詩5編/時が経てば、子猫のコーラス、白昼夢、「あ、イテってて」、僕らの煌く夢

詩「時が経てば」
子供の頃
無邪気な
てのひらに
そっと乗せた
ちいさな石
あなたはなぜ
ここにあるのか

あなたは
愛しいほど軽くて
握れば儚くて
舐めれば
転がり離れて
故郷の香りが残る
穢れなく灰色で
敬うほどにまるい
いったいあなたは
どうしてここにいて
これからどうなるのだろう
そう問いかけて
足もとへ

しかしハッと息を呑む僕
そこはもう
小石のもどるべき
居場所はなかった
もうすでに
すべては調和していた
それでやむなく
いくばくかの
罪悪感を抱きながら
また小石を拾い上げて
その違和感を
やわらげるように
その場から
しりぞいた

そしていつしか
せせらぎが心地よい
岩場に落ちつき
こっそりと
小石をポケットに忍ばせて
静かに目を閉じ
鈴虫とコオロギの澄んだ鳴き声に
身をゆだねれば
ゆるやかに時は過ぎ
ただ秘密めいた所有感が
こころを満たしている

詩「子猫のコーラス」
時雨の去った青い空
大きな虹が顔を出し
七色のドレスで「こんにちは」

雨だれはポトンポトン
灰色の大きなトタン屋根
お腹を空かせた
三匹の子猫が
屋根の上にあつまった

一番目の子猫が声を上げて
「母さんのミルクが飲みたいよ」
ニャーンニャーンニャーン

二番目の子猫が声を上げて
「父さんのおみやげ楽しみだな」
ニャーンニャーンニャーン

三番目の子猫が声を上げて
「僕はいつかねずみを捕まえるんだ」
ニャーンニャーンニャーン

それから三匹が声をそろえて
子猫のコーラス始まった
「僕たち子猫の三兄弟
 まだまだ体はちいさいんだ
 いつかは偉いライオンの
 おじさんみたいに大きくなって
 町じゅう威張って大行進!」

子猫の三匹小さなあたまを揺らせて
ニャオーニャオーニャオーと大合唱

それをこっそり覗いていた
ねずみの爺さん腹を抱えて
面白そうに笑っていた

詩「白昼夢」
暑い! 熱い!
正常な感覚は麻痺し
脳は考えることを停止
全身の汗は流れるままに
生命の呼吸は息苦しく
それでも太陽は
愛と情熱の根源のはずだ
神さまからの
大きすぎるプレゼントだ
忍耐する我らに
悪魔が微笑むようだ

街中に陽炎が燃え昇り
蝉の鳴き声は静まり
人影はなく
ついには
マグマが噴き出し
地球が燃え出すというのか
灼熱化した人工の街は溶融し
原始の地球に変貌するのか

大いなるものへ
空より純白の雪を
地球に降らせてください
大いなるものへ
北極の氷山で
地球を冷却してください
大いなるものへ
太陽の光で安らぎの中に
地球を包んでください

そんなことを
夢想しながら
僕は誰もいない窓辺で
団扇を仰いで
風鈴の音に酔いしれながら
もしもの危機感に笑みをたたえる

詩「あ、イテってて」
明かりの点ったお部屋
木製ベッドの上で座りこむ
お猿のジョイ君まだ眠れない
「あーあ、どうしよう」
今日はゲンキ君と口げんか
初めてのけんか
いつもは一緒に帰るのに
ひとり寂しい帰り道

机の上の目覚し時計
今夜は目覚ましかけてない
そんなのとっくに忘れてる
床に転んだランドセル
明日の教科書入れてない
そんなの放ったらかし
階下から母さん声かける
「ジョイ君、早く寝るのよ」
でもジョイ君まったく聞いてない

「もうどうでもいいや!」
ジョイ君開き直って
仰向けにドスンと寝転がり
足がタンスを蹴ったはずみで
双眼鏡落ちてきて頭に当たって
「あ、イテってて」

「そうだ! 忘れてた」
今度の休みはゲンキ君と一緒に
町外れのジャングルに探検だった
未知との遭遇だ!
冒険だ! ワクワクしてきたぞ

お猿のジョイ君まだ眠らない
目覚ましかけて教科書入れて
双眼鏡を握りしめて
探検旅行にドキドキしながら
明日はゲンキ君と仲直りだ

詩「僕らの煌く夢」
大きくなったら
僕はパイロットになる
ジャンボ機で飛び出して
銀河系の果てへとまっしぐら

大きくなったら
わたしは看護師さんになる
患者さんの傷に手を当て
癒しのパワーで治してしまう

大きくなったら
僕は政治家になる
世の中に革命を起こして
世界中をひとつにする

大きくなったら
わたしはバレリーナになる
氷上の湖で白鳥を舞い
美の世界に感動を与えたい

大きくなったら
僕は詩人になる
千の詩を描いて
幾万の愛で地球を包む

大きくなったら
わたしはピアニストになる
みえない柵に囲まれた世界
平和の調べを優しく心に届ける

大きくなったら
僕たちは世界を拓いていく
人間が人間として生きるために
世界がひとつに結ばれるために
そして僕たちの平和と繁栄が
永遠に約束される日まで

12年9月17日

ウェブ作品集

加藤 行

 

詩「時が経てば」
子供の頃
無邪気な
てのひらに
そっと乗せた
ちいさな石
あなたはなぜ
ここにあるのか

あなたは
愛しいほど軽くて
握れば儚くて
舐めれば
転がり離れて
故郷の香りが残る
穢れなく灰色で
敬うほどにまるい
いったいあなたは
どうしてここにいて
これからどうなるのだろう
そう問いかけて
足もとへ

しかしハッと息を呑む僕
そこはもう
小石のもどるべき
居場所はなかった
もうすでに
すべては調和していた
それでやむなく
いくばくかの
罪悪感を抱きながら
また小石を拾い上げて
その違和感を
やわらげるように
その場から
しりぞいた

そしていつしか
せせらぎが心地よい
岩場に落ちつき
こっそりと
小石をポケットに忍ばせて
静かに目を閉じ
鈴虫とコオロギの澄んだ鳴き声に
身をゆだねれば
ゆるやかに時は過ぎ
ただ秘密めいた所有感が
こころを満たしている

詩「子猫のコーラス」
時雨の去った青い空
大きな虹が顔を出し
七色のドレスで「こんにちは」

雨だれはポトンポトン
灰色の大きなトタン屋根
お腹を空かせた
三匹の子猫が
屋根の上にあつまった

一番目の子猫が声を上げて
「母さんのミルクが飲みたいよ」
ニャーンニャーンニャーン

二番目の子猫が声を上げて
「父さんのおみやげ楽しみだな」
ニャーンニャーンニャーン

三番目の子猫が声を上げて
「僕はいつかねずみを捕まえるんだ」
ニャーンニャーンニャーン

それから三匹が声をそろえて
子猫のコーラス始まった
「僕たち子猫の三兄弟
 まだまだ体はちいさいんだ
 いつかは偉いライオンの
 おじさんみたいに大きくなって
 町じゅう威張って大行進!」

子猫の三匹小さなあたまを揺らせて
ニャオーニャオーニャオーと大合唱

それをこっそり覗いていた
ねずみの爺さん腹を抱えて
面白そうに笑っていた

詩「白昼夢」
暑い! 熱い!
正常な感覚は麻痺し
脳は考えることを停止
全身の汗は流れるままに
生命の呼吸は息苦しく
それでも太陽は
愛と情熱の根源のはずだ
神さまからの
大きすぎるプレゼントだ
忍耐する我らに
悪魔が微笑むようだ

街中に陽炎が燃え昇り
蝉の鳴き声は静まり
人影はなく
ついには
マグマが噴き出し
地球が燃え出すというのか
灼熱化した人工の街は溶融し
原始の地球に変貌するのか

大いなるものへ
空より純白の雪を
地球に降らせてください
大いなるものへ
北極の氷山で
地球を冷却してください
大いなるものへ
太陽の光で安らぎの中に
地球を包んでください

そんなことを
夢想しながら
僕は誰もいない窓辺で
団扇を仰いで
風鈴の音に酔いしれながら
もしもの危機感に笑みをたたえる

詩「あ、イテってて」
明かりの点ったお部屋
木製ベッドの上で座りこむ
お猿のジョイ君まだ眠れない
「あーあ、どうしよう」
今日はゲンキ君と口げんか
初めてのけんか
いつもは一緒に帰るのに
ひとり寂しい帰り道

机の上の目覚し時計
今夜は目覚ましかけてない
そんなのとっくに忘れてる
床に転んだランドセル
明日の教科書入れてない
そんなの放ったらかし
階下から母さん声かける
「ジョイ君、早く寝るのよ」
でもジョイ君まったく聞いてない

「もうどうでもいいや!」
ジョイ君開き直って
仰向けにドスンと寝転がり
足がタンスを蹴ったはずみで
双眼鏡落ちてきて頭に当たって
「あ、イテってて」

「そうだ! 忘れてた」
今度の休みはゲンキ君と一緒に
町外れのジャングルに探検だった
未知との遭遇だ!
冒険だ! ワクワクしてきたぞ

お猿のジョイ君まだ眠らない
目覚ましかけて教科書入れて
双眼鏡を握りしめて
探検旅行にドキドキしながら
明日はゲンキ君と仲直りだ

詩「僕らの煌く夢」
大きくなったら
僕はパイロットになる
ジャンボ機で飛び出して
銀河系の果てへとまっしぐら

大きくなったら
わたしは看護師さんになる
患者さんの傷に手を当て
癒しのパワーで治してしまう

大きくなったら
僕は政治家になる
世の中に革命を起こして
世界中をひとつにする

大きくなったら
わたしはバレリーナになる
氷上の湖で白鳥を舞い
美の世界に感動を与えたい

大きくなったら
僕は詩人になる
千の詩を描いて
幾万の愛で地球を包む

大きくなったら
わたしはピアニストになる
みえない柵に囲まれた世界
平和の調べを優しく心に届ける

大きくなったら
僕たちは世界を拓いていく
人間が人間として生きるために
世界がひとつに結ばれるために
そして僕たちの平和と繁栄が
永遠に約束される日まで

09/12/13