユーモラスなの。うちの猫ちゃんだって、お化けになるのだから」と、あっさり片づけられた。

 ということは、その昔、山岳取材で北ア上高地・木村小屋に向かう途中に「幽霊が出るそうだ」の伝聞に恐る恐る歩いた、あの天井から滴したたる釜トンネルは、やはりかつてここで遭難した死者たちの亡霊が登山にやってきた人々を恨んで出てくる、そういった類の妖怪だったのかも知れない。
 なんだか、へんな話しになってしまった。でも、この世から幽霊とお化けを取ってしまったら、あじけない。幽霊にも、お化けにも、それなりの哲学、筋の通った、いたいけな魂みたいなものがある。
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 そうか。幽霊には足がない。お化けには足がある。傍らの指定席では、わが愛する化け猫、人間猫のこすも・ここが冷房のきいたなか、スヤスヤ。たまにぐぅーぐぅーと鼾をかきながら寝入っている。
 足のない幽霊が「停滞」と「後退」なら、いつ現れるか分からない変幻自在のお化けにはどこか前向きな「飛躍」のトーンみたいなもの、未来が感じられる。両方とも愛すべき存在ではあるが生きている限り、〝うらめしや〟よりは、化け物になった方が面白い。
 こすも・ここと一緒に化け物になってやろう。この年になっても、まだ遅くなんかはない。

【きょうの気になる一文・ことば】野生の象(イスラム教信者)と人間は一緒に住めない。追い出さなければ人は殺されてしまう=14日付朝日朝刊〈反イスラム ミャンマー仏教僧の訴え〉の記事中、王朝時代最後の都だったミャンマー中部マンダレーで開かれた夜の説法会でウィラトゥ師(45) 

【新聞テレビから】
☆『首相、靖国に玉串料 私費で奉納へ 参拝は見送り 終戦記念日』、『幻の比叡山特攻基地 本土決戦へ「人間爆弾」訓練計画』『旧海軍下士官証言 参拝中止し人力で造成』(14日付、中日夕刊)
☆『パレスチナの26人釈放 イスラエル きょうから和平交渉』(14日付、毎日夕刊)
☆『岡崎の民家 胸に刺し傷 男性死亡 物色跡、強殺で捜査』、『関東大震災上野店焼失、東名間寸断…』『松坂屋不屈の奔走記 直後の手紙や電報236点発見 長野経由得意客の配達代行も』(14日付、中日朝刊)
☆『6万人の熱い夜 郡上、徹夜おどり』(14日付、朝日朝刊)
☆『日中戦争「抗日ゲリラ掃射」 写真46枚作戦を記録』(14日付、毎日朝刊)

八月十三日
 迎火のくわつと明るき戸口かな   碧玲瓏
 われの星燃えてをるなり星月夜    虚子

 引き続き各地で猛烈な暑さとなった。高知県四万十市西土佐ではきょうも最高気温が40度となり、四日連続で40度以上に。盆なのに。そして、この暑さなのに。舞は自らの店へ、と出かけた。

 猛暑続きの日本。この夏、熱中症で病院に運ばれた人は39944人で前年の30%増。うち52人が死亡、1069人が重症で3週間以上の入院だという。もはや炎熱地獄とさえ言える。

 この暑いなか、関門海峡では太平洋戦争中に米軍が落としたと見られる海中の機雷の爆破処理が行われた。海峡一帯には4500発の機雷が投下され、なお未処理の機雷が数多くあるそうだ。地球温暖化にせよ、原発事故発生に伴う放射能汚染にせよ、人間たちはニンゲンたちのしたことで自らの首を絞め、振り回されている。
 明るい話題と言えば、米大リーグ・レンジャーズのダルビッシュ有投手がアストロズ戦で自己最多の15奪三振、両リーグでは初のシーズン200奪三振と好調だ。
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 「マンサニージョの恋」。「自由の風」の行方に胸のつまる思いがします。……
 苦しい時、つらい時に私を支え何かと励ましてくれている、関東在住のある妙齢の女性作家。彼女から、ドイツポーランドの紅茶とともにこんな文が〈かぜ〉に吹かれるごとく思いがけず届き、こちらも胸がつまった。でも見守られているようで有り難いことだ、と感謝しなければ。

【きょうの一文・ことば】ここまできたけれどなかなか思うようにはならない。見守っていただくだけです=NHKニュース〈3回目の盆〉の中で一度に3159人が亡くなった宮城県石巻市のある被災女性

【新聞テレビから】
☆『富士の空 星の駆けっこ ペルセウス座流星群』、『東条元首相ら20人超記す 米で発見 A級戦犯の寄せ書き 看守の日系米兵に贈る』(13日付、中日夕刊)
☆『引き続き各地で猛暑』『キバナコスモス酷暑の中見ごろ 岐阜・海津』、『取り壊しの小学館ビル漫画家が落書き』、『熱中症死女性宅2階に腐乱死体 東京・高輪』(13日付、毎日夕刊)
☆『243地点で猛暑日 四万十国内最高の41・0度』『2つの高気圧+地形が影響 内陸の四万十』(13日付、中日朝刊)
☆『早くも「日本一」商魂 四万十は…』『うながっぱ うなだれ… 多治見「暑さ日本一」陥落 熊谷「対策で1位に」』(13日付、毎日朝刊)

八月十二日
 月曜日。朝刊は休刊日でお休み。夜は家の周りの草むらでコオロギの鳴く声―コオロギたちが依然、炎熱続きの残暑に向かって愈々、対抗し始めた。

 きょうも暑い一日だった。岐阜県多治見市では39・3度と3日連続の39度超えとなり、高知県四万十市では午後2時前、41・0度と国内観測史上最高の暑さを記録した。全国的には熱中症で851人が病院に運ばれ、4人が亡くなり1人が重体になっている。
 酷暑の夏とは裏腹に大気の不安定な東京23区では、夕方から猛烈なゲリラ豪雨が降り始め、1時間に92ミリを記録。世田谷区などを中心に午後7時前には、12800世帯が停電になったという。
 それでも深夜からあす未明にかけ、ペルセウス座流星群の流れ星が夜空を白い一瞬の光りとなって闊歩するそうだ。この世は怪体な生きもの。人間社会に原発事故の如き〝人災〟はむろんのこと、自然災害さえなければ、いとおもしろきかな―ではあるが。
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 中日新聞の本日付夕刊の【御巣鷹28年 祈り継ぐ】の書き出し『母のおなかの中にいる時、日航機墜落事故で父を亡くした。父の面影を追い続けた兵庫県明石市の会社員小沢秀明さん(27)は、今年も母紀美さん(57)と一緒に「御巣鷹の尾根」を訪れた。二十九歳で逝った父孝之さんの年齢に近づくにつれ、志半ばだったであろう父の分も「精いっぱい生きよう」と思う。……』の記事が目に留まり、あの日を思い出した。
 五百二十人が亡くなった日航ジャンボ機の墜落を知ったその時、私は名古屋空港内をいつものようにペンとカメラを手に、駆け回っていた。長期連載企画「空港昨今」のネタを拾うためだったが、突然、空港内運行関係の職場のあちこちでヒソヒソ話が始まり、空港内で働く人々の目に殺気がこもってきたことに気付いた。

 「一体全体、何が起きたのか」。私はあらためて全日空、日航の両名空港支店と運輸省名空港事務所、西枇杷島署空港警備派出所などを回ってみたが、時間がたつに従い空港業務に携わっている人々の顔色が深刻の度を深めてゆき、やがて警備派出所員から「ガミちゃん(私は当時、こう呼ばれていた)、日航ジャンボが消息をたったらしい。大変なことだ」の言葉を引き出すのに時間はかからなかった。
 翌朝。私は一番で本社ジェット機「はやたか二世」でカメラとともに御巣鷹山上空へ。上空から墜落現場のルポを書いたが、あの時がついこの間のような気がしてならない。私の場合は、まもなくわが子(3男)が生まれる直前の事で、その息子をくだんの若者の言葉に替えさせて頂くなら「母のおなかにいる時、父はジャンボ機墜落取材でテンヤワンヤでした」ということになろうか。

 午前中、旅先の長男夫妻からタイの一夜干しが送られてきた。無理しなくてもいいのにと思いながらも、やっぱり能登のタイとは嬉しい。七尾高校ボート部員として青春時代を過ごし、国体にまで出場した長男にとっては、この地は社会に羽ばたく出発点になったと言ってもいい。
 それだけに、2人でふるさとに帰ったような気持でいることが、よく分かる。♪能登はやさしや土までも、の土地柄はむろん私とて大好きだ。

【きょうの一文・ことば】お父さん、墓参りに参りました。67年ぶりです。……お父さんの好きだった日本酒を持ってきました。きょうは一緒に飲ませてください。=12日付中日夕刊〈NHKスペシャル「知られざる脱出劇」終戦・北朝鮮で何が? 日本人20万人が残留…決死の38度線突破〉の中で今村了さん(79歳)

【新聞テレビから】
☆『車爆弾テロ死者78人に イラク各地』、『消費増税議論の余地 GDP(国内総生産)年2・6%増 4~6月期市場予想届かず』、『宗岡氏「全柔連に透明性 会長就任へ 執行部も外部登用 本紙インタビュー』(12日付、中日夕刊)

八月十一日
 訳あってしばらく外に出ていた。
 その1。昨年、乗船した第76回ピースボートによる102日間地球一周船友仲間の中でもことのほか、私をかわいがってくださった八重子姉さん(小泉八重子さん)の誕生会が熱海であったため、これに出席。その2。せっかくなので小説執筆に当たって、どうしても今少し確認しておきたいことがあったため、熱海のあとはそのまま二日間は行方知れずの〝流浪の民〟として、足の赴くまま、ある場所に出向きふらついていた。

 その1。すばらしき仲間たちとは、こういう人たちのことを言うのだろう。
 この日は八月八日で熱海の花火の日とも重なり、〝八重姉さん〟の誕生祝いの宴のあとは、みんなでホテル屋上に出てスターマインや芸術花火、尺玉などを楽しんだが、それは華やかで見事だった。
 それどころか、このあとは部屋に集って〝八重姉さん〟を囲んで、もう一人の、私にとってはこわくてやさし~い〝祥子姉さん〟はじめ、堀川師匠、正道さん、河合さん夫妻…ら十数人でワイワイガヤガヤと乗船時の話題を話し合い、ひとときを過ごしたが、私の行状がマナイタに乗せられることもしばしば。かといって、誰もその内容はご存じないのだが。
 時が過ぎゆくのも忘れるほどに楽しいひとときだった。

 あげくに、私と堀川師匠、笹原さんは三人共通の相部屋に移ってからも、お酒を飲みながら延々と話し続け、気がついたら夜明け近くに。「もう寝なければ」と慌てて寝る一幕も。現役時代の飲んだくれの日々を久しぶりに思いだした。
 なかでも御年七十ウン歳の堀川さんのタフネスぶりには驚くというか、いい刺激になったのである。師匠、師匠…とみんなが呼ぶので私も訳も分からないまま「師匠、師匠」と呼んでいるうち、本当に私の師匠のような気がしてきたから不思議だ。
 なんでも師匠は、船内で絵の先生を務められていた、とのこと。船内ではただのひと言も話さなかった、互いに存在すら気がついていなかったのに。何の因果か。師匠が八重ちゃんと船内友だちだったというだけで下船後、こうして飲み交わす仲になってしまった。
 私も現役時代には役職上、一度に一升ほど飲んだ深酒の日が数え知れず、よくここまで生きてこれた、と思う。酒にはかなり自信があるが久しぶりに満足のいく粋人(酔人?)にお会いでき、まさに「人間万事塞翁が馬」だなっ、と勝手な解釈で感激したことである。
 よくよく考えれば、私が今月今夜こうして師匠と話し合う珍事は、この広い悠久の世界にあって、その夜が初めてのことである。人生、意気に感ずとはこのことか。

 酔うほどに師匠は現役時代のご自身に触れ「私は本来が建設技術者。プロジェクトエンジニアで、談合ではない〝エンジニアリング〟に撤して世界を舞台に闘ってきた」といろんな人生経験を話してくださった。酒はむろん強いが、社交ダンス歴となると十年以上の達人だとも知った。私はもっぱら聞き役に回ったが、いろんなことを教えられ一緒に話が出来た幸せをあらためて噛みしめている。
 これも〝八重姉さん〟はじめ、乗船中いつも背後で【心地よき糸】を引いてくださった〝祥子姉さん〟のおかげがあればこそ、だ。こんな礼儀知らずのゴンタクレに声をかけてくださって嬉しく思っている。
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 というわけで、しばらく本欄を休載させていただいた。
 人間、秘密が多ければ多いほど魅力がますので、これ以上のことについては幻にさせていただきたい。ただ私が前向きに正々堂々と生きていること、そしてこの間、海や山、湖、川に向かって毎日、早朝に横笛を吹き続けたことを、ここに記しておきたい。
 かといって、横笛は気まぐれなところがあるので、なかなかうまくはならない。でも、そのうちに海や山、川を震撼させるほどの笛吹きになって見せよう、と思っている。このことだけは、公言しておきたい。

 山梨県甲府市で40・6度、高知県四万十市40・4度、高松市38・6度、和歌山38・5度と各地で猛暑を通り越し〝炎熱〟の1日となった。東京都心の最低気温が30・9度というから、また驚く。
 この日、熱中症で全国で1387人が病院に運ばれ、2人が死亡、8人が重症に。一方で大気の不安定さも手伝い東京府中市などで激しい雨が降り、栃木県宇都宮市では雹(ひょう)が天から降り注いだという。秋田、岩手県では記録的な大雨で土石流が発生、秋田県仙北市では土石流に9棟が全壊、4人が死亡し1人が行方不明となっている。

 こうしたなか、三回目の盆を迎えた東日本大震災の被災地では、いまだに2656人の行方が知れないままだ。

【きょうの一文・ことば】「食べれない。しゃべれない。ツマラナイ」「本当の美談は恥ずかしくて出てこない」=11日夜のNHKBSプレミアム3『〈プレミアムドラマ〉天才落語家・立川談志 人生成り行き「前編・青春の巻」常識破りの異端児』のなかで。談志さん

【新聞テレビから】
☆『列島40度超え続出 猛暑あっち行け=山梨県甲府市と高知県四万十市40・7度、群馬県館林市40・1度、岐阜県多治見市39・4度、三重県桑名市と宮崎県西米良村39・2度(8月10日時点)』(11日付、中日朝刊)

平成二十五年八月八日
 しばらく、旅立つ。

 きょう〝パチパチの日(八月八日)〟は昨年乗船した102日間地球一周ピースボートの船友仲間、〝八重子姉さん〟の誕生日のため有志によるお祝い会に出席する。そして二日後の十日夜。この日は、亡き詩人左和伸介さんの二十三回忌の集まりに出るためだ。
 だから、あす、あさってと流浪の旅先で筆を進める。

 本欄は帰宅後には再開いたします。

八月七日
 立秋。日中歩くのがシンドイほどの猛暑となった。でも、気のせいか。吹くかぜは一瞬ではあるが、どこか肌にやさしく感じられる。

 名古屋での横笛の稽古から帰ったあとは、マイカーで最寄りの銀行へ。
 帰宅すると、ちょうど帰った妻が「お母さん、タクシーに乗ってわざわざお店までスイカを持ってきてくださったわよ」の弁。その足で実家に出向くと「おまえの家に行っても誰もいなかったものだから。お店に届けておいた」の弁。
 母は自分で育てたスイカの出来栄えを見せたいばかりか、私たちに食べさせたいこともあって、わざわざタクシーにまで乗ってきたものと見られる。肉親とはいえ、なんだか悪い気がしたので私はコンビニでお稲荷とバナナケーキを買って家に届けた。
 でも。こういう何げないことって。幸せ、平和な証拠なのだ。

 夜。私の若い頃の唄で今も大好きな松島アキラの「湖愁」、そして久保浩の「霧の中の少女」をユーチューブで何度も聴いて自身も口遊んでみた。私の10代のころに流行した青春歌謡で、若いころ自室や自宅周りの農道を歩きながらスター気分でよく歌ったものだ。それにしても、この二曲の歌詞は昔から大好きである。以下にその歌詞の一部を記しておこう。
♪悲しい恋のなきがらは/そっと流そう泣かないで/かわいいあの娘よさようなら/たそがれ迫る湖の…(湖愁)
♪涙はてなし雪より白い/花より白い君故かなし/あわれ少女よ霧の中の少女/消えて帰らぬあの世の街角…(霧の中の少女)
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 ガソリン価格が上がっているという。なんでも1リットル当たりの値段が160円を超えたそうで、〝160円超え〟は4年1カ月ぶりらしい。消費税も来年4月には5%から8%に上がりそうで、大企業を中心とした表面上の景気上昇の半面で、ちまたではどこか閉塞感が漂っている。

【きょうの一文・ことば】日本兵の遺品を遺族のもとに返す活動は、まだ終わってはいない=7日夜NHK総合テレビ〈今もアメリカに残る日本兵の遺品を遺族に〉で。87歳の元米兵コナーさん

【新聞テレビから】
☆【ヒロシマ、忘れない】『原爆漫画インドへ 「夕凪の街」ヒンディー語に翻訳』『「宝塚」前身の映像を発見 被爆死女優幻のオペラ』、『復興の願い かなえまっせ』『「ビリケンさん」大槌町長に』(7日付、中日夕刊)
☆『北方領土「希望残留」の兄弟 わが古里歯舞へ』『サハリン移住、国籍変更乗り越え』、『44歳女性殺害される 大垣のマンション 帰宅の夫通報』(7日付、毎日夕刊)
☆『非核の誓い闇照らす 原爆の日 広島灯籠流し』、『中電 新電力買収へ 三菱商事系 首都圏で小売り』(7日付、中日朝刊)
☆『〈クローズアップ2013〉首都圏忍び寄る水不足 利根川水系取水制限 集中豪雨の一方ダム渇水 野菜価格一時2倍に』(7日付、毎日朝刊)

八月六日
 広島原爆の日。広島はこの日、米国による原爆投下から68回目の原爆の朝を迎えた。

 「……だから、あの日から目をそむけません。もっと伝えたいのです。世界の人々に。平和は一人ひとりが笑顔でいること、みんなが幸せを感じること、私たちが作り出すことです。スポーツや音楽など自分の好きなことを通じて世界の人々と行動します。」
 ヒロシマでの平和記念式典。テレビとラジオから流れる広島の児童代表ふたり=小学6年生の中森柚子さんと竹内瞬治くん=の読み上げる「平和への誓い」には、思わず目頭が熱くなった。

 夕方。小牧市へ。
 名鉄小牧駅近くの〝まなび創造館あさひホール〟でチーム・クレセント公演「キップ拝見」と「雛」の一人芝居を見た。2ステージとも戦争によって人生を翻弄された【日本のいちばん悪い時代】を生きてきた母と子の物語=原作・西村滋さん、戦火をくぐった唄「かあさん峠」(講談社)=で、俳優は黒田利夫さんと片山美穂さん。
 黒田さん、そして片山さんとも熱演だった。黒田さんは戦禍を逃れて学童疎開に向かう途中の母と子の身に起きた忘れられない不幸なひとコマを汽車の中で回想する場面を。そして、片山さんは疎開先まで来てくれたのに突然去った産婆の母が、その後東京大空襲を前に命の大切さを託して娘に贈ってくれたお雛さまの物語で、その中身の深さと健康的な美しさ、かわいいおばあちゃんが少女の気持ちにだんだんと変身し母の苦しかった日々を語り継いでいった、その見事さに胸打たれた。

 いずれもノーモア広島、長崎、福島にふさわしい芝居で私は金縛りとなってステージに目を注いだが、本当に「行って、この目で見て良かった」と思っている。舞台がはねたあと、わざわざ私のところまで「ゴンタさん」と歩み寄ってくださった片山美穂さん。その優しさ、心遣いには涙が零れ落ちそうになった。
 実は、私はあふれて止まない涙を見せるのが恥ずかしく照れ隠しもあって、「良かったよ」とだけ言い残して早々と退散したのだった。あのステージの余韻をいつまでも体内にしまっておきたかったこともある。
 おかげで一匹文士、私にとっての永遠のテーマである「平和とは」を、しみじみ考える1日となった。おそらく、この日の一人芝居を見た誰もが、平和のありがたさをかみしめ、感動のひとときを過ごしたに違いない。

 演技の持つ力はすごい。たとえ観客は少なくとも一人ひとりに残る感動の重さにはそれこそ、計り知れないものがある。私自身、これから小説を書いていくに当たっては片山美穂さんたちステージでの表現者の存在をひとつの目標にしていかなければ、とも思う。一人芝居と言えば、ほかに有馬理恵さん、そして感動の演技の数々といえば荻原ゆかりさんたちの劇団「希望舞台」の旅から旅へのステージも、この世で貴重な存在である。こうした文化は日本中で大切にしていかなければ、とあらためて感じたのである。

 こぼれる涙とは。不思議で愛しきものだ。

【きょうの一文・ことば】♯バスがきたきた見えてきた/平和がきたきた見えてきた/かあさん峠に見えてきた/ようこそようこそうれしいな ♯平和がきたきた見えてきた/かあさん峠に見えてきた/ようこそようこそうれしいな=6日夜、小牧の〝まなび創造館〟ホールで。小牧市が生んだ大女優、一人芝居の片山美穂さん

【新聞テレビから】
☆『綾瀬はるか戦争を聞く〈(広島原爆の死者の山の中から生まれ出た)実在した〝詩の赤ちゃん〟との出会い〉』(6日夜、CBCテレビNEWS23)
☆『原爆は「絶対悪」 広島被爆68年 核廃絶「国際連携を」 市長平和宣言』『平和伝えなきゃ 祖父の被爆体験継ぐ小6』、『愛知・岐阜で局地的大雨 床上浸水や道路冠水 1時間100ミリ超』(6日付、中日夕刊)
☆『〈犠牲の灯り 第6部「無上の風」〉1二つの神話 ヒロシマの痛み再び 「不敗」「安全」同じ過ち』、『6歳弟車で連れ去りの危機 9歳お姉ちゃんが守った 守山の路上 男の手引っかき、逃げて無事』(6日付、中日朝刊)
☆『米大リーグ A・ロッド211戦出場停止 来季終了まで 禁止薬物規定違反』(6日付、毎日夕刊)
☆『沖縄米軍ヘリ墜落 HH60基地内の山中に 乗員1人不明』『オスプレイの追加配備延期』、『「娘いるから頑張れる」「復帰戦までに100%「戻すぞ」』『安藤選手、出産後初の会見』(6日付、朝日朝刊)
☆『沖縄米軍ヘリ墜落 住宅地わずか4キロ先 「街中だったら…」』(6日付、毎日朝刊)

八月五日
 宇宙の果ての、この街に出る。
 日々、見知らぬ人々とすれ違う。でも、こんなに無限といってよいほどにすれ違うのに。知人となると皆無で、出会えば奇跡だ。ただ一人、無言で歩いていると夥しいほどの人間という生きものたちが次から次に、地底から湧き上がってくるような、そんな錯覚にかられる。
 年のせいか、このところはいわゆる〝いい顔〟の人を意識的に探す自分に気付いている。
 だが、その〝いい顔〟となると、なかなか出会わない。そういう私とて、ほかの人から見れば極悪非道を尽くした醜い年老いた男が何やら魂胆ありげに歩いている―と見られているかも知れない。いや、そう見られても仕方ないだろう。

 また、Aさんが〝いい顔だ〟と思ってもBさんの目には、そうは映らない。この世は千差万別。でも、少なくとも路上で擦れ違う人々の中で〝いい顔〟の男や女に会うと「あぁ、あんなステキな人になりたいな」といった願望だけは持っている。いやいや、今さら何ともならないことは自身、よく承知の上ではあるのだが…。

 そんなことを思っていたら、あすの広島原爆の日を前に、映画「プラトーン」などで知られるアメリカのオリバー・ストーン監督が昨日初めて広島を訪れ、原爆資料館を見学した、とニュースで知った。ストーン監督といえば、昨年、米国による原爆投下の正当性に疑問を投げかけるドキュメンタリーを制作したことで知られる。そうした先入観も手伝ってか、少なくともテレビ画面に映ったストーン監督は私の目には、とても〝いい顔〟に見えた。抑えられた笑顔がいい。

 そういえば、昨年の八月六日はピースボートの乗客として太平洋上にいた。
 あの日は平和の使者の大半がオーシャンドリーム号の8階後方のプールエリアに出て〝広島原爆の日の集い〟に出た。被爆者代表のあいさつに続き午前8時15分、船内の汽笛がボオーッと鳴り響くなか、全員で日本の方を見て黙とう。最後に〈青い空は青いままで/子どもらに伝えたい/もえる8月の朝/かげまでもえつきた…〉とみんなで歌ったのだった。
 みなさん、〝いい顔〟をした方々ばかりだった。

        ×        ×
 今夜。すなわち8月5日のよる、にだ。
 突如として木曽川河畔に広がるここ尾張地方に大音響を伴った雷鳴がとどろき、夥しい量の〝酷雨〟がしばらく、それこそ猛烈な勢いで一気呵成に気でも狂わんばかりにドッと降り注いだ。午後9時になるかならないころで、電話が入り受話器を取ると息子からで「お父さん、駅近くのセブンイレブンに居るので迎えに来て!」の電話。傘を手に、車に乗り降りするだけでビショビショになりながら駆け付けたが、道路のかなりの部分が冠水、車も人も恐怖に慄いて行き交う様子がよくわかった。
 この勢いで雨がそれこそ1日中、降り続けば、木曽川が氾濫することだって十分考えられる。そしたら、この辺りはたちまち水没してしまうに違いない。

 思えば、かつては大水害が発生するつど、特派記者として全国各地の被災現場に新聞社の取材機やヘリで送り込まれたものだ。上半身水の中を歩いて現場入りしたことも何度かある。豪雨も、地震も、風も止めようがない。せめて人災の原発汚染だけは人類の叡智と知恵でなくさなければ―

【きょうの一文・ことば】「原爆投下が正しかったというのは神話にすぎない。実際にはうそだ」「広島を忘れてはいけない。正しく記憶させなければならない」=5日付中日朝刊★ストーン監督原爆資料館に、の記事中で。広島の原爆資料館を見学したオリバー・ストーン氏(66)

【新聞テレビから】
☆『19歳瀬戸 400メドレー「金」 世界水泳』『競泳ニッポン新時代 不利種目萩野ら快挙「自分もできる」』、『文献から再現 日本の技術、中国「古琴」に』『絹弦故郷に錦 長浜のメーカー 文人の愛した艶ある音色』(5日付、中日夕刊)
☆『盗難ルノワール=油絵「マダム・ヴァルタ」=落札 英で1億5000万円 00年、東京で被害』(5日付、毎日夕刊)
☆『16歳がん余命告知 昨年末名大病院 終末期医療自ら選択』『碧南の少年 3月永眠 全部知って闘いたい 感謝のメール、9通残す(編集委員・安藤明夫)』、『石巻で震度5強 3人けが』(5日付、中日朝刊)
☆『H2B打ち上げ こうのとり軌道投入 9日ISS(国際宇宙ステーション)へ』『〈解説〉存在感高まる輸送力』、『消火訓練10人やけど 燃料足し飛び火 2女児と団員重症 滋賀・東近江』(5日付、毎日朝刊)

八月四日
 朝。
 感心するのは、午前6時に枕元で鳴る目覚まし時計の音のホンの少し前に、決まって枕元を訪れる次女猫シロちゃんである。どこで時間が分かるのか。感覚なのか。それともヒゲ? 私にはそのことが不思議でならない。いつかの小説で彼女を表現したことがあるが、まさに神がかり的だ。
 〝神猫(しんねこ)〟になる瞬間が、このときなのである。もしかしたら、目覚ましもシロちゃんの念力に鳴らされているのでは。と、そんなことまで思ってしまう。全く【異界】とは、このことかも知れない。人間には分からない、何かがそこには働いている。

 というわけで、シロちゃんは今朝も、それがさも日常生活のなかの当然の役割でもあるかのように、〝定刻〟を前に1階の定位置を離れ、そろりそろりと階段を静かに上って2階寝室に入ってきた。とは言っても、シロちゃんの目的は私ではなく妻に向かってだ。それから目覚ましが鳴るまで、ちょこんと枕元部分に両手をそろえ20~30分ほど座り込むのである。
 この仕草がかわいらしい。とても、20歳に近い猫などとは思えない。彼女は時の流れとともに若くなっていく。とまれ、妻にヒタスラ寄り添う、癒し猫の1日は今日もこうして始まった。彼女の眼中には、私の存在などはないに等しい。

 毎朝、両手をそろえて妻の起床を待つシロちゃん
 

 猫を愛する家庭では、ほかにも考えられないような心の通いあいが続いているに違いない。何も、わが家に限ったことではない気がする。義侠心といえるかどうか。猫には、そんな一面がある。

【きょうの一文・ことば】何人もの政治家が福島第一を訪れたが、アピールのために来るのはもうやめてほしい。視察に来ても作業の邪魔になるだけで、現状が改善されるわけじゃない。大迷惑だ。=4日付中日朝刊【〈ふくしま作業員日誌〉56歳の男性 政治家の視察 大迷惑(聞き手・片山夏子)】

【新聞テレビから】
☆『〈式年遷宮〉石巻復興 エンヤー お白石持に被災者招待』、『〈通風筒〉◇…尾張藩七代藩主の徳川宗春と家来らにふんして練り歩く「徳川宗春道中」とコスプレ愛好家によるパレード「世界コスプレサミット錦通レッドカーペット」が三日、名古屋市中区の錦通りで繰り広げられた。……』、『強殺容疑7人逮捕 広島少女遺棄 現金奪い分配か』(4日付、中日朝刊)
☆『イラン大統領「制裁解除目指す」 ロウハニ師が就任 核交渉に意欲』、『全国やっと梅雨明け 東北・北陸6~10日遅く』(4日付、毎日朝刊)

八月三日
 この季節、初めて見たトンボ。ちいさな命が、空中で精魂使い果たすようにヨレヨレと透明な羽根をばたつかせて浮いたり、沈んだりしている。
 居場所を求めてなのだろう。懸命に飛んでいる。何度も落ちそうになる。生き抜いて! 猛暑に苦しめられているのは何も人間たちだけではない。昆虫や、鳥たちだって、みな一生懸命に生きているのだ。

 そういえば、けさ妻の舞は「庭(の土の中)に埋めておいたから」と言い残して俳句の会に出かけていった。葬られたのは、大人の親指と小指の中間ほどの別の鳥の死体だった。日射熱に射抜かれ落下したような、そんな無残な最期がそこにはあった。
 玄関の上がり口に白いティッシュに包まれ、何げなく置かれていたその鳥は熱さのなか、仰向けに全身を大の字に硬直状態で死んでいた。「店先の路上で息を引き取っていたので」ということらしい。
 元々口数が少ない。だから今さら「生」が戻らないものの顛末をあれこれ聞くのも憚れ「あっ、そう」とだけこたえておいたが、次の言葉「あのね、上から落ちてきたみたい。お店の周りには、あちらこちらにツバメの巣があるみたい。だから、それかもよ」の声を耳に「あぁ、そういうことだったのか」と納得した。
 
 このちいさな命。いずれにせよ、熱射に打たれたようで路上に落ちハリツケ状態でいたところを拾い、白い紙に包んでわが家に持ち帰ったものらしい。放置されれば路上で大の字のまま太陽の射光に焼き尽くされカラカラとなって、車など何げないモノたちに踏まれて、やがてはそのまま朽ちてただのゴミとして雲散霧消したに違いない。

 私だったら、そのまま見て見ぬふりをして通り過ぎただろう。でも、命の声なき声を見過ごすことができなかったに違いない。同じこの地上に生きている仲間のひとりとして― 合掌。
        ×        ×

 夜。一緒に七夕まつりが開かれている街中へ。ひごろ人っ子ひとり居ない町が七夕の吹き流しで飾られ、露店でにぎわい浴衣姿の女性やわが子の手を引いた人々の姿が目立った。みな地球の果てで、こうして肩を寄せ合って生きている。私たちは一度行ってみたかった酒場に立ち寄り、私だけが、もう一軒の店に足を延ばした。

【きょうの一文・ことば】「記録に並ぶことができて今はうれしい。でもまだまだ通過点。次に向けてやっていきたい」=3日付中日朝刊〈プロタイ記録 田中開幕15連勝 憧れの斉藤に並ぶ〉で。楽天の田中将大投手

【新聞テレビから】
☆『武功夜話物語 その128 信長が青春をかけた最愛の妻、吉乃(1)』、『あす石上祭 尾張富士へ献石』(3日付、尾北ホームニュース)
☆『豊橋、浜松で震度4』、『名古屋城に交流記念銘板 陸前高田ずっと友達』、『米議会 靖国参拝なら再び緊張 日中韓 憲法解釈変更も論争に』、『NY株終値 最高値更新 2日連続で』(3日付、中日夕刊)
☆『米が渡航警戒情報 「アルカイダがテロ計画」全世界に』、『日本一やかましく鉦や太鼓響き渡る 桑名・石取祭』(3日付、毎日夕刊)
☆『〈読み継がれる被爆者の思い〉国超え時超えゲンは生きる 連載開始から40年 翻訳は20言語■授業に活用』『〈詩で伝える原爆と原発〉吉永小百合さんイベントで朗読』『福島第一 地下水1日400トン海へ 東電推測 事故直後から汚染か』(3日付、中日朝刊)
☆『トヨタ世界1012万台 13年生産営業益 今期1・9兆円』、『「日本復活を」ねぶたに込め』(3日付、毎日朝刊)

八月二日
 きょうも暑い一日だった。
 わが家には、1、2階の各部屋とも冷暖房設備が施されているが、2階の一番広い寝室に設置されているクーラーこそ、何を隠そう。今から、四十年前、私たちが三重県志摩半島の新聞社通信部で生活を始めた時にボーナスを充て奮発して備えた大型クーラーである。

 信じられない―と言われそうだが、その旧式クーラーは健在で今も私たち夫婦の生活を守ってくれている。妻は「そろそろ、変えなければ。冷房代ばっかり、かかって仕方がないのだから」と時々、思い出したように言う。でも、私の心は決まっている。
 長年の間、私たちの生活を支えてくれてきた、このクーラーの命が絶えるまで私は手離しはしないだろう。「そろそろ、新しいのに変えなくっちゃあ」と思い出したように言う妻も、私の気持ちを十分わかってくれているはずだ。

 志摩から岐阜、岐阜から名古屋、小牧へ。小牧から能登、大垣…と家族の引っ越しのつど一緒に転戦。百戦錬磨の道を歩いてきた老いたクーラーと私たち。もしかしたら、私の命の方が早くこの世から消え去るかもしれない。
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 ドラゴンズは、横浜球場でDeNAと対戦して4ー2で勝ち3連勝。楽天のマーくんこと、田中投手は札幌ドームで日ハム戦に登板して4ー1で勝ち、開幕15連勝。プロ野球タイ記録に並んだ。それにしても、マーくん、よく頑張っている。

【きょうの一文・ことば】「正しい柔道指導をしていれば、こんなことにはならなかったと今でも信じている。…」=2日付中日朝刊、〈松本・柔道事故初公判 謝罪は 指導責任は 両親、無罪主張に憤り〉の記事中、父の沢田博紀さん

【新聞テレビから】
☆『原爆症8人を認定 新基準 国の却下取り消し 大阪地裁判決』、『CIA元職員亡命認定 米、首脳会談中止も 大統領補佐官「ロシアに失望」』『米国内通信英傍受か 英紙報道「米から援助150億円」』、『ベルルスコーニ伊元首相 脱税で有罪確定 最高裁判決』(2日付、中日夕刊)
☆『「春日井」ご当地ナンバー 全国10地域決定「飛鳥」は落選』、『「新人でございますので」 参院初登院 与党言葉選び』(2日付、毎日夕刊)
☆『世界初の3兄弟頂点 亀田和(毅がWBOのバンタム級タイトルマッチで)王座奪取』『最終兵器 巧みさ光る』、『〈球心〉19歳周平逆転満塁弾 若竜連夜弾む 気迫の5打点』、『浴衣涼やか1500人詣で 伊勢神宮外宮』(2日付、中日朝刊)
☆『7月の降水量 東北最多、九州南部最少』、『CIA元職員 露に亡命期限1年』(2日付、毎日朝刊)

八月一日
 NHKのクローズアップ現代〈17万人が感動! 奇跡の江戸絵画・若冲〉を見て感動した。この番組を通じて、これまで歴史に埋もれていた神の手を持つ江戸時代の天才絵師・伊藤若冲の存在を知ったばかりか、米人絵画コレクター、ジョー・プライスさんと悦子・プライスさん夫妻が【生命の色を被災地に】をキャッチフレーズに、若冲の江戸絵画展を岩手県立美術館など東北各地で実現させるに至ったいきさつを知ったからである。
 若冲の絵画ばかりを長年、集めてきたプライスさんは、番組の中で「絵が語りかけてくるものを、耳を澄ませてみてください」と話し、若冲が八十五歳の時、生涯の最期を前に描いた一作〝鷲図〟を前に「生涯でもっとも力強い作品です。鷲が未来をグッと見据えている姿で、恐れるものは何もない、と若冲が訴えている」とも。
 また若冲展を目の前に「感動に手が震えました」という若い女性は「若冲の絵を見ていて、みんなつながって生きているような、命がつながってきていて今の自分がここにいる。そんな気がします」と話していたのが印象深かった。

 感動といえば、本日付中日夕刊文化欄の【〈大波小波〉 歴史と文学の未来】が、とてもいい。何も私が最近、全国発売した船上ラヴ・ロマンス「マンサニージョの恋」が爆発的に売れてはいない=あくまで今のところは、ではある。無名の一匹文士としては、むしろ売れてる方かもしれない=から僻んでいるわけでは決してない。
 文学の王道を書いていたからだ。
 一部を抜粋しておこう。
――…中原中也といい梶井基次郎といい、そのとき売れなくても歴史に名を残した詩人や作家は少なくない。…難解珍妙小説の類が文芸誌で幅を利かせ、芥川賞などは奇天烈でないと受賞できないという観さえ出てきている。/ひたすら売らんかな路線と、新奇珍妙路線と。二極化はとめどもなく進行している。そしてそのどちらもが歴史を忘れた振る舞いだとすれば、文学の未来は…。(音痴カナリア)

【きょうの一文・ことば】「異文化への理解こそ平和の鍵。この墓石はそれを象徴している」=8月1日付中日夕刊〈「原爆ドーム」チェコ人建築家 母国に鳥居つなぐ平和 100年前の墓石 異文化理解象徴に〉の記事中で。美術史家デク・リシャーネクさん(38)

【新聞テレビから】
☆『改憲「ナチスに学んだら」 麻生氏が発言撤回』『米のユダヤ団体 発言を強く非難』『ナチス肯定断じてない 官房長官』(1日付、中日夕刊)
☆『祇園の芸舞妓が夏のごあいさつ=京都市東山の祇園で1日、黒紋付き姿の芸舞妓が芸事の師匠やお茶屋などにあいさつ回りをする恒例行事「八朔(はっさく)』が行われた。』、『最高ポストに女性 最高裁大法廷首席書記官に曽根啓子さん(57)が就任。裁判所書記官9500人の最高ポストで女性は初』(1日付、毎日夕刊)
☆『値上げ夏休み直撃 円安・原価高騰 ガソリンや電気…水稲まで』、『愛工大名電 2年連続 甲子園切符』(1日付、中日朝刊)
☆『アンドロメダくっきり すばる高性能カメラ撮影』(1日付、毎日朝刊)

13年8月1日

ウェブ作品集

伊神 権太

実録随想「残り花」

平成二十五年八月三十一日
 伊神権太の連作長編小説「マンサニージョの恋」(クリックしたら、見られます)=全国書店とアマゾンで発売中
 
マンサニージョの恋
・幻冬舎ホームページ
・amazon

 あすは二百十日、防災の日。大正12年の9月1日。関東大震災が起きた。

 地震は、もちろん怖い。
 でも、この日がくると、震災とは別に思い出す。
 それは、大韓航空機007便の旧ソ連機による撃墜事件。そして〝かぜ〟を切る踊りで台風を退散させる、越中おわら風の盆のことである。
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 大韓機撃墜事件。
 「269人乗り 大韓航空機 サハリン強制着陸 ソ連領空侵犯? 全員無事 日本人 天白の女性ら27人」(1983年9月1日付中日夕刊本紙1面)
 私がこの〝第一報〟を知ったのは夕刊で事件が上記のように報道された、その日の午前中だった。空港担当記者として。昭和58年9月1日午前11時ごろ、名古屋空港内の日航名空港支店のテレビを通して、だった。この日は、たまたま東海地方の書道家一行が中国民航機で上海に飛び立つ、というのでその取材に訪れていた時である。
 5番スポットでのセレモニーでは宝塚出身の青年座看板女優、三谷侑未さんから一行の団長に花束が渡され、そこには中日旅行会生みの親の一人と言ってもいい、ありし日の遠藤さんのお姿もあった。
 この大事件は、その後、テレビニュースを注意していてもクルクル変わり、謎が謎を呼んだが結局は夜に入り、ソ連のミサイルに領空侵犯の大韓機が撃ち落とされたらしい、との断片的な報道が流れ始め、深夜遅く「オイ、いがみ。北海道に行ってくれ」との電話が当時の滝社会部長から入った。
 やがて「アメリカのシュルツ国務長官が、大韓航空機の007便はソ連の戦闘戦がミサイルを発射し、撃墜された。丸腰の民間機を撃ち落とすなど極めて非人道的である」と発表するなど。テレビ画面から新しいニュースが次々と飛び込み、私はそのつど、新しく飛び込んでくる情報に翻弄された。

 翌早朝、私は本社の双発取材ジェット機「はやたか二世」で名空港を出発。機長は中本浩氏、写真部のカメラマンは岡崎正義さん、他に内藤整備士という陣容である。
 「中日さん、国籍不明機(ソ連機)が近づいている。危険だから引き返せ! 危ない 危ない、ソ連機が近づいている」「撃ち落とされてしまう」「引き返せ、引き返せ」。
 その日、日本人記者として初めてオホーツクの海に分け入り、モネロン島周辺の上空を大韓機の残骸と遺体を求めて海面をはうように飛行する本社機に対し、稚内レーダーサイトが叫ぶようにして何度も何度も警告してきた、あの日の恐怖取材を忘れることは、これからも永遠にないだろう。
 私は、確かあのとき何ひとつ痕跡を残さない鮫肌状の海を眼下に「オホーツクも、宗谷海峡も、そしてモネロン島周辺の日本海も。物こそ言わないが、みな泣いている。遺族、いや海にのまれた家族の悲しみは、この最果ての海の深さより、さらに深いに違いない。遺族の気持ちは、一体、どうなるのか。」
 「北の海は物言わず、泣いていた。無防備の民間機を撃ち落とす、など人道的にも許されない。海はやはり、泣いていた―」といったような内容の上空からのルポを送った記憶がある。この衝撃的ともいえる上空ルポは、中日・東京新聞はむろん、友好社である北海道新聞にも【はやたか二世にて 伊神孝信記者】の署名入りで大々的に報じられたのである。

 一方で台風がくると、決まって思い出す富山は越中八尾。胡弓が、心までをも撓わせる哀愁の音を奏でて町を流す〝おわら風の盆〟についても、能登時代に何度か八尾を訪れたことがあるだけに、格別かつ忘れられない話がある。あまり軽くなってもいけないので、きょうのところは控えさせていただく。安易な言葉がちまたに逃げ出さないためにも…

【きょうの一文・ことば】……▼101歳の医師日野原重明さん。全国の小学校を訪ねる「いのちの授業」が10年を迎えた。「命とは、きみたちが使える時間のことなんだよ」。多くの「使える時間」が、古今の戦争で断ち切られた。=31日付朝日朝刊、天声人語から

【新聞テレビから】
☆『〈NHKスペシャル〉メガクエイク=巨大地震=最新作! 首都壊滅90年目の警告』、『SONGS ベンチャーズ▽エレキの意味をチャー激白▽女子高生』(31日夜、NHK総合)
☆『対シリア 米大統領限定攻撃を検討 化学兵器使用の証拠公表』『国連調査団シリア出国』、『三重の中3強殺 帰宅中突然襲われる? 遺体争った形跡なし』、『トウカイテイオー急死 2冠 無敗で父子制覇』(31日付、中日夕刊)
☆『TPP 日本、合意項目覆せず ブルネイ会合終了 妥結優先米国ペース』、『中電、給与引き下げへ 労組に提示 料金値上げ視野』、『中3殺害面識ない人物か 三重 財布の現金なくなる 強盗殺人で捜査』(31日付、中日朝刊)
☆『英議会「イラク戦争の教訓に学べ」 「シリア介入 与党も30議員造反」』『仏大統領は積極姿勢』、『被災者雇用38%のみ 厚労省 復興予算流用を調査』『被災地以外では2・3%』(31日付、朝日朝刊)

八月三十日
 近くのスーパーに行って、生まれて初めて自分の手でお豆腐を買った。少年のころ、買い物に行かされた時などにかっていてよさそうなものなのだが。これが豆腐に限っては、なぜかなかった。こどもの持ち運びには、壊れやすかったからなのか。

 午前中、思い出したように実家に電話し「どこかに、食事にでもいこうか」と満93歳の母を誘うと「おかあちゃん、きょうは動きたくない。それより、豆腐を買ってきてよ」のお達し。というわけで買いに出向いた。出かけるに当たっては相棒に「どんな豆腐がよいか」と助けを求めたが、〝もめん〟とか、〝ぬの〟とか、いやはや豆腐ひとつを取っても、あれほど種類があったとは。とにかく驚いた。

 どうせなので、ついでに梅干し1パックも購入し持参すると、母は「ありがとう。梅干し、なくなりかけていたから助かる」と嬉しそうで午前中、電話を一本してよかったナと、つくづく思った次第。母は「せっかくだから、たかのぶ。腰をさすってくれないか」と言うので、ハイハイと腰もさすってやった。帰ると、いっとき凄まじい勢いで雨が天から落ちてきた。でも、すぐに止んだ。

 きょうは合間を見て能登半島・七尾の旧知の友に先日、珠洲の特別純米酒・純粋無垢「宗玄」と羽咋の純米酒「遊穂」を送っていただいたお礼の電話をしたが、たまたま「明日、うちの息子が結婚式をあげる」との朗報に接し、なんだかこちらまでがジーンときてしまった。心から、おめでとうございます。
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 私、いまは人呼んで、天下にただ一人の一匹(いっぴき)文士。
 素浪人の身ではあるが、相変わらず連日あちこちから電話がかかったり、便りやメールが届いたり、果ては文芸同人誌「北斗」の創刊第600號記念號や作家三田村博史さんの小栗重吉〝漂流譚〟「漂い果てつ」(風媒社)など各方面からの書籍が届いたり…、で、結構いそがしい。
 でも、何より大切なのは書き続ける、それも新しい形の小説を。これに尽きる。

【きょうの一文・ことば】「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増す」=30日付毎日朝刊〈現代への警句㊥ 関東大震災90年〉の記事中で。関東大震災の時代を生きた地球物理学者の寺田寅彦の著作から引用

【新聞テレビから】
☆『英、シリア攻撃断念 政府道義を下院否決 与党大量造反』『米、単独介入辞さず』、『コストコ大盛況 早朝すでに大行列 常滑にオープン 入店2時間待ち』、『春日井の女性09年から不明 殺人容疑浜松の男逮捕 春日井署4年近く捜査せず 供述通り遺体発見』『家族が捜索願「家出人」で対応』(30日付、中日夕刊)
☆『〈アートあいちトリエンナーレ〉ビートたけしさん大須演芸場に 「におい 36年前と同じ』『出品作の装飾 原画手がける』、『講談社側に賠償命令 黒川博行さん グリコ犯扱い 東京地検』(30日付、毎日夕刊)
☆『風を切るリニア 体感505㌔ JR東海 営業車両で走行試験』、『中3女子殺される? 25日夜から不明 空き地に遺体 三重・朝日町 花火見物後連絡絶える』(30日付、中日朝刊)
☆『書記官が泥酔し裁判資料を紛失 名地裁』(30日付、毎日朝刊)
☆『(ドラゴンズ)11年ぶり神宮3連勝 真骨頂〝乱戦〟に遊ゴロで決着 井端で』(30日付、中日スポーツ)

八月二十九日
 昨夜遅く名古屋から帰って以降は、少し寝ただけ。未明に再び起きて執筆を続け、朝になったので半分からだが眠った状態で江南市内の社交ダンスレッスン場へ。どんなにハードでもいったん飛ばすとズルズルベッタンで休んでしまいかねない。そう自身を鼓舞して励んだ。まさに継続は力なり、である。

 「ゴンタさん。5分遅れたわよ。この5分が大きいのだから」と先生に叱られながら、それでもジルバ、タンゴ、ルンバ、ブルースとナントカ、ひと通りこなした。きょうのレッスンはこれまでのオーソドックスなジルバの途中に【クィッククィック】のステップが加わるものだったが、これがなかなかスムースにいかない。
 【クィッククィックは、〝後ろ、前〟よ】の言葉に〝後ろ〟と〝前〟を繰り返すうち、そこそこ、ステップが踏めるようになった。帰宅後は昨夜、平和と愛を旗印に一人芝居の演劇活動を、ただひたすらに続ける日本の女優・片山美穂さんと約束した件もこなしてしまおう、と思ったが気が付いたら、私はソファにからだを預けたまま〈夢んなか〉だった。

 現役時代に比べたら、書くことだって読むことだって、時間は十分あるのだが。どうも長く続いたやくざな仕事柄からか、毎日が夜、昼、朝のない生活の延長で時間に無頓着な癖はそのままだ。ただ私は最近、街なかをどこへ行くのか、おそらくあてもないまま右往左往している似た年恰好の男たちを目の前にふと、こんなことを思う。
 「この人たちは、居場所をどうしてよいのか分からないまま、さまよっているだけじゃないのか。こんなにまで哀れな姿をさらしてまで、生きていく必要があるのだろうか。そろそろ我が輩も年貢のおさめどきじゃないか。ジタバタするのは、よそう」と。

 でも、思う。
 私の確たる文学だけは、いい面でも悪い面でもこの世に残しておく使命があるのだ、と。私でしか書けない大切なものが、まだまだ多くあるのだから、と。きっと、いつの日にか、世のため人のためになる。考えてみれば、赤ん坊から百歳以上の老人まで。早かれ遅かれ、この世からはみ~んな消えていく。みな同じ運命共同体で、それぞれの一瞬を生きているのだ、と。
 だったら貪欲に今を大切にやるべきことをきっちりやらなければ。そうした面でも、もはや後がない、酷使したってかまわない。

 なぜ、こんなにシミッタレタ話になってしまったのか。
 それは、けさのレッスンの合間に仲間から出た話が、知人が相次いで亡くなったとか、突然、脳内出血などで倒れ入院したとか、年老いた妻が家で転んで足の骨を折ったとか。そんな不景気な話ばかりだったから。だから、のような気がしてならない。下ばかりを向くのではなく、上を向いて歩いていこう。

【きょうの一文・ことば】「日本の柔道は一番強く、美しいというのを見せたかった」=29日付中日夕刊〈『新鋭21歳大野「金」 世界柔道 日本男子3日連続V』『攻撃貫きオール一本 男子73㌔級』『40年ぶり軽量3階級制覇』〉の記事中、大野の言葉

【新聞テレビから】
☆『〈クローズアップ現代〉〝アラブの春〟の混迷 緊迫する中東情勢』(29日夜、NHK総合)『〈世界遺産〉「ニッポンの里山」能登絶景棚田 富士山・湧水と茶草場』(29日夜、NHKBSプレミアム)
☆『シリア攻撃 英首相、週明け以降判断 野党抵抗で方針転換 国連調査報告後に』『安保理協議は物別れ 中ロ、軍事決議案に反対』、『継続は信頼なり 被災地へボランティアバス 名古屋発あす100便 きめ細かな支援「心待ち」』『震災2年半後 福井沖で発見 漂流戦気仙沼へ』(29日付、中日夕刊)
☆『「夢」実現へ 格差解消を オバマ大統領が演説 キング牧師大行進50年』、『大韓機撃墜事件から30年 遺族風化を懸念』『息子失った陶芸家「作品で語り継ぐ」』『大学生、証言を本に「悲しみ残して」』、『永六輔さんラジオ番組終了 「誰かとどこかで」 最長1万2629回』、『宇連ダム貯水率3・6%節水25%に強化 東三河カラカラ 入浴サービス休止、農作物に影響』(29日付、毎日夕刊)
☆『48歳マサに祝砲5発 プロ最年長先発勝利 更新 セ最年長安打・打点』、『(将棋の)羽生(善治)王位 防衛タイトル通算85期』、『国税調査官を逮捕 OBと脱税協力の疑い 大阪地検』(29日付、中日朝刊)
☆『(【I Have a Dream】の)キング牧師大行進(から)50年 ケネディ大統領「よくやった」 当初は反対 終了後は評価』、『海面水温過去最高 今月中旬 日本の5海域で』『サンマ漁獲量減少』『今は豊漁でも… 東海地方 冬季の水揚げ懸念』、『日本の人口26万人減 4年連続 増加は8都県のみ 3月末時点』(29日付、毎日朝刊)

八月二十八日
 夜。秋の気配をからだに受けつつ、愛用のハモニカと横笛を手に家を出た。

 名古屋市内の千種駅近く居酒屋「ぼん」へ。先に小牧市内のまなび創造館あさひホールで一人芝居「雛」を熱演し、家族の幸せを一瞬にして破壊する戦争の惨たらしさを告発、平和の尊さを訴えた女優片山美穂さん(チーム・クレセント主宰)=小牧市出身。東京都大田区在住=、そして昔の演劇少年そのままで今はいったん舞台から離れている演劇の虫、小畠辰彦さん=名古屋市在住=と一献。互いに演劇文化や、あるべき文学への思いの丈を語り合った。
 「結局のところ、人間って。好きなことしかしていけない、と思う。伊神さんだって、これからは好きな小説しか書いちゃいけない。だから、私は舞台に出演しているのよ」と話す美穂さん。かつて、劇団「小牧はらから」を主宰した小畠さんも演劇への情熱を熱っぽく語るなか、私も自らの文学論に加え、ちまたで安易に表現されがちな【平和】って一体何なのか、について持論を展開。楽しく有意義なひとときは疾風の如く過ぎ去った。

 こうしている間にも世界ではシリア情勢が緊迫の度を増し、化学兵器疑惑を巡り米軍の軍事介入が懸念され、ミサイル発射に伴う一触即発の危機にさらされている。エジプトも前大統領派のムスリム同胞団と軍事政権の対立が半ば内戦状態化、尖閣諸島問題に至っては中国海監による日本の領海侵犯が再三…と醜い争いは絶えることがない。

 やはり【平和】は絵空事なのか、と思うと虚しくさえ思う。
        ×        ×
        
 なんだか、おかしな話になってしまった。だが、人間が人間である証明は、互いの利害を乗り超え、争いのない、互いに相手を少しでも理解し合って、仲のいい社会を創造する。これに尽きる。

 ただ、こんなことを思っていると、あの太宰治が「めくら草紙」の冒頭に書き出した以下の文がボクの脳天に降ってわいてくるのである。
―なんにも書くな。なんにも読むな。なんにも思うな。ただ、生きて在れ!

 わかってはいるが、私はそれでも書き続ける。文の相手は太宰でもそこいらの作家たちでもなく、私自身なのである。
 
【きょうの一文・ことば】「全部が全部、抑えられるわけではない。やられたときこそ次が大事。不安を持ち越さず、しっかりと自分を持ってマウンドに立つ」=28日付中日朝刊【〈球心〉岩瀬9年連続30S 心静かに記録更新 乱戦3人ピシャリ】の記事の中で。中日ドラゴンズの岩瀬投手

【新聞テレビから】
☆『福島第1原発 汚染水漏れ「レベル3」 国際評価2段階上げ』、『藤沢嵐子さん死去 「タンゴの女王」』、『暑さやはり湿度のせい 東海地方最近過ごしやすく 不快指数 暑くて汗が出る→やや暑いに』『熱中症まだ注意必要』(28日付、中日夕刊)
☆『児童運転車2020年発売 日産、米で試作車公開』『海老沼V2 世界柔道』(28日付、毎日夕刊)
☆『「29日にもシリア攻撃」 欧米、反体制派と会合 米など報道』、『再打ち上げ30日以降に イプシロン 地上側に原因か』、『中川の女性遺棄 傷害致死は処分保留 名古屋地検 起訴見送りへ』『黙秘続き死因も不明』(28日付、中日朝刊)
☆『「那智黒」広辞苑が誤記 三重・熊野産→和歌山・那智地方産』、『名鉄・金山駅ホームから転落 女性救助さらに2人』、『学力テスト 上位・下位県固定化 秋田・福井〈独自テスト奏功〉 沖縄・大阪〈生活習慣に問題〉 岐阜・愛知〈中学数学で上位〉【解説】課題すでに明確解決に取り組め』(28日付、毎日朝刊)

八月二十七日
 愛用のくひな笛(水鶏笛)とスリランカからの思いがけないメール、芥川竜之介の小説「河童」について。

 くひな笛は、かつて私が新聞社の支局長時代に有志読書グループの女性たちに誘われ、三重県伊賀上野市までバス一台を貸し切っての文学散歩に同行した際、俳人松尾芭蕉の生家で購入した陶笛である。奥の細道を旅する芭蕉が頭陀袋に入れていつも持ち歩いた、そのくひな笛を私は大津支局在任中、肌身離さず時には琵琶湖畔にまで出向き、円形の小孔に口元をそえ、空と湖上に向かって、よくふいたものである。
 ♪ホー、ホー、ホー…と、か細く湖面をわたる鶏が鳴くような笛の音に哀愁を感じ、寂しさを紛らした日々がついきのうのようでもある。早いもので、あれから二十年近い。先日、室内の一角に置かれていた、このくひな笛をあらためて手にしたのをきっかけに、これからは旅に出るつど、この笛を持参しようと自身に言い聞かせた。

 二番目の話は、昨年体験した第76回ピースボートによる102日間地球一周船旅の際、立ち寄ったスリランカ(コロンボ)のヤソーダラ孤児院で通訳をしてくださったダハナーヤカさんから思いがけず、二日前私あてに国際メールが届いた件である。「Korekaramo Yoroshiku Onegaitashimasu Y.M.W.Dahanayaka」といった簡単な内容だったが、とても嬉しかった。

 そして今ひとつ。それはひょんなことから本日、芥川竜之介の小説「河童」に再会したことだ。たまたま、妻が「友だちに借りた」と手にしていた岩波文庫の本を目にしたところ、芥川竜之介とあるので「見せて」と言って頁をめくると何と、若き日々に何度も繰り返し読んだ、あの「河童」ではないか。
 というわけで、特別の許しを得てこの文庫本を読み、久しぶりにこの物語に出会い、ひとときを過ごしたのである。私は学生時代に二、三度読んだ記憶があるが河童の恋愛物語など―その内容は何度読み返しても面白い。私のこれからの創作手法にも大いに生かさなければ、と思ったことである。
 芥川は「河童」の中で〝河童の恋愛〟につき「趣を異にしています」と言ってはいるものの「雌の河童はこれぞという雄の河童を見つけるが早いか、雄の河童を捉えるのに如何なる手段も顧みません。一番正直な雌の河童は遮二無二雄の河童を追いかけるのです。……いや、そればかりではありません。若い雌の河童は勿論、その河童の両親や兄弟まで一しょになって追いかけるのです。……」といったところなど核心を突いており、ニンゲン社会をつい連想してしまう。

【きょうの一文・ことば】▼…谷川さん(民俗学者で24日に92歳で逝去した谷川健一さん)は「地名を守る会」をつくり、「地名が消えるのは、村の過去を知っていた古老が死ぬのとほとんどおなじような悲劇…つまり幾千年以来の…歴史はそこで終止符を打つ」と訴え続けた=27日付中日朝刊〈中日春秋〉から

【新聞テレビから】
☆『(新型の固体燃料ロケット)イプシロン 打ち上げ中断』、『20歳高藤(直寿、東海大)初出場で金 世界柔道 男子60㌔級日本勢16年ぶり』『浅見「銀」V3逃す 女子48㌔級』、『同時に80試料捜査迅速化 DNA自動鑑定 愛知でも 新たに6県警配備へ』(27日付、中日夕刊)
☆『北東アジアで危険起きぬ 正恩氏、挑発自制伝える 中国に配慮』、『シリア 米、化学兵器使用と断定 政権の責任追及 軍事介入本格調整』(27日付、毎日夕刊)
☆『消費増税「点検」スタート 7氏が賛否表明 〈格差が拡大〉〈若者に目を〉〈段階的に〉』『「吉田の火祭り」 富士山夏の終わり』、『土橋正幸さん=元東映、現日本ハム=死去 162勝投手、2球団で監督 77歳』『強気テンポいい投球 江戸っ子 解説も人気』、『ルナ(ドラゴンズ)帰国し治療へ 今季中の復帰なくなる』(27日付、中日朝刊)
☆『バルサルタン使用中止 徳洲会グループ「患者に不信感」』『臨床研究の点検を要請 国が医療機関に』、『シリア 国連毒ガス調査開始 出発時に銃撃 安全懸念』、『「ゲン」閲覧制限撤回 松江市教委「混乱おわび」』(27日付、毎日朝刊)

八月二十六日
 きょうは、月曜日。前日に続いて休みの妻の舞が独り、ぶらり旅に出た。

 【昼過ぎ】いっときJR飯田線の女(ひと)となって、どこかは知らないが堪能しているようだ。国の内外に拘わらず、若い頃から、一緒に旅に出るといつも、スタコラサッサといった具合に、どこかに消え去り私を慌てさせる相棒。その舞が「ひとりで飯田線に乗ってきたい」というので朝早く、名鉄江南駅まで車で送りはしたが。
 実際、舞には行く先々で知らぬ間に雲隠れしてしまう少女時代のような探検癖があり、前科が前科だけに、無事に帰って来るものかどうか。少し心配しながら私は私のことを行い、こうして時は音もなく進んでいる。午後六時を過ぎた。「互いに勝手に生きよう」「ボーボワールとサルトルでいこう」との約束で、ここまで人生街道の綱渡りをしてきたのだから、いまさら男に引っかかって綱から落ちることもなかろう。
 万一、落ちたら落ちたで、それはそれで舞が得意とする俳句と短歌の作句づくりの栄養源にでもなってくれたらそれでいい、と率直に思う。それよりも途中、山奥で雨にでも打たれていないか。その方が心配だ。へんな獣道に分け入って行方不明にならなきゃいいが。

 【午後八時過ぎ】。
 舞は目を輝かせて無事、ご帰還。雨も降らなかったという。なんでも鳳来寺山の本堂と東照宮辺りまで本長篠駅から行きづりの観光客とタクシーで一緒に行き、1425段にも及ぶ石段をただ、ひたすらに下りて来たのだそうだ。帰宅するまでに口にしたのは、アンパン二個だけ。なんだか疲れに行ったようなものだと思いきや「結構、面白かったよ。楽しかった」と。
 これを機会に、これからはどんどん、健康と体調、自分の時間の許す限り、どこにでも独り旅に出かけたらよい。次はどこへ行きたい、と言い出すのか。日本の片隅から世界の果てまで、行きたいところがあれば、どこにだって行けばいい。ただ自らの体力と相談しながらの、条件付きではあるが。
 もしかしたら、宮沢賢治の銀河鉄道に乗りたい、と言い出したらどうしよう。そのときは、そのときだ。私が乗せてやる。
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 島根での豪雨に続き、熊本、大分など九州北部で断続的に激しい雨が降る一日となった。JR三江線の被害が多く復旧のめどが立たない島根県江津市では、平年の八月雨量の3・3倍にも当たる474ミリが一度に降った、という。きょうの東海地方は最高気温が24~27、28度で、これまでの猛暑が信じられないほどしのぎやすくなった。
 あらためて私たち人間、いや生きものという生きものが自然になされるがままであることを実感する。

【きょうの一文・ことば】いつも私たちを助けてくれていた新潮社の安部さんの担当編集者、新田敞さんが、真知夫人にお通夜と告別式の参列許可をとってくれていましたが、私はどちらにも出ませんでした。だから私の胸の中には、「生きている」安部公房しかいないのです。もし葬儀に出席してきちんとお別れしていたら、20年も彼を引きずることはなかったのかもしれませんね。=婦人公論9/7〈衝撃秘話〉山口果林「今明かす、安部公房との禁断の日々」から
「ボクは一日も(プロ野球を)楽しんだことなんてない。ヤクルトの元監督・野村さんに言われた【脇役の超一流になれ!】を胸に19年間、脇役に徹してきました。ただの野球好きですよ」=26日あった引退の記者会見でヤクルト宮本慎也内野手(42)。宮本選手は堅守で3度の日本一に貢献。アテネ、北京両五輪の日本代表主将も務め、2006年の第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では日本の初優勝に貢献。遊撃手と三塁手でゴールデングラブ賞を受賞。昨年5月には41歳5カ月の最年長で2000安打を達成した。

【新聞テレビから】
☆『内海桂子さん80年前の奉公先で 下町人情恩返し「毒演会」 東京で来月、そば店企画「地域の絆を再び」』、『日本郵便が高齢者支援 安否確認や買い物代行 6道県10月開始』(26日付、中日夕刊)
☆『真夏のオーロラ カナダ=白夜を終えた北極圏周辺でオーロラが見え始めた。カナダ北部のイエローナイフでは23日、森や湖の頭上で緑やピンクの光のカーテンが真夏の夜空を彩った。』、『日本一楽しい図書室 石巻・被災小学校に壁画』(26日付、毎日夕刊)
☆『川面照らす灯籠1万個 永平寺』、『シリア 国連きょうから現地調査 化学兵器疑惑 政権側と合意』(26日付、中日朝刊)
☆『ヤクルト宮本が引退へ』、『村田デビュー戦 TKO勝利=ロンドン五輪ボクシング男子ミドル級で日本選手として48年ぶり2人目の金メダリストになった村田諒太(27、三迫)が東京・有明コロシアムでプロデビューを果たした』(26日付、毎日朝刊)

八月二十五日
 昨夜来の雨が午後遅くに止んだ。やはり雨は降らない方が、何かとよい。それに日曜ということもあって、相棒との買い出し日だけに降らない方がよいに決まっている。
 家を車で一緒に出たころは、かなりの降りだった。でも、帰ったら判でも押すように止んだ。「雨」は欲しくもない時に降り、降ってもいい時には逆に晴れる。皮肉なもので世の中そんなものだ。
 舞は何を思ってか、大型ショッピングセンター内で店を開いていた関の研ぎ師から、新しい包丁一本を吟味の末、買った。いつも勝手な私を、本気で殺す気なのかも…。でも、意外や好きな料理に一段と磨きをかけたい、ただそれだけのような気もする。
 とにかく彼女は料理が好きであり、またつくる料理は天下一品である。

 私にとってのメモ帳。いわば文章の鍛錬場だが、ふっと思いついた時にさぁっとメモしておかないと、【いい文】は、知らない間に目の前から消え去ってしまう。誰が読んだり聞いたりしたところで、リズムと余韻があり、かつ人間に共通した素直で感覚的な文はいい。が、そうした名文にかぎって、メモっておかなければ浮かんだ瞬間にどこか遠い知らない国に飛んでいくかの如く消え去ってしまうのだ。

 デ、今日起きると同時にメモったホンの一端、ひとかけらをここに記しておくと。
―時々、テマリの夢を見る。テマリを見ると、決まって傍らに居るココのことを思う。テマリが交通事故で亡くなり、早いものでもう二十年近い。
 【ココへの遺言】そのうち急に俺の心臓が止まるからサ。ココだけには、わが家のこと、そして私のことを告げておきたい。……ネコものがたりでも書いてみようか。

【きょうの一文・ことば】「男性は現実には半沢(直樹)のようにはできないと諦めている。今の時代、半沢に感情移入できるのは忠誠心をあまり感じない女性の方。女性はいつか『倍返し』してやると思いながら共感して見ているのでは」=25日付毎日朝刊『〈クローズアップ2013〉「半沢直樹」視聴率急上昇 分かりやすいヒーローに共感』の記事中

【新聞テレビから】
☆『キング牧師に新たな夢誓う 米、演説から50年』、『ジャンプGP白馬大会 41歳葛西が最年長勝利 4年ぶり2勝目』、『リニア誘致西の陣 三重・奈良逃げ切りへ 京都逆転へ参戦 経済効果双方PR』(25日付、中日朝刊)

八月二十四日
 第149回直木賞受賞作の「ホテルローヤル」(桜木紫乃)を読み終える。
 シャッターチャンス、本日開店、えっち屋、バブルバス、せんせぇ、星を見ていた ギフトと短編7本のホロリとくる内容はむろん、表現力の豊かさも大変、参考になった。おそらく文章そのものに対する弛まぬ修錬があればこそ、に違いない。

 ウエブ文学同人誌「熱砂」の俊英全員に対して、ここ二、三日の間にメール、または電話で残暑見舞いを兼ね「健筆待つ」旨、連絡する。猛暑にゲリラ豪雨狂騒の夏だけに、皆さんそれぞれの生活や仕事に大変であることは十分承知のうえで、である。やがて「天高く馬肥ゆる」秋がやってくるはずだ。

 今日も日本列島の島根県では江津、浜田両市を中心に記録的な豪雨となり土砂災害や浸水、河川の氾濫などで多くの人々が苦しめられている。ある有能女性弁護士から頂いた残暑見舞いには、こうあった。
―お元気ですか? 今年は本当に暑いですね。名古屋の夏は蒸し暑くて亜熱帯になってしまったようです。

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 久しぶりに、ささいなことから妻と口論に。早い話がこども同士のけんかみたいなもの。といっても、怒るとこわい。負けるが勝ちで、最後はいつものとおり「俺がみんな悪かった」と侘びを入れ、一件落着。なんだか猫も含め、みな妻の味方で私を蔑んだ目で見るので仕方がない。やっぱり、これから余分なことは言わないでおこう。

【きょうの一文・ことば】「人がお酒をのむのじゃなくて、お酒が人をのんでるのよ」=私との会話のさなかに妻。

【新聞テレビから】
☆『海女の勝負は50秒 三重【鳥羽・志摩】 海にはおかずがいっぱいだ 無形遺産に値する伝統漁 海女振興協議会会長石原義剛さん』(しんぶん赤旗日曜版 2013年8月25日号)
☆『〈大波小波〉大河内昭爾の情熱』、『式年遷宮「のんびり旅を」 近鉄観光列車で攻勢』『「しまかぜ」人気 伊勢市―賢島に「つどい」』、『14歳平野(歩夢)初出場V スノボW杯HP(ハーフパイプ)平岡が2位』、『島根で記録的豪雨 土砂崩れや浸水、1人不明 「特別警報」相当』『漢方薬の原料 ゴキブリ100万匹逃げた 中国飼育室壊される』(24日付、中日夕刊)
☆『熱く乱舞 どまつり開幕』、『岐阜で強風、落雷 美濃加茂 幼稚園屋根吹き飛ぶ 一時1万5000戸停電』、『新幹線運転中にメール、電話 JR東海、8人処分 業務携帯私的使用』、『復活オザワ 魔法のタクト SKF2年ぶり指揮』(24日付、中日朝刊)

八月二十三日
 処暑。二十四節気の中でも、暑さが峠を越え始めるころだという。
 とはいえ、なかなかどうして。きょうも相変わらずの暑さで、夕刊報道によれば、名古屋の最低気温は午前五時十七分の29・2度で、暑い夜明けが〝処暑〟を吹き飛ばす形となった。

 午後十時、ひと段落ついたところで『さて、NHKスペシャル「亡き人が現れた…」いま被災地で語られる不思議体験・涙の再会』を見ようとしたら、「今夜はBSプレミアムを見たいの。チャンネルをBSプレミアムにしてもいい」と妻。「分かった」と言って変えると、なんと番組は『岩合光昭のネコ歩き▽アンダルシア山村猫…』なるもので、猫好きな私たちにとっては、またとない番組だった。

 わが家の猫ちゃん、ふたりにもテレビの前に座らせ一緒に見たが、いやはや、猫のわが道を行く独特の世界には感服した。
 それにしても、岩合なる人物、どこでカメラマン(映像も含める)としての基本を修得したのか。ニンゲン、世界、ネコ…とこの世に存在するもの、みな同じであることを何げない映像で見事にとらえていた。

【きょうの一文・ことば】「丸太の中で竹ひごが通用した」=23日付朝日朝刊「天声人語」。日米通算4000本安打のイチローについて。高校時代の恩師、中村豪さんの率直な感想

【新聞テレビから】
☆『ゲンが開いたマンガの道 米人女性(レイナ・テルゲマイヤーさん)読んだ衝撃短編に ネットで和訳が話題 閲覧制限問題に一石』、『決死の収束指揮吉田元所長しのぶ 東電がお別れの会』(23日付、中日夕刊)
☆『「さりげなく」臨戦の美学 イチロー4000安打「悔しい思い8000回以上』『中京大・湯浅教授が分析 試合中のストレッチ衰えカバー』、『〈評伝〉迫力の〝怨歌〟夢ひらく 藤圭子さん転落死 70年代、若者共感』(23日付、中日朝刊)
☆『「国の安全損なわぬ」 米英の情報収集報道 英紙編集長語る』=CIA元職員が英紙ガーディアンを通じて暴露した米英政府の極秘電子情報収集に関連、英当局に内部文書のデータ破壊を強要された同紙、アラン・ラスブリッジャー編集長が朝日新聞の電話インタビューに国家機密を報じることの意義を語った。』(23日付、朝日朝刊)

八月二十二日
 お隣の岐阜市。きょうで十六日間連続の気温三十五度超えの猛暑日に。

 ニューヨークヤンキースのイチロー(愛知県豊山町出身、本名鈴木一朗)がヤンキースタジアムでのブルージェイズ戦1回の第1打席、1死1ボール1ストライクからR・A・ディッキー投手の投げたナックルボールを左前にはじき返し三遊間を抜き、日米通算4000本安打を放った。イチロー外野手は、この日「二番・右翼」で先発出場、4打数1安打で、チームも4―2で勝ち、4連勝。

 この日は一方で宇多田ヒカルさんの母親でも知られた、あの往年の昭和の歌姫・藤圭子さんが東京・西新宿の高層マンション13階知人男性の部屋のベランダから飛び降り自殺。夏の甲子園は初出場の前橋育英(群馬)が4―3で延岡(宮崎)を破り優勝した。

 人生いろいろ、ドラマもそれぞれ、思いもさまざまだ。
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 そして。私は、といえば。
 午前中の社交ダンスレッスンに続き、夕方からは一人、笛に添える指の位置に注意しつつ、日課である横笛ふきに専念した。

 このうち社交ダンスだが、だいぶ慣れてきはしたが、先生に言わせれば「まだまだ、みんなお遊戯の段階」なんだってサ。
 というわけで、ルンバのハンド・トゥー・ハンドで手を広げる場合「おヘソは下に。かかとはつける」と言われたって、そんなに簡単にはいかない。それから「ブルースにせよ何にしろ、スローはクィックのふたつ分、だから〝スローオ、クィッククィック〟で。ここで気をつけなければならない、のはスローにはスローオと【オ】をつけるのよ」とのこと。
 このほか、「タンゴやワルツを踊る時には【男性の両手は、お盆に乗ったお茶がこぼれないような。そんな感覚で、ね】とも。フムフム…と、なんとなく、その場は仰っている意味は分かる。でも…。まぁっ、いいか。とにかくならうより慣れろ、だと思って、きょうもまたしごかれてきた。
 それでも軽快な音楽に合わせてジルバやタンゴ、ルンバ、ブルースを一緒に踊っていると結構楽しい。そのうち道は開かれる、と気長に思っている。

 それにしても、この暑さはなんだ。ペアを組んだ相手女性のシャツがビショビショに濡れ、踊るご本人までが恐縮していた。暑くて熱い夏は、なおしばらくは続きそうだ。ニンゲンたちが、それぞれの意識と思いの中で、それなりに頑張っている姿が、けなげでもある。

【きょうの一文・ことば】チームメートやファンの方々が喜んでくれるのは全く想像していなかったので、半泣きしてしまった。自分以外の人たちが特別の瞬間をつくってくれる。記録は自分がつくるものでなく周りの人たちがつくってくれる=歴代1位4256安打のピート・ローズ、4191本を放ったタイ・カップに続き、4000本安打を達成したイチロー選手

【新聞テレビから】
☆『〈にっぽん紀行〉無人島子どもたちの大冒険! 忘れえぬ夏の記録』(22日夜、NHK総合)
☆『イチロー4000安打 史上3人目 日米22年で達成』『39歳 5000安打も「可能」 半泣きになった 「しんどくないことなんかない」』『新たなイチページ 努力の英雄 心打つ』『「どのチームにも渡さない」 イチ・メーター エイミー・フランツさん 4000に大興奮』、『藤圭子さん自殺か 都内マンションから転落』(22日付、中日夕刊)
☆『エジプト ムバラク氏軟禁へ リベラル派の反発懸念』、『ダイエーを子会社化 イオン』(22日付、毎日夕刊)
☆『シリア 「化学兵器で1300人死亡」 反体制派 医師、特徴認める』、『福島汚染水 海に流出基準の100倍 東電試算ストロンチウムなど』『レベル3に引き上げへ IAEA(国際原子力機関)、支援検討』(22日付、中日朝刊) 
☆『鮮やか1000株 各務原・オミナエシ』、『平均気温東西で史上1位 8月中旬数値でも炎暑』(22日付、毎日朝刊)

八月二十一日
 暑くて、暑くて。
 ホントに熱い日が続くなか、怖くて、怖くて、空恐ろしい、逃げ出したくなるほどに、どうしようもない夢に一晩中うなされた。取材のさなかだ。「何か」をどこまでも追い求めてゆく私。一方では、誰かに執拗に追いかけられている。でも、逃げようとしても逃げられない。万事休すだ、とあきらめたところで目が覚めた。
 とはいっても、新聞記者を退任後、この種の夢はずぅーと見続けている。全てが現役の記者時代に現場を歩き、ガイシャやホシの話を聞き、時にはマルボウから「おまえを殺してやる!」とタンカを切られて生きてきたことの証しに過ぎない。
 夢を見ながらふと、思う。
 本物の作家は新聞記者なのだ、と。第一、新聞記者ほど多くの読者を持ち、影響力のある壮大なドラマを描ける作家がほかにいるのだろうか、と。優秀な新聞記者こそ、どんな作家よりも文章がうまいのだ、とも。俺はその世界を一途に歩いてきたのだ、と。

 で、夢のなかの私自身はストーリーの展開がナントナク見えるので内心、それほどのことでもない、とクールさを装いつつあっさり片付くのでは、とタカをくくっている。だから、その反発が恐ろしい。けさ未明にも最後は私自身が大勢の善良な読者に囲まれ、言い訳に四苦八苦している姿を見ていたのだ。これでは、どちらが「悪」なのか。やはり、俺が一番の「悪」なのだと薄ぼんやりと自身に言い聞かせているさなか、目覚めた。
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 きょうは横笛の稽古日。お師匠さんから、これまで変形になっていた笛の持ち方を基本から是正され、納得。帰宅後、教えられた通りに笛を手に何度もふいてみると透明感があり、かつ竹笛を撓わせるような、枯れた素晴らしい音が出たので納得した。
 やはり師匠は違う、ポイントをつかんで教えてくださり、尊敬に値する。

 全柔連が新体制に。
 記者会見で新しく副会長に就任した山下康裕氏(ロス五輪金メダリスト)が「こどもたちが〝ボク、柔道しています〟と胸を張って言える、そんな柔道界にしたい」と抱負を語っていた姿が頼もしく、印象深かった。
 私自身、中、高、大学と、若き日のたゆまぬ柔道の練習には誇りを抱いている。それだけに、この言葉「僕、柔道をしています―と胸を張れるようにしたい」の決意表明は嬉しかった。まさに【精力善用 自他共栄】でなければ。私自身も、そのお手本を示して生きているつもりである。
 
 東京のこの夏のゲリラ豪雨。実に例年の3・5倍に達すると言う。

【きょうの一文・ことば】(筆談で)「(左手の中指を)骨折してすんません。あの時は、こんなにひどいとは思わなかった」「全て自分が悪いんです…。できる事をやるのが自分の力」「一から考えなおし。(でも、九月八日の「ドアラデー」までには)時間がない…」=21日付中日朝刊〈脱衣室〉 左手を骨折した中日のマスコットキャラクターが20日の広島戦を前に岐阜・長良川球場で開いた〝謝罪会見〟で=

【新聞テレビから】
☆『〈ニュースウオッチ9〉ユーザー2億人突破 あのLINEが新戦略』(21日夜、NHK総合)
☆『〈大波小波〉食と人とを愛した文人(文芸評論家の大河内昭爾が鬼籍に入った。享年八十五。下戸ながら食には一家言あり、話術にも長けた、交友範囲の広い文壇人として有名だった。…』、『福島汚染水漏れ レベル3に引き上げへ 規制委「重大汚染に相当」』『東電「依然漏えい」』、『イチロー王手 日米通算4000本安打へ 期待に沸き立つNY』、『米帰還兵の自殺深刻 昨年まで死者2.7万人以上「考えた」は30%』『メンタルヘルス相談利用に迷いも イラクから帰国 海兵隊員「常に衝動」』、『田んぼで泳ぐシャチ親子 港区に「アート」登場』(21日付、中日夕刊)
☆『景品水増し不正訴えた社員解雇 秋田書店「発送せず窃取」撤回求め提訴へ』『先輩から業務引き継ぎ 元社員経緯や手口証言』、『大阪府警調書改ざん 容疑者発見「通報者」→「署員に」』、『アフガン和平交渉頓挫 タリバン代表団撤収 米軍駐留に反発』(21日付、毎日夕刊)
☆『皇太子ご夫妻被災地を訪問 宮城』、『「50人に当たる」はウソ 読者プレゼント水増し 秋田書店に再発防止命令』、『松坂が自由契約に=米大リーグ、インディアンスが傘下のマイナー、3Aコロンバスの松坂大輔投手(32)との契約を解除』(21日付、中日朝刊)

八月二十日
 サンマ漁の季節が到来。主力の大型船団が北海道根室の花咲港を出港した。「とにかく獲る。サンマを。そして笑顔で帰ってきます」とは船団のある漁師の、頼もしい肉声である。

 北陸、東北地方そして青森も激しい雨に見舞われ、暫定政権側にムスリム同胞団最高幹部が拘束されたエジプトでは人間の価値が日に日に弱められ、この六日間だけで実に850人以上もが殺し、殺された。虐殺が常態化し、人間が人間ではなくなっている。
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 目を閉じて。

 音の世界だけに、しばし耳を澄ましていると私だけの世界に不思議なモノがみえ始め、聴こえてくる。その物体のない現実のモノをいかにからめとって物語化していくか、だ。
 やはり、書くに当たっては現場を見て、歩いて、聞く。そこからしか出発する糸口なぞ、見えてはこない。あとは抒情性と文から流れるリズムだが、これは持って生まれた感性と筆遣いを自らの過去と現在を武器に、「未来」に向かってさらに醸成し磨いてゆくほかない。
 そのためにも当然、メール、高齢化、老々介護社会…といった時代の変貌も映し絵に作品社会に反映させていかなければ。そんなことをふと思いつつ、筆を進めている。

 もちろん私、伊神権太の世界を築くのに今ひとつ忘れていけないモノがある。それこそが横笛やハーモニカ、サンポーニャだったり、端唄、小唄、都々逸…といった音曲の類である。これらも文学の根幹をなすものだ、といっていい。

【きょうの一文・ことば】「踊りは平和の象徴だよ。踊りがあるで、みんな和やかになる」。=20日付中日夕刊〈93歳平和だで踊れる どまつり最高齢「おかじい(岡田茂男さん)」 中国で戦場体験 戦争繰り返さぬ世を願い〉で「おかじい」

【新聞テレビから】
☆『〈報道ステーション〉操業ルールは後回し 日台漁業協定のひずみ』(20日夜、メ~テレ)
☆『〈ファンクラブ通信・通信員だより〉ドーム観戦復活=津市、片岡孝之さん』(20日付、中日スポーツ)
☆『テロの痛み分かるから ボストンへ千羽鶴 「9・11」遺族 十三回忌で訪米、追悼』、『同胞団トップを拘束 エジプト、モルシ派に打撃』『博物館丸ごと略奪 エジプト騒乱の中 「聖獣」トキのミイラなど』、『タンク汚染水漏れ300トン 福島第1 高濃度8000万ベクレル』(20日付、中日夕刊)
☆『〈チェック〉156センチ小兵の星 4強の花巻東 千葉(翔太、2番。3年)選手 内野5人シフト破り安打 腰落として四球を「量産」』(20日付、毎日夕刊)
☆『ダムカラカラ節水強化 豊川水系 20%制限に』『人工雨12年ぶり 東京都、装置あす稼働』、『キリスト教徒襲撃相次ぐ エジプト・イスラム急進派の標的 暫定政権側の陰謀説も』『トルコのドラマ放映中止 エジプト、政権批判に反発』『あすEU(欧州連合)緊急外相会合』、『客室乗務員全て正社員に 全日空契約採用を廃止 20年ぶり』『競争激化で人材確保』(20日付、中日朝刊)

八月十九日
 きのうの誰かサンの言ではないが思いがけず、心地よいかぜをフワリと頬に受け、この夏の暑さが少し治まってきた気がする。

 このところは、大学での特講(特別講義)後に学生から出されたリポートの採点を終え、小説執筆のための取材の旅にも出かけ、大嫌いな床屋さんにも行き、サングラスの入ったメガネを新調し、日本ペンクラブの年会費を払い込み、マイカーの古くなったタイヤ4本もそっくり替え、歯医者で歯の定期検診もして頂き、パソコンとつながるキャノンPIXUS印刷機のカートリッジ(キャノン純正インク入り)もカラー、モノクロともに入れ替え、ファックス用紙も補充して…、などなど。
 なんだか頭にひっかかっていた〝突っかい棒〟がやっと取れ、書くことに専念できる、とりあえずの態勢が一応整ったようで少し、スッキリしている(かといって、この〝突っかい棒〟なるもの、まだまだ私の中には山ほどあるにはあるのだが)。
 藤野可織さんの芥川賞受賞作「爪と目」も文藝春秋9月号で読ませて頂き、多くの読者から私あてに届く「マンサニージョの恋」に対する読後感や残暑見舞いなどに対しても出来うる限り返事を出させて頂くよう、日々務めている。

 こうして一日一日が過ぎ去っていく。一体、何が変わろうとしているのか。きのう鹿児島の桜島が爆破的噴火を起こし、町に大量の灰が降り注いだ。何かが変わり始める予兆なのかもしれない。
        ×        ×

 きょうは、ひょんなことから戦後1954年8月に発売され、その年に大ヒットした春日八郎の歌「お富さん」(作詞山崎正、作曲渡久地政信)の歌詞の意味をなぜか吟味してみたくなり、調べてみた。この歌詞、読めば読むほど時代を越え、味わい深い。
 何度も何度も読んで小声で歌ってみる。と、不思議な哀歓のようなものが、まるで写し絵のように私の心全体に浮き上がってくる。昭和の歌謡界で花開いた不朽と言ってよい名曲だからかもしれない。
 デ、ここに歌詞を記しておこう。

 ♪粋な黒塀 見越しの松に
  仇な姿の 洗い髪
  死んだ筈だよ お富さん
  生きていたとは お釈迦さまでも
  知らぬ仏の お富さん
  エーサオー 玄冶店(げんやだな)
 ♪過ぎた昔を 恨むじゃないが
  風も沁みるよ 傷の跡
  久しぶりだな お富さん
  今じゃ呼び名も 切られの与三(よさ)よ
  これで一分じゃ お富さん
  エーサオー すまされめえ
 ♪かけちゃいけない 他人の花に
  情かけたが 身のさだめ
  愚痴はよそうぜ お富さん
  せめて今夜は さしつさされつ
  飲んで明かそよ お富さん
  エーサオー 茶わん酒
 ♪逢えばなつかし 語るも夢さ
  誰が弾くやら 明烏(あけがらす)
  ついてくる気か お富さん
  命みじかく 渡る浮世は
  雨もつらいぜ お富さん
  エーサオー 地獄雨

 ちなみに【玄冶店】は広辞苑によれば、歌舞伎脚本「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」源氏名。ゆすりの場の俗称、とある。なんとなく分かる。

【きょうの一文・ことば】「これからも色んな子の支えになってあげてね。今までたくさん遊んでくれてありがとう」=19日付中日朝刊〈遺すために 16歳・余命告知からの87日間―下―〉の記事中で。余命告知を受け3月12日に亡くなった菊本大珠さんからチャイルド・ライフ・スペシャリストの佐々木美和さん(31歳)にあてた手紙

【新聞テレビから】
☆『〈NEWS23〉被災地の盆野球にプロOBが参加』(19日夜、CBCテレビ)
☆『大量の灰積もり清掃に追われる 桜島噴火』、『昆虫食20億人栄養 「食を救う」国連推奨 イナゴ、蜂の子も世界1900種、自然の恵み』、『知多署長 飲酒後に運転』『内部告発で発覚、更迭』、『京都・露店爆発 入院の小5男児死亡』(19日付、中日夕刊)
☆『桜島 噴煙5000㍍ 爆発的噴火 高さ過去最高に』『積雪?闇夜?戸惑う観光客』、『「テロ集団」同胞団弾圧 エジプト暫定政権対話拒否 ムバラク時代逆戻り』『同胞団支持者 肉親失い募る不信 「暴力決して使ってない」』、『「美香は胸に生きている」 山本さんしのぶ写真展 シリア取材銃撃死あす1年』(19日付、中日朝刊)

八月十八日
 まだまだ暑い。
 でも、ここにきて息子の言う通り「蝉の鳴く声がほとんど聞こえなくなり」代わって夜になると、秋の虫の声が大気を染みわたるように聞こえてきている。
 除湿も何もなく、ただ冷やすことだけに徹してきた二階寝室の旧式クーラー。この愛着あるオールドタイプの〝戦士の出番〟もあとわずかになりそうだ。これまでどこまでも生温かった風の色もここにきて少しずつ透明感を増し、時折涼しささえ感じさせてくれる。
 やがて秋空を赤トンボたちが群れを成して飛ぶ姿が見えるに違いない。

 午後、実家の母の元へ。
 お盆の間ずっと、仏壇脇の床の間前に飾られてきた盆提灯を妻と一緒に片づけた。毎年のことではあるが、これが結構難しい。ということで妻と一緒に盆提灯の組み立てを一つひとつ外してゆくという、難行苦行に挑んだのである。でも、母の満足そうな顔を前に「後片付けをして良かったな」と思う。
 それにしても、三本の提灯をすっかり解体するまでにはしばらくかかった。

【きょうの一文・ことば】どうして罪のない人の命を簡単に奪うのか。大人も子どもも関係なく巻き添えにする空襲に、戦争の理不尽さを強く感じます。=18日付中日朝刊尾張版〈戦争があった 尾張・知多の記録〉の中の【訪れて】古野南中3年菊入奨平君(15歳)

【新聞テレビから】
☆『〈NHKスペシャル〉急増! 新富裕層の実態▽移住する日本人富豪』(18日付、NHKテレビ)
☆『〈遺すために 16歳・余命告知からの87日間―中―〉前向く姿仲間に勇気 「最後まで楽しかった」(編集委員・安藤明夫)』、『衝突後10分でフェリー沈没 死者31人 不明171人 比セブ島』、『モルシ派組織の解散検討 エジプト 暫定政権が1004人逮捕』(18日付、中日朝刊)
☆『〈ふるさと―原発事故29カ月〉原子力機構職員 ヒマワリ除染信じて 「安全神話」伝えた償いに』、『関東大震災直後のパノラマ写真 復興記念館で展示 皇居前 避難30万人』

八月十七日
 ♪ざくろ裂け真紅の孤独こぼれ散る 最匠展子(さいしょうのぶこ)19歳の時の俳句

 深夜未明、東京から帰った。

 当たり前の町の風情。詩集【あの町で】の響きと人間の「生」があれほどまでに淡々とリズム感あふれて描かれた詩が一体、ほかにあるのだろうか。あったら教えてほしい…
 私が好きな詩集【あの町で】の作者でもある孤高の詩人左和伸介さんの二十三回忌の集まりに、東京在住の最匠展子さん=日本ペンクラブ名誉会員、日本詩歌文学館賞受賞詩人=から「イガミさん。ぜひ。来て」とのお誘いを受け上京していたからだ。(実は最匠さんご自身がご高齢ばかりか、病のただなかで猛暑は避けよう、との意見が浮上して一週間延長された)

 ところは、新宿の日本料理「なだ万賓館」。
 ここに、かつての左和さんを知る文学仲間らが亡き詩人の長女恭子さんを囲んで集ったのである。かといって、私だけが生前の左和さんを知らない。ただ、最匠さんに知らされて、その作品の数々から純で一徹なる詩人の姿勢と作風に打たれ、ある面での〝文学風情〟とでもいったものを学べたら、と出席させて頂いた。
 あいにく、この日は最匠さんと並び、いま一人の詩人長谷川龍生さん(大阪文学学校長)も出席予定だったがつい最近、病で倒れて入院され、回復間もない―ということで残念ながら出席は控えられた。

 若き日々の最匠展子さん(1987年5月、北上にて)と生前の左和伸介さん
 
 

 左和さんのご子息恭子さん(右)=「なだ万」にて
 

 席上、二十三回忌の呼びかけ人でもある最匠さんから出席者全員に粋な夏マフラーとともにかつてご自身が書かれた追悼文のコピーが手渡されたが、こまやかな配慮には、あらためて最匠さんの左和さんに対する思いの熱さ、そして優しさを感じたのである。
 ここにその一部を紹介しておきたい。
―あまりに衝撃が大きかったので、立ち直ることが出来ずどうしても左和さんの追悼文が書けなくて、私は慟哭と悲嘆の日々を送り、もう半年以上が経ってしまいました。それは私の心の中で、左和さんを死として葬ってしまっていないからなのです。
 …息をひきとるまでただの一度も、痛い、苦しい、つらいという言葉は吐かずただ周りの者への思い遣りに終始した、真に優しく強い人でした。その死にざまに、彼の詩人としての矜持と尊厳を、私は見たのです。医師も「こんなに我慢強い病人は見たことがない。まさに修行を積んだ高僧のようだ」と涙をうかべて驚いたほど、自己に対してはきびしい気丈な人でした。その気性が身体には勿論、裏目に出たと言えます。
 金子光晴や長谷川龍生の詩を愛し、その長谷川氏が、彼の絶筆となった作品「ひび割れた女」を、まさに日本のボードレールだ、と賞賛していますが、今後の詩業がたのしみな、成熟し充実しきった年代に入ったばかりの詩人だけに本当に無念のひと言です。
 …いつも寡黙な彼が口を開くとき、その一言一言には千金の重みがあり、的確かつ洞察にとんだ、愛情深い対象への把握があるのでした。詩人的魂だけを純粋培養するような生活をのぞみ、仙人のような暮らし方でした。その作品は、天与の瑞々しい叙情性と、それに一見相反するような論理的な構築性を併せ持ち、つねに新しい領域を切り拓いていく実存を、現代詩と小説とで表現した、惜しんでもあまりあるその人柄と才能を失ったことが、私はただただ残念でなりません。(「日本現代詩人会会報」一九九二年五月【含羞と矜持の詩人、左和伸介氏を悼む】から)

 そして、ついでながら私がかつて自著「一宮銀ながし」(風涛社、当時の筆名は伊神ごん太)の中で発表した【短編小説「熱波」】の最終章で左和さんに触れ、書かせて頂いた部分と左和さんの【あの町で】の1節も以下に記しておく。
―Sと左和さん、そして私。自己へのはげしい内省という共通の感性は、やはり家を越え、性を越え、国までも越え、産まれた日から人々が積み上げていく、人間社会に共通する「喪失」だったのかもしれない。それは、ゴッホがはかない絵に託し、くるおしく死んでいった道なき道と、何ら変わりない。(「熱波」から)
―おもての通りを土工が数人、連れだって通り過ぎた そのあとから 学生が一人 学生服を着ていたわけではないが 銀行員の前を歩いていた/ショッピングカーを引きずって主婦が通った 警察官が通った バスの運転士が歩いていた 竿竹屋が通り新聞配達が走りすぎ 年寄りが歩き 教師が鞄を下げて通っていった 押し売りも通った(「あの町で/おもての通りで」から) 
        ×        ×

 昨年の八月十七日、私はピースボートによる102日間地球一周の船旅から帰航し、横浜港に下船した。得難い体験をし多くの人々を知って終えた船旅は、これからも私自身、小説を書きながら生きていくに当たって強力なバネになることは間違いない。ここであらためて、お世話になった船友仲間全員とピースボート、ジャパングレースの皆さまに感謝しておきたい。ありがとう!

【きょうの一文・ことば】左和さんは50代で亡くなってしまい、世にも出ませんでした。でも、私の詩の中に彼の詩は生きています。人柄もすばらしかった。すなおさと優しさ、純粋さを忘れることはできません。=詩人仲間・左和さんの23回忌で。最匠展子さん

【新聞テレビから】
☆『フェリー沈没 26人死亡215人不明 比セブ島870人乗り、救助難航』、『「デモ1週間継続を」 エジプト モルシ派呼びかけ 死者700人超す』、『〈式年遷宮〉「エンヤー」外宮へ お白石持を再開』、『♪ひばりでございますヘイ♬ 「悲しき口笛」宣伝盤歌で自己紹介 金沢で発見』(17日付、中日夕刊)
☆『猛暑の京 夏を送る 五山の送り火』、(17日付、中日朝刊)
☆『東海地方の総合文芸雑誌 「中部ペン」創刊20年 年刊、毎号「座談会」を特集』(17日付、毎日朝刊)

八月十六日
 ちょうど一年前。私はピースボートのオーシャンドリーム号に乗船中、ウエブ文学同人誌「熱砂」の本欄で連日書き続けた【権太の地球一周船旅ストーリー〈海に抱かれて みんなラヴ〉】の締めくくりとして次のように書いた。

―十六日午前5時過ぎ。
 私はいま、オーシャンドリーム号の8階後部デッキの椅子にただ1人で座っている。時差も前日の15日24時で消えた。日本の海に向かってまず横笛をふく。〈風の恋盆歌〉〈越後獅子の唄〉〈さくら〉〈よさこい節〉を2度、3度とふいてみる。かぜに飛ばされそうな膝の楽譜をノートと肘で抑えながら、それでもふきつづける。
 横笛演奏をやめた私は、今度は携帯バッグからハーモニカを取り出す。
 そして。〈浜辺の歌〉を最初に〈この道〉〈うみはひろいな〉〈みかんの花咲く丘〉〈公園の手品師〉〈蛍の光〉〈仰げば尊し〉〈ふるさと〉〈夕焼け小焼け〉〈お富さん〉…などの唱歌や往年の流行歌を、まるで気でも狂ったように、次から次へとふき続けた。
 演奏を横目に早朝ウォーキングの人たちが『おはよう』といって通り過ぎていく。=原文通り(もし良ければ、「熱砂」の本欄・伊神権太作品集で私たちが乗船した昨年五月八日から下船する八月十七日までの第76回ピースボートの船内ドラマを読まれることも可能です。こんご世界一周の船旅を予定される人がおいででしたら、少しは参考になるかと思います)

 それにしても私は、帰航を翌日に控えたその日、なぜあれほどまでに横笛とハーモニカを早朝の海に向かってふき続けたのか。船上仲間との別れが、よほど辛くてせつなかったのか、それとも一人ひとりに対する思いが深かったからか。あの日々は、もう二度とは来ない。
        ×        ×

 プロ野球楽天のマーくん、田中将大投手は西武ドームでの西武戦に3―1で勝って勝利投手となり、昨年8月26日からの連勝を21に伸ばしプロ野球新記録を樹立した。ドラゴンズは東京ドームで巨人戦、6―4で勝った。やれやれ、である。

 金曜日。息子の誕生日。昼からは母と近くの大型店内の回転寿司でいっときを過ごした。帰りがけに誕生祝いに、とケーキのプレゼントまでされた。母は93歳、義母も92歳。ふたりともまだまだ意気軒昂で、どこからあれだけのエネルギーがあふれ出てくるのか。不思議だ。おそらく戦中、戦後の荒波を懸命に乗り越えてきたからにほかならない。まだまだ元気で100歳突破を、と願う。

【きょうの一文・ことば】「多くの人命が失われたことを非難する。当事者は即時に暴力を停止し、和解へと進むことが重要だ」=16日付中日夕刊〈「暴力 即時停止を」エジプト衝突で安保理 緊急会合〉の記事中、アルゼンチンのペルセバル国連大使

【新聞テレビから】
☆『実弾使用内務省が指示 エジプト死者638人に』、『中電系 大手初の電力越境 10月から 都48施設に供給』、『各駅停車「スローな旅」27,453㌔ 全線乗車 21年で終着 安城の33歳高校教諭 18日、教え子らに見守られ』(16日付、中日夕刊

☆『〈動乱エジプト〉キリスト教会36カ所に放火 強制排除後 軍支持層に反発か』『米が合同軍事演習中止 オバマ大統領 エジプト政府非難』『休暇ゴルフに批判』(16日付、毎日夕刊)
☆『97歳救いの灯守る 戦傷者引っ張り40年闘いなお 千種の女性=「全国戦災傷害者連絡会の会長杉山千佐子さん=追悼際に参列 「援護法の制定まで生きる」』(16日付、毎日朝刊)
☆『戦没者悼み精霊流し 名古屋』、『屋台爆発60人けが 花火大会14人重傷 京都・福知山』(16日付、毎日朝刊)

八月十五日
 終戦記念日。世界から戦争がなくなりますように。

 少し大げさだが、わが身に奇跡というか。それに近いことが起きた。
 きょうイオン扶桑店まで出かけ、先日注文し代金を支払い済みであるサングラスの入った、ちょっとハイカラな新しいメガネを受け取りに行ったら「高額購入者を対象とした抽選会をしています。ぜひ」とのこと。
 くじ運は良くないのでと、そのまま帰ろうとすると「そんなことおっしゃらないで」との女性スタッフの声に押され「そうですか」とやむなく長蛇の列に加わった。順番がきたのでクジを引いて開封すると、「当たり」とあるではないか。すぐに鐘がリン、リン、リーン…とけたたましく鳴らされ、恥ずかしいったら、ありゃしない。でも入る穴がない。
 結局、メガネの購入代がそっくりイオンカードとして戻ってきた。この世の中起こり得ないことが、たまには起こる。運はないもの、と思い込んでいたのに。信じられない。そういえば、私が大切にしていたメガネは昨年乗船したピースボートによる地球一周の途次、メキシコで紛失し、〝海の精〟にさらわれた。今回は、これに代わる品を求めたのだった。
 その私にとっての宝物が戻ってきた、と思えばよいか。
        ×        ×

 夜遅くの各局テレビニュース。エジプトでのモルシ前政権派と治安部隊の衝突はとうとうカイロばかりかアレクサンドリアからスエズと全土に拡大。双方の死者は525人、けが人も3700人以上に達し暫定政府は全土に非常事態宣言を発令したという。なんとか治まってほしい。このままだと、行き着くところまでいきかねない。内乱に発展する可能性は十分ある。ケリー米国務長官は双方とも自制するよう呼びかけているが同感だ。
 エジプトは昨年、ピースボートの地球一周の船旅で訪れたが、カイロでモスクなどを見学して回った際、雑談をした、あの茶目っけたっぷりな人懐こい方々が苦しんでいると思うと、胸が痛むばかりだ。それにアラブでは大切にされる、路上を闊歩していた猫ちゃんたちのことも気になる。でも、どうしようもないか。

 日本は相変わらず暑い一日となった。
 この夏、熱中症による死者は東京都内だけでも103人以上に達しているという。今夜、京都のドッコイヤ福知山花火大会会場でガスボンベが爆発し、58人が病院に運ばれ、うち2人は全身やけどの重体だという。

【きょうの一文・ことば】「あなたが見たことのない息子と一緒です。お酒も一緒に飲んで」「なんでお袋と俺を残して死んだ。一緒に酒を飲みたかった」=15日付毎日夕刊〈家族の絆確かめ 新婚の夫戦死 遺族代表追悼〉の中で。遺族代表の東京都練馬区、遠矢みち子さん(92)と一人息子の勝美さん(67)

【新聞テレビから】
☆『〈NHKスペシャル〉戦後68年〝ニッポンの平和〟を考える』(15日夜、NHK総合テレビ)
☆『エジプト死者278人に 治安部隊 モルシ派拠点を制圧』、『68回目終戦記念日 首相、アジア加害触れず 戦没者追悼式 遺族ら平和へ祈り』『村山氏以降、歴代首相が踏襲 「不戦の誓い」も触れず』『韓国大統領 日本に「歴史直視」要求 光復節演説「痛み配慮の姿勢を」』、『アニメ映画「風立ちぬ」 「喫煙場面多い」禁煙学会が批判 ネットでは賛否』(15日付、中日夕刊)
☆『戦況記す無傷の手紙 敵屍の浮かぶを押しのけて… 日中戦争出征 旧陸軍兵が残す 投函されず 検閲免れ遺族に』『父が死んだ戦争何だった 長男図書館通い関連書籍を読破』、『〈ふくしま作業員日誌〉44歳の男性 お盆ぐらい休ませて(聞き手・片山夏子)』(15日付、中日朝刊)

八月十四日
 真夏の夜の、とんだ戯言。お盆の大切なひととき、どうぞ無視してください。

 「幽霊」とは。金田一京助さんの新明解国語辞典によれば、〈①死者の霊が生前の姿になって現れたもの。②実在しないのに、実在する(した)かのように見せかけたもの。〉
 では、お化けは? 同じく新明解国語辞典によれば、「化け物」の意の口語的表現とある。で、「化け物」を引くと〈①動物などが人間の姿に化けた物。②正体の知れない物が、現実には有り得ない特異の姿になって現れる物。[正体が容易につかめないものや異能を持つ人の意にも用いられる]〉
 
 なぜ、こんな話になったのか。けさの朝日新聞天声人語に以下の下りがあったので。
――……▼ところで、幽霊とお化けは、似ているようで違うらしい。お化けはたいてい決まったところに現れて、誰彼なしにおどかす。片や幽霊は、うらむ相手を狙って出る。民俗学の柳田国男が「妖怪談義で述べている」▼さらに、幽霊は丑三つの鐘が鳴るような深夜に登場する。お化けは時刻にこだわらない。……▼……ちなみに柳田流に分類するなら、お岩はお化けではなく幽霊となる…(14日付天声人語)

 フムフム。でも、わかったようで分からない。
 お化けも幽霊も一緒じゃないのか、と抵抗しつつ傍らの相棒に聴くと「幽霊はうらみがある人のところに現れ、足がないの。お化けは、〝ろくろ首〟とか、ひとつ目小僧、からかさお化け…って、言うでしょ。ひょうきんで愛嬌があり、深刻な幽霊に比べたらユーモラスなの。うちの猫ちゃんだって、お化けになるのだから」と、あっさり片づけられた。

 ということは、その昔、山岳取材で北ア上高地・木村小屋に向かう途中に「幽霊が出るそうだ」の伝聞に恐る恐る歩いた、あの天井から滴したたる釜トンネルは、やはりかつてここで遭難した死者たちの亡霊が登山にやってきた人々を恨んで出てくる、そういった類の妖怪だったのかも知れない。
 なんだか、へんな話しになってしまった。でも、この世から幽霊とお化けを取ってしまったら、あじけない。幽霊にも、お化けにも、それなりの哲学、筋の通った、いたいけな魂みたいなものがある。
        ×        ×

 そうか。幽霊には足がない。お化けには足がある。傍らの指定席では、わが愛する化け猫、人間猫のこすも・ここが冷房のきいたなか、スヤスヤ。たまにぐぅーぐぅーと鼾をかきながら寝入っている。
 足のない幽霊が「停滞」と「後退」なら、いつ現れるか分からない変幻自在のお化けにはどこか前向きな「飛躍」のトーンみたいなもの、未来が感じられる。両方とも愛すべき存在ではあるが生きている限り、〝うらめしや〟よりは、化け物になった方が面白い。
 こすも・ここと一緒に化け物になってやろう。この年になっても、まだ遅くなんかはない。

【きょうの気になる一文・ことば】野生の象(イスラム教信者)と人間は一緒に住めない。追い出さなければ人は殺されてしまう=14日付朝日朝刊〈反イスラム ミャンマー仏教僧の訴え〉の記事中、王朝時代最後の都だったミャンマー中部マンダレーで開かれた夜の説法会でウィラトゥ師(45) 

【新聞テレビから】
☆『首相、靖国に玉串料 私費で奉納へ 参拝は見送り 終戦記念日』、『幻の比叡山特攻基地 本土決戦へ「人間爆弾」訓練計画』『旧海軍下士官証言 参拝中止し人力で造成』(14日付、中日夕刊)
☆『パレスチナの26人釈放 イスラエル きょうから和平交渉』(14日付、毎日夕刊)
☆『岡崎の民家 胸に刺し傷 男性死亡 物色跡、強殺で捜査』、『関東大震災上野店焼失、東名間寸断…』『松坂屋不屈の奔走記 直後の手紙や電報236点発見 長野経由得意客の配達代行も』(14日付、中日朝刊)
☆『6万人の熱い夜 郡上、徹夜おどり』(14日付、朝日朝刊)
☆『日中戦争「抗日ゲリラ掃射」 写真46枚作戦を記録』(14日付、毎日朝刊)

八月十三日
 迎火のくわつと明るき戸口かな   碧玲瓏
 われの星燃えてをるなり星月夜    虚子

 引き続き各地で猛烈な暑さとなった。高知県四万十市西土佐ではきょうも最高気温が40度となり、四日連続で40度以上に。盆なのに。そして、この暑さなのに。舞は自らの店へ、と出かけた。

 猛暑続きの日本。この夏、熱中症で病院に運ばれた人は39944人で前年の30%増。うち52人が死亡、1069人が重症で3週間以上の入院だという。もはや炎熱地獄とさえ言える。

 この暑いなか、関門海峡では太平洋戦争中に米軍が落としたと見られる海中の機雷の爆破処理が行われた。海峡一帯には4500発の機雷が投下され、なお未処理の機雷が数多くあるそうだ。地球温暖化にせよ、原発事故発生に伴う放射能汚染にせよ、人間たちはニンゲンたちのしたことで自らの首を絞め、振り回されている。
 明るい話題と言えば、米大リーグ・レンジャーズのダルビッシュ有投手がアストロズ戦で自己最多の15奪三振、両リーグでは初のシーズン200奪三振と好調だ。
        ×        ×

 「マンサニージョの恋」。「自由の風」の行方に胸のつまる思いがします。……
 苦しい時、つらい時に私を支え何かと励ましてくれている、関東在住のある妙齢の女性作家。彼女から、ドイツポーランドの紅茶とともにこんな文が〈かぜ〉に吹かれるごとく思いがけず届き、こちらも胸がつまった。でも見守られているようで有り難いことだ、と感謝しなければ。

【きょうの一文・ことば】ここまできたけれどなかなか思うようにはならない。見守っていただくだけです=NHKニュース〈3回目の盆〉の中で一度に3159人が亡くなった宮城県石巻市のある被災女性

【新聞テレビから】
☆『富士の空 星の駆けっこ ペルセウス座流星群』、『東条元首相ら20人超記す 米で発見 A級戦犯の寄せ書き 看守の日系米兵に贈る』(13日付、中日夕刊)
☆『引き続き各地で猛暑』『キバナコスモス酷暑の中見ごろ 岐阜・海津』、『取り壊しの小学館ビル漫画家が落書き』、『熱中症死女性宅2階に腐乱死体 東京・高輪』(13日付、毎日夕刊)
☆『243地点で猛暑日 四万十国内最高の41・0度』『2つの高気圧+地形が影響 内陸の四万十』(13日付、中日朝刊)
☆『早くも「日本一」商魂 四万十は…』『うながっぱ うなだれ… 多治見「暑さ日本一」陥落 熊谷「対策で1位に」』(13日付、毎日朝刊)

八月十二日
 月曜日。朝刊は休刊日でお休み。夜は家の周りの草むらでコオロギの鳴く声―コオロギたちが依然、炎熱続きの残暑に向かって愈々、対抗し始めた。

 きょうも暑い一日だった。岐阜県多治見市では39・3度と3日連続の39度超えとなり、高知県四万十市では午後2時前、41・0度と国内観測史上最高の暑さを記録した。全国的には熱中症で851人が病院に運ばれ、4人が亡くなり1人が重体になっている。
 酷暑の夏とは裏腹に大気の不安定な東京23区では、夕方から猛烈なゲリラ豪雨が降り始め、1時間に92ミリを記録。世田谷区などを中心に午後7時前には、12800世帯が停電になったという。
 それでも深夜からあす未明にかけ、ペルセウス座流星群の流れ星が夜空を白い一瞬の光りとなって闊歩するそうだ。この世は怪体な生きもの。人間社会に原発事故の如き〝人災〟はむろんのこと、自然災害さえなければ、いとおもしろきかな―ではあるが。
        ×        ×

 中日新聞の本日付夕刊の【御巣鷹28年 祈り継ぐ】の書き出し『母のおなかの中にいる時、日航機墜落事故で父を亡くした。父の面影を追い続けた兵庫県明石市の会社員小沢秀明さん(27)は、今年も母紀美さん(57)と一緒に「御巣鷹の尾根」を訪れた。二十九歳で逝った父孝之さんの年齢に近づくにつれ、志半ばだったであろう父の分も「精いっぱい生きよう」と思う。……』の記事が目に留まり、あの日を思い出した。
 五百二十人が亡くなった日航ジャンボ機の墜落を知ったその時、私は名古屋空港内をいつものようにペンとカメラを手に、駆け回っていた。長期連載企画「空港昨今」のネタを拾うためだったが、突然、空港内運行関係の職場のあちこちでヒソヒソ話が始まり、空港内で働く人々の目に殺気がこもってきたことに気付いた。

 「一体全体、何が起きたのか」。私はあらためて全日空、日航の両名空港支店と運輸省名空港事務所、西枇杷島署空港警備派出所などを回ってみたが、時間がたつに従い空港業務に携わっている人々の顔色が深刻の度を深めてゆき、やがて警備派出所員から「ガミちゃん(私は当時、こう呼ばれていた)、日航ジャンボが消息をたったらしい。大変なことだ」の言葉を引き出すのに時間はかからなかった。
 翌朝。私は一番で本社ジェット機「はやたか二世」でカメラとともに御巣鷹山上空へ。上空から墜落現場のルポを書いたが、あの時がついこの間のような気がしてならない。私の場合は、まもなくわが子(3男)が生まれる直前の事で、その息子をくだんの若者の言葉に替えさせて頂くなら「母のおなかにいる時、父はジャンボ機墜落取材でテンヤワンヤでした」ということになろうか。

 午前中、旅先の長男夫妻からタイの一夜干しが送られてきた。無理しなくてもいいのにと思いながらも、やっぱり能登のタイとは嬉しい。七尾高校ボート部員として青春時代を過ごし、国体にまで出場した長男にとっては、この地は社会に羽ばたく出発点になったと言ってもいい。
 それだけに、2人でふるさとに帰ったような気持でいることが、よく分かる。♪能登はやさしや土までも、の土地柄はむろん私とて大好きだ。

【きょうの一文・ことば】お父さん、墓参りに参りました。67年ぶりです。……お父さんの好きだった日本酒を持ってきました。きょうは一緒に飲ませてください。=12日付中日夕刊〈NHKスペシャル「知られざる脱出劇」終戦・北朝鮮で何が? 日本人20万人が残留…決死の38度線突破〉の中で今村了さん(79歳)

【新聞テレビから】
☆『車爆弾テロ死者78人に イラク各地』、『消費増税議論の余地 GDP(国内総生産)年2・6%増 4~6月期市場予想届かず』、『宗岡氏「全柔連に透明性 会長就任へ 執行部も外部登用 本紙インタビュー』(12日付、中日夕刊)

八月十一日
 訳あってしばらく外に出ていた。
 その1。昨年、乗船した第76回ピースボートによる102日間地球一周船友仲間の中でもことのほか、私をかわいがってくださった八重子姉さん(小泉八重子さん)の誕生会が熱海であったため、これに出席。その2。せっかくなので小説執筆に当たって、どうしても今少し確認しておきたいことがあったため、熱海のあとはそのまま二日間は行方知れずの〝流浪の民〟として、足の赴くまま、ある場所に出向きふらついていた。

 その1。すばらしき仲間たちとは、こういう人たちのことを言うのだろう。
 この日は八月八日で熱海の花火の日とも重なり、〝八重姉さん〟の誕生祝いの宴のあとは、みんなでホテル屋上に出てスターマインや芸術花火、尺玉などを楽しんだが、それは華やかで見事だった。
 それどころか、このあとは部屋に集って〝八重姉さん〟を囲んで、もう一人の、私にとってはこわくてやさし~い〝祥子姉さん〟はじめ、堀川師匠、正道さん、河合さん夫妻…ら十数人でワイワイガヤガヤと乗船時の話題を話し合い、ひとときを過ごしたが、私の行状がマナイタに乗せられることもしばしば。かといって、誰もその内容はご存じないのだが。
 時が過ぎゆくのも忘れるほどに楽しいひとときだった。

 あげくに、私と堀川師匠、笹原さんは三人共通の相部屋に移ってからも、お酒を飲みながら延々と話し続け、気がついたら夜明け近くに。「もう寝なければ」と慌てて寝る一幕も。現役時代の飲んだくれの日々を久しぶりに思いだした。
 なかでも御年七十ウン歳の堀川さんのタフネスぶりには驚くというか、いい刺激になったのである。師匠、師匠…とみんなが呼ぶので私も訳も分からないまま「師匠、師匠」と呼んでいるうち、本当に私の師匠のような気がしてきたから不思議だ。
 なんでも師匠は、船内で絵の先生を務められていた、とのこと。船内ではただのひと言も話さなかった、互いに存在すら気がついていなかったのに。何の因果か。師匠が八重ちゃんと船内友だちだったというだけで下船後、こうして飲み交わす仲になってしまった。
 私も現役時代には役職上、一度に一升ほど飲んだ深酒の日が数え知れず、よくここまで生きてこれた、と思う。酒にはかなり自信があるが久しぶりに満足のいく粋人(酔人?)にお会いでき、まさに「人間万事塞翁が馬」だなっ、と勝手な解釈で感激したことである。
 よくよく考えれば、私が今月今夜こうして師匠と話し合う珍事は、この広い悠久の世界にあって、その夜が初めてのことである。人生、意気に感ずとはこのことか。

 酔うほどに師匠は現役時代のご自身に触れ「私は本来が建設技術者。プロジェクトエンジニアで、談合ではない〝エンジニアリング〟に撤して世界を舞台に闘ってきた」といろんな人生経験を話してくださった。酒はむろん強いが、社交ダンス歴となると十年以上の達人だとも知った。私はもっぱら聞き役に回ったが、いろんなことを教えられ一緒に話が出来た幸せをあらためて噛みしめている。
 これも〝八重姉さん〟はじめ、乗船中いつも背後で【心地よき糸】を引いてくださった〝祥子姉さん〟のおかげがあればこそ、だ。こんな礼儀知らずのゴンタクレに声をかけてくださって嬉しく思っている。
        ×        ×
 というわけで、しばらく本欄を休載させていただいた。
 人間、秘密が多ければ多いほど魅力がますので、これ以上のことについては幻にさせていただきたい。ただ私が前向きに正々堂々と生きていること、そしてこの間、海や山、湖、川に向かって毎日、早朝に横笛を吹き続けたことを、ここに記しておきたい。
 かといって、横笛は気まぐれなところがあるので、なかなかうまくはならない。でも、そのうちに海や山、川を震撼させるほどの笛吹きになって見せよう、と思っている。このことだけは、公言しておきたい。

 山梨県甲府市で40・6度、高知県四万十市40・4度、高松市38・6度、和歌山38・5度と各地で猛暑を通り越し〝炎熱〟の1日となった。東京都心の最低気温が30・9度というから、また驚く。
 この日、熱中症で全国で1387人が病院に運ばれ、2人が死亡、8人が重症に。一方で大気の不安定さも手伝い東京府中市などで激しい雨が降り、栃木県宇都宮市では雹(ひょう)が天から降り注いだという。秋田、岩手県では記録的な大雨で土石流が発生、秋田県仙北市では土石流に9棟が全壊、4人が死亡し1人が行方不明となっている。

 こうしたなか、三回目の盆を迎えた東日本大震災の被災地では、いまだに2656人の行方が知れないままだ。

【きょうの一文・ことば】「食べれない。しゃべれない。ツマラナイ」「本当の美談は恥ずかしくて出てこない」=11日夜のNHKBSプレミアム3『〈プレミアムドラマ〉天才落語家・立川談志 人生成り行き「前編・青春の巻」常識破りの異端児』のなかで。談志さん

【新聞テレビから】
☆『列島40度超え続出 猛暑あっち行け=山梨県甲府市と高知県四万十市40・7度、群馬県館林市40・1度、岐阜県多治見市39・4度、三重県桑名市と宮崎県西米良村39・2度(8月10日時点)』(11日付、中日朝刊)

平成二十五年八月八日
 しばらく、旅立つ。

 きょう〝パチパチの日(八月八日)〟は昨年乗船した102日間地球一周ピースボートの船友仲間、〝八重子姉さん〟の誕生日のため有志によるお祝い会に出席する。そして二日後の十日夜。この日は、亡き詩人左和伸介さんの二十三回忌の集まりに出るためだ。
 だから、あす、あさってと流浪の旅先で筆を進める。

 本欄は帰宅後には再開いたします。

八月七日
 立秋。日中歩くのがシンドイほどの猛暑となった。でも、気のせいか。吹くかぜは一瞬ではあるが、どこか肌にやさしく感じられる。

 名古屋での横笛の稽古から帰ったあとは、マイカーで最寄りの銀行へ。
 帰宅すると、ちょうど帰った妻が「お母さん、タクシーに乗ってわざわざお店までスイカを持ってきてくださったわよ」の弁。その足で実家に出向くと「おまえの家に行っても誰もいなかったものだから。お店に届けておいた」の弁。
 母は自分で育てたスイカの出来栄えを見せたいばかりか、私たちに食べさせたいこともあって、わざわざタクシーにまで乗ってきたものと見られる。肉親とはいえ、なんだか悪い気がしたので私はコンビニでお稲荷とバナナケーキを買って家に届けた。
 でも。こういう何げないことって。幸せ、平和な証拠なのだ。

 夜。私の若い頃の唄で今も大好きな松島アキラの「湖愁」、そして久保浩の「霧の中の少女」をユーチューブで何度も聴いて自身も口遊んでみた。私の10代のころに流行した青春歌謡で、若いころ自室や自宅周りの農道を歩きながらスター気分でよく歌ったものだ。それにしても、この二曲の歌詞は昔から大好きである。以下にその歌詞の一部を記しておこう。
♪悲しい恋のなきがらは/そっと流そう泣かないで/かわいいあの娘よさようなら/たそがれ迫る湖の…(湖愁)
♪涙はてなし雪より白い/花より白い君故かなし/あわれ少女よ霧の中の少女/消えて帰らぬあの世の街角…(霧の中の少女)
        ×        ×

 ガソリン価格が上がっているという。なんでも1リットル当たりの値段が160円を超えたそうで、〝160円超え〟は4年1カ月ぶりらしい。消費税も来年4月には5%から8%に上がりそうで、大企業を中心とした表面上の景気上昇の半面で、ちまたではどこか閉塞感が漂っている。

【きょうの一文・ことば】日本兵の遺品を遺族のもとに返す活動は、まだ終わってはいない=7日夜NHK総合テレビ〈今もアメリカに残る日本兵の遺品を遺族に〉で。87歳の元米兵コナーさん

【新聞テレビから】
☆【ヒロシマ、忘れない】『原爆漫画インドへ 「夕凪の街」ヒンディー語に翻訳』『「宝塚」前身の映像を発見 被爆死女優幻のオペラ』、『復興の願い かなえまっせ』『「ビリケンさん」大槌町長に』(7日付、中日夕刊)
☆『北方領土「希望残留」の兄弟 わが古里歯舞へ』『サハリン移住、国籍変更乗り越え』、『44歳女性殺害される 大垣のマンション 帰宅の夫通報』(7日付、毎日夕刊)
☆『非核の誓い闇照らす 原爆の日 広島灯籠流し』、『中電 新電力買収へ 三菱商事系 首都圏で小売り』(7日付、中日朝刊)
☆『〈クローズアップ2013〉首都圏忍び寄る水不足 利根川水系取水制限 集中豪雨の一方ダム渇水 野菜価格一時2倍に』(7日付、毎日朝刊)

八月六日
 広島原爆の日。広島はこの日、米国による原爆投下から68回目の原爆の朝を迎えた。

 「……だから、あの日から目をそむけません。もっと伝えたいのです。世界の人々に。平和は一人ひとりが笑顔でいること、みんなが幸せを感じること、私たちが作り出すことです。スポーツや音楽など自分の好きなことを通じて世界の人々と行動します。」
 ヒロシマでの平和記念式典。テレビとラジオから流れる広島の児童代表ふたり=小学6年生の中森柚子さんと竹内瞬治くん=の読み上げる「平和への誓い」には、思わず目頭が熱くなった。

 夕方。小牧市へ。
 名鉄小牧駅近くの〝まなび創造館あさひホール〟でチーム・クレセント公演「キップ拝見」と「雛」の一人芝居を見た。2ステージとも戦争によって人生を翻弄された【日本のいちばん悪い時代】を生きてきた母と子の物語=原作・西村滋さん、戦火をくぐった唄「かあさん峠」(講談社)=で、俳優は黒田利夫さんと片山美穂さん。
 黒田さん、そして片山さんとも熱演だった。黒田さんは戦禍を逃れて学童疎開に向かう途中の母と子の身に起きた忘れられない不幸なひとコマを汽車の中で回想する場面を。そして、片山さんは疎開先まで来てくれたのに突然去った産婆の母が、その後東京大空襲を前に命の大切さを託して娘に贈ってくれたお雛さまの物語で、その中身の深さと健康的な美しさ、かわいいおばあちゃんが少女の気持ちにだんだんと変身し母の苦しかった日々を語り継いでいった、その見事さに胸打たれた。

 いずれもノーモア広島、長崎、福島にふさわしい芝居で私は金縛りとなってステージに目を注いだが、本当に「行って、この目で見て良かった」と思っている。舞台がはねたあと、わざわざ私のところまで「ゴンタさん」と歩み寄ってくださった片山美穂さん。その優しさ、心遣いには涙が零れ落ちそうになった。
 実は、私はあふれて止まない涙を見せるのが恥ずかしく照れ隠しもあって、「良かったよ」とだけ言い残して早々と退散したのだった。あのステージの余韻をいつまでも体内にしまっておきたかったこともある。
 おかげで一匹文士、私にとっての永遠のテーマである「平和とは」を、しみじみ考える1日となった。おそらく、この日の一人芝居を見た誰もが、平和のありがたさをかみしめ、感動のひとときを過ごしたに違いない。

 演技の持つ力はすごい。たとえ観客は少なくとも一人ひとりに残る感動の重さにはそれこそ、計り知れないものがある。私自身、これから小説を書いていくに当たっては片山美穂さんたちステージでの表現者の存在をひとつの目標にしていかなければ、とも思う。一人芝居と言えば、ほかに有馬理恵さん、そして感動の演技の数々といえば荻原ゆかりさんたちの劇団「希望舞台」の旅から旅へのステージも、この世で貴重な存在である。こうした文化は日本中で大切にしていかなければ、とあらためて感じたのである。

 こぼれる涙とは。不思議で愛しきものだ。

【きょうの一文・ことば】♯バスがきたきた見えてきた/平和がきたきた見えてきた/かあさん峠に見えてきた/ようこそようこそうれしいな ♯平和がきたきた見えてきた/かあさん峠に見えてきた/ようこそようこそうれしいな=6日夜、小牧の〝まなび創造館〟ホールで。小牧市が生んだ大女優、一人芝居の片山美穂さん

【新聞テレビから】
☆『綾瀬はるか戦争を聞く〈(広島原爆の死者の山の中から生まれ出た)実在した〝詩の赤ちゃん〟との出会い〉』(6日夜、CBCテレビNEWS23)
☆『原爆は「絶対悪」 広島被爆68年 核廃絶「国際連携を」 市長平和宣言』『平和伝えなきゃ 祖父の被爆体験継ぐ小6』、『愛知・岐阜で局地的大雨 床上浸水や道路冠水 1時間100ミリ超』(6日付、中日夕刊)
☆『〈犠牲の灯り 第6部「無上の風」〉1二つの神話 ヒロシマの痛み再び 「不敗」「安全」同じ過ち』、『6歳弟車で連れ去りの危機 9歳お姉ちゃんが守った 守山の路上 男の手引っかき、逃げて無事』(6日付、中日朝刊)
☆『米大リーグ A・ロッド211戦出場停止 来季終了まで 禁止薬物規定違反』(6日付、毎日夕刊)
☆『沖縄米軍ヘリ墜落 HH60基地内の山中に 乗員1人不明』『オスプレイの追加配備延期』、『「娘いるから頑張れる」「復帰戦までに100%「戻すぞ」』『安藤選手、出産後初の会見』(6日付、朝日朝刊)
☆『沖縄米軍ヘリ墜落 住宅地わずか4キロ先 「街中だったら…」』(6日付、毎日朝刊)

八月五日
 宇宙の果ての、この街に出る。
 日々、見知らぬ人々とすれ違う。でも、こんなに無限といってよいほどにすれ違うのに。知人となると皆無で、出会えば奇跡だ。ただ一人、無言で歩いていると夥しいほどの人間という生きものたちが次から次に、地底から湧き上がってくるような、そんな錯覚にかられる。
 年のせいか、このところはいわゆる〝いい顔〟の人を意識的に探す自分に気付いている。
 だが、その〝いい顔〟となると、なかなか出会わない。そういう私とて、ほかの人から見れば極悪非道を尽くした醜い年老いた男が何やら魂胆ありげに歩いている―と見られているかも知れない。いや、そう見られても仕方ないだろう。

 また、Aさんが〝いい顔だ〟と思ってもBさんの目には、そうは映らない。この世は千差万別。でも、少なくとも路上で擦れ違う人々の中で〝いい顔〟の男や女に会うと「あぁ、あんなステキな人になりたいな」といった願望だけは持っている。いやいや、今さら何ともならないことは自身、よく承知の上ではあるのだが…。

 そんなことを思っていたら、あすの広島原爆の日を前に、映画「プラトーン」などで知られるアメリカのオリバー・ストーン監督が昨日初めて広島を訪れ、原爆資料館を見学した、とニュースで知った。ストーン監督といえば、昨年、米国による原爆投下の正当性に疑問を投げかけるドキュメンタリーを制作したことで知られる。そうした先入観も手伝ってか、少なくともテレビ画面に映ったストーン監督は私の目には、とても〝いい顔〟に見えた。抑えられた笑顔がいい。

 そういえば、昨年の八月六日はピースボートの乗客として太平洋上にいた。
 あの日は平和の使者の大半がオーシャンドリーム号の8階後方のプールエリアに出て〝広島原爆の日の集い〟に出た。被爆者代表のあいさつに続き午前8時15分、船内の汽笛がボオーッと鳴り響くなか、全員で日本の方を見て黙とう。最後に〈青い空は青いままで/子どもらに伝えたい/もえる8月の朝/かげまでもえつきた…〉とみんなで歌ったのだった。
 みなさん、〝いい顔〟をした方々ばかりだった。

        ×        ×
 今夜。すなわち8月5日のよる、にだ。
 突如として木曽川河畔に広がるここ尾張地方に大音響を伴った雷鳴がとどろき、夥しい量の〝酷雨〟がしばらく、それこそ猛烈な勢いで一気呵成に気でも狂わんばかりにドッと降り注いだ。午後9時になるかならないころで、電話が入り受話器を取ると息子からで「お父さん、駅近くのセブンイレブンに居るので迎えに来て!」の電話。傘を手に、車に乗り降りするだけでビショビショになりながら駆け付けたが、道路のかなりの部分が冠水、車も人も恐怖に慄いて行き交う様子がよくわかった。
 この勢いで雨がそれこそ1日中、降り続けば、木曽川が氾濫することだって十分考えられる。そしたら、この辺りはたちまち水没してしまうに違いない。

 思えば、かつては大水害が発生するつど、特派記者として全国各地の被災現場に新聞社の取材機やヘリで送り込まれたものだ。上半身水の中を歩いて現場入りしたことも何度かある。豪雨も、地震も、風も止めようがない。せめて人災の原発汚染だけは人類の叡智と知恵でなくさなければ―

【きょうの一文・ことば】「原爆投下が正しかったというのは神話にすぎない。実際にはうそだ」「広島を忘れてはいけない。正しく記憶させなければならない」=5日付中日朝刊★ストーン監督原爆資料館に、の記事中で。広島の原爆資料館を見学したオリバー・ストーン氏(66)

【新聞テレビから】
☆『19歳瀬戸 400メドレー「金」 世界水泳』『競泳ニッポン新時代 不利種目萩野ら快挙「自分もできる」』、『文献から再現 日本の技術、中国「古琴」に』『絹弦故郷に錦 長浜のメーカー 文人の愛した艶ある音色』(5日付、中日夕刊)
☆『盗難ルノワール=油絵「マダム・ヴァルタ」=落札 英で1億5000万円 00年、東京で被害』(5日付、毎日夕刊)
☆『16歳がん余命告知 昨年末名大病院 終末期医療自ら選択』『碧南の少年 3月永眠 全部知って闘いたい 感謝のメール、9通残す(編集委員・安藤明夫)』、『石巻で震度5強 3人けが』(5日付、中日朝刊)
☆『H2B打ち上げ こうのとり軌道投入 9日ISS(国際宇宙ステーション)へ』『〈解説〉存在感高まる輸送力』、『消火訓練10人やけど 燃料足し飛び火 2女児と団員重症 滋賀・東近江』(5日付、毎日朝刊)

八月四日
 朝。
 感心するのは、午前6時に枕元で鳴る目覚まし時計の音のホンの少し前に、決まって枕元を訪れる次女猫シロちゃんである。どこで時間が分かるのか。感覚なのか。それともヒゲ? 私にはそのことが不思議でならない。いつかの小説で彼女を表現したことがあるが、まさに神がかり的だ。
 〝神猫(しんねこ)〟になる瞬間が、このときなのである。もしかしたら、目覚ましもシロちゃんの念力に鳴らされているのでは。と、そんなことまで思ってしまう。全く【異界】とは、このことかも知れない。人間には分からない、何かがそこには働いている。

 というわけで、シロちゃんは今朝も、それがさも日常生活のなかの当然の役割でもあるかのように、〝定刻〟を前に1階の定位置を離れ、そろりそろりと階段を静かに上って2階寝室に入ってきた。とは言っても、シロちゃんの目的は私ではなく妻に向かってだ。それから目覚ましが鳴るまで、ちょこんと枕元部分に両手をそろえ20~30分ほど座り込むのである。
 この仕草がかわいらしい。とても、20歳に近い猫などとは思えない。彼女は時の流れとともに若くなっていく。とまれ、妻にヒタスラ寄り添う、癒し猫の1日は今日もこうして始まった。彼女の眼中には、私の存在などはないに等しい。

 毎朝、両手をそろえて妻の起床を待つシロちゃん
 

 猫を愛する家庭では、ほかにも考えられないような心の通いあいが続いているに違いない。何も、わが家に限ったことではない気がする。義侠心といえるかどうか。猫には、そんな一面がある。

【きょうの一文・ことば】何人もの政治家が福島第一を訪れたが、アピールのために来るのはもうやめてほしい。視察に来ても作業の邪魔になるだけで、現状が改善されるわけじゃない。大迷惑だ。=4日付中日朝刊【〈ふくしま作業員日誌〉56歳の男性 政治家の視察 大迷惑(聞き手・片山夏子)】

【新聞テレビから】
☆『〈式年遷宮〉石巻復興 エンヤー お白石持に被災者招待』、『〈通風筒〉◇…尾張藩七代藩主の徳川宗春と家来らにふんして練り歩く「徳川宗春道中」とコスプレ愛好家によるパレード「世界コスプレサミット錦通レッドカーペット」が三日、名古屋市中区の錦通りで繰り広げられた。……』、『強殺容疑7人逮捕 広島少女遺棄 現金奪い分配か』(4日付、中日朝刊)
☆『イラン大統領「制裁解除目指す」 ロウハニ師が就任 核交渉に意欲』、『全国やっと梅雨明け 東北・北陸6~10日遅く』(4日付、毎日朝刊)

八月三日
 この季節、初めて見たトンボ。ちいさな命が、空中で精魂使い果たすようにヨレヨレと透明な羽根をばたつかせて浮いたり、沈んだりしている。
 居場所を求めてなのだろう。懸命に飛んでいる。何度も落ちそうになる。生き抜いて! 猛暑に苦しめられているのは何も人間たちだけではない。昆虫や、鳥たちだって、みな一生懸命に生きているのだ。

 そういえば、けさ妻の舞は「庭(の土の中)に埋めておいたから」と言い残して俳句の会に出かけていった。葬られたのは、大人の親指と小指の中間ほどの別の鳥の死体だった。日射熱に射抜かれ落下したような、そんな無残な最期がそこにはあった。
 玄関の上がり口に白いティッシュに包まれ、何げなく置かれていたその鳥は熱さのなか、仰向けに全身を大の字に硬直状態で死んでいた。「店先の路上で息を引き取っていたので」ということらしい。
 元々口数が少ない。だから今さら「生」が戻らないものの顛末をあれこれ聞くのも憚れ「あっ、そう」とだけこたえておいたが、次の言葉「あのね、上から落ちてきたみたい。お店の周りには、あちらこちらにツバメの巣があるみたい。だから、それかもよ」の声を耳に「あぁ、そういうことだったのか」と納得した。
 
 このちいさな命。いずれにせよ、熱射に打たれたようで路上に落ちハリツケ状態でいたところを拾い、白い紙に包んでわが家に持ち帰ったものらしい。放置されれば路上で大の字のまま太陽の射光に焼き尽くされカラカラとなって、車など何げないモノたちに踏まれて、やがてはそのまま朽ちてただのゴミとして雲散霧消したに違いない。

 私だったら、そのまま見て見ぬふりをして通り過ぎただろう。でも、命の声なき声を見過ごすことができなかったに違いない。同じこの地上に生きている仲間のひとりとして― 合掌。
        ×        ×

 夜。一緒に七夕まつりが開かれている街中へ。ひごろ人っ子ひとり居ない町が七夕の吹き流しで飾られ、露店でにぎわい浴衣姿の女性やわが子の手を引いた人々の姿が目立った。みな地球の果てで、こうして肩を寄せ合って生きている。私たちは一度行ってみたかった酒場に立ち寄り、私だけが、もう一軒の店に足を延ばした。

【きょうの一文・ことば】「記録に並ぶことができて今はうれしい。でもまだまだ通過点。次に向けてやっていきたい」=3日付中日朝刊〈プロタイ記録 田中開幕15連勝 憧れの斉藤に並ぶ〉で。楽天の田中将大投手

【新聞テレビから】
☆『武功夜話物語 その128 信長が青春をかけた最愛の妻、吉乃(1)』、『あす石上祭 尾張富士へ献石』(3日付、尾北ホームニュース)
☆『豊橋、浜松で震度4』、『名古屋城に交流記念銘板 陸前高田ずっと友達』、『米議会 靖国参拝なら再び緊張 日中韓 憲法解釈変更も論争に』、『NY株終値 最高値更新 2日連続で』(3日付、中日夕刊)
☆『米が渡航警戒情報 「アルカイダがテロ計画」全世界に』、『日本一やかましく鉦や太鼓響き渡る 桑名・石取祭』(3日付、毎日夕刊)
☆『〈読み継がれる被爆者の思い〉国超え時超えゲンは生きる 連載開始から40年 翻訳は20言語■授業に活用』『〈詩で伝える原爆と原発〉吉永小百合さんイベントで朗読』『福島第一 地下水1日400トン海へ 東電推測 事故直後から汚染か』(3日付、中日朝刊)
☆『トヨタ世界1012万台 13年生産営業益 今期1・9兆円』、『「日本復活を」ねぶたに込め』(3日付、毎日朝刊)

八月二日
 きょうも暑い一日だった。
 わが家には、1、2階の各部屋とも冷暖房設備が施されているが、2階の一番広い寝室に設置されているクーラーこそ、何を隠そう。今から、四十年前、私たちが三重県志摩半島の新聞社通信部で生活を始めた時にボーナスを充て奮発して備えた大型クーラーである。

 信じられない―と言われそうだが、その旧式クーラーは健在で今も私たち夫婦の生活を守ってくれている。妻は「そろそろ、変えなければ。冷房代ばっかり、かかって仕方がないのだから」と時々、思い出したように言う。でも、私の心は決まっている。
 長年の間、私たちの生活を支えてくれてきた、このクーラーの命が絶えるまで私は手離しはしないだろう。「そろそろ、新しいのに変えなくっちゃあ」と思い出したように言う妻も、私の気持ちを十分わかってくれているはずだ。

 志摩から岐阜、岐阜から名古屋、小牧へ。小牧から能登、大垣…と家族の引っ越しのつど一緒に転戦。百戦錬磨の道を歩いてきた老いたクーラーと私たち。もしかしたら、私の命の方が早くこの世から消え去るかもしれない。
        ×        ×

 ドラゴンズは、横浜球場でDeNAと対戦して4ー2で勝ち3連勝。楽天のマーくんこと、田中投手は札幌ドームで日ハム戦に登板して4ー1で勝ち、開幕15連勝。プロ野球タイ記録に並んだ。それにしても、マーくん、よく頑張っている。

【きょうの一文・ことば】「正しい柔道指導をしていれば、こんなことにはならなかったと今でも信じている。…」=2日付中日朝刊、〈松本・柔道事故初公判 謝罪は 指導責任は 両親、無罪主張に憤り〉の記事中、父の沢田博紀さん

【新聞テレビから】
☆『原爆症8人を認定 新基準 国の却下取り消し 大阪地裁判決』、『CIA元職員亡命認定 米、首脳会談中止も 大統領補佐官「ロシアに失望」』『米国内通信英傍受か 英紙報道「米から援助150億円」』、『ベルルスコーニ伊元首相 脱税で有罪確定 最高裁判決』(2日付、中日夕刊)
☆『「春日井」ご当地ナンバー 全国10地域決定「飛鳥」は落選』、『「新人でございますので」 参院初登院 与党言葉選び』(2日付、毎日夕刊)
☆『世界初の3兄弟頂点 亀田和(毅がWBOのバンタム級タイトルマッチで)王座奪取』『最終兵器 巧みさ光る』、『〈球心〉19歳周平逆転満塁弾 若竜連夜弾む 気迫の5打点』、『浴衣涼やか1500人詣で 伊勢神宮外宮』(2日付、中日朝刊)
☆『7月の降水量 東北最多、九州南部最少』、『CIA元職員 露に亡命期限1年』(2日付、毎日朝刊)

八月一日
 NHKのクローズアップ現代〈17万人が感動! 奇跡の江戸絵画・若冲〉を見て感動した。この番組を通じて、これまで歴史に埋もれていた神の手を持つ江戸時代の天才絵師・伊藤若冲の存在を知ったばかりか、米人絵画コレクター、ジョー・プライスさんと悦子・プライスさん夫妻が【生命の色を被災地に】をキャッチフレーズに、若冲の江戸絵画展を岩手県立美術館など東北各地で実現させるに至ったいきさつを知ったからである。
 若冲の絵画ばかりを長年、集めてきたプライスさんは、番組の中で「絵が語りかけてくるものを、耳を澄ませてみてください」と話し、若冲が八十五歳の時、生涯の最期を前に描いた一作〝鷲図〟を前に「生涯でもっとも力強い作品です。鷲が未来をグッと見据えている姿で、恐れるものは何もない、と若冲が訴えている」とも。
 また若冲展を目の前に「感動に手が震えました」という若い女性は「若冲の絵を見ていて、みんなつながって生きているような、命がつながってきていて今の自分がここにいる。そんな気がします」と話していたのが印象深かった。

 感動といえば、本日付中日夕刊文化欄の【〈大波小波〉 歴史と文学の未来】が、とてもいい。何も私が最近、全国発売した船上ラヴ・ロマンス「マンサニージョの恋」が爆発的に売れてはいない=あくまで今のところは、ではある。無名の一匹文士としては、むしろ売れてる方かもしれない=から僻んでいるわけでは決してない。
 文学の王道を書いていたからだ。
 一部を抜粋しておこう。
――…中原中也といい梶井基次郎といい、そのとき売れなくても歴史に名を残した詩人や作家は少なくない。…難解珍妙小説の類が文芸誌で幅を利かせ、芥川賞などは奇天烈でないと受賞できないという観さえ出てきている。/ひたすら売らんかな路線と、新奇珍妙路線と。二極化はとめどもなく進行している。そしてそのどちらもが歴史を忘れた振る舞いだとすれば、文学の未来は…。(音痴カナリア)

【きょうの一文・ことば】「異文化への理解こそ平和の鍵。この墓石はそれを象徴している」=8月1日付中日夕刊〈「原爆ドーム」チェコ人建築家 母国に鳥居つなぐ平和 100年前の墓石 異文化理解象徴に〉の記事中で。美術史家デク・リシャーネクさん(38)

【新聞テレビから】
☆『改憲「ナチスに学んだら」 麻生氏が発言撤回』『米のユダヤ団体 発言を強く非難』『ナチス肯定断じてない 官房長官』(1日付、中日夕刊)
☆『祇園の芸舞妓が夏のごあいさつ=京都市東山の祇園で1日、黒紋付き姿の芸舞妓が芸事の師匠やお茶屋などにあいさつ回りをする恒例行事「八朔(はっさく)』が行われた。』、『最高ポストに女性 最高裁大法廷首席書記官に曽根啓子さん(57)が就任。裁判所書記官9500人の最高ポストで女性は初』(1日付、毎日夕刊)
☆『値上げ夏休み直撃 円安・原価高騰 ガソリンや電気…水稲まで』、『愛工大名電 2年連続 甲子園切符』(1日付、中日朝刊)
☆『アンドロメダくっきり すばる高性能カメラ撮影』(1日付、毎日朝刊)

08/4/26