新連載・地球一周船旅ストーリー〈海に抱かれて みんなラヴ〉8月15日

 【写真は日本の海に向かって黙とう、引き続き読経で手を合わせ、その霊安かれと〈ふるさと〉を歌う乗客ら】

 私が本欄の新連載〈海に抱かれて みんなラヴ〉のアップ作業をしている8階フリースペース。ここでは、若者たちによる出航曲「フリーダム」の軽快な歌声が流れている。今夜を含め、あと2日しかない夜を心置きなく楽しもう、という気持ちが伝わってくる。平和な時が流れてゆく……いまは午後9時半、日本なら8時半だ。
        ×        ×
 話はかわるが、船内で階段を上るため一歩を踏み出すとき。さらには、からだを上下にさせたり、右に折れたり、左に折れたりする時。私自身が絶えずステップを踏んでいるようで、全身がダンスという魔物、〝不思議ないきもの〟になっている。
 あるいたり小走りするときに、それはよく分かる。美雪の適切なアドバイスもあり、下手なりにも〝ダンス、ダンス。ダンス〟の船上生活を過ごしてきたからか。美雪には感謝、感謝だ。帰ったら、下手なりに教えてやれる楽しみができた(ただし、まだまだ初心者ではある)。

 昨夜の午前零時、すなわち14日24時で日本との時差は1時間狭まった。オーシャンドリーム号は900人の〝平和の使者たち〟を乗せ、日本の野島崎を目指して一路、太平洋上を進んでいる。
 きようは日本が戦争に負けた日(昭和20年8月15日)だ。終戦記念日でもあり、朝早くから船内7階ブロードウエイで上映された洋上シネマで三船敏郎主演の映画「日本のいちばん長い日」を見た。東宝の創立35周年記念映画で太平洋戦争が終結し、天皇陛下の玉音放送が流れるその瞬間に至るまでの近衛師団の最後の抵抗など知られざる激動の24時間がリアルに描かれた、めったに見られない内容の映画である。
 映画鑑賞のあとは、8階後方プールエリアで行われた終戦記念セレモニーにも出席。セレモニーは、ボオーッという汽笛の合図で参加者全員が先の太平洋戦争で亡くなった全ての国の犠牲者に黙とうし続いて、社交ダンスなどでいつもご夫妻そろってお世話になっている旅の文化カレッジ専属ディレクター・津江慎弥さんが乗客を代表してあいさつされ、津江さんの知人が読経するなか、全員が頭を垂れ、手を合わせて海に向かって平和への誓いを新たにした。引き続きピースボートの歌姫・谷村さんの指揮でその霊よ安らかに、との願いを込め〈ふるさと〉を合唱した。

 午後は全員参加の横浜下船説明会がブロードウエイであり、下船に当たっての荷物の運び出しなど手順と注意事項、さらには17日の下船の順序などが事細かに説明され、いよいよ別れの日が目前にまで迫ってきた。
 ジャパングレイスの狭間俊一事務局長によれば、「本船は2万7千マイル以上、実に五万キロの地球一周の船旅をしてきました」と言い「きょうの午後6時半には、進路を一気に271度変えて日本に向かい、あさっての午前6時~6時半ごろには、横浜に入港予定です。これも、みなさまのおかげです」と続けた。
 またピースボートのクルーズディレクター・井上直さんも「三浦半島の観音崎が見えたら、あ~あ、日本に帰ってきたんだ、と嬉しくなってきます。そして横浜のベイブリッジをくぐり抜ける時には、なんだか(テープを切って)ゴールインするような気持になりますから、不思議です。敗戦から67年たち、我々は今こうして世界を回っている。みなさん、世界一周で得た創造力で世界をもっともっといい方向に導いてゆきましょう」と呼びかけた。

 102日間の間には確かにいろいろあった。でも、この船の住人たちはジャパングレイス・レセプションの全女性はじめ、ピースボートの全スタッフも含めてみんな親切で良い人ばかりだった。それこそ、本欄のタイトル通り〈海に抱かれて みんなラヴ〉の日々が今まさに終わろうとしている。

 話はプレーバックするが、昨夜遅く船室(5046号室)で放映されていた〈シャル・ウイ・ダンス〉を見た。感動的な内容で「ダンスは愛」。「愛はダンスである」とつくづく思った。夜がふけてゆく。船は、底知れないほど昏い海を横浜というゴールをめざして進んでいる。同じフリースペースの一角からは将来を担う若者たちの、ギターを弾き語りながらの歌声が聞こえてくる。

12年8月15日

ウェブ作品集

伊神 権太

実録随想「残り花」

 【写真は日本の海に向かって黙とう、引き続き読経で手を合わせ、その霊安かれと〈ふるさと〉を歌う乗客ら】

 私が本欄の新連載〈海に抱かれて みんなラヴ〉のアップ作業をしている8階フリースペース。ここでは、若者たちによる出航曲「フリーダム」の軽快な歌声が流れている。今夜を含め、あと2日しかない夜を心置きなく楽しもう、という気持ちが伝わってくる。平和な時が流れてゆく……いまは午後9時半、日本なら8時半だ。
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 話はかわるが、船内で階段を上るため一歩を踏み出すとき。さらには、からだを上下にさせたり、右に折れたり、左に折れたりする時。私自身が絶えずステップを踏んでいるようで、全身がダンスという魔物、〝不思議ないきもの〟になっている。
 あるいたり小走りするときに、それはよく分かる。美雪の適切なアドバイスもあり、下手なりにも〝ダンス、ダンス。ダンス〟の船上生活を過ごしてきたからか。美雪には感謝、感謝だ。帰ったら、下手なりに教えてやれる楽しみができた(ただし、まだまだ初心者ではある)。

 昨夜の午前零時、すなわち14日24時で日本との時差は1時間狭まった。オーシャンドリーム号は900人の〝平和の使者たち〟を乗せ、日本の野島崎を目指して一路、太平洋上を進んでいる。
 きようは日本が戦争に負けた日(昭和20年8月15日)だ。終戦記念日でもあり、朝早くから船内7階ブロードウエイで上映された洋上シネマで三船敏郎主演の映画「日本のいちばん長い日」を見た。東宝の創立35周年記念映画で太平洋戦争が終結し、天皇陛下の玉音放送が流れるその瞬間に至るまでの近衛師団の最後の抵抗など知られざる激動の24時間がリアルに描かれた、めったに見られない内容の映画である。
 映画鑑賞のあとは、8階後方プールエリアで行われた終戦記念セレモニーにも出席。セレモニーは、ボオーッという汽笛の合図で参加者全員が先の太平洋戦争で亡くなった全ての国の犠牲者に黙とうし続いて、社交ダンスなどでいつもご夫妻そろってお世話になっている旅の文化カレッジ専属ディレクター・津江慎弥さんが乗客を代表してあいさつされ、津江さんの知人が読経するなか、全員が頭を垂れ、手を合わせて海に向かって平和への誓いを新たにした。引き続きピースボートの歌姫・谷村さんの指揮でその霊よ安らかに、との願いを込め〈ふるさと〉を合唱した。

 午後は全員参加の横浜下船説明会がブロードウエイであり、下船に当たっての荷物の運び出しなど手順と注意事項、さらには17日の下船の順序などが事細かに説明され、いよいよ別れの日が目前にまで迫ってきた。
 ジャパングレイスの狭間俊一事務局長によれば、「本船は2万7千マイル以上、実に五万キロの地球一周の船旅をしてきました」と言い「きょうの午後6時半には、進路を一気に271度変えて日本に向かい、あさっての午前6時~6時半ごろには、横浜に入港予定です。これも、みなさまのおかげです」と続けた。
 またピースボートのクルーズディレクター・井上直さんも「三浦半島の観音崎が見えたら、あ~あ、日本に帰ってきたんだ、と嬉しくなってきます。そして横浜のベイブリッジをくぐり抜ける時には、なんだか(テープを切って)ゴールインするような気持になりますから、不思議です。敗戦から67年たち、我々は今こうして世界を回っている。みなさん、世界一周で得た創造力で世界をもっともっといい方向に導いてゆきましょう」と呼びかけた。

 102日間の間には確かにいろいろあった。でも、この船の住人たちはジャパングレイス・レセプションの全女性はじめ、ピースボートの全スタッフも含めてみんな親切で良い人ばかりだった。それこそ、本欄のタイトル通り〈海に抱かれて みんなラヴ〉の日々が今まさに終わろうとしている。

 話はプレーバックするが、昨夜遅く船室(5046号室)で放映されていた〈シャル・ウイ・ダンス〉を見た。感動的な内容で「ダンスは愛」。「愛はダンスである」とつくづく思った。夜がふけてゆく。船は、底知れないほど昏い海を横浜というゴールをめざして進んでいる。同じフリースペースの一角からは将来を担う若者たちの、ギターを弾き語りながらの歌声が聞こえてくる。

08/4/26